社会問題小説・評論板
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- 小さく狂った舞踏会
- 日時: 2015/01/31 23:41
- 名前: ika (ID: 9RGzBqtH)
[登場人物]
海南 鳴 (かいな めい)
いじめられっ子。
黒髪を横でまとめている。
地味目な印象の高校生。
多野 結那 (たの ゆいな)
鳴の学校にやってきた転校生。
黒髪のロングヘア。
いつも敬語を使っている。
でも、裏の顔は……
米沢 香奈 (よねさわ かな)
鳴をいじめている。
ダークブラウンの髪のツインテール。
クラスのトップ。
- Re: 小さく狂った舞踏会 ( No.3 )
- 日時: 2015/02/01 11:36
- 名前: ika (ID: EM5V5iBd)
次の日、私は鞄の中にあの口紅を忍ばせていた。
「今日のホームルームは転校生を紹介する」先生の突然の発言に教室がざわつく。
それが収まるのを待って、先生は教室の扉の方に声をかけた。
「多野、入っていいぞ」
「はい」
多野、と呼ばれた彼女は綺麗な黒髪をなびかせ、私達の前に現れた。
「多野 結那です。よろしくお願いします」
結那は丁寧な口調でそう挨拶した。
「多野はとりあえず……あそこに座ってくれ」
先生が指したのは、香奈の隣の席だった。
「よろしくお願いします」
「よろしく〜」
香奈は結那とは対照的に軽い挨拶を交わした。
「それと、しばらく掃除当番の代理は海南にやってもらうことにする」
「えっ……」
そんな、それじゃ……
私が竦み上がっている中、香奈は何時もの憎たらしい薄笑いを浮かべていた。
- Re: 小さく狂った舞踏会 ( No.4 )
- 日時: 2015/02/01 13:34
- 名前: http:// (ID: Ft4.l7ID)
「キャハハッ」
下品な笑い声が教室に響き渡る。
「はい、これ……」
私は例の口紅を香奈に渡した。
「ありがとー、鳴」
そう言いながら彼女は私から口紅を奪い取った。
「それ、新発売した口紅ですよね?」
香奈の隣に座っていた結那が声をかけた。
「そうなの〜、鳴に頼んで買ってきて貰ったんだ」
何を白々しい。
「そうなんですか」
結那は目を輝かせ、香奈に口紅を見せてもらっている。
「ありがとうございます、じゃあ私帰りますね」
そう言って、結那は帰っていった。
「じゃあ、結那掃除しなよ」
香奈はゴミ箱とバケツの水を私に投げつけた。
「じゃあね〜」
「……」
私はモップを持って、黙々と掃除を始めた。
- Re: 小さく狂った舞踏会 ( No.5 )
- 日時: 2015/02/01 15:00
- 名前: ika (ID: xV3zxjLd)
放課後、掃除の時間。
香奈は私にゴミ箱を投げつけた。
「ゴミはゴミらしく一緒に埋もれてなよ」
下品な笑い声が教室に響いた。
最近、私は掃除当番の日に香奈達によくいじめられるようになった。
そのせいで、私の制服は毎日ゴミ塗れだった。
「結那、あんたもやっちゃいなよ」
「……」
結那は放課後、何時も本を読んでいる。
今まで、香奈達のいじめに参加したことはないが私を助けてもくれなかった。
……まあ、当たり前か。
助けたら、どうなるか馬鹿でもわかるもんね。
「ねえ、やっちゃいなよ」
「……わかりました」
結那は香奈からバケツを受け取った。
ああ、またか。
私はそう思いながら、昔いた友達のことを思い出した。
バシャッ
水の音が教室中に響き渡った。
「えっ?」
冷たくない。
私は不思議に思って上を見上げた。
「何やってんの……!」
目の前にはびしょ濡れになった香奈とバケツを持った結那が佇んでいた。
「クククッ……」
ハスキーな笑い声が小さく聞こえた。
これは、香奈でも私でもない。
「何笑ってんのよ!結那」
多野 結那だ。
- Re: 小さく狂った舞踏会 ( No.6 )
- 日時: 2015/02/01 16:35
- 名前: ika (ID: xV3zxjLd)
お腹を抱えて笑う結那と怒りに震える香奈。
私はそれを呆然と見つめていた。
「いつまで笑ってんのよ!」
香奈はびしょ濡れになった髪を振り乱し結那に迫った。
「……あー、ごめんごめん。あんまり単純だからさ」
結那は何時もの丁寧な言葉遣いからは想像出来ない乱暴なしゃべり方で返事を返した。
「何訳わかんないこと言ってるの!?」
香奈は更に髪を振り乱した。
「だって、『いじめ』って最も巧妙に相手を支配するもんだろ?」
「は?だから何言って……」
香奈が喋り終わる前に、結那は自分の席に座り込んだ。
「例えば……」
結那は自分の右足の上履きを脱ぐと、手に持っていた”何か”で、その上履きに文字を書き始めた。
「こうする、とか?」
結那はその上履きを私達の方に見せてきた。
そして、そこには大きく『死ね』の文字が書かれていた。
「それって……まさか」
私は驚きのあまり大声を出てしまった。
それは……私が香奈にあげた口紅だったのだ。
「これ、誰の口紅だと思う?」
結那はクスクス笑いながら、香奈に問うた。
香奈はそれには答えることなく、自分の鞄をあさった。
「ない……!」
結那はその台詞を聞いた後、満足そうに席を立つ。
「人に貰ったものは大切にしなよ?」
そう言って、指で上履きの文字をなぞった。
「これを先生に見せたら、どうなると思う?」
「どうなるっていうのよ!」
結那は馬鹿にしたように香奈を見ると、淡々と語り出した。
「やっぱりアンタ馬鹿だな、こんな高い口紅、貴女意外にそうそう持っている訳ないと思わないか?」
そう結那が言うと、突然香奈の顔が凍りついた。
「見せた瞬間、アンタが私をいじめたって思うだろうね」
結那は唇の端を歪ませて、香奈を嘲笑した。
- Re: 小さく狂った舞踏会 ( No.7 )
- 日時: 2015/02/01 16:58
- 名前: ika (ID: xV3zxjLd)
「何、考えてんのよっ!」
香奈は強がって声を張り上げているが、明らかに声が震えている。
「結那、アンタだってこの遊びが好きなんでしょ?なら、一緒に鳴をいじめればいいじゃん」
香奈は必死に私を指差して、そう結那に言った。
急に指さされた私は怯んだ。
「ククッ、私がやりたいのはそんな単純なお遊戯じゃない」
そう言って、結那は私の手をとり立ち上がらせる。
「最も巧妙で、狂ったゲームなんだよ」
結那は狂喜の表現を浮かべた。
「ルール自体は今までと同じ、ただ違うのは……」
深呼吸をするように、間を取って結那は言った。
「これからやるゲームは、どっちが相手を支配するかの精神の勝負。勝ったものは支配者になり、負けたものは下僕に成り下がる」
香奈は青ざめたまま結那の言葉に聞き入っている。」
「さあ、ゲームを始めようぜ?」
「……」
結那はそう言うと荷物を纏めて教室を出て行く。
「ああ、あと参加してくんないなら”これ”先生に見せるから」
結那は笑いながら上履きを履き直した。
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