BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- 【異常性癖・ヤンデレ】恋の色。【その他BL】
- 日時: 2015/09/22 18:53
- 名前: 偽善者 ◆ZtIxy9nLcA (ID: UcGDDbHP)
はい、異常性癖・ヤンデレ小説スレ第五弾となりました。
前から来て下さっていた方々、誠に有難う御座います。
これからもどうか、宜しく御願い致します。
これが初見という方にも、楽しんで行っていただけたら幸いです。
そんな意味を込めて…
初見の方は、お初にお目にかかります。
既にご存知の方は、また会えて光栄に御座います。
なんて、言ってみたり(笑)
ここからは恒例のほぼコピーとなりますが、御了承下さいませ。
挨拶も程々に申し訳御座いませんが、このスレの説明を。
ここは、スレ主である文才皆無の小鳥遊が異常性癖やヤンデレ、タイトルには御座いませんが、シリアスの要素を少し取り入れたBL小説を淡々と書き綴っていくスレに御座います。
普通のBLや、出来ればほのぼのとしたものにも挑戦してみたいな、と考えております。
オリジナル、二次元、どちらもやっていきますので。
リクエストも受け付けさせていただきます。
タイトルもちょくちょく変わるかもしれませんので、一応御報告しておきます。
堅苦しいとよく言われますが、それは敬語の内のみ。
敬語が抜ければフレンドリーになりますので、是非絡んでいただければ幸いです。
また、少しばかり宣伝させていただきます。
スペースの無駄遣い、御許し下さい。
リク依頼・相談掲示板の方で、
「イラスト描かせていただけませんか…?(´・ω・`)」
というスレで活動させていただいております。
イラストのサンプルは上のURLに。
もう、リクエスト、下さい。←暇しているのです。
これくらいでしょうか…
また何かあれば書き足していくかと思いますので。
では、これより始まりと致します。
御時間に余裕の御座います方は、宜しければ立ち寄り、御付き合い下さいませ。
〜ジャンル別作品一覧〜
【カゲプロ】
クロハ×シンタロー『依存と独占、満たされない欲求』…>>555
セト×シンタロー『もっと近くで…』…>>560
シンタロー×遥『secret…』>>597
シンタロー×遥『いつまでも隣で』>>598
【アニメ】
「Free!」
真琴×遥『番の相手、一生の幸』>>599
【オリジナル】
斎藤 秋(サイトウ シュウ)×明智 樂(アケチ ラク)『写真部の恋』
一話>>620
二話>>621
三話>>622
最終話>>623
作品一覧を見ると小説の更新速度が著しく偏ってるのが分かる…
半分以上を雑談が占めてるな…申し訳御座いません、気を付けます。
- Re: 【異常性癖・ヤンデレ】叶わぬ想い、残酷な物語を此処に記そう。 ( No.597 )
- 日時: 2015/06/08 16:05
- 名前: 偽善者(テルゼ) ◆ZtIxy9nLcA (ID: xSZ4hPRP)
またまたお久しぶりです。
小説ちょっと載せて行きます。
『Secret…』
シンタローside
今日もまた、同じ夢を見た。
その夢の主人公はどうやら俺らしく、天地左右全てが暗闇に包まれた世界で、底知れぬ快楽を与えられながら堕落していく…そんな夢。
起きた後もその余韻だけがやけに生々しく残っていて、身体中に不快な何かが残って堪らなくなり、シャワーを浴びる。
これで少しの気休め程度くらいにはなっていた。
だが学校へ行き授業を受け始めると、夢の所為で寝た気がしなかったので、途端に眠くなる。
これが知らず知らずの内に、何時もの日常になってしまっていた。
「シンタロー君…大丈夫?」
そう心配の声をかけたのは遥。
退屈な学校がようやく終わり、俺の家に二人で来ている。
学校ではなくなると、お互いにタメ口で話す…それが俺達の暗黙のルール。その理由としては、俺達が恋仲であるというだけで充分だろう。
「あぁ…大丈夫だ…
それより、今日は泊まって行くんだろ?」
「ぅ、うん…!シンタロー君、どうせ一人だとまともにご飯食べないでしょ?」
そんな事を言いながら夕食の支度を始める遥に、余計なお世話だ、とふてぶてしく呟いた。
(しかし器用なもんだな…)
先程までエプロンの紐を結んでいたがすぐに料理の工程に移り、トントンと包丁の軽快な音を響かせている。
テキパキと無駄な動きを一切せずに効率良く進めていき、あっという間に一品を作り終えていた。
その後も次第に品数は増えていき、その手際の良さに俺は呆気にとられる事しか出来なかった。
だがそれも当たり前だと思う。今までも泊まる事は何度もあったが、あらかじめ作ったものを持ってきて家で温めて食べていたからだ。
今回は、親がいてキッチンが使えなかったらしい。
遥曰く、母親が料理を作ると張り切っていたんだとか。
「シンタロー君?出来たよー」
ふと遥の声が聞こえた。
自分もご飯くらいはよそおうとして立ち上がると、この頃ずっと眠りが浅かった所為か足下がふらつく。
「ちょッ…大丈夫…!?」
心配するような声と共に、遥が駆け寄って来た。
困ったような表情を見せる相手に、俺は安心させるように告げた。
「問題はねぇよ…少しくらくらしただけだ」
「で、でも…動いちゃ駄目だよ?座ってて大丈夫だから…!」
そう言葉を残し、再び皿を運ぼうとキッチンへと踵を返していった。
程なくして、全ての料理と主食のご飯、汁物、箸と飲み物がテーブルに並ぶ。
生姜焼きとほうれん草のおひたし、豆腐の味噌汁、テーブルの真ん中にはサラダ。
何故こうもバランスが良いんだと、思わず並んだ料理を見つめる。
「…頂きます」
小さく両手を合わせ呟いた俺をニコニコと見つめる遥。
俺は気にしないようにして料理を口に運ぶ。
「…美味い…」
前に一番得意なものは魚料理だと言っていたが、ここまでどれも美味いと得手不得手など関係ないのではないかと感じる。
更に言えば今回は作りたてだ。いつものものとは違い、なんとなく味が新鮮な事にも納得がいく。
遥も時折此方の様子を伺いながら食べ進めている。
その姿に、可愛らしいと思いながら少し微笑む。
「御馳走様でした」
「うん、御粗末様でした」
腹が満たされ、遥は食器を下げに行く。
俺はその間に二人分の風呂用具や下着の準備を済ませた。
その後二人で入り、全ての寝る支度を済ませて寝床についた。
だが、これで安易に寝るような事はしない。
「ぇと…シンタロー…君…?」
俺がいきなり上に乗った事で遥が驚きの声を漏らした。
たが俺はそれでも気にせず、肌に指を這わせる。
「ちょ…ッ…シンタロー君…」
「何だ…?」
「やめてよ…さ、さっきお風呂でも触ったでしょ…?」
そう言う遥の俺を拒む手には、力が入っていない。本当に嫌がっている訳ではないのだ。
遥は優しい
だから俺はその優しさに
少しだけつけ込む
「……でも此処は触ってないだろ…」
そう言って相手の衣服を脱がし、既に昂っているモノに触れる。
押しに弱く、隙だらけの遥。少し強引になれば簡単に堕ちてしまうのだ。
そして本人は無意識だろうが、いつも周りに色気を振り撒いている。
それに誘われ、こっそりと「抱きたい」と言っている奴も少なくない。
「九ノ瀬先輩ってすっげぇ美人だよな…」
「一度で良いから抱いてみてぇ…ッ…」
こんな言葉を耳にする度に
どうしようもなく
腹の底がざわつくのだ。
(………遥を独占する権利持ってんのは俺だけだっての)
柄にもなくそんな事を考えながら、そっと相手のモノを口に含む。
「ッ…!?
ぇ…や、しんたろ、君…ッぁ、ん…!!」
口に含んだまま、いつもやってんだから良い加減慣れろと告げると、びくりと背筋を震わす相手。
その後も舌を使い愛撫を繰り返すと、呆気なく精をほとばしらせた。
「はッ…はぁ、…ッ…汚ないよ…」
「んなの、今更だろ…?」
肩で息をする遥にそう言葉を返し、今度は後ろのすぼまりに指を入れて掻き回す。
すると遥は、小さくなって俺にしがみつきながら甘ったるい嬌声を漏らし、恍惚とした表情を浮かべる。
大体解れた所で俺も服を脱いですぼまりに自身をあてがい、少しずつ挿れていく。
「待っ…シンタロー君…ッ!!」
「あ……?」
「……痛い……ッ」
涙目になりながら告げる相手。
だがそれは、今の俺を余計に興奮させる事にしかならない。
「ねッ…?一回、抜い…ッ……ぅああッ…!!」
抜いて欲しいという遥の言葉に耳を傾けず、一気に奥まで挿れた。
「あー九ノ瀬先輩今日も美人すぎ…!」
「…つーかいつもより一段とエロくね?」
今日もそんな言葉が飛び交う中、俺は一人余裕でいた。
周りの目当てである遥…それがもう周りの手の届かない所にあるのだから、焦る必要などない。
「九ノ瀬先輩を抱きたい気持ちは分かる。同感だ」
「お、シンタロー!やっぱお前もそう思うか?」
「隙だらけだし、案外簡単にオトせそうなんだよなぁ…」
俺が話題に対し声をかけると、相手達は調子に乗った様に話を進め出す。
「まぁな。…だが、手は出さない方が良いぞ?」
「は?なんでだよ」
「……………出したら後悔するから」
そういって自身の首筋を指差し、そのまま踵を返して教室を出ていった。
直前に彼らの頭上にクエスチョンマークが浮かんでいたが、気にせずに遥の所へと戻る。
「あッ…シンタロー君…!帰ろうか!」
俺の姿に気付き、こう告げて笑顔を浮かべる遥の首筋には
くっきりと俺の歯の跡が残っていた
周りの知らない、普段見せる事のない遥は俺のものだ。
唇も、小さく跳ねる肩も、震える腰も、甘い嬌声も、俺を見るその熱っぽい視線も、全てこのままずっと…
(誰にも、絶対に渡さねぇ…)
- Re: 【異常性癖・ヤンデレ】叶わぬ想い、残酷な物語を此処に記そう。 ( No.598 )
- 日時: 2015/06/08 16:08
- 名前: 偽善者(テルゼ) ◆ZtIxy9nLcA (ID: xSZ4hPRP)
二作目
『いつまでも隣で』
シンタローside
欲する事くらいは誰にでも出来る。
ただ、その次をどうするかなどは分かりはしない。
本人の意志と価値観、行動次第だからだ。
だが俺は今、確かにその狭間にいる。つまり悩んでいるのだ。
欲するまま…本能のままに行動するべきなのか
或いは
それを押し殺し、理性を持って行動するべきなのか
「…よし、帰るか遥」
"遥"と呼ばれたその人物は、小さく頷いて歩いて来る。
今日も平凡な学校が終わったのだ。
更に言えば今は夏。何時もより倍も日の出ている時間が長くなって、帰りに何をしようかと考えながら荷物を取りに自分の教室へ戻った頃だった。
「遥ぁー!ちょっとこっち手伝ってくんねー?」
ふと教室から一人の男子生徒の声が。
もう学校祭が近く、なんでもその為ののぼりの製作に困っているらしい。
「シンタロー君、ごめんね?校門で待ってて!」
遥は少し面倒臭そうに溜め息を吐き、苦笑を残してそのまま男子生徒の所へと行ってしまった。
「…で、何すれば良いの?」
「悪ィな、すぐ終わるからさ!」
一方の俺もそんな会話を後に、教室の扉を閉めて踵を返し玄関へと向かう。
引き寄せれば離れて
掴んだと思えば
手元をすり抜ける
遥はそんな奴だ。
あの人との距離は何故か心地良くて
今までズルズルと甘えてしまっていた。
だが
この距離を保てなくなって
この関係が終わる時が来たら
その時は
(…元に、戻るだけだろ?)
そんな事を考えていると、時間は知らぬ間に段々と過ぎていく。
その後も時が過ぎるのを待ち、次に気が付いた時にはすでに一時間が経過していた。
のぼりの方は大分進んでいた。あとは文字を書くだけといった進み具合だ。
これ程の時間があればもう終わっている筈。
遥を迎えに、教室へと向かう。
其処で見たものは
男子生徒が遥の肌を露にし、押し倒している光景だった。
普段は外す事のないメガネも外している。
「遥ッ!!」
名前を呼び、夢中で飛び出した。
早く、早く届くように。
「ッ…シンタロ…君……」
遥も此方に手を伸ばし、助けを求めている。
男子生徒はそれを睨みつけている。
俺は男子生徒を一発殴り、床へと叩きつける。
そして力が抜けたのを見計らって遥の手を取り、他の空き教室へと走った。
「……やっぱ遥は、俺のモンにはなってくれねぇんだな…」
最後に男子生徒のそんな声が聞こえたような気がした。
「…で、なんでこんな事になったんだよ…」
身なりを整え、互いに落ち着いた所で話を切り出す。
遥は少し涙に目を潤ませながら、ぽつぽつと話し始めた。
「のぼり作り終わって、シンタロー君の所に戻ろうとしたんだ…そしたらいきなり…す、好きだとか言われて…」
これまでのいきさつを全て話し終えて、また俯く遥。
俺は強く抱きしめ、ひたすら頭を優しく撫でる。
「…ありがとう」
「あぁ…今度こそ、帰るか」
この後俺の家に泊まると決まり、そのまま帰宅した。
帰宅途中、俺は色々な事を考えた。
何故あんな事をしたのか、結局あいつは何をしたかったのか、…何故よりによって遥だったのか。
考えても考えても分からなかった。
あいつの意図も、気持ちも、欲も、全て。
悶々と頭を悩ませていると、いつの間にか家に着いていた。
やはり考えるという事は、時間を忘れさせてくれるものだ。
俺のすぐ隣で聞こえたお邪魔します、という声と共に、玄関の扉を閉めて靴を脱いだ。
部屋に着くや否や、ベッドへと遥を押し付ける。
「シンタロー…ッ…く、ん…」
そのまま唇を重ね、舌をねじ込む。
くちゅ、と音が響く中、はふはふと肩で息をする相手。
そして服を脱がせ、相手のモノに触れる。
「ぇ、し、シンタロー君、早ッ…い、ん、あぁッ…あッ…!!」
「あんな事があったんだ…加減なんか出来る訳ねぇだろ」
「でも、も、やだぁッ…無理…ッ…」
嫌だ、とか、無理、とか…そんな言葉を発する時は、既に限界が来ている証拠だ。
少しずつ愛撫の手を早めていくと、段々と声が高くなっていく。
そしてやがて俺の手の中に吐き出し、力んでいた遥は一気に力が抜けてくたりと横になった。
「最近してなかったもんな…すげぇ溜まってる」
掌に吐き出されたそれは白く濁っていて、とろとろとした感触も強かった。
だが、そんなものすら愛おしくて堪らない。
「ッ…うるさいよ…」
相変わらず肩で息をしながら告げる相手。
その顔は真っ赤に染まり、シーツを握りしめていた指先も少しピンク色になっていた。
瞳を熱く潤ませ、まるで誘うような視線を送ってくる。
男の中にいても一際目立つ白い肌と、女を思わせるような顔立ち。
俺は遥の全てが好きだ。
「遥…今日は俺が優勢だ
………嫌だって程イかせてやるよ」
そうだ
これで良い
理性と本能、どちらに従うかなど
目に見えていた事だった。
周りの事には馬鹿みたいに察しがきくのに
自分の事となると
あまりにも鈍感で
不器用で
それが"遥[あいつ]"じゃないか
だったら
難しい事など
最初から考える必要はない
離れていくならば
掴めば良い
すり抜けそうになったのなら
抱き寄せれば良い
「遥………ッ…」
こいつを
抱き寄せて
いつまでも隣でずっと繋ぎ止めて
離さなければ良い
- Re: 【異常性癖・ヤンデレ】叶わぬ想い、残酷な物語を此処に記そう。 ( No.599 )
- 日時: 2015/09/22 18:30
- 名前: 偽善者(テルゼ) ◆ZtIxy9nLcA (ID: UcGDDbHP)
三作目。
いやぁオメガバースというものに激ハマりしまして!!
早速free!で書いてみようと!!
あ、オメガバースを知らない方は、是非検索を!!
読み方は…
Ω…オメガ、β…ベータ、α…アルファ
です!!
では、本編に入りますよ!!
今回タイトル無しなので…
あと、文字数過ぎたので二つに分けます!!
タイトルの「幸」は、"サチ"ではなくて"コウ"です!
真琴(α)×遥(Ω)
『番の相手、一生の幸』
遥side
「検査…そろそろ七瀬君も受けておいた方が良いわよ」
全ては保険医のこの言葉から始まった。
これまで検査を一度も受けていなかった俺は、自分の第二の性別を知らない。
仲間と泳いでいられるだけで満足で、そのような事は気にしていなかったからだ。
だが深刻そうな保険医の表情と曇った声色がやけに胸に突き刺さり、事の重大さにやっと気が付いた。
α…それは将来が約束されたと言っても過言ではない、選ばれた存在。生まれた時からエリートのようなものだ。それはすごく希少で、とても誇らしい事。羨む人間だって少なくない。
β…人口の大半を占める性。何もない、至って普通の人。世間ではβ同士の男女の結婚が一般的。
そして最後に、Ω…αよりもさらに希少な性。十代の後半から平均にして三ヶ月毎に必ず発情期が訪れる。この期間に行為をすると男女関係なく妊娠が出来る事から、世間の中では差別対象にもなっている。
俺は一体、この中のどれに該当するのだろうか。
「真琴は、その…性別は何だった」
昼休みになり屋上に来た俺と真琴。昼食を摂る所だ。
もう真琴も流石に鯖に見慣れたのか、何も言わずに自分の弁当を食べている。
結局あの後病院へ行き検査を受けて帰って来た。
それでもやはり、胸のもやもやとした感覚が消える事はなかった。
検査結果は今日の夕方辺りに出るそうだが、不安だけは自分の中にいつまでも留まり続ける。
「俺?αだけど…それがどうかした?」
俺の質問に対し怪訝そうな顔を浮かべて答える真琴。俺はその場で黙り込んでしまった。
「あ!まこちゃんにはるちゃんだ!!何の話してるの?」
急に聴こえた高めの声。その主を探して振り向くと、其処には渚がいた。
多少驚いたが、重い空気がすっと軽くなった気がして少し安心してしまう。
「ちょ、渚君!!…遥先輩も真琴先輩もすみません、毎回…」
怜が困ったように渚を止めようとするが、元気の有り余る本人は満面の笑みを浮かべて真琴に擦り寄る。真琴もまた、それを笑顔で受け入れる。
「性別の話をしてたんだ…あ、渚と怜は?」
「僕達?βだよ!やっぱ普通が一番だよね!!」
「何勝手に僕のまでバラしてるんですか!?」
少し恐怖を感じてしまった。自分が悪いという事は分かっているのに、自分だけが置いていかれているようななんとも言い難い気持ちになる。
「…そういえばまこちゃん、なんか体調悪そうだけど大丈夫?」
「え…?いや、何でもない!!大丈夫だよ!」
渚の言葉を聴いて少し真琴の事も気になったが、それよりも早く学校が終わって欲しい。そんな焦りで頭が埋め尽くされる。そんな中、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あッ…はる!次移動教室だよ、急ごう!!」
不安の積もった騒がしい昼休みが終わり、俺は目前に出された真琴の手を取って屋上を後にした。
学校が終わり、部活の時間になる。
今日は休むと伝え、学校を後に病院へ向かった。
最後に見た皆はとても心配そうに此方を見ていたが、俺はそれを気に出来るような余裕は、今何処にもなかった。
病院に着き、受付を済ませて待合室へと行く。
名前が呼ばれるまでの時間は、長かったような気も短かったような気もする。
自分を診た医師は、精通が済んでいればより確実な結果が出ると言っていた。勿論自分だって高校生だ。それくらいはもう済ませている。
それでも、それをする事に関しての抵抗は、どうしても拭えなかった。
ふと、自分の名前が呼ばれる。診察室へと入り、この間と同じ少し若めの男医師が診断結果の表記された紙を渡す。
それを受け取り目を通すと、俺はその場で固まった。書かれていた内容…思わずそれに目を疑ってしまう。
『先日実施した検査の結果、該当者[七瀬 遥]は[Ω]であると判定されました。』
「なん、で…」
頭が真っ白になり、思考が出来事に着いていかない。今此処に何が書いてあるのかを把握する事でやっとだ。
「Ω性特有の発情期がある事は貴方もご存知ですね?
その発情期には、強いフェロモンが発せられます。それは番の居ないαやβを惹き付ける。そしてそのフェロモンは非常に強力で、理性で抑えが効くものではないんです」
子馴れたように説明を始める医師。
「どんなに仲の良い家族や友人でも、貴方の事を襲いにかかってきます。
ただαの相手を見つけて項を噛まれる事で番になれば、その相手以外にフェロモンが効く事はなくなります。つまり、世間体としてはβと同等になるんです」
もう聴きたくなかった。それでも、医師は口を止めずに声を発し続ける。
αはないとしてもきっとβにはなっているだろう。そんな風に甘く見ていた自分に腹が立って堪らない。
「発情期が何時訪れるか分かりませんので、すぐに抑制剤を処方しますから。その時になったらきちんと飲んで下さい。
でも、完全に匂いが消える訳ではないのでくれぐれも注意はして下さいね」
何故俺がΩなんだ。社会的にも不利。日常的に襲われるような…此方の意思や都合など無視して、勝手にフェロモン振り撒いて好き嫌い関係なしに欲情されるような身体。
「早めに番が見つかると良いですね」
絶望した。
明日から玲に、渚に、…真琴に。どんな顔を合わせろというんだ。
どうやって接すれば良い?どうやって話せば良い?
どうやって触れれば良い?
家に着いても、考える事はそれだった。
学校に行かないと、真琴は絶対に家に来る。だが皆と会うのも嫌だ。
声を殺して涙を溢す。こんなにも辛くて仕方がないのは何故なのだろう。
それでも、どんなに足掻いたって変わらないものは変わらないのだ。
真琴はαで、俺はΩ。
何時か真琴は俺なんかじゃないもっと別の誰かと結婚して、子供も出来て…
そうなった時に俺は、
その景色には絶対に居ないのだろう。
はっとして目を開けると、辺りはもう明るくなっていた。泣き疲れた末に眠ってしまったのだ。
考えに考えを重ねた結果、俺は学校へ行って、暫く部活を休む事にした。真琴は来ても家に入れなければ良い。
ドアや窓を全部閉め、鍵をかける。裏からも入って来ないように、押さえを置いておく。
学校の時間…もうすぐ真琴が来る時間だ。
朝食は摂らずに、家を出た。
「あ、お早うはる!珍しいね…自分から来るなんて」
何時ものように優しい笑顔を見せる真琴。ちくりと胸が痛んだ。
罪悪感と、劣等感、相手への羨望と自分への絶望。全てが混ざり、苦しくて辛い。
「別に…たまにそういう日があっても良いだろ?」
それでも、気丈に振る舞わなければ。心配をかける訳にはいかない。
どうしても真琴にだけは気付かれたくない。
友達で居続ける為にも、俺が我慢するしかないのだ。
そう思ってたのに。
- Re: 【異常性癖・ヤンデレ】叶わぬ想い、残酷な物語を此処に記そう。 ( No.600 )
- 日時: 2015/06/08 16:30
- 名前: 偽善者(テルゼ) ◆ZtIxy9nLcA (ID: xSZ4hPRP)
上の続き。
授業終わりの放課後。妙に足元がおぼつかない。
身体が熱く、脈動が速い。息すらも上手く出来ない。
「…んだ…これ…ッ…」
これが、あの医師の言っていた発情期か。
背筋がぞくぞくとして、息が苦しい。
訪れたのが昨日病院へ行った後だった事が、不幸中の幸いとなった。
そしてこの場所に人は誰も居ない。
俺は安心して廊下の壁に凭れ座り、薬を手に取る。
だが意識が朦朧としてとてもじゃないが飲める状態ではない。
「……るッ…はる!……はる!?」
突如自分の名を呼ぶ声が聴こえ瞼を開けると、其処には真琴が居た。
背中と足にしか何かが触れている感覚がない。俺は、真琴に抱き抱えられていた。
「…は……ッ…まこ、と…」
その相手を呼ぶ声ですらも裏返り、卑猥な声となって俺の口から出てくる。
最悪だ。昨日から何なんだ、本当に。
一番気付かれたくなかった相手に一番最初に気付かれるなんて、俺が今まで必死に考えていた事が全て台無しじゃないか。
「…ッ………」
真琴は辛そうに顔を歪め唇をギリギリと噛み血が滲んで、唇の間から少しだけみえる八重歯を赤く染めていた。
真琴がそのまま俺を抱いて走り、保健室のドアを開ける。
此処にも人は誰も居ないようだ。
「し…暫くしたら戻るからはるは薬飲んで待ってて」
焦りを隠せない様子で俺に告げる相手。
沢山迷惑をかけてしまったのに、何故か嫌そうな様子には見えない。
そのままベッドへと運ばれ、そっと下ろされる。
「ッ…で、も……」
「良いから!!俺ももうもたないッ…はるを傷付けたくないんだよ…!!」
その言葉を残し、一方的に踵を返してドアを開けて乱暴に閉める。
俺は薬を飲み、横になった。
本当に合わせる顔がなくなってしまった。
どうしよう、こんな時にどう対処すれば良いのだろう。
そんな疑問だけが頭を埋め尽くす。
それなのに、先程のようにまた意識が遠のく。
考えなくてはならない事が沢山あるのに、身体が着いてこない。
考えられないのなら、とそのまま身を任せ、枕に顔を埋めて眠りについた。
そして
次に目を覚ました時には、見慣れた天井が眼中に広がっていた。
「…気が付いた?ごめん、鍵勝手に借りて」
身体を起こすと、真琴が横に座って微笑んでいた。
家まで運んでくれたらしく、先程まで横になっていた身体には毛布がかかっていた為、体温は奪われていない。
「はる…Ωだったんだよね…昨日休んだのも、結果聞きに行くんだったんでしょ…?」
「気付いてたのか…」
察しが良く、昔から色々な所に気付く真琴。何時も周りに優しくて、人気者でもあった。
そんな真琴が、俺が隠そうとしている事に気付かない筈はなかったのだ。
全て俺の落ち度でしかなかった。俺が必死になればなる程、真琴の目には不自然に映ってしまう。
そんな簡単な事に、何故今まで気付かなかったのだろうか。
「だって…はる、少し前からすごく甘い香りが…なんというか…ぃ、厭らしい香りがずっとしてた…渚とか玲は気付いてなくても、俺はずっとそれを感じてたから…」
αはβよりもずっと、Ωのフェロモンに敏感らしい。Ω自身が感じてしまう少し前から、αはそれに気付くのだとか。
「今は…匂うか……?」
「…まだ少し残ってるけど、これくらいなら大丈夫」
そう言ってまた笑う真琴の額にはあせが浮かび、顔も赤い。どう見ても大丈夫そうには見えない。なにより爪が食い込んでいるのか、血の滲む握りしめた手がそれを物語っている。
「………痩せ我慢するな…」
俺は起き上がり、真琴の首へと手を回す。
「俺は…気付いたら何時も、真琴の事ばかり考えてた。だから、気を遣わせたくなくて…Ωだって事も気付かれたくなかった…
真琴はその内、俺なんかの全く知らない世界を見て…どんどん俺から離れていく…それが怖かった…」
真琴が目を見開いている。
その表情は、やはり苦しそうだった。
「だから…俺…発情期だからとかじゃなくて…その、本当に真琴が好きみたいなんだ…」
そう言って、接吻をしようとする。
ずっと欲しかった。
発情期なんかよりずっと前から
真琴だけが欲しかった。
「ッ…だ、駄目だよ…止まらなく、なる…」
先程よりも更に顔を赤らめて拒絶の言葉を告げる真琴。
吐息が荒く、目を逸らして困惑したような表情を浮かべている。
「俺は大丈夫だ…何をするのも、真琴となら怖くない…ちゃんと覚悟はあるから…」
薬が切れかけている。真琴もやはりそれを感じている事が分かる。
それでも俺は、目を合わせてぎこちない笑顔を浮かべる。
俺はずっとこうしたかった。
真琴をずっと繋ぎ止めておきたかった。
もう一度真琴と、笑い合いたかった。
「…有難う、はる……ッじゃあ…
……………俺と、番になってくれますか…?」
「あぁ…此方こそ…」
そう言って俺は、項を差し出した。
今なら分かる。
この世界に、たった一人の運命の人。
それは、
今目の前に居る真琴だったのだ。
真琴が好きで
離したくなくて
ずっと傍に居て欲しくて
だから
それが叶うのなら
このΩという性別だって
案外悪くもないのだろう
- Re: 【異常性癖・ヤンデレ】叶わぬ想い、残酷な物語を此処に ( No.601 )
- 日時: 2015/08/11 11:05
- 名前: なゆた (ID: 7BG7SBHA)
はい。テルゼです。
・・・・あげとこ
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