社会問題小説・評論板

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愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日
日時: 2012/04/06 00:03
名前: flesh (ID: SpLhUj83)

—プロローグ—
 
 
俺には友達がいない。
  家族もいない。
  
    だけど一人じゃない。
  
 人はそれを『友達』と言う。
    『仲間』とも言うそうだ。

  どう見ればあれがそう見えるのか理解しがたいが
    あれでも一応人なんだ。
中身が化け物でも形は人間なんだ。問題は中身だ。 
   

  なんだ。案外簡単な事じゃないか。
そんな悩む事でもない事を真剣に悩んでいた自分はちょっとおかしかったのかもしれない。



    さぁ、今日も楽しく過ごそう不愉快な毎日を   

Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.2 )
日時: 2012/05/09 03:08
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)


朝食を終えた俺はいつものように部屋で読書を始めた。
一日のほとんどを読書でつぶしている、それしかする事がないからだ。
精神異常者にとっては一日なんかすぐだと思うが、俺は異常なんかじゃない。
だから一日一日が長くてもどかしい。
パラパラと本をめくりもう100回以上は読み返したであろう内容をまた読み始める
カバーは綺麗な赤色から茶色に変色して、ページも所々小さく破けている。
タイトルは金色の文字で「ひとりぼっちの幸せ」と書いてあり、内容はほとんど頭に入っていた
一人の少年が家族にも友達にもうんざりし、家出をしてしまう話だ。
最終的にこの少年は家に帰ってくるのだが家族は交通事故で死んでしまっていて、天涯孤独になる。
俺はそこの最終章の内容が未だに理解できない。

『僕は天涯孤独になった。
 自分が家出をしなければ、事故は多分起らなかっただろう
 でも、今更後悔したって意味がない
 友達が同情してくれた
 「せっかく帰ってきたのに不幸な奴だよなお前も。
  親もお前の顔を見たかったと思うぜ。そう気を落とすなよ。」
 意味が分からない。僕は疑問を浮かべながら答えた
 「不幸?なんで?僕は今こんなにも幸せさ。」
   友達は不思議そうな顔で僕を見返した。         』

この「幸せ」の部分が何回読み返してもわからなかった
家族を失ったのに何が嬉しいのだろうか
そんなにも家族が嫌いだったのだろうか
じゃあなんで「後悔」という2文字が出てくるのだろうか
ベッドに体をあずけ本を閉じる。
答えが出たからって俺には何も役に立たないんだろうな。


その夜俺は久しぶりに夢を見た。
真っ暗な中で一人震えている夢だ。
震えてるのは確かに俺だった。何故震えてるのかわからなくてしばらく自分の様子を窺う。
散々震えた後ゆらりと体を起こし自分の首を絞めはじめた
意思が通じない。苦しい。やめてくれ。自分の体なのに自分じゃない誰かが動かしているようだ。
頭の中で自分じゃない誰かの声が響き渡った

『いなくなればいいのに。いなくなればいいのに。
 存在意義を教えろ。いらないよ。いらない子なの?
 じゃあ消えようか。ひどくなる前に逃げようか。
 俺は頭がおかしいのか。だからここにいるのか。
 俺は俺はおかしくなんかないないないないないないないない』

よく聞けば自分の声だった。聞きなれた自分の声が何回も何回も同じ事をリピートする。

『俺はおかしいのか。おかしいのか。おかしいのか。
 なんで答えない。なんで答えないんだ。おかしいのか。
 普通だ。これが普通だ。お前らがおかしいのか。そうだ。お前らがおかしいんだ』

やめろ。うるさい。ただでさえ疲れてるんだ。眠らせてくれ。うるさいな。静かにしろ。今更そんな事わかってるんだ。
ようやく首から手を離し、俺は二度三度深呼吸をする。
次の瞬間背後から声がした、ひどく震えた声だった

『ジャア今ハ幸セ?』


Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.3 )
日時: 2012/06/22 19:53
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)

「あああああああああああぁぁあぁああああああぁっぁあっ!!!!!」

早朝、病棟全体に響き渡る様な大音量の悲鳴に目が覚めた。
またか この悲鳴を聞くのは今年で5回目だ
声の主はわかっている。俺は友人の元へ向かった

階段を上り、長い階段の突き当りに彼の部屋はあった
部屋に入ると案の定うがいでもしてるかの様なしゃがれた声で首を掻き毟っていた
「おい、やめろってまた血が出る事になるぞ—?」
昨日洗面所で会った時とはまるで違う形相に少し動揺しながらも止めに入る
「ヒュー…ヒュー…が…ガが…あ…ゴホッ…ヒューヒュー…」
不安定な呼吸が続く中何とか首を掻き毟る手を止めてくれた
「大丈夫か?立てるか?」
「…」
虚ろな目で小さく頷くとベッドに身を任せそのまま深い眠りに入ってしまった
俺はそれを見届けると音を立てずに部屋を出た


友人は年に1度は絶対に発狂し、さっきみたいに首を掻き毟る
何故そうゆう行動に駆られるかは知らないが、俺がいなかったらきっと首はズタズタになってただろう。
彼は常に自分が正常である事を主張していた。
俺が気まぐれであげた本を未だに大切に持っている、そして定期的に聞くのだ「幸せってなんだ?」と。
そんなの俺が知りたい。

自室のベッドに腰を下ろし、ボーっとしていると友人のある事に気が付いた
…最近発狂回数が多くないか?
毎年多くても2、3回だったのにどうしたんだろう。
彼は自分が発狂をしている事を知らない。
首を掻き毟った記憶もまるで無い
俺はいちいちその事を聞くのは何か悪い気がして1度も聞いたことがなかった。
明日にでも聞いてみようか。
「ねぇ」
「んぁ?」
ドアからおずおずと入ってきたのはここの患者であろう6歳ぐらいの女の子だった
手が異常な程震えていて、まぶたが世話しなく閉じたり開けたりを繰り返している。なんらかの症状だろう。
「あのお兄ちゃん病気なの?」
「あのお兄ちゃんってあの叫んでた人か。ここにいる奴は皆病気だから来てるんだよ」
「じゃあ私も?」
「それはわからないけど…」
「私知ってるんだ…」
「え?」
女の子は悪戯っぽい笑みを浮かべると静かな声でこう言った
「お兄ちゃんってね体は1つなのに心は2つあるんだよ。不思議だよね?」
「…は?」
「だってねだってね!この前ね!夜に食堂でウロウロしていたらお兄ちゃんが眠れないの?って言ってきて絵本読んでくれたの。それでね、次の日になったんだけど私もう一度絵本を読んでもらいたくなってお部屋に行ったの。そしたらね誰?って言われちゃった!そんなの読んだ覚えはないって!きっと心が2つあるんだよ!」
「それはただ覚えてないだけじゃ…」
「本当だよ!だってね、その日の夜にもう一度部屋に行ってみたらまた会ったね今度は何を読もうかって言ってくれたんだよ。
 だから私聞いたの昼は覚えてないって言ったくせに夜になったら思い出すんだねって。そしたらお兄ちゃんにこって笑って言ったの。俺には心が2つあるんだって!」
興奮気味の女の子は震える手を更に震わせて言った
「でね、お兄ちゃんが言ったの。あ、夜の方のお兄ちゃんね。
 1つの体に2つの心が入ってるのは生活しにくいから昼のもう一人の自分にはそろそろ消えてもらうって!」
「…ソウナンダーコワイネー」
あまりに理解できない話に思わず棒読みになる
多重人格って事なのか。今まで約10年以上一緒にいて初めて聞いた話。まだ真実なのか逸話なのかははっきりしてないが俺はとりあえずバクバクいってる心臓を落ち着かせる事にした

Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.4 )
日時: 2012/05/25 00:35
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)

その日の夜、消えたり付いたりを繰り返す電球が続いている廊下を俺は歩いていた
友人の様子を窺うために。
廊下の脇には当然様々な病室が並んでいる
壁に血が染みついている部屋や異臭がする部屋、奇声や何かの破壊音。
口から涎を垂らし廊下を這いずり回ってる者、視点が合わない目に壁に頭を打ち付ける者もいる。
今更怖いとは思わない。なんせ10年以上もここにいるのだから
最初ここに来た時の事はよく覚えてない、ただひたすら顔も知らぬ母の名前を呼んでいた記憶がうっすらある
しばらく進むと周りの奇声や奇行が次第に少なっていく事に気付いたが俺は対して気にもせず前に進んだ

友人の部屋の前にたどり着くと辺りは不気味なぐらいシンと静まっている
壁には相変わらず血やよくわからない落書きが広がっているがまるでこの建物には俺しかいない様だ
部屋の扉は閉まっていた、耳をすませてみたが何も聞こえない
「お花はお好き?」
透き通った声が背後から聞こえ思わず体を震わせる
何も言わず振り返るとそこには緑のワンピースの女性が立っていた
手には赤いカーネーションが5本ほど握られている
「お花はお好き?」
「俺ちょっと用事あるんで…」
「お花はお好き?」
女性は5本の内一本のカーネーションを差し出したかと思うと口をまた開いた
「私はお花が大好き。だって喋らないもの口が無いもの。だからね?私はお花が大好き。あなたにもおすそ分けしてあげる」
そう言って無理やりカーネーションを手渡される
満足気にほほ笑んだ女性は友人の部屋と俺を交互に見た後顔を少し歪めた
「あなたここに用事があるのね?駄目よ。今は。夜だもの。お花だって生きてるのだもの。夜と昼は姿が変わるのよ。人だって。そうでしょう」
「…はぁ?意味がわからな…」
そして俺の言葉を遮るようにして女性は去ってしまった

あぁ、そうだ。ここは精神病院だ。
まともな奴なんていないさ。
俺はカーネーションを手に部屋のドアをノックした
返事はない。
もう一度ノックする。
発狂してる時以外にここに訪問するのは初めてだ
友人はきっと俺じゃなく何らかの精神異常者が訪問しに来たと思いドアを開けないのだろう
「俺だよ。入ってもいいか?」
夜なので一応囁き声で問う
それでもやっぱり返事がない
俺はドアを開けた
部屋は何故か電気がついていた
夜の10時を越えると廊下以外の電気は全て消灯されるはずなのに友人の部屋だけは豆電球がつけっぱなしだ
友人は俺に背を向けるようにしてベッドの上で体育座りしている
よく見ると何か手を動かしているように見える、また読書だろうか
近づいて覗いてみると赤いカーネーションの花びらを小さく小さく引きちぎっていた
そしてピタッと手を止めゆっくり首を俺の方向に向けた目は虚ろで泣いてるようにも眠そうにも見えた
友人は乾燥してカサカサになった口を開け

「誰だテメェ」

とはっきり聞こえる声で確かにそう言った。〝誰〟と

Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.5 )
日時: 2012/05/12 09:04
名前: 千草 (ID: q9W3Aa/j)

 おはようございます。
          千草です。

作品、読ませていただきました。
 なんだか、考えさせられる内容ですね。
すごく、良かったです。
                  続きを楽しみにしてます。

 

Re: 愉快なパラフィリア達と不愉快な毎日 ( No.6 )
日時: 2012/05/12 17:12
名前: flesh (ID: P/D0CuiW)


千草様>>コメントありがとうございます。 
    未熟なのでまだまだ文章がなってないですが、良かったらこれからも読んでいただけたら嬉しいです。


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