社会問題小説・評論板

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天国と地獄
日時: 2016/09/27 20:32
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

天国と地獄、選べるならばどちらに行きますか?

そんな質問を、昔されたような気がする。今思えばなんて残酷な質問だろうか。

私は迷わず天国を選ぶ。地獄では舌を抜かれるとか、針の山を登ることになるとか、そんなことばかり聞くけれど、そんなのちっとも理由じゃない。


もう、地獄なんてたくさんだ。

Re: 天国と地獄 ( No.3 )
日時: 2016/09/27 21:03
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

「で、でもるり、それじゃ投票の意味が」
確かにそうだ。それは不正に当たる行為であるから、本来なら絶対に許されない。
が。
「えーやだ、沙緖里ちゃん、私に反論するのー?こっわーい。」
冷たい目を向けられ、神原は黙ってしまった。

「とにかく。今後はこういうこともあるから、1軍だからって油断しないで。それから、今日命拾いした本来のターゲットは、私に感謝してね。」
可愛らしくそうほほえむと、スカートを翻し、るりは去っていった。

そして周りの人間の切り替えは早いもので、るりが教室を出た瞬間に神原への暴行が始まった。

「アハハッほんとざまあみろってかんじ。」
「あんたさーるり嫌がってたのに、ずっとこびりついてて気持ち悪いんだよね。」
「なんか無理にスカートとか短くして1軍気取ってさぁ、バッカみたい!」
悪口を言われ、暴力を振るわれ、床にうずくまる神原をみんなは満足そうに見つめていた。

Re: 天国と地獄 ( No.4 )
日時: 2016/09/28 22:19
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

そもそも、何故こんな遊びが始まったのか。それは4月にさかのぼる。

入学して3日、みんな少し友達も出来はじめた頃、突然にあいつは現れた。
「本郷るりです。よろしくお願いします。」
みんなの前でぺこりと頭を下げ、本郷るりは可愛らしく微笑んだ。

本郷るりは小学校卒業を機に東京からここに越してきたらしく、私たち1年A組の生徒とはまるっきり面識がなかった。とりあえず小学校が同じだったからと適当につるんでいた者はすぐにるりの取り巻きとなり、そしてまもなく格差が出来上がったのだ。
大きな瞳、長いまつげ、整った高い鼻、真っ赤な薄い唇。そしてその小柄な容姿は、まさに美少女そのものであった。
そんな本郷るりの本性などつゆ知らず、笑顔でご機嫌をとる取り巻きたち。そして、忘れもしない4月15日に、るりは言った。

「ねえみんな。私、ちょっと楽しいことしたい。」

楽しいこと。それは、るりを満足させること。
取り巻き達はすぐに計画を練り、「奴隷選挙」を立ち上げた。その裏にはもちろんるりがいる。

「わっ、みんな私のために楽しいこと考えてくれたんだ。うれしい。」
明るい本郷るりの笑顔は天使だ。でも、中身は悪魔。そんな醜いサイコパスに、私たちは踊らされることとなった。

Re: 天国と地獄 ( No.5 )
日時: 2016/09/28 22:29
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

帰宅する準備をしている最中も、神原沙緖里への嫌がらせは続く。
「さーおりっ一緒に帰ろ〜??」
るりの取り巻きが、下品な笑いを浮かべながら神原の肩を叩く。
「ひっ……」
「何その態度…?うちら純粋に沙緖里と帰りたいだけなんだけど。」
「わたしたちのことそんな嫌〜?」
「被害妄想もほどほどにして」
神原は胸ぐらを掴まれ、一斉に罵倒され、もう何が何だか分からないような絶望的な顔をしていた。でも、今日はまだ初日。これからもっと、もっと辛い毎日が始まる。

「ねえみんな聞いて」
不意に、るりが声を発する。皆押し黙り、一斉にるりの言葉に耳を傾けた。
「私、こういうのよくないと思って。ほら、クラスって一丸になってこそのものじゃない。だから、どうせならみんなでやれることやろうよ。1軍の子たちだけじゃなくて、私も、みんなも。」
衝撃の言葉に一同が目を見開く。私もビックリしていた。今まで、るりが直接的に人をいたぶることなどあり得なかったからだ。
それほど、神原沙緖里はるりに恨まれていたのだろうか。

Re: 天国と地獄 ( No.6 )
日時: 2016/09/28 22:39
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

「でも、るり、具体的に何するの?みんなできることってあんまりなくない?」
取り巻きの一人が声をかける。
「たくさんあるよ〜……そうね、今日は少し暑いから、プールにでも沈めちゃおっか。」
神原沙緖里は身の危険を察し、すぐに教室を出ようとした。が、るりの取り巻きに押さえつけられる。

「うーん、9月と言ってもやっぱりまだ暖かいし。ちょうどいいんじゃない?神原さん、泳げないそうだし。そのまま沈んで、息できなくなっちゃってもいいかもね!」
いつもと変わらぬ愛くるしい笑顔で、るりは恐ろしいことを口にしていた。


「やだっやめて!!!!!」
「うるさいなぁ〜〜。」
「いいから早く来いっての!!!」
るりが持っていたペット用の首輪とリードに繋がれた神原沙緖里は、勢いよくリードを引っ張られ四つん這いの状態になっていた。
この学校のプールは基本自由に立ち入ることができた。噂では、とある生徒の親が金に物を言わせている、んだとか。
3人がかりで引っ張られ、どんなに抵抗してもずるずると引きずられる神原。目の前にはプールがあった。

「じゃあ、みんなで落としちゃおう。せーので落とすよ〜」
「やだ!!!!やめて!!!!!やだ!!」
「神原さん、制服着たままだからほんとに溺れて死んじゃうかもね。別に私はそれでも構わないけど。頑張って生きてね。じゃあみんな、いくよ。せーのっ」

Re: 天国と地獄 ( No.7 )
日時: 2016/09/28 22:47
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

るりが合図をした瞬間、クラスメート全員が神原を蹴飛ばす。そこで初めて、「一体感」というものを感じた。

強く蹴飛ばされた神原は、勢いよくプールに落ちていった。
取り巻きが必死に顔をあげようとする神原をモップで叩いたり、リードを引っ張ったり。やりたい放題だった。
私は先生が来ないか、というハラハラでいっぱいだったけれど、そのうちその光景にも見慣れ、気付けば神原をいたぶっていた。

必死に水をかき浮き上がろうとしていた神原も、次第に力がなくなっていき、沈んでいこうとしていた。そのギリギリの場面で、るりが神原をプールサイドにあげる。
「神原さん、死んだ?」
るりが声をかけると、ちいさく何かを言った後、すさまじい咳をし始めた。飲んだ水を全て吐き出し、ようやく呼吸が落ち着いたところで、るりは神原を蹴飛ばす。
「プール、気持ちよかった?でも、申し訳ないんだけどもうプールはおしまい。まだやりたいことがたくさんあるの。」
神原の首輪をつかみ、笑った。


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