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- 鈴の風
- 日時: 2019/04/17 23:28
- 名前: メモリ (ID: UwsudxVD)
大昔、歴史にその名を轟かせ人々を恐怖の渦に陥れた最凶の食人鬼がいたという。
その息吹は肉を焦がし、その豪腕は大の大人を棒の様にへし折ったという噂だ。狙われたら最後、骨すらも残らない。
そんな数々の逸話を作り上げた人食い鬼は、どういう風の吹き回しかあろうことか人里の近くに住処を構えたそうな。
それに人里の人間はびっくらこいた。直ぐに供物を用意し、食人鬼に村の人間を食べないでと言わんばかりに沢山の供物を用意した。
しかし、食人鬼は供物に見向きもしなかった。
それから幾年か経ち何とも不思議な事に山の麓の小さな村の近くに来てから食人鬼は全く人を食わなくなった。ただ、まだ不安要素は残る。
念の為、村側は一人の少年を生贄として差し出したそうな。
さぁさぁ、皆様いらっしゃいな。世にも珍しい、鬼と童子の同棲生活!見なきゃソンソン。
是非見とってくれよな!
_____
…どうしてこうなった(;´∀`)
いやぁ、プロローグって難しいね…(死んだ目)
まぁ要するに生贄として差し出された少年と鬼の同棲生活って事です。
初投稿なので操作もままなりませんが、どうぞお見知りおきをm(_ _;)m
一話一話が短いので、あっさり読めると思います。
- Re: 鈴の風 ( No.5 )
- 日時: 2019/04/26 23:34
- 名前: メモリ (ID: UwsudxVD)
小説を書ける時と書けない時で分かれてるので、たまに物語がぶつ切りになって投稿されてますが気にしないでください( ´−ω−` )いずれ書き足しますので。
今日の分は明日書きます!
___
- Re: 鈴の風 ( No.6 )
- 日時: 2019/05/06 23:00
- 名前: メモリ (ID: mx7sK3li)
第二話「来訪と生贄」
__
相棒__真白の墓参りを終えた後、神社には戻らず山頂付近にある小さな池にやってきた。
ここに来る度、足を滑らせて池に落ちてずぶ濡れになった真白の姿が思い浮かぶ。
思い出深い場所に来る度、今は亡き真白の姿を思い出し過去の自分を責めてしまうのが俺の悪い癖だ。そんなことしたって、真白は戻ってこないのに。
池の傍にある石に腰掛けながらぼんやりと池を眺めているとふと風が頬を撫でた。直後、後ろから聞こえる笑いを堪えるかのような息遣い。
もう、後ろを見なくても誰か分かっていた。
「何の用だ_稲荷」
「ありゃー。バレちゃった♪」
稲荷と呼ばれた男は、さも面白そうにケラケラと笑った。俺に気付かれてると分かっているはずなのに残念そうな声を出す稲荷はとても能天気だ。
何となく振り返ると、狐耳と九つの尾を揺らしてニヤニヤした赤眼の男が立っていた。容姿から察するに、稲荷は九尾という狐の妖怪だ。
神通力をいくつか持っているらしく、キレるとヤバいので警戒は怠らない。気まぐれな性格で、たまに俺をからかいにくる。間隔は結構バラバラだが、今回は少し長かった。でも、遊びに来てくれたのが少しばかり嬉しかった。本人にそれを言うと調子乗るので絶対言わないが。
ふと、稲荷の隣にいるはずの男がいないことに気付き疑問を抱いた。
「稲荷、疾風はどうした?」
「あ、疾風?それがさー、聞いてよ鬼助君!疾風が昼寝してたから襲おうとしたら背負い投げされたー!鬼嫁過ぎない?!」
「お前は何を言っているんだ」
疾風とは、猫又の青年で俺より50歳程年下だ。因みに俺は600歳位。稲荷が嫁にとってるらしいが、どうも夫婦に見えないのは如何なものか。
因みに、鬼助とは稲荷が勝手に付けた俺のあだ名だ。何となく恥ずかしいのでやめて欲しいが言っても聞かないのは分かってるからもう言わない。名前何かとうの昔に無くしたしな。
稲荷はたまに嫁の疾風について俺に愚痴りにくるが、ほとんどの愚痴が稲荷の自業自得である。
ふと、半泣きになりながらギャーギャー言ってる稲荷の足元の影が僅かに蠢いており、その後の結末が分かってしまった気がした。
直後、稲荷の影から何か人影が飛び出し黒い触手の様な物で稲荷の腰を締め上げた。
「こんのクソ旦那がァァッ!!」
「ぎゃあああ締まる締まる締まる!てか折れる!」
稲荷の腰を締め上げた正体は、先程話題に上がっていた疾風だ。眉間に皺を寄せ文字通り鬼の形相で腰から生える二尾の猫尻尾を不機嫌そうにブンブンと振っている。
強く締め上げられてはいるが肋骨は折れてないらしい。もっとも、折れる寸前の様な音は聞こえるが。
こいつらホントに夫婦だよな…?岩に腰掛けながら二人をぼんやりと眺めているうちにそんな疑問が湧いてきたがグッと堪えた。
数分位ずーっと締めていたが、稲荷が今度魚を釣ってやるという事で話がついたらしい。降ろされた稲荷が、老人の様に腰を曲げていたのが少し面白かったのは秘密だ。
「ね、鬼嫁でしょ?!」
「今度は折っても良いんだぞ?」
「すいません…」
九尾と猫又の組み合わせとは、随分珍しい物だが二人はそんなことなど気にしない様で親しげ?に話していた。基本的に稲荷に当たりが強い疾風だが、多分素直になれないだけだろう。
稲荷を渋々降ろした時に、若干赤面になっていたのが何よりの証拠だと思う。
「じゃーな鬼助!俺は嫁と人間食いに行くからー。精々孤独死するなよー?」
いつも稲荷は一言が余計だ。
「な、聞いてねーよんな事!あ、じゃーな鬼助!」
結局は嫁自慢をされただけだった。暴れる疾風を横抱きにし、稲荷は森の奥へと去っていった。
急に静かになった池。
ふと村長の言葉を思い出した。確か、明日の早朝に崖から生贄を突き落とすという話だ。崖ということは、山頂の真白の墓とは反対方向にある湖の事だろう。
彼処の湖はかなり大きく、かなり大きな滝になっている。その滝の横にある切り立った岩のところから突き落とすつもりだろう。随分悪趣味なもんだ。
寝過ごして生贄を見殺しにするのもそれこそ俺の信念が許さないため、滝の裏にある洞穴で夜を過ごすことにしよう。
池から離れ、真白の墓に繋がる道とはまた別の山道を選ぶ。山頂に近付くにつれて、だんだんと滝の音が近くなっていった。
数分程で山頂に着いた。湖から流れ出る滝が、轟々と音を立てながら下へ落下していくのが見えた。彼処に落ちたら間違い無く死ぬだろう。
崖から下を覗き込むと、岩肌を削るように滝壺に落ちていくのが見えた。覚悟を決め、崖から飛び降りた。重力に従い落ちていく体を上手く操り、滝に当たらないように洞穴に近付く。一時的に空を飛べる妖術のような物だ。かなり前、稲荷に学んだ。
何とか、滝の裏の洞穴に入ることが出来た。
下手したら死ぬ可能性もある危険な行動だったが、当たらなければどうってことない。
外を見ると、日が沈み始めてるのが見えた。
村長は早朝と言っていたから…三時位に起きるとしよう。流石に徹夜ばかりするのは身が持たん。
洞穴のゴツゴツとした岩壁にもたれ掛かりながら、俺は僅かな仮眠をとる事にした。
___
梟の這うような鳴き声が途絶える頃、微睡みの中俺はうっすらと目を開けた。しばらくボーッとしていたが、生贄の事を思い出し眠気が完全に吹っ飛んだ。
「…………ッ!!」
慌てて飛び起き、洞穴から顔を出し空を確認する。まだ薄らと、夜の色が薄くなってただけだったが早朝に近い感じだった。
嫌な予感がし恐る恐る下を見るも、亡骸らしき物は見当たらない。間に合った。その事実は、固くなった体を解すのには十分だった。
洞穴の壁にもたれ掛かり、ズルズルと背を付け座り込んだ。
「何だかんで、生贄の事が心配なんだなぁ……」
知らず知らずに、そんな事を呟いていた。遊び相手が欲しかったのか、孤独を埋めて欲しかったのかは分からないが何処かで生贄の少年を求めていた。
理由は一向に浮かばないが、ずっと考えていると頭が痛くなりそうだ。ひとまず考える事をやめ、固くなった膝に顔を埋めた。
「………。
春の風が吹いている。
童子は掛けて花掴む。
桜の花は風に乗り、次なる童子へ飛んでいく。
夏の風が吹いている。
童子は掛けて虫掴む。
短き命は木に止まり、尽き果てるまで声響く。
秋の風が吹いている。
童子は掛けて紅掴む。
山の恵みは地に落ちて、白が降るまで木の実取り。
冬の風が吹いている。
童子は掛けて白掴む。
白の下に、命咲く。
童子はいつか、歳をとり。
四季巡る中、生きていく。」
これは、昔俺が陰陽師の札にやられ寝込んでる時に真白が歌ってくれた子守唄の様な物だ。もう子供では無いと文句を言いたかったが、いつの間にか寝てしまった事に驚きだ。
歌詞は完全にうろ覚えだが、一応全部歌えた。
詩を紡いだ後、ぼんやりと洞穴の壁を見つめた。目を閉じればそこには笑っている真白がいそうで、思わず手を伸ばす。しかし、当たり前だがその手はただ空を彷徨うだけだった。
空を彷徨う手を、目の前に持っていき見詰めた。
もう、どんだけ頑張ってもこの手は修復不可能なところまで紅色に汚れてしまった。多分、生贄の少年も俺の事は聞いているはず。
生贄は、怖がらないだろうか?
そんな思いが、グルグルと頭をまわる。
——ふと、鬼の聴力が崖の上から聞こえる話し声を聞き取った。必要以上に姿を晒さないように、洞穴の壁に背を付け僅かに顔を出した。
思った通り、村の住民と村長がいた。
住民と村長の前には、まだ10歳行くかいかない位の背丈の低い童子がいた。ここからではよく見えないが、狐の面を被ってるように見える。
これ以上身を乗り出して姿を晒すのも困る為、そのまま動かずいた。
よく見ると、後ろ手を縛られているように見える。
10歳にしては細く、痩せているように見えた。
生贄は、己が死ぬかしなないかの瀬戸際に立っているのに微動だにしなかった。
幾分か住民と村長が言葉を交わした後、おももろに村長が文字通り生贄の少年を蹴り飛ばした。
「!」
蹴り飛ばされた少年の体は重力に従い、真っ逆さまに落ちていく。
すかさず洞穴から飛び出し、その小さな体を受け止めた。
少年が着ているボロボロの着物越しでも分かるくらい、やせ細っていた。だが、ずっと見つめていてはこちらが死にかねない。
直ぐに術を使い滝とは反対方向の木に少年を抱き抱えた手とは反対の手で掴まった。木が丁度住民達の視界を遮ってくれたのだろう。
木に掴まった後、直ぐに話し声が遠ざかっていった。
だが、去り際にしっかりと聞こえた村長の一言に殺意が湧いた。
「邪魔者を排除出来て良かったよ。あれは人間じゃない」
まだ小さな童子を邪魔者扱い。
元々あまり人間は好きじゃ無かったが、更に拍車がかかった気がする。一瞬村長を消しにいこうと思ったが、今は少年の方が優先事項だ。
息も浅く、少年の体は衰弱しきっていた。
「……」
何となくいたたまれない気持ちになりながら、俺は術で崖の上に降り立ち帰路についた。
- Re: 鈴の風 ( No.7 )
- 日時: 2019/05/06 21:29
- 名前: バッキンガム宮殿 (ID: sPN/TsSz)
これ面白いですね 素敵だな 続きを期待しています あ でも私的生活に御支障無きように…
- Re: 鈴の風 ( No.8 )
- 日時: 2019/05/06 22:03
- 名前: メモリ (ID: mx7sK3li)
>>バッキンガム宮殿さん
コメントありがとうございます、嬉しいです!やっと更新出来そうなので頑張ります!
- Re: 鈴の風 ( No.9 )
- 日時: 2019/08/04 21:15
- 名前: メモリ (ID: mx7sK3li)
第四話「前世」
生贄の少年を無事に家に連れ帰った後、普段俺が寝ている乱雑に敷かれた布団に寝かせた。
崖っぷちに立たされても微動だにしなかったのは、やはり気絶していたかららしい。
少年の体は、着物のところを除いても目に見えて分かる位辺りに痛々しい傷が並べられていた。
触れるのに少し躊躇ったが、そっと傷に響かない様に着物を上半身だけ脱がすと———絶句した。
「………ッ!」
少年の体には、予想を遥かに上回る傷が数えきれない程あったのだから——。
刺傷に切り傷、火傷に痣に鞭の後。
まるで傷の見本市の様だった。しかも、ギリギリ死なない様に限界まで威力を抑えてるのが無性に腹が立つ。
四肢をもがれて無いだけまだマシか。そうはいっても、これは流石に酷すぎる。
10歳程のまだまだ幼い童子にする仕打ちがこれか。これからが育ち盛りだと言うのに、骨の浮き出た細い体。
更に、普段は黒い筈の髪が白色になってる。
一体、どれだけのストレスを溜め込んでるというのだろう。
言いようの無い怒りに、思わず歯を食いしばった。
床に思い切り打ちつけようとした拳は腕に爪を突き立てた事で鎮めた。
荒い息を何とか抑え、傍の薬箱から応急処置のセット諸々を取り出した。治療の為傷に触れる度に、少年の体がピクリと揺れ苦しげに布団を掴む。
何とか有り合わせの知識を駆使し包帯を巻き治療を完了させた。
後は……顔だけだ。
恐る恐る薄汚れた狐の面を取ると、目を疑った。
「は………?」
傷だらけだが、鼻筋の通った中性的な顔。片目の周りを覆う火傷の後。肩辺りまで伸びた色の薄い白髪。
どれをとっても、あまりに酷似し過ぎていた。
100年前、俺を置いて逝ってしまった愛してやまなかった相棒——真白に。
もっとも、生前の真白は15歳だった筈だが最早この少年が小さくなった真白にしか見えなくなっていた。
しかも、妖力の質も生前の真白そっくりだった。生前の真白もそうだ、人間ながらにして僅かだが質の良い妖力を持っていた。
あまりにも——、残酷な現実だった。
あれだけ求めてやまなかったのに、こんな形で出会う事になろうとは。
崖の上の村長のもっと早く見つけていれば、こんなに衰弱しきった状態で会うことも無かったのに。俺が、人間に化けて人里に降りていれば——!
もっと、もっと……!
頭を、ぐしゃぐしゃと掻き毟る。
複雑な思いが複雑に絡み合い、それは自己嫌悪を生み出した。
「いっそ、コロシテシマエバ——!」
乱心、今の俺の状態はその一言に尽きる。
いつの間にか、目からは大粒の涙が零れてきた。
真白が逝ったその日から使わなくなった変化の妖術を使い、片腕を獣の様に変化させた。現役時代、この手で数えきれない程の首を撥ねてきた。
コイツをコロシテ、オレもシネバ…。
ハハ、アハハ——!
何処かで、金属が割れたような乾いた音がした気がした。
バキバキと、獣の腕が鈍い音を立てる。
ざわざわと、長髪が揺れる。
額の二本角が、電気を纏いバチバチと音を立てた。
今までの懺悔をすり潰す様に、俺は少年…もとい現世真白に腕を振り下ろした。
「落ち着けって」
「ア"……?イナ……リ…?」
いつの間にか、俺の前には稲荷がいた。
俺の勢いのついた獣腕をもろともせず片手で受け止めていた。
いつも上がっていた口角は、今は真一文字に結ばれていた。
——黒く染まりかけた心に白い光が落とされた気がした。
闇に染まり、混濁した意識がスーッと元に戻っていく。
ふと、自分のやろうとしたことに——気付いてしまった。
「ア"…俺……嫌だ…そんな…。」
「はいはい分かった分かった、懺悔は後で聞くから今はとりあえず落ち着きな?」
———
「…落ち着いた?」
「おぅ」
あの後、別室で今までの事を全て話した。本当は過去の事は誰にも話すつもりは無かったのだが、誰かに吐き出したかった、聞いて欲しかった。
それぐらい、今の俺は余裕が無かった。
普段は能天気な稲荷でも、今回ばかりは真面目な顔で話を聞いてくれた。
「まぁ、お前と前世真白君の事は薄々勘づいてはいたけど……、まさかそんな深い話になってるとはね…」
稲荷は一呼吸置いた後、意を決したように言葉を紡いだ。
「鬼助、お前はどうしたい?」
「は…?」
「今の真白君を受け入れて、幸せに生きるか今の真白君を殺して同じ過ちを繰り返すか。俺は断然前者の方がいいと思うけどな。もし仮に、今の真白君に生前の記憶が残っていてそれでいてお前が殺しにかかって来たらそれこそ救われねぇ。今の真白が生前の記憶を持っているかは分からないけど…転生しても、真白君は真白君だ。」
「……ッ!」
じんわりと、心が暖かくなっていくのが何となく分かった。
そうだ、記憶を失ってたとしても真白は真白だ。
「俺は……記憶を失ってても良い、嫌われても良いから……せめて真白と一緒にいたい。出来ることなら、また昔の様に遊びたい」
心の本音を全て吐き出した様な感覚だった。
「よしよし、よく言った言った」
稲荷は、子をあやす親のように頭をポンポンと撫でてくれた。
時折ささくれがボサボサになった髪を引っ掛けて痛かったが我慢した。
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