社会問題小説・評論板
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- 最期の言葉
- 日時: 2017/03/19 12:10
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
あの子が最期に言った言葉を、私は忘れない。
- Re: 最期の言葉 ( No.6 )
- 日時: 2017/03/19 13:07
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
いつの間にか、堀川へのいじめを楽しんでいた。
とにかく私物を漁って、原形がわからないくらいに破壊する。そしてみんなで笑い合う、特別な楽しみがあった。
そこに、堀川がやってきた。
自分の持ち物という持ち物を破壊されたことに気付き、慌てて取り返そうと手を伸ばしてきた堀川を朱梨が蹴る。
「触らないでよ、汚いのがうつっちゃう」
私は切り刻んだ体育着や破壊されたペンを手にし、
「あなたどうせ勉強しないでしょ?だから壊しておいてあげたわ」
と投げつけた。
「感謝しなさいよね、堀川。さ、みんないきましょ」
愛子の合図で、私たちは一斉に去っていく。去り際に、堀川のくるぶしを強く蹴って、愛子の元へ走って行った。
- Re: 最期の言葉 ( No.7 )
- 日時: 2017/03/19 23:59
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
家に帰るまでも、ずっと堀川を罵り続けて、いじめて、嫌がらせをして。
堀川をいじめると気持ちがすっとする。最低かもしれないけど、このまま主犯グループとしていじめていよう。
そう心の中で笑いながら、校門の前まで辿り着く。そして大きな黒い車が前に止まり、そのドアが開かれる。
「お帰りなさいませお嬢様」
「木下さん。いつもありがとうございます」
「とんでもございません、どうぞお乗りください」
外面だけは恐ろしく良い私の言葉に、長い付き合いの運転手木下は優しげな笑みを浮かべた。
一礼して車に乗り込み、清楚な座り方で過ぎゆく街並みを見つめる。
私はお嬢様だからって威張ったりはしない。いくらお父様が雇った人間といえど、大人は大人だ。失礼のないように、使用人やその他大勢の人間にはきちんとした態度で接する。そうすることで私の株は上がるのだ。
「お嬢様、到着致しました」
いつものように、美しい私の家に帰ってきた。
「ありがとうございました木下さん。また明日もよろしくお願い致します」
「お嬢様、そんなに謙虚にならないでください。お嬢様のためならば私はいつでも運転します。では、お気を付けて」
ありがとう、と笑い、くるりと振り返って歩き始める。美しい庭園を通り過ぎ、少し重たい扉を開く。
- Re: 最期の言葉 ( No.8 )
- 日時: 2017/03/20 09:15
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
「お帰りなさいませ、お嬢様」
何人もの使用人が頭を下げる。こんな中学生の子供に対して。
仕方ない。これが役目なんだから。
「お鞄お持ちします」
「ごめんなさい。いつもありがとうございます」
「いえいえ、とんでもございません」
一人一人にお礼を言いながら私物を預け、深い礼をしてから自室に向かう。
薄いピンクの扉を開くと、白をベースにした美しい部屋が目に入る。
クローゼットから純白のワンピースを取り出し、制服を脱いで着替える。長い髪の毛をサイドで緩く束ね、大きく伸びをした。
- Re: 最期の言葉 ( No.9 )
- 日時: 2017/03/23 18:19
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
一人でまったりくつろごうと、ベッドに腰をかけた時、小さなノックが聞こえた。
「はぁい」
きっとお母様だろうと察し、だらしない返事をする。予想通り、扉を開けたのはお母様だった。
「陽華?あなたのクラスに、転入生が入ったそうね。お名前はなんとおっしゃるの?」
今更ながら堀川について聞かれたことに少し驚いたが、
「えぇと…堀川水樹、だったかしら」
と確信が持てない名前を口にした。
私の言葉にお母様は頷きながら、コツコツとこちらに歩み寄って心配そうな表情を浮かべた。
「なんでもその堀川さん、ご両親のお仕事が専業主婦と一般企業の社員なんですって。私達とは身分が違いすぎるということが、保護者のお茶会で話題になったのよ」
保護者の間でも、そんなに情報が回っていたのかとびっくりしながら、「ええ、まあ、そうらしいわ」と曖昧な相槌を打った。
「私はね、そういう方と関わることによって、あなたが何か事件に巻き込まれることが一番不安なの」
どちらかというとこっちが面倒事に巻き込んでるんだけどね、と心の中でツッコミを入れ、表情一つ変えずにお母様の話に耳を傾ける。
- Re: 最期の言葉 ( No.10 )
- 日時: 2017/03/23 18:29
- 名前: 悪夢 (ID: l8Wvg9Qa)
「だから陽華、そういった方とはあまり関わらないで。あなたに何かあったら、この家全体の名誉に関わるのよ。自分の立場に合った人間を選びなさい」
「わかってる」
お母様の考えには私も同意だ。
権力も金もない連中と連むより、愛子のような人間と過ごす方が断然いい。
だけど、堀川をいじめることを辞めるつもりはない。
ばれたらばれたで、私と朱梨、そして愛子の権力を使って隠蔽すればいいんだ。
私が堀川をいじめるのには、心の中でそうやって、どこか安心しているからかもしれない。
次の日学校に行くと、廊下を歩いている愛子が目に入る。急いで追いつき、
「愛子、おはよう」
「あら陽華、おはよう」
と挨拶を交わしながら、他愛もない世間話をしていた。
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