社会問題小説・評論板

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天国と地獄
日時: 2016/09/27 20:32
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

天国と地獄、選べるならばどちらに行きますか?

そんな質問を、昔されたような気がする。今思えばなんて残酷な質問だろうか。

私は迷わず天国を選ぶ。地獄では舌を抜かれるとか、針の山を登ることになるとか、そんなことばかり聞くけれど、そんなのちっとも理由じゃない。


もう、地獄なんてたくさんだ。

Re: 天国と地獄 ( No.1 )
日時: 2016/09/27 20:43
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

「おはよう、るりー!」
今日も、あいつの名前が聞こえる。
「おはよう。」
「ねえねえ!!今日水曜日だよ!!」「あー!そうじゃん。」「やだ〜こわーい。」
そんな声が聞こえる。
でも、でも、私にはそんな余裕はないんだ。
──いや、私たちには。

「では、今週も水曜日がやって来ました。これから選挙を始めます。」
私は鮫島ちはる、白羽中学校1年A組のオニモツ的存在。このクラスは非常に格差が激しく、同じ年齢であっても上下関係はすさまじいものだった。
そして、毎週水曜日に行われる「奴隷選挙」。この投票により選ばれた人は、それから1週間、いじめのターゲットとなる。

この遊びを始めたのは本郷るり。見た目は美しく優しそうに見えるが、その笑顔とは裏腹に行うことは残酷。いわゆるサイコパスだ。
比較的クラスの中で地味なポジションの「オニモツ」は「3軍」と呼ばれ、運動も勉強もそこそこ、特に良くも悪くも目立ちはしない者たちは「2軍」、そしてるりの取り巻きや気が強めの人を「1軍」と呼ぶ。

そして、奴隷選挙により「奴隷」に選ばれた者はどの軍にも所属できず、クラスメート全員からの嫌がらせを受けることになる。このカースト制度の頂点に立つ女王こそが、るりだ。

「一人一枚、紙を配布しますので、配られたらすぐに投票をお願いします。」

今日もまた、地獄が始まる。

Re: 天国と地獄 ( No.2 )
日時: 2016/09/27 20:57
名前: ゆり (ID: l8Wvg9Qa)

配られた投票用紙には、自分の名前を記す項目、そして奴隷にしたい人間の名前を書くスペースがもうけられている。特に誰を指名してはいけない、といったようなことはないが、本郷るりの名前だけは書いてはいけない。そしてその流れからして、自然とるりの取り巻きはターゲットから外れ、私たち3軍が狙われることとなる。

「みんな書けましたか〜。では、投票用紙を回収します。一人ずつ前に持ってきてください。」
るりが合図をし、全員が投票用紙を箱におさめる。私は特別誰かをいじめたいわけではなかったが、同じ3軍で移動教室の時などは一緒に過ごしている水原咲良の名前を記入した。
というのも、咲良は少し自分勝手なところがあり、そのせいで3軍まで堕とされてしまったのだ。それは私といる時も一緒で、単刀直入に言えばウザい。あわよくばターゲットに…それくらいの気持ちだった。

その日の昼休み、選挙の結果は発表された。
「はーい、今朝は投票ありがとうございました。選挙の結果により、今週の奴隷は」
3軍が息を呑む。

「───神原さんです。」

………え?

クラスが静まり返る。
るりに名前を呼ばれた神原沙緖里は顔を真っ青にし、
「る、るり??え、うそでしょ……?だって私…」と口をパクパクさせている。
それもそうだ。というのも、神原沙緖里はるりの取り巻き─というより媚びを売って1軍に上がってきたような者だったからだ。るりも普通に接していたし、何故、神原が。

「選挙の結果では、神原さんに入ったのはたった2票。」
るりは続ける。
「でもねぇ、ほら、いつも3軍の子ばかりじゃつまらないでしょ?たまには1軍とか2軍にも手出そうよってことで、私が今一番気に入らない1軍の人間を堕としたってこと。
なんせ神原さん、私に無理やり近付いてきて、お友達になることを強要したのよ?そんなことして1軍に来たって、根の価値は変わらないのに〜。」

クスクスと、嘲るようにるりは笑っていた。


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