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- 【カゲプロ】「爽快ワンダー」 ——セト
- 日時: 2015/02/28 23:47
- 名前: 鮫 (ID: ont4q9aA)
伝説のメドゥーサ、薊の能力「目を盗む」。
他者の思考を読み取り、盗んでしまう能力は、幼少期から人の顔色を窺って生きてきた瀬戸幸助には、実に最適な能力と言えた。
孤児院においてそんな彼は、同様に能力者である木戸つぼみや鹿野修哉と打ち解けたが、しかし他人の思考を、心を読み取ってしまう。彼は人に対して距離を置き恐怖を感じるようになった。
そんな鬱とした幼少期から幾星霜、彼は能力を制御できるようになり、「目を盗む」は誰に対しても無害な能力になった。
しかし。
盗むだけならば、だが。
「爽快ワンダー」
瀬戸幸助、通称セトは、その日の午後六時から入っていた交通整理のバイトを終えメカクシ団アジトに帰る道中、うっかりバイクと正面衝突してしまった。
普通に考えてうっかりで済む出来事ではないのだが、向こうも走り始めであまりスピードが出ていなかったので、幸い掠り傷程度で済んだのだ。
本当に大丈夫なのかと言い募る運転手に爽やかに対応し、彼はアジトへの道程を急ぐ。
因みに現在時刻は午後十一時。
恐らく誰も起きていないだろうが、一刻も早く身体に溜まった疲労を消化するため、彼は107の扉を目指し、アスファルトを踏み鳴らしながら夜道を急いだ。
- Re: 【カゲプロ】「爽快ワンダー」 ——セト ( No.5 )
- 日時: 2015/03/02 17:59
- 名前: クレープ (ID: ZUyffco7)
鮫さんですね!(そっちの名前です!!)
もちろん,最後まで読ませていただきます!!
捏造,どーんとこいです!
楽しみにしてますね〜
- Re: 【カゲプロ】「爽快ワンダー」 ——セト ( No.6 )
- 日時: 2015/03/02 23:28
- 名前: 鮫 (ID: lm8tIa56)
クレープさん、ありがとうございます。
更新は恐らく夜八時以降が多いと思います。
なるべく間を空けずに更新したいと思っているので今後ともよろしくお願いします。
鮫
- Re: 【カゲプロ】「爽快ワンダー」 ——セト ( No.7 )
- 日時: 2015/03/04 06:40
- 名前: 鮫 (ID: VTrHJ6VV)
懐かしい夢を見た。
嫌な夢と言わないのは、水や川に対してトラウマと呼ばれるものを持っていないからだろう。
多種多様のバイトをこなしているセトにとって、水は切っても切れない存在だ。水が怖いなどと言えば、働ける職場が半減する。メカクシ団は常に赤字、水恐怖症など患っている暇はないのだ。
それでも——時折暗い水底に引きずり込まれる感覚を思い出しては、背筋をぞっとしたものに舐め上げられ、飛び起きることがある。
今朝などは正にそれだった。
——そう言えば……
今朝見た夢には、もう一人出てこなかったか?
白いパーカーのフードを被った、赤い目の少年。
珍しい、とセトは思う。今まで夢で溺れることは幾度もあったが、誰かが出てくることは一度もなかった。
しかもあの少年は、まるで——昔の自分、みたいな。
「……考え過ぎっすかね」
ぐるんと首を回して疑念を取り払い、セトは広間への道を急いだ。
背後に立ち竦む白いパーカーの少年と、その口から漏れ出た吐息のような呟きに気付くこともなく。
「——……お兄ちゃん」
※※※※※
広間に着くと、ソファに珍しい人物が座っていた。
「シンタローさん?」
「……よ、セト」
「おはようございますつなぎさん!」
ご主人より遅いとか末代までの恥ですよー!?と、朝から元気な電脳少女と、彼女が住み着いた端末機のディスプレイにデコピンを喰らわせる、赤いジャージの少年。
メカクシ団団員No.6、7の、エネとシンタローだった。
驚いて備え付けのデジタル時計を確認するも、時刻は午前八時前。
休息を必要としないエネはともかく、ヒキニートで基本家から出てこないシンタローまでもがこんな時間からアジトにいるのは、かなり珍しい。青天の霹靂と言っても良い。
動揺が顔に出ていたのだろう、シンタローは苦笑して、一枚のディスクを持ち上げて見せた。
「今朝早く、キドに頼まれてな。急ぎの仕事で使う情報の編集だとよ。それほど時間がかかるやつでもなかったし……偶には、な」
「それだけじゃないですよねーご主人?」
「ちょっ、馬鹿止めろ!」
「……?」
じゃれ合いを始めた二人にセトが首を傾げていると、エネが高らかに宣言した。
「カノさんが風邪を引いたと聞いて、健気にも看病しに来たんですよご主人はー!」
「ぎゃあああああああ!!」
「え、そうなんすかシンタローさん!?」
あのコミュ障ヒキニートがカノを心配して!?と半分驚き半分感激で聞き返せば、シンタローの目が溝に落ちた鼠のように泳ぐ。それを見てエネは更に笑い転げ、謎の騒々しさに包まれている広間に、台所からキドが顔を出した。
- Re: 【カゲプロ】「爽快ワンダー」 ——セト ( No.8 )
- 日時: 2015/03/04 06:46
- 名前: 鮫 (ID: w9hamx8g)
「朝から煩いぞ、お前達」
「あ、キド! そうっす忘れてた、カノの朝ご飯貰いに来たんすけど」
「お粥だろ?もう作ってあるから、鍋ごと持って行ってお前も食え。今日のバイトは午後からだったか?」
「一時半からっす」
「そうか。今日はマリーも造花作りで部屋に籠もっているらしい。カノのことは伝えてあるから、バイトに行くまでカノについててやってくれないか? 急に仕事が入ってな、出かけなければならなくなったんだ」
「了解っす!」
セトが明るく返事をすると、キドはつっと申し訳なさそうな顔をした。
「……昨日はすまなかったな。看病を全部任せてしまって。お前も疲れていただろうに」
「そんなことないっすよ!カノの調子も大分良くなったし、もう放っといても平気なくらいっす。キドも仕事、頑張って」
「ああ、行ってくる。シンタローもありがとうな。こんな朝早くから」
「あ、ああ」
シンタローからディスクを受け取ったキドが、ぱたぱたと駆けていく。それを見送って、セトは台所からお粥の入った土鍋を持ってきた。
「シンタローさんもどうっすか?キドの特製粥」
「いや、俺は朝飯食ってきたから大丈夫」
シンタローはやんわりと引き下がり、いつの間にか静かになったエネと一緒に、スプーンを探すセトを見つめている。
そしてもの言いたげな視線をセトに向けながら、ぽつりと言った。
「……なあセト」
「はい?」
「お前だけだな」
「え?」
「みんな何かしら能力持ってるけど…キドが消えそうなときとか、カノが欺いてるときに気付いてやれるのは、お前だけだな」
セトは手を止めた。
掴み損ねたスプーンが床に落ち、耳障りな金属音が木霊す。
「……そう……っすか?」
「あ、いや悪い、お前が盗んだと思ってるわけじゃねえよ。ただ、カノが調子悪いのに気付いたの、お前なんだろ? 『目を盗む』も、そういう風に使えないかなって」
お前は嫌ってるみたいだけど、と言うシンタローに、セトはまともな返事を返すことができなかった。
思い返せば、昨晩カノやキドにも同じようなことを言われた気がする。
例えば、キドの能力が暴走して、消えてしまいそうなとき。
例えば、カノが大事なことを抱え込んで、欺いているとき。
「目を盗む」を使えば、その心に気付くことができる。
盗むことは嫌いだ。しかしシンタローの言うように、使いようによっては「目を盗む」も、それほど悪い能力でもないのかもしれない。
「そっか……そうっすよね」
長年嫌ってきたこの赤い目が、誰かの心に気付けるのなら——それは、喜ばしいことなのではないか。
拾ったスプーンを握る手に、力が入る。
「シンタローさん、ありがとうございました!とても勉強になったっす!」
「あ、ああ……それは良かった」
「それじゃあこれで失礼するっす!シンタローさんも頑張ってください!」
セトは土鍋を抱え、軽い足取りで広間から退室していく。その背中を見送り、シンタローは広い部屋の真ん中で、一人呟いた。
「……あれ? 俺ぼっち?」
端末機の中で様子を見ていたエネが、ぶふっと吹き出した。
- Re: 【カゲプロ】「爽快ワンダー」 ——セト ( No.9 )
- 日時: 2015/03/04 16:55
- 名前: クレープ (ID: ZUyffco7)
わぁ…凄いですね…(いや,表す言葉がないんです〜泣)
面白いです!!
それに,よくこんなに長文の小説を,定期的に打てますね!!
わたしは,ぶつぶつきっちゃいます
そして,会話文ばっかになっちゃうんですよね〜
鮫さんは,小学生ですか??私は小6です!
私も小説書く・雑談ってokですか??
あまり打たないようにしますので…(持続しないんです。。。)