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まつのけ。(おそチョロ中心)
日時: 2017/04/30 17:03
名前: のしこ (ID: 23qbUXXN)

おそチョロ…ごうほりゅが好きです。
カラ一きてるよ。やったね。

ぼちぼち書いていきます。
短編多めです(早速長編書いてます)

アニメ二期、おそチョ…んんっ、速度の絡みがふえないかなあ、なんて。
うだうだ毎日おそチョロぱーりぃです。頭の中が。
いや、割とガチで!!
はああぁぁあ……おそ松兄さん、普通にすき…

弟組、なんか可愛くない?(確信)
おそらく、三男愛され風味、らぶらぶおそチョロです。
おそチョロ沼から抜け出せると思うなよ。
ぽんこつさんなん……………

書いたもの(妄想の産物)

夏休み(完結)
>>1
あとがき、解説、のような何か
>>2

馬鹿野郎供と大馬鹿野郎
>>3
>>5
>>6
途中経過とか、雑談とかの何か
>>4

Re: まつのけ。(おそチョロ中心) ( No.2 )
日時: 2017/04/22 22:48
名前: のしこ (ID: 23qbUXXN)

すごく書きたかったおそチョロの一つです。

テーマは夏休み。と、あっちーなあ、です。うける。


気付いてもらえたか不満なのですが、出てくるのは、
くん速度、中2速度、高2らへんおそ(→)←チョロ、ニートおそチョロ

です。いやあ、どこで速度からおそチョロになっていくのかも
見ものですよね、おそチョロしんどいです。

結構無計画に書いて、休憩挟みつつの3時間クオリティなんですけど、
結構萌えるものできたかな、って思います!!

今回は、何気ない会話をどう表現するか、
めちゃくちゃこだわりました。

あっちーなあ、にどんな意味を込めるか、お互いがお互いのことをどう思っているのか、
みなさんの妄想し放題です。が。それにしたっておそチョロはなんでこんなに良いのか……………


リクエストもらえると嬉しいです、書きます、できる範囲で❤
最近すごく妖怪が来てます。
でもおそらく描くのはおそチョロ♀少女漫画とかです。ふふふ。

ありがとうございました、また覗きに来てやってください〜


Re: まつのけ。(おそチョロ中心) ( No.3 )
日時: 2017/04/29 12:29
名前: のしこ (ID: 23qbUXXN)


あっそう、と思った。


その時自分は怒っていたのか、それとも寂しかったのか、もしくは何も感じなかったか。

僕はきっと無表情だった。

隣に立つ女子が、きゃあ、とはしゃぎ出す。

目の前の男の、なんでもないような顔と、なんでもないような声色に、

ちょっと死んでこようかな、なんて。


あながち冗談ではないかもしれない。




*『馬鹿野郎共と、大馬鹿野郎』




あ、やった。

末弟の呟いた言葉に、白米をじっと見ていた顔を上げる。
言葉のわりに大して喜んでいるわけではないようだった。

末弟の視線の先を追うと、ああ、と。

隣の次男も、先程の末弟と同じようなテンションで、おお、とこぼした。

松野家一階、居間にある、少し前の型のテレビにはでかでかと、ふたご座、1位と書かれていて、
ラッキーアイテムは、白い靴でえす、と、お姉さんの明るい声。

「いや、全員学校指定の白い運動靴だろ」
咀嚼していた白米を飲み込んでから思わずツッコむと、一瞬こちらを見遣った末弟は、
はあ、とわざとらしいため息をついた。
「わかってないね」
「なにがだよ」
なめくさったような偉そうな口調に、微かにイラっとした。が、
末弟は気にすることなく続ける。

「あのさあ、こーいうのは、なんとなくで楽しめば良いの」
「はあ」
「そういう、いちいちめんどくさい捉え方するから、チョロ松兄さんはつまんないんだよ。どーせ一日終わって帰るまで、占いのことなんか忘れるでしょ?」
ぐ、と言葉に詰まった。
言いたいことは相変わらずわからない。
全く以って末弟は兄に優しくないドラいもんだ、とこっそり悪態をつくが、
理解しようともしない自分も大概だ、と気付く。しかし自分は悪くないよなあとも思った。
「悪かったな、つまらない兄で。……ご馳走様でした。」
「ん?え、残ってる残ってる」
手を合わせてちょっとだけ背中を曲げる。
ご馳走様でした、とは言ったものの、今松野家の食卓に並ぶ朝食、
ご飯、味噌汁、焼き魚。僕はそれぞれ3口くらいつついただけだった。
それを見て、末弟は慌てて僕に声をかけた。
「あー…、うん。お腹空かないんだよね、朝は」
誤魔化しながら立ち上がると、末弟は何も言わなくなる。
あひる口を尖らせて、ふうん、と、拗ねたように言って、また箸を動かす。
「チョロ松」
カラ松が、僕を心配そうに見上げている。
「…チョロ松兄さん」
ずっと喋らなかった一松も、目で、そろそろちゃんと食べなよ、と訴えかけている。
「チョロ松兄さん、本当にもういいの?お腹空かないの?」
「…うん、十四松、まだお腹空いてるんなら、」
「はよぉ〜」

食べてもいいから、そう続けようとした僕の声は、松野家の六つ子の中で1番
遅くまで惰眠を貪る、長男に、遮られる。

自分の肩が大袈裟に跳ねたのがわかった。
居間の空気が、先程とは比じゃないくらい、急激に冷える。
誰も、何も、言葉を発さない。

テレビから流れる、アナウンサーのお姉さんの、淡々とした声が、やけに大きく聞こえた。

未だ1人だけ寝間着姿の目の前の男が、僕を見て、目を見開いて、
言葉を発しようとする。_______前に、

僕は、玄関に通じる方の襖に慌てて飛びついた。

幸いにも、この前届いたばかりの鞄は、既に準備して玄関の横に置いてある。

「っ、もう、行くから!…お前らも、入学式、遅れないように、しろよ」

ゆっくりと、言葉を選んで、そして、家から飛び出した。

行ってきます、と呟いた声はきっと誰にも気付かれない。


と、同時に、三男の消えた居間で、何が起こっているかなんて、気付かない。



3年前、中学校の入学式の日、僕は、みんなは、どんな顔をしていたか。
脳裏に浮かぶ、六人声の揃ったいってきます!
僕の隣で、まだあどけなさの残る顔で得意げに笑う、彼奴。

何も知らない、馬鹿な自分。笑顔。


3年間、僕は、何を?


変わってしまったなあ、と、人ごとのように思う。

_____嘘つけ、変えたのは自分の癖に。



____________兄弟を壊したのは、自分の癖に。



走ったからか、胸が痛かった。


今日は、赤塚区立赤塚高校、入学式。







めんどくさ。

目の前でどす黒いオーラを放つ、おそ松兄さん。

素直にそう思った。あ、いや、もっと素直に言っていいなら、正直死ね。

松野家の朝は、比較的のんびりだ。ただ1人、チョロチョロ忙しなく動いて、いち早く逃げる兄と、
ただ1人、そんな兄を捕まえたいのに、いつもいつも意地を張って、のそのそ動き出す兄を、除いて。

あくまで今日は、華の高校生活の始まりという、大事な日なのだ。
そんな大事な大事な日の、朝の朝食の時間に、どす黒いオーラを撒き散らして食卓を占領。
挙げ句の果てには先程飛び出していった三男の残した朝食にまでがっつき始めている。勘弁してほしい。死ね。
相変わらず何も喋らないし、目は人を殺しそうなほど真っ黒だ。

ひえぇ、こわ、闇松兄さんじゃん。

そう呟くと、隣で慣れないネクタイと戦う一松兄さんが、ひひ、と笑って肘でつついてきた。
「おそ松兄さんまで闇松とか、この家暗すぎて笑う」
ほんとだよ。

呆れて僕はわざとらしく肩をすくめる。


あーあ、ほんと、うちの悪童二人は扱いづらいんだから。

がらり。



「……」

襖が開く音がして、見るとカラ松兄さんが、仕草で、行くぞ、と言った。
仕方ない、といった顔をした。
ただ、一瞬、怖い顔で、表出ろ、的な意味かと思ってしまった。
ほらぁ、一松兄さん、興奮しないでよ。

その後ろの十四松兄さんは、カラ松兄さんと一緒に、高校の真新しい鞄を二つずつ持っている。
わっ、それ僕のぶんだよね、ありがとう十四松兄さ〜んっ!!

一も二もなく頷いて、僕と一松兄さんは廊下に出た。

「行ってくる」
「…ってきます」
「いってらます!」
「ふふ、行ってきますだよ、十四松兄さん」

松代の、はいはーい、という返事を聞いて、玄関の戸を閉めた。ガラガラ。

4人纏まって、うちの隣の、最近空き地になった場所を通過する。
ここ何が建つんだろ、工事の音うるさくて、眠れないとか、やだなあ。

現実逃避をしながら、十四松兄さんの元気な声を聞きつつ、後ろを振り返って我が家を見る。

今頃あの中では、長男が行ってきますの声が足りないことに気付いた松代に、
こっぴどく叱られているところだろう、ざまあみろ。

「…チョロ松、春休みの間、ずっとおそ松を避けていた。…ご飯も、あまり食べなかった」

カラ松兄さんは、神妙な顔つきで、ゴツくなった手を握りしめている。

「……春休みの間“も“…の、間違いでしょ」
「ぼく、よく分かんないけど、お腹空かないって、あれ嘘だとおもう」

一松兄さんも、不機嫌そうに薄い眉を顰める。
十四松兄さんも、底抜けな明るい笑顔が消えて、心配そうだ。

「ほんっと、おそ松兄さんって馬鹿。このままじゃチョロ松兄さん死んじゃうよ」
「ああ、あれは絶対に痩せた。おそ松も今朝久々に見て気付いたんだろう」
「迷惑すぎない、あのひと…」

ああ、ダメだ。
この三男モンペ2人組、口を開く度に不機嫌になっていってるよぉ。
殺気も感じる、こわぁ〜い〜。

……まあ、僕も割と変わんないけどね。




松野家の長男と三男は、中学の卒業式を控えた前日、

…ぶっ壊れた。

元々、支え合うにはあまりにも脆くなってきて、日に日に不安定さを増していた関係。
兄弟全員焦っていたし、どうにかしなくちゃ、と思っていた。

そこに、おそ松兄さんが、爆弾を落としてしまったから。
修復できたはずの関係は、あっという間すらないままで、時間切れ、手遅れ、大爆発。
キビシー!…とか言って。

日に日に痩せていくチョロ松兄さんを見るのは辛かった。
そんな状態なのに、おそ松兄さんに会うまい、と毎日毎日何処かへ。

はあ、めんどくさい。相棒なんでしょ?なんとかしろよ。




…僕らみんな、いい迷惑してるんだから。

Re: まつのけ。(おそチョロ中心) ( No.4 )
日時: 2017/04/30 17:07
名前: のしこ (ID: 23qbUXXN)

はあ、書いた…書きました、ながいい…

短編多めとか言ったの誰だよ、早速長編書いてるよ………

思いつくまま、頑張ってみます。

こじれた速度が同じクラスになって、おそチョロになるまでの話。

ぼちぼち更新するので、また覗きにきてやってください!!

感想、アドバイス、諸々、気軽にコメントしてください!
おそチョロの話がしたい………


4/30

基本週末に突然更新します。いぇーい。うぃーっす。
たぶん、突然関係のない話出したりしそう、だったらすみません。
完結させるのが、目標!!
塵も積もれば山となる、って、言うもんね。
おまけに文才も上がってくれるかな????(お祈り)

Re: まつのけ。(おそチョロ中心) ( No.5 )
日時: 2017/04/29 16:38
名前: のしこ (ID: 23qbUXXN)



「なん、だって………」


松野家三男、松野チョロ松。
只今目の前の光景に目を疑っています。



迷いに迷って、やっと辿り着いた、クラスの書いてある掲示板。

息も絶え絶えに、自分の名前を探す。
1組、……………松野、ああ、カラ松か。

2組、………………、松野一松、と、トド松。

3組、…、松野、おそ松…………と、チョ

「………………………」



冒頭に戻る。


なんで、僕だよ。もっといるだろ、クソ教師ども。

言いたいことは色々あるが、まず一つ。この高校の教師はカスだ。もう信用しない。

赤塚高校は、一学年4クラス。
僕はあくまで、1人でいいと思っていたのに。ほんと最悪。
いつも願ったことは叶わないのに、嫌なことばかりで、ちょっと死にたい。
何だよ、占い1位とか冗談にも程があるだろ。嘘ばっか言いやがって。
あのお姉さんもマジ信用しない。いや声聞いただけだけどさ。

「やったあ、みき、同クラじゃん」
「やったじゃん、超やばい」

「きゃあ、優くんと違うクラスだ……うぅ」
「大丈夫だって葵、いつでも会いに行けるでしょ!」

ぐおおおおお、と、頭を抱える僕の横で、可愛らしい女の子たちが騒いでいる。

ふ、と顔を上げた。

「……すきなひと、か」


……



はっ。

よくよく考えると、僕が反応すべきなのは、そこじゃないよね、

いつでも会いに行ける、でしょ!?

「うぐううう…」

悔しさと恥ずかしさ、絶望がごちゃ混ぜになって、先程よりも悲痛な声を上げる。

はあ、こんな学校、燃えてしまえ。
…なんて、自分から行くと言ったくせに。



あの後、僕の20分程後に来た4人。
……おそ松兄さんがいなかったことに、ひどく安堵した。

みんなそれぞれの分けられ方に、純粋に喜んだり、文句を言ったりしていた。
それに、大丈夫か、と聞かれた。
うん、大丈夫、と無理やり笑顔を作ると、カラ松はちょっと笑って、僕の頭をくしゃっと撫でた。


入学式は何の問題もなく終わった。
強いて言うなら、六つ子の存在が全校生徒の前で明らかになった。
そりゃ、「松野〜松君」「はい」が6回も(おそ松兄さんは返事なしだったけど)
あったら、みんなビビるよね。
そうは言ってももう慣れたし、何なら最近調子に乗ってあざとさが増してきた末弟は、利用しようとまで言っていた。

中学とかと違って、列にさせられたりしないのか、なんて考えながら、教室に5人で帰る。

「じゃあ、後でね」
「うん!一緒に帰りまっせ!」
「うん、ふふ、十四松、ちゃんと大人しく。ね」
「あい!」

3組の教室の前で十四松と別れる。
先程別れた3人とも、一緒に帰る予定だ。

十四松が入ると同時に、4組が騒がしくなったのを見届けて、自分も教室に入る。

……がら、と扉を開けると、






_________そこには、嬉しそうに笑って女子と話す、長男が居た。






いつ、来たんだろう。なんて言われるんだろう。

あいつは、新入生のくせに早速、ネクタイを外した白いシャツの中に、赤いTシャツを着て、袖をまくって、
誰のものか分からない一番後ろの席の椅子の背もたれに寄りかかって、



…可愛らしい女の子と話していた。





ぐ、

思わず呻き声を上げそうになるのを堪える。

おなかいたい、きもちわるい。
生理的な涙がこみあげてきて、思わずその場にうずくまった。

おい、その女子、さっき優君がどうたら、とか言ってた子だろとか、
お前入学式初日から先公に目ェつけられてどうすんだ、とか。

ツッコみたいことはたくさんあるのに、どうしても目の前の光景を見たくなかった。

「_______っチョロ松、」


「!」

いつ気付いたのか、おそ松兄さんは、僕の目の前に座って、背中を撫でている。

久しぶりに触れるその温度にひどく安心したし、僕の名前を呼ぶその声が、なんだかすごく情けなく聞こえた。
嬉しい。


そう思ってしまった。


目の前は真っ暗闇。



「っ、ごめ、大丈夫…」


自分が思い上がらないように。


…勘違いしてはいけない。おそ松兄さんに迷惑をかけるな。



頭の中で鳴り響く警報に、慌てて立ち上がる。
いくらか楽になったからか、ふらつくことはない。

「…そっか」

おそ松兄さんの顔は見えない、見ない。

「チョロ松」

背中の温度が恋しくなって、思わず顔をあげた。
おそ松の顔になんの感情もなかった。

目は合わない。


合っているのに、別のものを見ている。

お前も、僕も。

「……」


続く沈黙に焦りだす。



ああ、どうしよう、やはりもう嫌われているのか。

何言ってんだ、もうおそ松に期待はしないって決めた。

それでも、もう一度だけ話がしたいと思っていた。

ずっと意地はって避けてたくせに。

違う、嫌いだと言われるのが怖い。

ビビってんじゃねぇよ、悪童の癖して。


ああ……おそ松が悪い。

そうだな、全部おそ松が悪い。

僕は何も悪くない。

何も悪くない。

おそ松が、謝れば、










「同じクラスか。一年間、よろしくな」


おそ松は、笑った。
なんでもないようなかおで。









真っ白になった。






あ。


ああ、そうか。


そっかあ、ふうん、あっそう。


ああそう。



女子の声が聞こえる。
おそ松は笑っている。気持ちの悪い笑い方だ。そうか、うん。



よく分かったよ。







「……うん、よろしく。おそ松兄さん」


僕は、随分と酷い勘違いをしていたみたいだ。









それからのことはあまり覚えていない。

気がつくと家の布団で寝かされていた。

周りには誰も居なくて、下の方から騒がしい声が聞こえる。


いま何時だろ。
のどかわいた。


起き上がって、静かに襖を開ける。

床が鳴らないようにゆっくり歩む。


…と、階段に足をかけた時点で、僕は思わず固まった。


声が聞こえた。





「俺、さ。明日告るわ」




おそ松、兄さん。

Re: まつのけ。(おそチョロ中心) ( No.6 )
日時: 2017/04/30 18:33
名前: のしこ (ID: 23qbUXXN)

目の前のこいつが笑った時に、絶望した。

こいつは、僕のことなんてやっぱりどうでもいいと思ってる。
僕は、てっきり、何か言ってくれるのかと思ってた。

もうなかったことにしたいんだな、お前は。
僕ばっかり意識して、馬鹿みたいに避けて、気を惹かせようとした。
ご飯が入らないのは本当だけど、ちょっとは心配してくれるかな、なんて考えて、わざと抜いたこともある。

でも、おそ松兄さんは笑った。へたくそに。

まるで、お前となんかあったっけ?、とでも言うように。
なかったことにしたいのか。

せめて、あのくしゃっとした柔らかい笑顔で言ってくれたら、僕はどれだけ救われただろうか。

せめて、少しでも内容に触れてくれても良かったのではないか。

僕の存在は、結局そんなもんか?
相棒なんて、結局そんなもんか?
お前にとって、僕はそんなもんか?

なんでお前はあの時、僕にああ言ったんだよ。
お前があんなこと言わなきゃ僕は勘違いしなかった。

お前が気持ちの悪い笑顔を浮かべなきゃ僕は気付かなくても良かった。



この舞台に、役者は僕しか居ない、なんてさ。



…なんてね。





「……おそ松兄さんさぁ」

ばんごはん。
最初におそ松にーさんに声をかけたのは、トド松。

「んぁ?なによ、トッティ」

おそ松にーさんは、ぼやーっとしてる。
僕は、目の前のお椀の中の、乾いたわかめをぼやーっと見てる。

「………」

トド松ははあ、と、ためいき。
トッティはやめて、といって、麦茶を飲み干した。いっき!

「も、いいや、限界。よく聞けお前ら!」

ドン、麦茶のいなくなったグラスを置く。さっきまで唐揚げの入っていたでっかい皿まで、がしゃ、と音をたてる。
トド松は、ちょっと疲れたように言った。
つられて、カラ松にーさん、一松にーさん、僕も、ニオー立ちのトッティを見る。
おそ松にーさんは、相変わらず、やる気がなっしんぐ??

「第……18回、松野家兄弟会議を始めます!司会は僕、トド松!」

トド松は一瞬吃って、そんで、察した一松にーさんの口の動きで、何回目か思い出したみたい、すごいね、一松にーさん!
一松にーさん曰く、18回っていう数字には、なんとなくリアリティがあって、兄弟がたまに怖くなるんだって。
僕ちょっとわかんないなあ。

「いい、おそ松兄さん!僕この状況割と…、いや本気で嫌、限界!」
トド松は、ビシィッ、とおそ松にーさんを指差す。
「僕ら1年くらい我慢してきたのに、なんなのこの惨状!」

おそ松にーさんは、最近、ぼーっとしてるし、たまにぴりぴり。
カラ松にーさんは、最近、よくおそ松にーさんを叱ってる。
チョロ松にーさんは、最近、めちゃくちゃ痩せていってる。ご飯残し過ぎてもったいないばあさんきそう!
一松にーさんは、最近、チョロ松にーさんのことすっごく気にかけてる。
トド松は、こんなふうに、いつも納得できない!って、チョロ松にーさんみたいなくち。

僕?僕はね。
わかんない、みてる、ひと!


「…確かに、全員の空気まで悪くなるとか、おれむり。
静かな空間で、しにそう」

一松にーさんは、苦しそうに、吐き出すように言う。

「なあ、おそ松、何度も言っているだろう。
チョロ松の誤解を解くだけでいいって。」

カラ松にーさんも、続けて言った。


でも、僕は、そんな簡単なことじゃないと思うなあ。

って、言わないけどね。僕はあんまり喋らない方がいいから、お口にチャック!
これ、チョロ松にーさんとの、やくそく!!

「ふうん」

おそ松にーさんは、興味のなさそうな声色で言った。
どーせ、みせかけ、ってやつなんじゃないかなあ?

「十四松、は、どう思うわけよ」

「え?」

飛び火!ここで!!
あっはあ、おおかじ!!!

冷や汗がでて、トド松も、答えなくていいよ、って言ってくれたけど。

でも、僕は、言っちゃう。

チョロ松にーさんのやくそく、おそ松にーさんなら、破っていいかも、って、思う。


「…あの、ね。僕はね、チョロ松にーさんを取られたくないんだったら、おそ松にーさんは、あまりにもへなちょこすぎる、と、思うよ」

おそ松にーさんは、目を見開いた。

僕は、殴られても、蹴られてもいいって思ったけど、
カラ松にーさんが、静かに、兄貴、って言って、おそ松にーさんは固まる。

おそ松にーさんは、少し何か考えて、立ち上がる。

「…十四松。ちょっと」

こいこい、と手招きされる。
おそ松にーさんのかおは、あんまり怖くなかったから、ついていくことにした。

「…っ十四松兄さん」
「十四松…」

トド松も一松にーさんもカラ松にーさんも、不安そうな顔をしてたから、僕は笑顔で言う。
何か安心して欲しくて、僕は、元気に、

「だいじょーぶい!いってきマッスル!!」

って。
3人ともぽかーんとしてた。


襖を閉めてから、改めて見るおそ松にーさんの目は、まっかに燃えてた。
ぼく、ガソリンいれた?ガソリンスタンド十四松!!

「十四松、俺さあ、気付いちゃったわけよ。」

ガソリンスタンドは、静かにおうえん。ぶおおーん。

「チョロ松を手に入れようとして必死だったけど、遠回りだったみたいだわ」

うん、うん。そうだよそうだよ。ぶおおおおおん。


「俺、さ。明日告るわ」


ガソリンに飛び火したら、大火事だね!どーん!









「…ぁ、チョロ松兄さん、おはよう」
「一松。おはよう」

朝。廊下で会ったパジャマ姿の一松は、おずおずと挨拶してきてくれたけれど、
僕が笑って返すと、幾分か安心したように口元を緩めた。

「体調は、どう…」

「んんー……」

どう、と聞かれると、昨日同様に少し頭が痛むくらいで、うん、特に異常はないよね。

「だいじょうぶ、かな」
「うん」

そっか、なら良かった、と一松は居間へ入って行った。
どこか優しい一松。笑った顔、久しぶりだなあ。

昨日、あのあと_____一階の廊下からの、おそ松兄さんの声を聞いたあと。
僕は、下に降りることはなくて、ただひたすらに、泣いた。
嗅ぎ慣れた匂いの、大きな布団は、あまりにも僕にやさしい。

誰に、告白するんだろう。
葵さん、って人だろうか。
たった1日、で?

それを、誰に相談していたんだろう。

おそ松兄さんが、まず僕に相談しないのは当たり前だ、と、わかっている。
それでもなお、兄弟の誰かに、得体の知れない感情を抱いてしまうのは。
僕が、やっぱり、おかしいんだ。普通にならないと。

得体の知れない感情、なんて言って、誤魔化してる。
本当は分かっている。知っている、けど。
それを、希望の見えないそれを、認めてしまったら僕は、今度こそ死んでしまう気がしている、
し、そうやって汚い感情を抱いて、分かっていて馬鹿みたいな、
子供のような行動をしてしまう僕は、
僕は、自分のことを、きっとおそ松兄さんよりも、嫌っている。

…ああ、好きの反対は、無関心、だっけ?
なあんだ、やっぱりもう手遅れなんじゃん。



馬鹿みたいに泣いて、いつの間にか寝て、起きたら隣に、例の兄はいなかった。

どこに行ったかは、知らない。

微かな頭痛を無視して、次男と末弟を起こさないように着替えて、部屋を出て、今に至る。


一松が入って行った襖を、何秒か見つめて、僕は、後ろの洗面所に向かう。
十四松の元気な挨拶が聞こえた。

特に思うこともなく歯磨きをして、顔を洗って、拭いて、髪を整える。

顔を上げると、目の前の僕は、ひどく泣きそうな顔をしていた。




「…チョロ松兄さん、どうしたのさ」

肩が小さく跳ねる。
洗面所の入り口に立っていた末弟は、愛らしい口を不機嫌そうに尖らせていた。
ゆっくりと、できるだけ無表情に、はやく。

「………いや?どうもしないよ」

僕は、できるだけ優しい笑顔を作る。

「おはよ、トド松」

にっこり。
笑う僕とは対照的に、末弟は、なぜかくしゃっと顔を歪めた。

…トド松、気分悪いなら、学校は、

そう言って伸ばした僕の手は払いのけられて、トド松は逃げるように後ろに下がって、言った。


「別に。……おはよう、兄さん」

何で。





「一松にーさん、おはようございマッスル!!」

居間に入るなり、既に着替えていた十四松が笑顔で言った。
美味しそうな匂いが寝起きの鼻を、腹を刺激する。
珍しいな。てか俺、うんこしにきただけだから、まだ寝間着じゃん。

「おはよ、十四松。……なに、マッスルって。流行り?」

昨日も言ってたな、なんて思い出しつつ、尋ねる。
十四松は、ぽかーんとして、一瞬思考を巡らせてから、目を細めて笑った。

「んんー…、みんな、マッスルしたら元気だと思って」
「…ふうん、そっか」

十四松の発言をなんとなくで理解、処理して、座り際に頭を撫でた。
こいつ、考える時の仕草、チョロ松兄さんに似てるんだよな。

「おそ松兄さんは?」

朝起きた時から、一度も見ていない長男。
十四松は、さらりと答える。

「もう、学校いった!僕ねえ、行ってらっしゃいって言ったよ!」
「…え、……………………………マジか」

あまりに衝撃的で、理解するまでに時間がかかる。
何を考えているのか知らないが、とりあえず朝の安全は守られたようだ。(空気的な)
十四松は、おそ松兄さんと何を話したんだろう。
気になったが、おそらく昨日の件から察するに、教えてもらえないだろう、と思う。

会話も続きそうになかったので、ふと、さっきの件を、言ってみる。

「十四松ってさ、こう、何かを考えてるときの仕草とか、…こう、チョロ松兄さんにそっくりだよね」

すると、十四松は、照れたようにそっかあ〜、と言って、それから、俺の方を見た。

「あのね、でもね、一松にーさんも、笑った時のやさしそうな目とか、
手を口に持っていくところとか、似てるよ」

「……そ、か」

一瞬息が詰まって、やっとこさ、返事をする。

そっか、似てるか。
そりゃあまあ、六つ子なんだけど。

じわじわと、暖かくなる気がした。

「あと、わるい顔も、そっくり!トド松が、こわいよねえ、犯罪臭ってやつだよ、って言ってた!」

にっこり笑って、トド松のまねをする十四松。
さすがに、あの人の悪い顔には勝てないと思う、けど。

「……ん、そっか。」

トド松、後で目玉焼きに醤油かけてあげよう。

なんて、目の前の目玉焼きを見ながら断固塩胡椒派の末弟への仕返しを企む。


暗黙の了解、って程ではないけど、半数…つまり最低3人は揃わないと飯に手をつけないという松野家謎の習慣をなんとはなしに守る。
会話なく静かになった居間に、洗面所の方からの声。
…トド松か。起きたのか、なんて考えながらぼうっとしていると、
不意に居間に入ってきた顔に、背筋が凍った。

「……っチョロ松、兄さん」
「にーさん!?」

先程会ったばかりの、三男の顔は、真っ青になっていた。
それに加えて、沢山のことを考えているときの癖、への字のちいさな口を、きゅっと結んでいる。

焦る一方で、パニックなんだろうか、と、冷静な気持ちもいた。

「…あ、あー、のさ、えっと…」

目を伏せながら、チョロ松兄さんは、いつになくちいさな声で、弱々しく言葉を発する。
慌てて駆け寄る俺と十四松。

「大丈夫…?」
「にーさん!無理はよくないよ!」

チョロ松兄さんは、俺たちと目が合うと、はっとしたような顔をして、
それで……顔を歪めて、

「……ごめん、ほんと…ごめんなさ」
「にーさん」
「…っ、う、朝ごはん、いらないから、い、ってきます…!」

だんだん早口になって、声も震えて、でも俺らが声をかける前に、昨日のように飛び出して行った。

「…っ、え、兄さん!!」
「どひゃあ〜…」

トイレから出てきた末弟が、唖然とする。

「…え、は、うそ、今のチョロ松兄さん…!?」


松野家の朝は、まだ、平和には程遠い。

「これは、相当ピンチだぁ〜!!!」

まだ寝てるクソ松、マジ殺す。


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