社会問題小説・評論板
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- 譲り合い
- 日時: 2016/07/30 12:49
- 名前: タラ (ID: l8Wvg9Qa)
ここは私立桜園女学院。屈指のお嬢様達が通う名門校。
そして私は本郷愛奈。この学園の頂点。最早この学園は私のお城。
一般人より少しお金持ちなこの学園の生徒も、私から言わせればまだまだ庶民。本来ならばこの学園に相応しくない存在だ。
それでも私はみんなと仲良くしてあげている。馬鹿な愚民共と日々対等に接している。
私のすること1つ1つに、間違いなんてないんだから。
- Re: 譲り合い ( No.5 )
- 日時: 2016/07/30 17:05
- 名前: タラ (ID: l8Wvg9Qa)
校庭に出ると、体育教師が名簿を持って走る生徒をチェックしていた。
「え、まさか走るの?この寒い日に…」
あからさまに暗い表情になる瑠亜。
「しかもチェックされているし…チャイムももう鳴っているからこれは遅刻ね」
静香もネチネチと愚痴を溢した。
そんな心配、いらないのに。
「貴方達遅いわよ…ってあぁっ本郷さん。ごきげんよう」
体育教師は私を見るなり鬼のように吊り上がっていた目を和らげた。
「ごきげんよう」
私は軽く挨拶して教師の前を通り過ぎる。慌てて静香と瑠亜がついてくる。
「愛奈様、本当にすごいですね」
「憧れます〜」
みんなは憧れるかもしれないけれど、はっきり言ってこれは普通。なんの快感も得られないただの日常。
「これくらい普通よ。さあ走りましょう」
親の権力なんて、私の権力じゃないもの。
- Re: 譲り合い ( No.6 )
- 日時: 2016/07/30 17:15
- 名前: タラ (ID: l8Wvg9Qa)
しばらく走っていると、ポニーテールの少女が前を走っていた。
「愛奈様、あれ…」
そう。西條綾。
相手はこちらに気付く気配もなく、黙々と足を進めている。
体育教師の方を見やると、用具を取りに倉庫の方向に歩いていた。
校庭から体育倉庫までは結構距離がある。きっと10分後くらいに戻ってくるだろう。
─少し遊んで差し上げようかしら。
私はスピードを上げ、西條綾の背後に回る。そして─横から足を思い切り蹴る。
あたった。見事にくるぶしに蹴りが入った。
「きゃっ…!!!」
西條綾は悲鳴をあげ転んだ。後ろで静香の特徴的な笑い声が聞こえる。
起き上がろうとする西條綾を突き飛ばした。
「!!!」
私の顔を見た西條は、驚愕と恐怖に満ちた眼差しを向ける。
ああ、楽しい。
「…ごきげんよう、西條さん」
「……ご、ごきげんよう」
「貴方、スポーツはお好き?」
「えっ?え、ええ、まあ、はい……」
「そう」
私は静香と瑠亜に目で合図を送った。
しばらくして、瑠亜がサッカーボールとバットを持ってくる。
「なら、一緒にスポーツしましょうか」
私は瑠亜からバットを受け取り、西條目がけて振り下ろした。
- Re: 譲り合い ( No.7 )
- 日時: 2016/07/30 17:30
- 名前: タラ (ID: l8Wvg9Qa)
「きゃああああっ!!!!」
西條は咄嗟に顔をガードした。バットが西條の背中にあたる。
「何避けているのよ、楽しくないじゃない」
「そうよ。屑の分際で回避だなんて」
静香が西條を抑え込む。私はすかさず西條の腹をバットで殴った。
「かはっ」
倒れ込んだ西條の顔を瑠亜が踏みつぶす。
「私ね、サッカーが好きなの。けれどなかなか初心者で、上手くボールが蹴れないのよ。だから、動かないものを蹴って練習したいの」
瑠亜は暗い笑みを浮かべ、西條を蹴りつけた。
「サッカーなんて楽しそうね。皆さんも如何?」
私がこちらを見ていた愚民に声をかけると、一斉に西條を痛めつけ始めた。
「サッカーって、ゴールにボールを蹴り込むスポーツじゃない?」
静香が言った。
愚民たちは西條を引っ張ったり蹴ったりしながらゴールの近くまで運び、
「せーのっ!!」
揃って西條を蹴った。
「あははははっ無様ー」
「面白ーい」
「もうボロボロじゃない、あの子」
中には西條をゴールのネットに絡め付けたりする者もいた。
みんな低レベル。もっと素敵なことはできないの?
私は過呼吸の西條に歩み寄り、その開いた口に校庭の砂を流し込んだ。
「!!?!?!!?」
「あははっちょっと汚い、吐き出さないで」
「きったないー」
ああ、本当に面白い。
いいお友達になってくださること、間違いなしだわ。
- Re: 譲り合い ( No.8 )
- 日時: 2016/07/31 10:58
- 名前: タラ (ID: l8Wvg9Qa)
気怠い午前の授業が終わり、昼食が終わり、掃除の時間となった。
はっきり言って掃除はとても面倒くさい。この学園独特の掃除の仕方というものがあって、それがなんとも中途半端で下らない。
私は1人、教室を出た。
「──いた」
3組の教室に西條綾はいなかった為、私は廊下を歩き回っていた。
サボっているのか、あいつは。と思った矢先、トイレに消えていく西條綾を発見した。
きっと、3組にいても嫌がらせされるだけだから逃げてきたのだろう。トイレ掃除は事務員の人が放課後にやることになっているし、ここなら誰も来ないと思ったのだろう。
私はここまで考えてクスッと笑い、トイレに入った。
たった1つ、閉まっている個室の扉の前に立つ。
「───西條綾さん?」
ガタンッと物音がして、ひどく動揺する様子が見られた。
「えっなっ……あいな…さま、…どうして」
「掃除サボるなんて駄目じゃない?出てきて」
私が促すと、西條綾はすぐに出てきた。全身を震わせながら。
「掃除サボるなんて酷いわね。3組の皆さんかわいそう」
「だっ……それ、は」
「言い訳なんて聞いてないわ。早くここを掃除して」
「……え?」
私は冷たく言い放った。
「ここを掃除して。もちろん器具なんて使っちゃ駄目。自分の体でここを綺麗にしなさい」
- Re: 譲り合い ( No.9 )
- 日時: 2016/07/31 11:05
- 名前: タラ (ID: l8Wvg9Qa)
「えっ……そんなどうやって……??」
「指示が通らないとなにもできないの??呆れたわ。床を舐めなさいって言っているのよ」
「えっ……!!?」
「あーもう焦れったい。ほら、舐めなさいって!!」
私が怒鳴ると、西條は恐る恐る床に舌をつけた。
「そんなんじゃ綺麗になんてできないでしょう???」
私は西條の頭を踏みつけた。
小さく嗚咽が聞こえる。
「涙で綺麗にしようだなんて思わないでくださる?この屑」
私は近くにあった汚い水が入ったバケツを西條にぶちまけた。
「私はもう行くけど、綺麗にしておくのよ。後でまた見に来るから、サボっていたら……どうなるか分かるわよね」
西條は静かに頷いた。
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