BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- ±± 少年たちの恋 ±±【完全オリジナルR‐15】
- 日時: 2014/02/24 17:53
- 名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)
どれほど楽だろう。
あいつの悲しみや苦しみ、痛みを全て俺が変わってあげることができたら、あいつはどれほど楽になるだろう。
一人じゃない。そう言ってあげられるのは俺しかいないのに、あいつはいつも強がっている。なんでそんなに……。
あいつの力になりたい。だから俺はあいつのそばにいたい。———ずっと先まで。
☆☆☆
皆さん初めまして!
新人の希 紀子(nozomi kiko)です。これから頑張りたいと思います。
今までBLは他の掲示板で書いてきたのですが、ここではまだ無くて。アドバイスや注意がありましたら気軽にどうぞ。
駄作、にならないように精一杯キーボードに指を走らせます!どうか温かい目で見守ってください。
作者紹介
名前:希紀子
年齢:15歳
趣味:読書、アニメ鑑賞
特技:暗記
性格:お人好し、シャイ
好きな言葉:清廉潔白
嫌いな教科:社会、数学
皆様に一言:気にいったら応援(コメ)ください。
- Re: プラスマイナスゼロ ( No.7 )
- 日時: 2014/02/22 20:48
- 名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)
第6話 立会人
次の週、純也は昼休みに保健室を訪れた。
対人恐怖症のビビり男子に、形だけでもお礼を言いたかったからだ。
「失礼します」
扉を開いて室内に足を踏み入れる。相変わらずの落ち着くにおい。その先に待っていたのは、椅子に背をもたせかけている増野だった。
それともう一人、顔見知りがいた。
「あれ、沢凪じゃん。どうした?」
「お前こそどうしたんよ、笠平」
「いや〜、運動場でサッカーしてたら転んでよぉ。肘すりむいた」
「プッ、バッカだな」
そう保健室にいたのは別のクラスの友達、笠平 保(カサヒラ タモツ)だった。おおきい眼に、焼けた肌。運動神経は自分と同じくらい抜群だ。
「で、沢凪君はどこか具合悪いの?」
増野が持っていたガーゼを棚にしまいながら訊いた。
「この前の俺を、その……引きずった奴に、お礼言いたくて」
「はあ?何それ。引きずった!?フハハハ!!」
「うっせーよ!」
笠平がけらけらとおなかを抱えて笑う。
別に自分が笑われる理由はないのだが、他人から見れば可笑しいのだろう。———後で覚えてろよ。
「ああ、あの子。今日は休みよ」
「え、でも保健室登校じゃないんですか?」
「だからって、いつも登校してるわけじゃないの。ときどきね。
お礼言いたいならその子の住所教えるから。今日の放課後にでも」
「ちょちょ、ちょ待った!」笠平が話を遮る。「何の話?」
「俺が先週廊下で倒れてたら、そいつ保健室まで俺を引きずって運んでさ」
純也は事の成り行きを全て話した。
保健室に入ってきたときから分かっていたことだが、その男子の姿が見当たらない。笠平みたいなお調子者はいたが。
「どうする?沢凪君」
「はい……いつ来るか分からないなら、行きます」
「じゃあ俺も!」
元気よく挙手した笠平に間髪入れず反対する。
「はあ!?何でそーなんだよ!!」
「今の話聞いてたら、そいつおまえのこと怖がってんじゃねえの?」
「それは……」
「いい考えだわ。同行してちょうだい、笠平君」
「先生まで!」
「はいっ!喜んで」
「喜ぶんじゃねえ!」
ということで、純也は笠平と一緒にその男子の家に行くことになった。増野まで二人で行けというのだから反論できない。
第一、自分はその男子から嫌われているに違いない。変にまた悲鳴でもあげられたら——————
「ところで、そいつの名前なに?何組?てか何年?」
唐突だった。しかし、笠平が質問してみて初めて気づいた。
自分はその男子のことを何も知らない。
「あら、知らない?あなたたちと同じ3年せいのはずなんだけど……」
「マジ!?」
「マジ!?」
言われた瞬間、必死で記憶を引き出す。引き出しまくる。
だが、どうしても思い出せないうえ、男子の顔も忘れてきた。一度しか会ってないような気がしてならない。
「と言っても、2年生の4月から不登校になったんだけど」
「だから名前は!」笠平が急かす。
——————現、3年1組。衛崎 陽(エイサキ ヨウ)君。
増野からもらったメモには、衛崎の住所が書かれていた。
それを見て、今日の放課後にでも笠平と一緒に出向こうと思う。
正直、名前を聞いても衛崎について思い出すことはなかった。それは笠平も同じだ。
とっとと済ませよっ。
その時はまだ、純也の心に何ら変化はなかったのだが。衛崎との2度目の出会いにより、純也はこれから先、大変な壁に当たることになる。
- Re: プラスマイナスゼロ ( No.8 )
- 日時: 2014/02/22 23:39
- 名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)
第7話 初訪問
マンションか……。
増野のメモ通りに来てみて思ったことはそれだった。古くはないだろうが、所々にヒビや黒ずみが見えるピンク色のマンション。横長の3階建てだ。
「なあ、衛崎ってどんな感じ?見た目とか」
「どんなって……。目にかかるくらいの茶髪してる」
「はあ?具体的じゃねーな。ま、いっか。実際に会うんだし」
特徴を聞かれて答えられるのが「髪の色」だけ、か。衛崎 陽の印象は本当に薄かった。
さらに、ベッドの上でずっと毛布をかぶっていたため、外見はほとんど確認が困難だったのだ。
見えたのは、薄茶色の髪———ただそれだけ。
しかし、同じ茶髪でも、翔太のほうが色が濃い。翔太のほうが赤みがかってる感じだ。陽のは色が抜けていた。染めては、無いだろう。
コンクリートでできた階段を上り、部屋の前についた。
チャイムを鳴らす。
「はーい」遠くのほうで聞こえる返事は本人か分からなかった。
ガチャリ———
☆
「あ、あぁ、あの……僕、その、」
保健室とは一切変わりようのないおどおどしさ。
家には、陽の一人だけだという。両親は、共働きだろうか。きれいに小物が飾られたリビングに通された。
「ごご、ご…め、な…さ、い」
「あー、もうそれはいいから」
「で、でも…」
フードをかぶり、ずっと顔をうつ向かせて目を合わせようとしない。それに、肉眼で確認できるほど小刻みに震えている。
陽の恰好は、ジャージにスウェット。色はどちらも黒だ。
「とりあえず、沢凪の話聞こうか。衛崎」
びくっ、と反応する陽。どうやら、苦手意識されてるのは純也だけではないようだ。笠平のチャラさにも怖がるとは。
「俺、今日お前にお礼言いに来たんだよ。
この前はありがと。引きずったって言うのはもう、…気にしてないよ」
「ほら、というわけだ。怖がることないぞー衛崎」
笠平が満面の笑みで声をかける。
ブルブルブルブル———
だが、二人の言葉が通じたかもどうか分からない。陽はずっと震えていた。
その様子を見て純也はとうとう——————キレた。
「てめえ、いい加減にしろよ!!」
「ひぃっ」
おおきく体を跳ねらせたあと、陽はやっと目線を上げて純也の姿をとらえた。顔がやや赤い。
「何が気に入らねえの?そんなリアクションばっかりしやがって!!
俺がそんなに嫌いかよ!!だったら、うぜーって言えよ!そんな回りくどい嫌がらせしなくたって」
「おい、怒鳴るなって」
「せっかく感謝してきたのに。チッ、腹立つ。
対人恐怖症かなんか知んねーけど、わざとだろ?普通にしゃべれよ!!!」
その時、陽と目があった。
同時に、っえ、と純也は驚いた。
——————泣いてる、のか。
陽は目からあふれ出る涙を、口を必死に結んでこらえていた。頬は紅潮している。
まるで親から叱られた幼児のように、陽は涙を流していた。それでも自分と目を合わせようと努力しているのが分かる。今にも嗚咽が聞こえてきそうなほど、陽は苦しそうだった。
「ごめ…、言い過ぎた。帰る」
「え、ちょっと」
純也はそそくさと玄関に向かい、そこを出た。
笠平が何か説得してきているが全て流した。自分は今ここにいるべきじゃない。
———俺は、あいつにとってやっちゃいけないことをした。
華奢で、色白のまるで女子みたいな体つき。
くりくりした目、小さい顔は童顔で、声変わりもまだだった。身長からして翔太と同じくらいの背恰好。
それだけに錯覚していた。
自分は翔太を泣かせてしまったのではないか、と。
「おい、沢凪」
「悪い、あんなつもりじゃなかった。つい、カッ、となって……」
「明日も来ようぜ」
「えっ」
「謝るんだ、今度は。な?」
笠平の、たまに見せるしっかりとしたところほどウザイものはない。
「分かってる。また一緒に来てくれよ」
「もちろんさ!」
- Re: プラスマイナスゼロ ( No.9 )
- 日時: 2014/02/23 00:45
- 名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)
第8話 再挑戦
陽に泣かれた次の日、純也は笠平を連れてまたマンションへ来た。
昨日の失敗を踏まえ、再度陽に心を開いてもらう。
傷心を癒やすと言っては何だが、お詫びのしるしに林檎を二つもってきた。来る途中に八百屋で買ってきたのだ。
部屋の前に来て、チャイムを鳴らす。
「いいか、沢凪」
「あ?」
「絶対に大声を出さないこと」
分かってはいたことだが、笠平に釘を刺されて肩の力が抜けた。同じへマはしないつもりだ。
「にしても、遅え」笠平が愚痴る。
「もしかしていないんじゃ…」と駐車場側に何となく体を向けた時、陽を見つけた。ビニール袋を手に下げ、昨日の服を着ている。
声をかけようとしたら、向こうも気づいた。
が、陽がとった行動は———“逃げる”だった。道路に出て、そのまま遠くに離れていく。
「あいつ……」
「ん、どうした?」
「今さっき駐車場に衛崎がいた。俺、追いかけてくる!」
「なら俺も…」と声をかけようとしたが、純也のダッシュのほうが早かった。
あっという間に廊下を抜けて階段を駆けていく。笠平は取り残された。
「いってらっしゃいな、沢凪」
☆
「おーい!えーいーさきぃー!」
住宅街を過ぎ、公園を横に走り続ける。
純也は成績が悪いが、代わりに運動神経で才能があった。体力テストで校内1位をとったことがある。自分の足には自信を持っている。
また角を曲がり、ついに陽の背中をとらえた。
徐々に距離が縮まって行く。追いつける、そう思ったと同時に何と、陽がこけた。
慌てて純也は駆け寄った。———中3でこけるって恥ずかしいぜ。
「だ、大丈夫?」
言いながら手を差し出そうとしたが、—パンッ—その手を払われた。
背中から陽の気持ちが伝わってくる。近づくな、そういう気持ちが。やはり自分は嫌われていた。
「怪我、とか」
「僕の、……何を知ってる……の」
「昨日のことなら謝る。悪かった」
ダメだ。少し語気が強くなってしまった。これじゃまた怒っているみたいに捉えられる。
「僕……だって、わざとじゃなくて。でも、うまく……喋れな、くて」
また震えている。
声からしても、泣いているのだと分かった。何とかしないと———
「だから、俺が悪かったよ。衛崎、本当にごめん!」
「違うよ!」
今度はこちらが驚いた。いきなり陽の声が大きくなったのだ。
「僕が、悪い。……皆に、僕のせいで…、だから、男の人と、喋れなくて……。
ダメだ、って。けど、ごめん。僕、その、もっと、頑張らなきゃ……」
何を言っているのかほぼ聞き取れなかった。
『男の人』『喋れなくて』『頑張る』今のこの状況と接点が一つもない。対人恐怖症は、極度の上がり症と訊いてたが、それとはやはり違う。
もう一度、手を差し出す。
「はっ、……さ、触らないで!!」
「何でだよ」
「僕が、…悪い、から。もう、嫌だ、よ」
「はあ?」
純也がたじろいでいると、陽はいきなり立ち上がった。
そしてまた走り出す。マンションとは逆の方向だ。それでも、陽は自分を避けるように走り続けている。
追いかけることは、もうしなかった。
「笠平、帰ったかな」
もし、家に帰って自分の仲間がいては嫌だろう。
純也は携帯を取り出し、笠平にマンションを離れるようにとメールを打った。
「反省……するのは俺か」
増野に相談してみよう。きっと陽の反応には何か理由があるはずだ。
自分でも気付かないうちに、陽のことが放っておけなくなっていた。
- Re: プラスマイナスゼロ ( No.10 )
- 日時: 2014/02/23 01:37
- 名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)
<登場人物紹介>
± 沢凪 純也(sawanagi zyunya)
:県立中学校に通う3年生。特技は球技系のスポーツ全般。
家では秀才の兄と比べられ、息苦しさを感じている。その兄に対してはかなりの嫌悪感を持っているが、向こうは純也を好きでいる。
兄の影響かは自分でも分からないが、幼馴染の翔太に恋心を寄せている。保健室に来たことで、陽と出会う。
± 沢凪 香哉(sawanagi kyoya)
:私立央友学園高校に通う2年生。純也の兄。勉強も運動も好成績の秀才。身長も高く、イケメンの完璧人間。
弟の純也に対して異常なほどの愛情を抱える。例え本人に拒絶されても変わらない。
彼女がいるため、ゲイではない。純也の親友、翔太に嫉妬・愛好どちらの感情も持つ。
± 白石 翔太(shiraishi syota)
:純也と同じクラスであり、彼の幼馴染・親友。成績はかなりの上位位置。
茶髪で、よく微笑むのが特徴的。顔はいいほうで、同級生や後輩に人気が高い。性格も悪いとこなし。
常に純也を気遣っており、相談にもよく乗ってあげる存在。翔太自身も純也を信頼しきっている。央友学園志 望。
± 笠平 保(kasahira tamotsu)
:純也、翔太と同じ学年の3年生。運動神経は純也に並んでずば抜けている。肌が焼けて大きい眼の運動少年。
昼休みはいつもサッカーや野球をしており、部活もサッカーをしていた。
気性が荒い純也をよく思い、一緒にいる時間も長い。意外と冷静。
± 増野 あかり(masuno akari)
:純也たちが通う松戸中学校の養護教諭。胸が大きく、スタイルは抜群。24歳。
性格はおしとやかで、校内の生徒からも慕われている。そのせいで保健室が騒がしくなる時もあるので苦労して いる。
衛崎 陽とは前からの知り合い。
± 衛崎 陽(eisaki yo)
:この物語の主人公。今のところ、対人恐怖症しか本人の素性があかされていない。
- Re: ±± 少年たちの恋 ±±【泣き虫少年が犯されるまで】 ( No.11 )
- 日時: 2014/02/23 17:30
- 名前: 希 紀子 (ID: JzVAb9Bh)
第2章 親子
第9話 不登校
「お兄ちゃん、起きて」
その声とともにやさしく揺すられる。いつも通りの朝。
わずかに開いたカーテンから朝陽が光をさす。今日も寒い。
「お兄ちゃんってば。もう、起きてよ」
薄目を開けて、妹の姿を確認する。
「……起きてる」
「だったら顔洗ってご飯食べなよ。私は学校行ってくるから。……今日は行くの?」
妹が遠慮がちにそう訊いてきた。それに答えるように、うんうん、と首を振る。
「じゃあ明日は行きなよ。お姉ちゃんが週に3日は行くように言ってたじゃん」
「…分かってる」
「本当に?」
学校へは行きたくない。たとえ保健室登校でもだ。一生、このまま布団で寝ていたい。
だってあそこは、陽にとって地獄なのだから。学校に限らず、マンションを一歩外に出た場所は全て、地獄なのだから。
妹の海宇(ミウ)、姉のあかりには悪いが、この性格は変えようもない。
——————昨日だって、同じ学年の男子に……。
「じゃあ私もう行くね」
「……いてらっしゃい」
海宇はそのまま部屋を出た。きっと今日も部活で遅くなるんだろう。
玄関のドアが閉まった音を確認して、陽は服を着替え始めた。顔を洗わないとといけない。
☆
午前の授業が終わり、昼休みに入っていた。男子のほとんどは運動場のグランドへ駆け出し、女子のほとんどが廊下でおしゃべりに夢中になる時間。
翔太は、普段なら図書室で過ごす時間を教室で過ごしていた。たまに親友の純也と外で遊んだりする。
だが、来週の私立入試、すなわち翔太にとって本命の入試のために今週は教室で勉強に励んでいる。
その女子がここを訪ねてきたのは、そんな時だった。
「すいませーん、沢凪さんいますかあー?」
サワナギ……。あ、純也のことかな。
どこからともなく耳に入ったその声がしたほうへ顔を上げる。すると、廊下のほうに女子が立っているのが見えた。おそらく彼女だろう。
1年、だよね。純也に何の用かな。
「今いないよー。グランドのほうだと思うけど」
返事をすると、教室をぐるぐると見回していたその子がこちらを向いた。ショートヘアにくりくりした目。同級生ではないはずだ。
「あの、沢凪さんのこと知ってるんですかー?」
「友達だよー。それがどうしたの?」
「いいえ、…グランドですね。ありがとうございました」
そういうなり、どこか別方向に小走りで去って行った。
一体、純也に何の用だったのだろうか。
「ひょっとして、純也、……できたのかな。ついに彼女」
まだそうと決まったわけではないが、何だか胸がそわそわしてきた。
そうでないことを願うが、真相はどうだろう。
翔太は、そこから先の問題が手につかなかった。