社会問題小説・評論板

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白と黒の世界
日時: 2016/07/06 19:48
名前: 藍 (ID: LIwDSqUz)

私の世界に、色はない。

Re: 白と黒の世界 ( No.7 )
日時: 2016/08/29 09:36
名前: 藍 (ID: RwjcxD6e)

真琴と一緒にいると、寂しさを紛らわせられる。
私は一人じゃないと、思わせてくれる。 
どんな悩みも相談してきた。
絶望の淵に立たされた時も、孤独で世界が真っ黒に見えた時も。
恋愛の相談もしたりした。
真琴は、それを頷きながら聞いてくれた。
少しも、私を否定する事なく。
だから、真琴が何を考えているのか、時々、わからなくなる。
本当に、私と仲良くしたいと思ってる?
真琴にとって、私は必要?
どんな存在?友達?親友?
それとも………情け?
本音が見えない気がして、不安になる。 
と、同時に、いつ真琴が私の元から離れて行ってもいいように、心構えしている自分もいる。
どっちが本当の自分だろう…?
答えは、いくら考えても、出す事ができない。
そんな事を考えながらお弁当を食べているから、無言になってしまう。
それでも、私に合わせてくれている真琴に、今は、心底、感謝している。
感謝と同時に、不思議な気分になる。
私は、孤独なはずだ。
幸せでなど、ないはずだ。
それなのに、今、友達と一緒にいて、お弁当を二人で食べている。
何を話したところで、誰かに言ってしまうだろうか、美晴がこんな事を、話していたよ、と。
二人だけの秘密ね、と言って話した、彼氏の事や、クラスメイトの事、先生の事。
でも、一人では抱えきれなくて、どうしても話をしてしまう。
どこで、誰に、何を言われているのかも、わからないのに…。
信用しているのか、疑っているのか。
孤独を望むのか、そうではないのか。
依存するくせに、信じてはいない。
信じたら、お終いだと思う自分がいて、恐ろしくなる。
自分で自分が、まるでわからない。
こんな自分は、大嫌いだ。

お昼休みが終わり、自分の席に着き、教科書を開く。
真琴とは、放課後に遊ぶ約束をしている。
私が、早く家に帰りたくないから、いつも付き合ってくれる。
今日は、大通り辺りで、ウインドウショッピングしながら、アイスでも食べようか。
私がいつも行く場所を決めるから、たまには真琴に聞いてみようか。
私は、わけのわからない外国語を聞いているような気分になるこの授業が、一刻でも早く、終わるように、願っていた。

Re: 白と黒の世界 ( No.8 )
日時: 2016/08/30 09:27
名前: 藍 (ID: lEZDMB7y)

真琴と楽しく放課後を過ごした後、私は、帰りたくない家に帰らねばならなかった。
「ただいま…」
玄関を開け、居間に入ると、いつもの嫌な空気が漂う。
母が、一言「ご飯にするから、着替えなさい」
とだけ、私に告げる。
私の方も、振り返らずに。
いつもの事だと、溜息混じりに自室に入る。
家の中は、いつも殺伐としていた。

Re: 白と黒の世界 ( No.9 )
日時: 2016/09/10 14:56
名前: 藍 (ID: nPUiXc5e)

この家に、私の居場所はない気がした。
父も母も、会話をしない。
必要最低限の会話、それしかない家。
私の事なんて、眼中にないみたいに、無視される事もしばしばだった。
私が生きてさえいれば、生存確認ができれば、親はそれで満足なのだ。
私は夕食の後、勉強などする気にもなれず、携帯をいじる。
LINEで真琴とやりとりをしていると、次の日曜日に急に遊びに行く話になった。
特に予定もないし…。
私は、すぐさま了解した。
その時に、私の人生を変える、私の生き方を変える、また、私という人間を深く知るはめになる、出会いがあろうとは、この時は想像すらしていなかった。


翌日は、私は病院に行く日だった。
病院の日の心境は、いつも複雑だ。
なぜなら、私が通うのは、心療内科だからだ。
昨年、不眠と離脱症状を訴えると、母にすぐに心療内科に連行された。
私はどこかおかしい、親の思い通りの子ではないから。
母は、異常な程、私に執着していた…その頃は。
きっと、周りにとやかく問いただされるのが嫌だったのだろう。
父もそうだ。
私の症状や、病院通いをひた隠しにしようとしていた。
表向きは、私を心配している。
でも、腹の底では、なんで自分の娘が?という疑問と、精神病への偏見による軽蔑が見え見えだった。
だから私は、次からは一人で通うと、親と一緒に病院に行くのをやめた。
その方が、親にとっても良いはずだった。
放課後、電車に乗り、クリニックへ行く。
そこでは、軽いカウンセリングと、薬の処方しか行われない。
診断は、傾鬱、だった。
主に不眠、不安感、動悸、などが症状のようだが、それの根本にまだ何かの原因がある…と、一般的には言われているらしい。
悪夢をよく見る、と話すと、それも症状の一種だと言われた。
カウンセリングをしていても、自分の中にはどこか違和感があった。
それは、どんなに治療をしても、診察をしても、薬を飲んでも、未だに拭いされてはいない。
この、違和感は何だろう…。
私の、今見えている、この世界は、歪んで見える。
色が、ついていないように見える。
それは、傾鬱では、片付けられないような、気がした。
もっと、何かある…
もっと、私の深くには、何かが潜んでいる。
ただそれが、今は、何かはわからない。
私はそれが知りたいのに…
この心療内科では、それを教えてはくれない。
「最近、眠れてますか?」
「薬は、ちゃんと、飲んでいますか?」
それだけ、いつもの決まり文句だけ、告げられる。
そして、決まった薬を、処方されて、終わるのだ。
それでは、何も解決はしない。
何の疑問も、ぬぐい去れない。
でも、それしか、今は、できない。
何もできは、しない。
自分の中のこの違和感も、突然消えたくなる症状も、誰か別の人間が私を支配している感覚も…。

こんな風に、何の意味もなさないから、私は、自分がどんどん嫌いになっていく。

この世に、私を理解してくれる人など、いるはずがない。
そう、錯覚する。
そう、思い込んでしまう。

だから私は、

死にたいと、思ってしまうのだ。

Re: 白と黒の世界 ( No.10 )
日時: 2016/10/11 06:21
名前: 藍 (ID: H/CWJliZ)

死にたいと思うと同時に、死への恐怖が襲ってくる。
死んでしまったら、私、という人間は、魂は、どこへ消えるのだろう?
遠い世界に、行ってしまうのだろうか?
その、遠い世界とは、一体どこなのだろうか…?
誰か、私を思い出す人はいるのだろうか。
誰か、泣いてくれる人はいるのだろうか。
私の存在価値とは、一体、何なのだろう…?
人は、いつかは死んで、消えて無くなってしまう。
それなのに、生きている時間はそれ程長くないのに、何故、幸せになりたいと願うのだろう…?
人間とは、愚かな生き物だ。
死んでしまえば、自分という人間も、築き上げてきたものも、全て一瞬で、消え去ってしまうのに。


それでも、愛が欲しくて、誰かと一緒に幸せを分かち合いたくて、それを、愚かにも望んでしまう自分がいる。
自分で自分がわからないくせに、流されてばかりの人生なくせに、自分の意見、考え、人間性に自信がまるで持てないくせに…
その心のギャップを、埋めようとして、自分を傷つけようとするくせに。
こんな自分を、愛して欲しいと、願ってしまう、自分がいる。


一人の部屋で、そっと腕まくりをしてみる。
手首から二の腕にかけての、帯び正しい数の無数の傷は、私がいかに弱くて愚かかを物語っているようだ。
カミソリで、やった。
カミソリの傷は、すごく深くつく。
だから、痕になると、消えない。
リストカットというやつだ。
気分が定まらなく、落ち込んだり不安定になったり、生きている事自体が恐怖に思えたり…。
そんな時、傷をつける事で、安心できる自分が、いる。
自分は確かに存在している。
ここに、いるのだ。
流れてくる血を見ると、何故かホッとする。
生温かい。私は、生きている。

自分でも、異常だという事くらいは、わかっている。
だから、精神科に通っているのだ。
処方された薬を飲むと、いくらかは気分が落ち着く。
眠くなるから、余計な事を何も考えなくても済む。
それが楽で…、私は、そこに、逃げている。
このままじゃダメだと、気づいていても、
弱い私は、今は、そうする事しか、自分で自分を救う手段を、知らない。











Re: 白と黒の世界 ( No.11 )
日時: 2016/10/15 00:34
名前: 藍 (ID: wtNNRlal)

第二章〜出会い〜

果たして、約束の日曜日になった。
私は、親には真琴と遊びに行くとだけ告げた。
実際、どこに行くかも、何をするかも、告げられてはいなかったからだ。
待ち合わせは大通駅前午前10時、とだけ告げられていた。
てっきり、ショッピングに付き合うか、カラオケにでも行く流れかと想像していた。
が、いざ待ち合わせ場所に行ってみると、知らない男の人が二人程、書店の前をうろうろしていた。
私は真琴を探してキョロキョロしたが、それらしい人物はいない。
不意に携帯が鳴り、私はLineが来た事に気づく。
案の上、真琴からだった。
「ごめん、ちょっと遅くなるね。ちょっとだけ待ってて」
やはりな、と私は思った。
真琴は、時間通りに姿を現した事は殆どない。
必ず、少し遅れてくるのだ。
溜息をひとつつき、暇つぶしに目の前の書店に入ろうとすると、先ほどの男性二人も、挙動不審に辺りを見回していた。
私はなんだか気まずくなり、そのまま書店には入らず、近くで待つ事にした。

程なくして、真琴が姿を現した。
「ごめん!美晴、かなり待った?」
息を切らした真琴が私に謝罪する。
「ううん、私もさっき来たとこだから」
咄嗟に取り繕うのは、私の得意とする分野だった。
10分程待ったが、それはご愛嬌だ。
顔の前で手を合わせ、申し訳なさそうに謝る真琴を見ていると、怒ったり咎めたりする気にはなれない。
と、真琴はおもむろに携帯を取り出した。
誰かに連絡する気だろうか。
黙って不思議そうにその様を見ていると、彼女が電話を誰かにかけだした。
「ごめーん、今着いたんだ。どこにいる?」
私はびっくりしてしまった。
真琴と二人で出かけるのではなかったのか?


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