社会問題小説・評論板

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沈黙の後より -after episode-
日時: 2012/11/16 07:05
名前: 世界 ◆hdwFu0Q9Eg (ID: pUqzJmkp)

……ひとりの生徒の死によってそれは始まった。
教師として対応に追われる観岸は、生徒が自殺した原因を探るうちに、さまざまな問題へと巻き込まれていく。
やがて広がっていくそれは、彼らをどこへと向かわせているのか。

——死を持って、不幸という種はすべての人へと根付こうとしていた。


 ***

(仮タイトル)

虐める側か、虐められる側か、そんなのばっかりなのでちょっと指向を変えて。
皆さん的に言えば、バッドエンドから始まります。
当事者はすでに自殺しているところからです。
つまり、『その後』をえがくことになります。そして焦点は、『大人達』です

そして一部の人にとっては気持ちの良い話ではありません。
読む途中で気分が悪くなった人は戻るボタンを。
「社会問題系」ですが、何かを訴える気とかありません。あくまで物語の部類として選んだだけです。


目次
主要登場人物 >>1
(1) 無音の騒乱 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9
(2) 怒りが向く先
(3) 見えない理由


** 11/10 本文修正

Re: 沈黙の後より -after episode- ( No.5 )
日時: 2012/11/10 19:56
名前: 世界 ◆hdwFu0Q9Eg (ID: pUqzJmkp)


 その後もいろいろな対応に追われ、観岸が疲れを感じて時計を見たときには、昼をすでに回っていた。学校での対応は徐々に落ち着きを取り戻しつつある。観岸も、ここ数十分は特に何をするわけでもなく、ただぼんやりと過ごしていた。
 なにげなく、観岸は窓際に立ち、正門の方を眺めていた。やがて一台の警察車両が、正門が開かれると同時に校内へと入ってくる。車から降りてきたのは笹木校長、東、そして西木渡。西木渡は今朝に比べると少しは気力を取り戻したようで、顔は伏せているものの、しっかりと自分の足で歩いていた。
 そこに、あの間嶋刑事が近寄っていく。何か、一言二言話した後、西木渡だけが間嶋の後を追うようについて行く。

「大丈夫だろうか……」

 あの刑事は、どことなく良い印象を持てない……。観岸は始めて口を聞いたときからそう思っていた。傲慢そうな態度か、上の立場であると言うように振る舞う様子か、それよりも根底にある何か信用しきれない部分か……。 

「お疲れですか、観岸先生」

 観岸の横に、再び寺司がやってきた。先ほどとは打って変わって、その言葉にはどこと無い柔らかさがあった。

「疲れていない、と言えば嘘になりますね。寺司主任も、同じでしょう?」
「ふっ……そうですね」

 しばし、ふたりはしばらく何も言わず、ただそれぞれの視線の先を眺めていた。特に交わす言葉もなく、こんなときに何を話すべきなのか。観岸だけでなく、寺司も、伝えるべきことのないこの場では、何気ない言葉のひとつすら出てはこない。
 観岸は気まずさをどうにかしようと、口を開いた。

「あの——」
「なんですか?」
「主任は、この中では一番警察の人に話を聞いてますよね? その中で、木条君の……遺書とか」
「見つかっていないようです、それらしきものは」
「……なんで、死なんて選んだんでしょうか」
「私は彼ではありませんので」

 ただ一言、表情を変えずに寺司はそう言った。そんなことを聞くものではないと、寺司は言いたいのだと観岸は理解する。むしろ、無責任なことを並べられるよりはよかった。
 意味の無い質問をしないよう、自分自身で戒めながら、観岸は言葉を濁して続ける。

「木条君は……まあ、そんな風には見えなかったですから」
「なかなか、他人の様子を把握することなんか出来ませんよ。そう見ることしか出来ない……いや、そうであれと見ていたのかもしれませんね。誰だって彼が……彼だけじゃなく誰も、沈み、淀んだ表情をしていればいいとは思いませんから」
「……気づく努力をしなかった、と。……そう言いたいんですか?」
「気づくには少し、サインが足りなかった……その方が、私の言いたいことには近いでしょう。あなたにも、西木渡先生にも、責任はないと信じていますよ。……今は」

 少し、観岸は寺司を睨んだ。同じく、寺司も表情は変えなかったが、観岸に目を向けた。
 気を遣ってくれているようにも聞こえるが、実際は遠回しに観岸や西木渡を批難している。観岸は直感的にだが、そう思った。
 しかし、それを否定することも出来ない。実際に生徒のすべてに気を配り続けることなど、まず不可能である。中学生という多感な時期は、自分の気持ちも隠していくことを覚える時だ。そこから心底にあるものを見抜くなど、どんなにベテランの教師であっても出来ることではない。……かといって、それを諦めとすることなど許されるわけがない。我々は常に、彼らを出来るかぎり守り、成長させる存在であり続けなければ。
 観岸は否定する代わりに、寺司に質問を投げかけた。

「主任は……今回のこと、どう思っていらっしゃるんですか?」
「痛ましく、また嘆かわしいことですよ……。ひとりの生徒の苦しみが、彼だけでなく我々やこの学校の生徒にさえのし掛かる——」
「えっ?」

 耳を疑う観岸。率直に捉えれば今の言葉は、木条の死によって、彼以外の人が苦しむことを寺司は心痛く思っていると……。

「彼の死を、そんな邪険に扱っていいんですか! 守りきれなかった我々は、むしろ甘んじてこの事態を受け止めるべきじゃないんですか!」

 観岸の大きな声に、職員室が一気に静まりかえった。空気が変わった場に木条は焦る様子を見せなかったが、なだめるように観岸の声を抑えようとする。

「観岸先生、そんなに声を張り上げないでください。私は、彼の死だって辛く思っていますよ。……しかし実際問題、この先、その死があったがために変わってしまうものもあるでしょう。私たちはそれに対処を強いられるのは間違いありません。それは、残された生徒にも、この学校にも」
「彼の死は、いつになっても変わりはしません」
「……死は乗り越えなければならない。我々が彼に固着し続ければ、今度は生徒達の心身に影響を来します」

 少し強めの言葉で寺司は発した。互いの視線はぶつかったまま、しばらくその先にある本音を探るように、微かに目は動き続ける。
 ……先に目をそらしたのは、寺司だった。

「いえ、そうは言っても今は、まだ彼の死を弔う時であり、そしてその原因を一刻も早く見つけ出さなければなりません」
「それには同感です。今はこんなことで、争っている場合じゃない……」
「虐め……警察の人が疑うように、それが原因でないことを望みますが」

 原因は何より、まず誰もが気になることだった。観岸にとっては、木条がどのように自殺したのかというよりも、まずその原因を知ることの方が優先事項だ。
 そのとき、職員室の扉が、少々荒めに開かれ、間嶋が中へと入ってきた。その後ろには、西木渡の姿もある。

「あっ、寺司生徒主任、少しよろしいですかー? 少しお話したいことがあるので」
「なんでしょう?」
「ここでは何ですから……ああ、よろしければ観岸先生も」

 そう観岸に顔を向けたとき、わずかに間嶋の口元が歪むのが見えた。何を笑っている……? そんな愉快さは、この場のどこにも無いはずだ。このときばかりは観岸も、間嶋に対して厳しい表情を向けずにはいられなかった。
 それを針の先ほども気にせず、間嶋は寺司を先導として、応接間へと向かっていった。観岸は少しだけ迷った後に、その後を追っていく。間嶋の後ろについて歩く西木渡の横へと並んだとき、ふと彼女の顔を垣間見ることが出来た。
 彼女の顔には、今は表情は無かった。

Re: 沈黙の後より -after episode- ( No.6 )
日時: 2012/11/10 19:56
名前: 世界 ◆hdwFu0Q9Eg (ID: pUqzJmkp)


「さて、こちらが採ることの出来た証言を、ひとまずお話しましょうかねぇ。まず、木条君の死因……いや、彼を自殺という結果に至らしめた原因ですが、どうやらやはり、虐めにありそうです——」

 椅子に座るなり、間嶋はそう始めた。自分のメモした物のコピーを机の上に並べ、これまでにわかったことを、隣の相方と思われる男と共に順を追って説明している。
 ——木条悠斗が飛び降り自殺をしたのは、午前五時前。職員室もある正門近くに位置する特別教室の集まる校舎、その四階より飛び降りたと思われる。尚、飛び降りた位置は正門より少し横の職員用ゲート付近となる。そのおかげで発見が早期だったようだ。
 第一発見者は、学校付近に新聞配達に来ていた大学生で、たまたま、何かが落ちるのを目撃し、そして木条が倒れているのを発見した。救急車が到着するまでの間、そう時間は掛からなかったはずだが、すでに木条は頭を強く打ち即死状態だったようだ。
 基本的にこの校舎は深夜であれば各階を隔てる扉が鍵で締められ、外部からの進入は一切阻むことが出来る。今回も例外ではなく、外部からの進入の跡もなければ、夜の間に学内を廻る警備員も不審な点は発見しなかったという。つまり、木条は最初から校内にいた可能性が高いということになるわけだが……。
 間嶋の説明に、東が口を挟んだ。

「待て、そうだとしたら木条は、ずっと家に帰らなかったことになる。そうしたら親御さんが奇妙に思うはずだが?」
「はい、実際に捜索願いは、深夜に出されていました」
「深夜? なんでそんな遅くに」
「クラブ活動後、木条君はそのまま学習塾へと行く予定だったようです。受験生ですからねぇ、普通のことでしょう。しかし、今回はその学習塾も欠席していたようです。無断欠席ということになりますが、今回はたまたま、その学習塾も欠席の彼の安否を確認しなかったようです」

 故に、両親さえ木条の行方知れずに気づかなかったという。
 その言葉に納得する東に代わり、今度は尾賀教頭が声を発する。

「彼は、クラブ活動には参加したのでしょうか?」
「現在は不明です。昨日の活動では、顧問が欠席しており生徒のみでの活動となっていたらしいじゃないですかぁ? その辺りを調べるには、同じクラブに所属する生徒に聞くしかないでしょう」
「では、どのタイミングで彼の行方が分からなくなったのか、まだ不明だと言うことですか……」
「おっしゃる通りで。終礼の際には、西木渡先生が彼の姿を確認したという証言がありますので、その後のことでしょうねぇ」

 観岸は、西木渡の方へと視線をわずかに向けた。話に自分の名前を出されると同時に、弾かれたように顔を上げ、視線をさまよわせている。
 原因については今後の調査でわかるでしょう、と間嶋は一度言葉を切る。

「もちろん目撃証言が少ないことから、私どもは自殺だけでなく他殺の線も追っています」
「誰かが殺したというのか?」

 観岸は思わず口を挟んだ。間嶋は観岸を見て、首を横にゆっくりと振った。

「あくまで、証言の少なさから予想しなければならない可能性の話です。木条君発見後、校舎から誰かが出て行った様子もありませんから、おそらくは自殺であると考えています。ただ……」
「ただ?」
「彼を何らかの形で、自殺へと誘導した可能性は考えられなくもありませんねぇ」

 直接的ではなく、間接的に木条を自殺に追い込んだ存在がいるかもしれない。もし虐めを考えるなら、その可能性も充分にあることだった。

「西木渡先生からの証言でしか確かなことは得られていませんが、彼女の言うことによれば、木条君は虐めを受けていた様子がわずかにだが見受けられたとのことです。具体的な内容は、まだ調査中なのでこちらからは述べることは出来ませんが……大人の我々が考えても、分かることは少ないですねぇ」
「……どういう意味ですか?」
「あくまで大人から見た印象ですからねぇ。子どもは難しいもので、昨日喧嘩していたかと思えば、今日になれば往年の付き合いのような仲の良さを見せる。あるいは、その逆もしかり……。昨日見た彼が、今日の彼と一致しないことは考えられます。我々が見ていないところで、彼は大きく虐げられていたかもしれない」

 観岸も同意せざるを得なかった。子どもの心は変わりやすく、大人では到底考えられないような思考をすることもある。素直、率直であり、また疑り深くもある。そこから作られる人間関係は、我々では到底考えないようなものもある。それは観岸だけでなく、ここにいる誰もが分かっていることだ。
 だが間嶋の言い方は、もはや虐めがあったことを確定しているようなものだった。

「生徒に一番関わっているのは、親と、そして同じく生徒です。むしろ学内のことだったら、生徒が一番よく知っているでしょうねぇ」
「生徒に証言を取るつもりですか」
「虐めをしていた子と、それに関わっていた子の情報を集めることは最優先です。そうしなければならないでしょうねぇ」

 その言葉に、東が耐えきれないというように口を開く。しかしそれよりも先に、同じ思いを持っていた観岸が声をあげる。

Re: 沈黙の後より -after episode- ( No.7 )
日時: 2012/11/10 19:57
名前: 世界 ◆hdwFu0Q9Eg (ID: pUqzJmkp)


「……さっきから聞いていれば、あなたは! 生徒すべてを最初から疑っているのか! まだ確実な証言は無いと、あなた自身が言ったじゃないか!」
「そうだ……我々教師側としても、最初から生徒を疑われるのは頂けない」

 観岸と東の言葉に、間嶋はうんざりだというようにため息をついた。

「観岸先生、東先生……。実際に木条君は自殺しているんですけどねぇ。それに、こっちはきちんと目撃者の証言から裏付けを採ろうとしているのです。……最初から疑っているのと同じように、生徒すべてを何の根拠もなく信じ切るというあんたらも、同じことじゃないですかねぇ。私たちも仕事でやっているのですよ。多少、強引になっているようにも見えるかもしれませんが、きちんと原因を探らなければ、また同じことが繰り返されるかもしれない。そうなったらあんたら教師、生徒すべてを信じたあげくの責任は取れるんですかねぇ? 自ら死を選ぶまでに追い詰められた彼にどう言い訳出来るんですかめぇ?」
「それは……」
「まあいきなり、生徒をひとりずつ問い詰めたりはしませんよ。まずは先生方で学内アンケートを取ってもらい、そこから情報を集めることにしましょう。そのためにも捜査にご協力、お願いします」

 軽く頭を下げる間嶋に、観岸は何も言い返すことが出来なかった。ここで口を出すのはあまりにも大人げないことだった。何も分かっていない以上、それぞれが何を疑うかは自由だ。観岸が生徒を信じるのも、間嶋が彼らを疑うのも……。

「……ああちなみに、校長先生や西木渡先生が病院へと向かったそうですが、どうでしたかぁ、ご両親の様子は」
「いえ、門前払いされてしまいまして。今は、会いたくないと……」

 笹木校長がそう答える一方、西木渡は暗い顔をして視線を逸らした。その様子が気になったのか、間嶋は顔は正面を向いたまま、視線だけを西木渡に向けていた。

「無理もないでしょうなぁ……。仕方ありませんね。我々がまた、ご両親にも証言を取りに行きますので。それを介して、ご両親の主張もお教えしましょう」
「よろしくお願いします」
「また後日、我々も調査に乗り出しますので、再度言いますが、そのときはご協力をお願いします」

 間嶋と、その相方が席を先に立って応接間を出て行った。観岸はどこか腑に落ちない胸の思いを、東と目を合わせることで確認し合っていた。……あまり、間嶋は鵜呑みにするべきじゃない。
 残された観岸たちに、最初に声を掛けたのは笹木校長だった。

「いや……こんなことになってしまって本当に残念だ。私は、誰も責める気は無いが……とにかく一刻も早く、彼が死んでしまった要因を探し出しましょう。その上で、しかるべき対処を取るように……。一時間後、職員会議を開きますので——」

 そう笹木校長が言うや否や、西木渡は先に部屋を出て行った。心配そうに扉を見る東に、観岸は肩を叩いた。笹木校長に一礼して、ふたりは先に部屋を出て行こうと——。

「観岸先生」
「えっ、なんですか?」

 尾賀教頭に名前を呼ばれ、観岸はドアノブに掛けようとした手を引っ込めた。

「西木渡先生と仲が良いのはあなた方です。必ず、彼女から知っていることを聞き出してください」

 何を……と言い返そうとした観岸は、その言葉を飲み込んだ。西木渡だって警察に何度も聞かれているはずだから、すべて知っていることは話しているはずだ。だが、尾賀教頭の目は、そうは言っていなかった。観岸を……いや、それよりももっと先を見るように、瞳は鋭く先を見据えていた。
 返事をする代わりに、観岸は再び一礼して、東と共に応接間を出た。
 直後、東が呟く。

「あの人は……なんなんだ?」
「疑うのも無理ない……あの西木渡の態度を見る限りでは。彼女も彼女で、やはりどこかおかしいところがある」

 職員室を見渡す観岸だったが、そこに西木渡の姿を見つけることは出来なかった。警察は一度引いたのか、青黒い服はひとりとして居なくなっている。逆に、職員は朝に比べると増えているようだ。
 会議までの時間、ふたりは西木渡がどこにいったのか探すことにした。とにかく、直接聞きたい事がたくさんあるからだ。間嶋の言葉よりも、彼女の言葉の方がまだ信用できる。あくまで直感的なことであるが、教員にしか分からないようなことはあるような気がした。
 廊下を歩きながら、東は観岸の横へ並んで、言葉を投げかけた。

「どう思う?」
「何が?」
「西木渡は本当に、虐めを少しでも感じていたのか」
「西木渡はしっかりしているから、もしその気配があったとしたら放っておくようなことはしないはずだ」

 何らかの対処はしているはずだし、それで解決できないとしても、緩和することぐらいは出来るだろう。しかし、毎日最後に提出する教師日報を見た限り、そういった事柄に関する内容を見たことはなかった。二年時、初めて担任を持った頃は、ほぼ毎日のようにトラブルに関して書かれていたのを記憶している。
 ……思えば、逆に不自然だったか。どんなクラスにも虐めのようなトラブルは、わずかにだが存在する。毎日とは言わないが、少なくとも週に一回……。3年、受験が関わっていることで生徒達にも自意識が芽生え、そういったトラブルを回避するようになったということも考えられるが、それにしても。西木渡の日報には、これといってそういったことがほとんど書かれていなかった。

「しかし、西木渡はどこに? ふらふらとしていると、それこそ怪しく——」
「東、そっちは頼む」
「おいおい、どこに行くんだ?」

 観岸は階段の前で立ち止まって、上を指差した。

「四階か……」
「何か分かるかも知れないからな」
「わかった。じゃあ俺はあっちの校舎の方を見てくる」

 クラス教室が集まる校舎へと歩いて行く東をしばらく見送った後、観岸は特別校舎の階段を上っていった。


 四階の廊下の角、大窓の並ぶその場所には一本の黄色いテープが進行をふさぐだけで、取り入って変わった様子はなかった。ただ開け放たれた窓のひとつがその事実を示している。観岸は後ろを一度振り返ってから、テープをくぐり抜けた。
 特に何かがあるわけではない。大窓には以前、落下防止用の柵が取り付けてあったはずだが、去年に老朽化によって落下の危険が出たので、外したようだった。夏休みには取り付ける予定だったが……。
 その窓際へと近寄って、そこから下を見てみた。風が弱く吹き付ける。少し高めの場所に立てられた校舎の影響もあり、思わず一歩下がる高さだった。これでは助かりようがない……。しかし、無理やり落とされるような高さの窓でもない。自分でよじ登らなければ落ちはしないだろう。つまり、木条はやはり自分の力でここから落ちたことになる。

「殺人、という可能性はないだろうな……」

 ふと気になった、廊下端に備え付けられた大きなロッカー。主に掃除用具を入れるためのものだ。ここを掃除する生徒は、ここのロッカーに入っている箒などを使用する。
 なんとなく、その扉に手を掛けてみた。少し力を入れるが、開かない。よく見てみると、扉が曲がっているようで、それが歪みとなり引っかかっているようだった。さらに力を入れると、弾かれたように扉が開く。
 中には特に変わった様子はない。箒が数本、ちりとりがひとつ……。これだけを入れるには、少し大きすぎるぐらいのロッカーだ。
 この特別校舎に、夜の間は侵入することは出来ない。各階は鍵が掛けられるし、内側から開けば必ず管理室にサインが行く。しかしその兆候は無かったと行っていた。つまり木条は、最初からここにいたことになる。おそらく、このロッカーの中に。
 先程力をいれたせいなのか、ロッカーの扉は非常に開きやすくなっている。もう一度扉を閉め、観岸は強めに、ロッカーの扉を蹴ってみた。再び扉は歪み、開きにくくなる。もしこの中にいたとしたら……外の様子が分からない故、開かないと分かれば閉じ込められたと思うだろうか。
 ここの掃除担当クラスは二組だった。つまり、西木渡のクラスである。そうだとしたら合点がいくのだ。
 こんなことに気づかない警察……間嶋ではないだろう。あえて言わなかったのか、それとも確証そのものが得られなかったから、言わなかったのか。
 虐めの事実は、どうも否定できそうにない。あるものは、受け止めなければならなかった。

Re: 沈黙の後より -after episode- ( No.8 )
日時: 2012/11/10 19:59
名前: 世界 ◆hdwFu0Q9Eg (ID: pUqzJmkp)

 クラス校舎側へと出向いた観岸は、自らの担当である一組の横、二組の教室前を通り過ぎたとき、中に東と西木渡の姿を確認した。

「西木渡、大丈夫か……って、これ何回目だろうな」

 教室へと足を踏み入れながらそう言った観岸の言葉に、西木渡はわずかに微笑んだ。

「もう大丈夫です……ご心配かけて御免なさい」
「無理はするな。気持ちは皆が察しているから」

 その観岸の言葉に、東がニヤニヤとした表情を浮かべながら口を挟んだ。

「俺も結構きてるんだぜ? 心配してくれよ」
「お前はそんなに打たれ弱くないだろう……」
「こう見えても、辛いものは辛いのさ。ただ今はそういうときじゃないって分かっている。どんなに辛くても動かないといけないと」
「じゃあ、そのときになったら言ってくれ」

 ああ、と東は親指を立てて見せた。ふたりの間を保つには、それだけで充分だった。
 観岸と東は、同じくして数学の教師である。この学校では数学の授業は、より生徒への定着度を上げるため、クラスを半分にした少人数制で授業を行っている。その際の教師がこのふたりだった。ふたりは同じ時期、同じ境遇でこの学校へと就任して以降、ずっとふたりでやってきた。年齢こそ東の方が上であるが、それを気にすることもなく良き友あるいはライバルとしていた。
 大人であるからして、そういった関係を築くのは当然であると言えるが、そうでなくとも、たとえばふたりが中学生で出会っていたとしても同じような関係になっただろう。それほどに馬が合っていた。
 表情を真剣なものに戻し、東は西木渡へと向き直った。

「さて……そろそろ質問いいか? 俺たちもいろいろと知っておきたい。なに、言いたくないことは言わないでいい。何を言ったとしても、俺たちはここでお前から聞いたことを口外しない。約束する」

 観岸もそれにうなずく。しばらく、西木渡は不安そうな表情を浮かべていたが、ゆっくりと首を縦に振った。観岸は東と顔を見合わせ、まずは東が質問することになった。
 ——先程、間嶋刑事が言っていたように西木渡は虐めの様子を感じていたのか。この質問に、西木渡は何とも言えないと返してきた。彼女が言うには、間嶋の質問には認めざるを得ないものが含まれていたそうだ。「不安に思うこと、奇妙に思ったことは必ずある……それを思い返してください」……そう言われれば誰でも、もしかしたらと思うだろう。つまり、西木渡の質問は誘導されたようなものだった。ただ一概にもそう言い切れないのは、西木渡の中にそういった不安が少しでもあった点があるためだ。もしかしたら、というのは、あったとも無かったとも言い切ることが出来ない。
 ——木条の最近の様子はどうだったのか。これは観岸の質問であり、西木渡だけでなく東にも向けられたものである。数学の授業ではクラスを分割するのだが、観岸の担当する方には、木条はいなかった。故に観岸にはほとんどと言っていいほど関わりが無かった。
 西木渡は、明らかに不自然な点もなく、クラスとしての問題は見受けられなかったと回答した。
これに対して東は、わずかにだが気になった点があるという。数学の授業では問題を解かせることが多いのだが、基本、クラス内で誰かと相談しながらやる生徒が大半だという。だが木条は黙々とひとりで解いていた。ひとりでも解けると考えれば不自然ではないが……故に、わずかに気になった点であり、根拠のあるものではない。
 ——木条の成績と進路について。これは東の質問である。まだ夏休み前であることからも、進路に関してはあまり深くは出ていないのだが、西木渡の話によれば、今年最初の二者面談の際、彼は少しでもレベルの高い高校に行くことを志望していたという。いずれはどの生徒も望むことだ、不思議ではない。しかし強いて言うなら、彼は具体的な高校名を並べていた。それは今の彼の成績では届かないような、難易度の高い場所だった。
 それが自分で望んだものなのか、それとも本人の意思ではないのか……。観岸も数年も教師をしていれば、いろいろな生徒に出会う。本当に自分から高いレベルを望む生徒、親に言われてそこに行くことをただ希望する生徒、高校を選ばず、ただ行くことを望む生徒。もし本人が望んだものではないとしたら、それは生徒に大きな負担となることもある。過度の期待とプレッシャーは本人を潰しかねない。故に最後は、我々教師が現実を見据えて、希望の変更を促す。
 東は顎に手を当てながら呟く。

「家庭でのトラブルもありそうか……」
「私が今学期の家庭訪問をしたときは、特に他の人と変わった様子はありませんでした。ただ……」
「何か気になるのか」
「木条君と同じように、この高校に行かせてほしいというお母様の言葉がありました。けれど一方で、木条君の今の成績を、どうも把握していない、もしくは興味を持っていないような感じだったんです。成績はどうにせよ、どうにかして行かせてほしい……そんな風に言っていました」
「よくあるパターンだな。子どもを信じていると言いながら、実際は知っているつもりになって何も見ていない。まあ決めつけるのは良くないが……」

 人間関係、成績、受験へのプレッシャー。一番辛い時期だっただろう。もしすべてが彼にのし掛かっていたとしたら、我々はきっとそれを和らげてあげるべき存在だ。もし自分が彼と関わる何かキッカケがあったのなら……観岸はそう思わずにはいられなかった。
 教室の扉が開かれる音がして、三人はそちらへと顔を向けた。

「おやおや、先生方がこんなところで集まってどうしましたかなぁ?」

 間嶋……こんなところに何を。観岸はかろうじて、嫌な視線を向けるのを抑えた。大人げなさ過ぎる、これでは。
 ひとり教室へとやってきた間嶋は、嫌な雰囲気を持つ笑みを浮かべて見せた。東は少し面倒くさそうに間嶋に問いかける。

「間嶋さんこそ、こんなところにどうしたんですか?」
「ああ、新米のやつが調査のひとつを忘れていましてねぇ、その後始末ですよぉ。ここは木条君のいた二組ですな? 西木渡先生、“彼”の席はどれです?」
「えっ? あそこですが……」

 教室の窓際、前から三列目を西木渡が指差すと、間嶋はずんずんと進んで、木条の席へと近づいていった。そして、その机に無造作に手を突っ込み、中のものを次々と机の上へと取り出していく。
 その荒さに、思わず観岸は叫んだ。

「おい、もっと丁寧に扱え!」
「何を言ってるのです? これは捜査ですので、口を挟まないでいただきたいですねぇ」

 そう言う間に、間嶋はすべてのものを机の中から取りだし終えていた。そう物の量はない。文房具が入っているであろう小さな袋や、ノート数冊、お菓子のゴミが少々。

「うーん、木条君はお菓子を摘むような子ですかねえ」
「いえ、彼はそんな子では……」
「ですよねえ、西木渡先生。つまりこれはアレですかね、虐めの証拠と」

 「それは軽率な発言だ」と観岸が言うも、間嶋は返答を返さなかった。さらに前後の机も同じように手を突っ込んでは、物を取り出していく。
 東は怪訝な顔をした。

「それで、刑事さんは何をしているんですかね」
「何か残されていないかと思いましてね。遺書とか、木条君の書き置きとか」
「なるほど……」

 東はそれ以上、何も突っ込まなかった。下手に口を挟むのはやめたほうがいいと判断したのだろう。
 前後左右、机の中を捜索した間嶋は、ため息をつきながら肩を落とした。

「やれやれ、何も無しかぁ……」
「それで、あれから何か分かったんですか」

 少し、観岸は嫌みっぽくそう言った。それに少し反応を見せるように、間嶋はゆっくりと観岸の方を向く。

「観岸先生、もうこれは単なる自殺なんかじゃないでしょうねぇ。やはりいろいろな職員の方に聞いたところ、木条君への虐めらしき行為は、ありそうですよ。虐めを軽視してはダメですからね。その内容に、違法行為があればもう犯罪ですから。……私はね、未成年の行為だとしても、決して許してはいけないと思っているのですよ。ひとりひとりの子どもを守るには、いけない子には対応しなければ」

 それは観岸も同じではあったが……間嶋の言う言葉には、別の意味が含まれているような気がした。悪いことはきちんと指導しなければならないが、間嶋はつまり、成人と同じように扱うべきと主張しているのだろうか。
 木条の机から取り出したノートの一冊を手にとり、毎ページをゆっくり開きながら間嶋は言葉を続けた。

「今後も先生方に協力をしてもらって、生徒からも情報を集めますが……もし、とてつもない非道な行動が出てきたら、どうします?」
「どうする、と? いや、生徒同士のトラブルであったとしたら、やはり両者を気に掛けるのが教師の役割であり、平等な視線で見るべき——」

 そう言うと同時に、間嶋は手に持ってぱらぱらとめくっていたノートの一冊を、激しく机へとたたきつけていた。あっけにとられる三人に対して、間嶋はノートを指差すように向けて見せた。

「観岸先生……何度も言いますが、生徒が実際に……死んでいるんですよぉ?」
「それはそうだが……」

 木条は死んだ。それは事実で、重く受け止めるべき内容だ。だが観岸は、教師だ。教師は生徒を平等に見なければならないと思っている。仮に木条を虐めていた子がいたとしても、彼らにもきちんと正面から向き合わなければ……。
 人間としてはどうなのだ? 自殺の原因に誰かが関わっているとしたら、その彼らを人間としてどう思う? 当然、観岸は蔑み批難するだろう。だがそれは生徒に行うべきことか。それは大人としての対応ではない。
 聖職者としての立場は非常に難しい。これから観岸も、どういう対応をしていくか、考えなければならないのだろう……。
 観岸は食ってかかるように返答する。

「私はとにかく、正確な情報を生徒から集め、その後の判断はあなた方や司法に任せます」
「判断から逃げましたねぇ。まあ、それもあなたの立場から言えば正しいかとも思いますが……おっと、そろそろ時間だ。それではまた——」

 間嶋は打って変わって笑顔になり、木条の机の中にあったものすべてを手に持ち、教室の出口へと歩んでいった。扉を出る直前、間嶋は思いついたように振り返る。

「そうだ、ひとつ聞きたいことがありました。……こういうときの責任って、一体誰が取るのでしょうかねぇ? 観岸先生はどう思います?」
「わかりませんよ、そんなこと」
「そうでしょうね、私も分かりません。校長先生が辞職すればそれでいいのか、担任の先生が一生を償うのか、未成年の子どもに罪の重さを教えるのか……。難しいところですねぇ」

 責任……。誰に責任があるのか。教師として生徒を守りきれなかった教師か。責任を取る最も大きな役職である校長か。あるいは、幼心もまだ持ち合わせる生徒達なのか……。
 間嶋は手をひらひらとさせ、扉を出て行った。しばらく足音が消えるまで、耳を澄ませるように動かない観岸達。その中で最初に口を開いたのは西木渡だった。

「あの人、少しおかしい気がします」
「……同感だ。意地でも原因を突き止めてやるというような、そんな異常なほどの意思が見える。しかも、まるで俺たちを敵視しているようだ」
「いや、違う……」
「何が違うんだ、観岸?」

 ——きっと間嶋は、怒っている。こんな事態を引き起こし、止められなかった俺たちに怒っているのだと。厳しい態度を見せる一方で、怒りにも似た感情が垣間見えるのは、きっとそのせいだろう。観岸はそう感じていた
 これからいろいろな人達の怒りが、きっと観岸達に降りかかってくる。投げ出したい、逃げ出したいという気持ちは、常に付きまとっている。だが耐えなければならない。すべてを知るまでは。

Re: 沈黙の後より -after episode- ( No.9 )
日時: 2012/11/16 06:22
名前: 世界 ◆hdwFu0Q9Eg (ID: pUqzJmkp)

 ++

 職員会議——。当然ながら内容は、今回の事についてである。出勤しているすべての職員を含め、笹木校長、尾賀教頭を中心として話は進められている。観岸も笹木校長の話をメモしながら頭の中を整理していた。
 予想はしていたことだが、どことない批判の空気が西木渡の周りには漂っていた。担任だったから仕方ないと言えばそれまで……しかし、こういうときだからこそ団結して解決していこうという様子は、そこにはなかった。それは東にも同様のことが言えて、むしろ彼こそ周りを信用していないようにも見える。
 巻き込まれた……多くの職員はそう思っているだろう。

「——明日は土曜日で休校ですが、木条君のご両親からご連絡を頂き、葬儀は明日に行うとのことです。できる限り顔を見せるよう……」

 明日か。観岸は予定帳を鞄から引っ張り出す。明日の予定にそれを書き込もうとした観岸の手は、その手前で止まった。明日は大事な予定がひとつ入っていた……。だが、葬儀には変えられない。仕方なく、そのメモに二重線を引いた。
 また怒られる、あるいはついに飽きられるかもしれない。そんな考えが頭の中で渦巻き、観岸の気持ちは落ち込んだ。美樹……せっかく長く続いて、しかも教師という役職をよく理解してくれているというのに。こうも何度も約束を破っては、観岸本人ですら呆れるものがある。この状況も大事ではあるが、観岸にとっては私生活もまた重要な場面を迎えていた。
 数十分後。会議が終わった後、観岸は廊下へとひとり出ていた。手には私用の携帯電話。もちろん、掛けなければいけない相手は決まっていた。
 そんな観岸を、職員室から何気なく出てきた東が発見する。おもしろいものを見つけたというように、東は観岸へと近寄った。

「なんだ、携帯を目の前に深刻な顔をして。明日にデートでもあったか?」
「まあ……」
「あ? ……いや、お前に相手が居たとは初耳だ」
「話してなかったか?」
「てっきり俺は、ずっとお独り様を貫くものかと」

 にんまりと笑う東に、観岸は軽く鼻を鳴らした。観岸は私生活のことをあまり他人に話さなかった。他人の生活に比べると、自分の生活がどことなく粗末なものに思えて仕方が無かったからだ。そんな話を他人に聞かせたところで、おもしろくもない。
 それに実際、確かにお独り様を貫く考えがなかったとは言えないのだ。万が一、この公立中学の教師をやっていれば異動の可能性もあるし、どこに飛ばされるか分からない。そうする中、互いの関係を続けていけるかどうか、観岸は不安だった。
 
「それで……デートのキャンセルか?」
「何度目になるか分からないんだ、こっちから断るのが」
「相手は、お前が教師という忙しい役職だって知っているんじゃないのか? ……だったら、きちんとそう言えばいい。それで愛想尽かすような相手なら、そもそも脈なんかねえよ」
「そういうものか」
「家庭を持てば分かる。どんなに俺が忙しくなろうが、家内はそれを待ってくれる。理解してくれるのさ」
「自慢話はいらん」

 これ以上何か言われる前に、と観岸は携帯を手に取って電話を掛けた。東は空気を読むように、観岸に手を振りながら場を離れていった。
 コール音のたびに、心臓が早鳴っていく。

『はい』
「あ……観岸だ。ちょっと話したいことがあって」
『また急用……?』

 また、という言葉が重く観岸へとのし掛かる。出来ればそれを否定して「明日のデートが楽しみだ」と言いたかった。しかしそれは叶わない。この先、それがあるかどうかさえわからない。

「悪い、美樹……。どうしても外せない用事が出来たんだ。今度また埋め合わせするから」
『海——』
「えっ?」
『海、今年は行きたいな』

 てっきり怒られるかと思っていた観岸はあっけに取られた。いや怒られる方がマシだった。これで終わりにしようと言われたら、この状況で観岸は立ち直れる気がしなかったのだ。

「……お、オッケー。絶対に行こう」
『待ってるよー』

 電話が切れて、しばらく観岸は携帯片手にぼんやりとしていた。
 東に言われた言葉を思い出す。待ってくれる、理解してくれる……そんな人は、美樹以外には考えられなかった。お互いにいい歳になりつつあるし、引き伸ばすのは限界だろう。そろそろ男を決めるしかないか……。こんなときに、いやこんなときだからこそ、そんな考えが観岸にはあった。
 きちんと木条の問題にケリをつけて、そして美樹に会おう。そして……。


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