BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)
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- キミが好き
- 日時: 2019/09/12 18:23
- 名前: バグ (ID: EX3Cp7d1)
初めて見るタイプだった。
嘘のつけないような汚れを知らないような純真さで話しかけてきて、笑うと照れたように目尻と眉尻が下がる。
無表情は冷たく感じるほどの美貌で声が似つかわしくない低く掠れた声だった。
空気が読めなくて馬鹿みたいに自分より他人を優先する、そんな貴方に腹が立つんです。
ーーーー登場人物ーーーー
・宮城:高校1年、勉強もスポーツも平均以上できる。筋トレで鍛えている。真波が気に食わない。表情に出やすいが自覚はなくてクールに澄ましてる生意気ボーイ。
・真波:高校2年、勉強は主教科が苦手でスポーツは人並み。不器用な性格、体力がなくて寝ることが大好き。無表情が冷たく近寄り難いが仲良くなれば笑顔のことが多くて寂しがり屋なボーイ。
・倉間:高校2年、何でも器用にこなせる。真波の幼馴染み兼お世話役。世話好きで笑顔が天使の異名を持つ。可愛いものは好きだし周りから可愛いと言われるのも好きだが中身は男前な仲間想いのボーイ。
・浅井:高校3年、空気が読めなくてリズム感が無いのでダンスが嫌い。勉強は理数系が得意。引き笑いが特徴的でホラーが苦手。スタイルが良くて自称世界一イケメンな残念ボーイ。
- Re: キミが好き ( No.3 )
- 日時: 2019/09/14 00:29
- 名前: バグ (ID: gM3fL3C0)
放課後は図書委員である倉間さんの所に集合ということに決まり、終礼を終えると荷物をまとめて真波さんを迎えに教室を訪ねる。
教室を見回すが真波さんの姿が見当たらない。
周囲の目撃情報によると先に図書室に向かったようだった。
少し遅かったか・・・今度からもう少し早く向かおうと決め、俺もすぐに向かう。
図書室の扉の前で、図書室を扉の隙間から覗き見ている見慣れた明るい茶髪。
「なにしてるんですか?」
「っ!…あ、宮城か」
後ろから声をかければ肩を少し上げて驚いた様子の真波さんは顔だけ振り返って俺だと気づくと安堵のため息を吐く。
なんだお前か、みたいな反応に少々イラつくが、素知らぬふりをする。
また扉の隙間から図書室の中を覗く真波さんの狭い肩幅に両手を置いて真波さんは少し屈んでいたので俺は真波さんの頭に顎を乗せるようにして密着し、同じように中を覗く。
『あの…好きなんです…私じゃ、だめ?…ですか?』
『うーん、さっきから言うようにボクは今だれとも付き合う気はないんだよね』
『今は、ですよね?私と付き合うことで倉間先輩の気持ちも変わるかもしれないじゃないですか』
それは紛れもない告白シーンというもので。
倉間さんが背丈の低く華奢で長い髪を後ろで一つ結びにしてる赤渕メガネの真面目そうな女の子から告白されているのだ。
倉間さんはどうやら断っているようだがなかなか納得出来ておらず困ったように苦笑いしながら後頭部をかいている。
なるほど、これを目の前にして中に入りづらかった。けど、なんだか気になるのでこの場を離れるよりもコッソリ終わるのを見ていたら俺が来た・・・ってところか。
『ごめんね』
『どうして?…私って、そんなに…魅力、ないですか?』
『そういうことじゃないよ?』
『っでも、倉間先輩…私じゃだめなんですよね?』
ついに彼女は泣き出してしまった。慌てた倉間さんは彼女の背中を摩って優しく慰めている。同様に、見ていた真波さんも「うわぁ…」これは大変だとでも言うように心配気に二人を見ている。
俺は、ああいう告白なんて何度も受けたからあそこで優しくしたら駄目だと思っている。泣いて縋ってくる女の子の涙なんて半分以上嘘なんだから、同情したら負け。
いつまでも二人に神経を集中させてる真波さんに少しムッとする。
- Re: キミが好き ( No.4 )
- 日時: 2019/09/14 00:48
- 名前: バグ (ID: gM3fL3C0)
華奢な体で緩めに制服を着ているからか、真上から見下ろせば真波さんの白い肌に綺麗な項が見える。
なんだか、自分の存在が忘れられていることに不満になり、真波さんの気を引いてみる。
両肩に置いていた手をスルリと肌を滑らすようにして後ろの首を包むようにすれば両肩がピクッと上がる。
まんまと引っかかったようで俺を見上げるように斜め後ろに顔だけ振り返った真波さんは少し眉間にシワを作って不服そうに言う。
「…なんだよ宮城」
若干膨らんでる頬がなんだか愛しくて、そうさせてるのが自分だという優越感に口角が上がる。
「あんまり人の告白は盗み見るものじゃないですよ、ちょっと散歩してましょ?」
「えー、でも」
「いいから、ほら行きますよ!」
顔だけ後ろを向いてる体制がキツくならないように顔を近づけて微笑んで提案してみる。
名残惜しそうに扉の隙間から図書室内を見ては目を泳がせる真波さん。困っている、と顔に書いてるからあと一押しってことでその手を取り引く。
強引に手を繋いだ状態で引っ張って図書室と反対側へ廊下を歩けば、真波さんは振りほどこうとせず大人しくついてきた。
- Re: キミが好き ( No.5 )
- 日時: 2019/09/14 01:34
- 名前: バグ (ID: gM3fL3C0)
昼は多く生徒が居るが放課後になればガランとした中庭のベンチに真波さんを座らせて近くの自販機で真波さんの好きそうなイチゴミルクと俺の飲む無糖のコーヒーを買って戻る。
はい、と渡すと流れで「ありがと」とお礼を言われるがパッケージを見た真波さんは隣に腰掛けた俺の頬に冷たいイチゴミルクを押し付けてきた。
「っ、冷た!」
「これじゃない!」
どうやらイチゴミルクはあまり好きではなかったようだ。
「カフェオレがよかった…」
ポソッと呟いてはイチゴミルクを飲む真波さん。
どっちも甘いから変わらないじゃないですかと思うが言わない。結局飲む従順な姿が可愛いから。
「俺のコーヒー飲みます?」
なんて冗談で笑いながら聞けば、頬を膨らませて「やだ、苦いもん」なんて口にする。その言葉に卑猥なことを想像すると目の前の真波さんがとてつもなく可愛い生き物に見えてくる。
それが可笑しくてケラケラ笑いながら肩を揺すれば口から外れたイチゴミルクがストローを伝って真波さんの顎を滑る。真波さんは慌てて服の袖で唇と顎を同時に拭う、そんな姿に誘惑されてるように感じる。真波さんは飲んでいたイチゴミルクが零れて不快だと言わんばかりに思いっきり眉を寄せて「っもう!」と鬱陶しげに俺の腕を払った。
手を引けば抵抗もせずに誰にでもついて行きそうなこの人にイラついてた、さっきまでの感情が、真波さんに感情をぶつけられることで優越感を得られて次第に薄くなっていく。
やはり自分の本能を抑えるには真波さんをからかうことは必須条件だと思っていると、真波さんはお得意の空気読めないをだしてきた。
「…でもさっきの女の子さ、すごかったね」
「なにがですか?」
「え、ほら…なんていうか、諦めないところ?っていうか」
・・・は?
少し照れくさそうに下を向いて僅かに赤らんだ頬を掻きながら名前も知らない女のことを褒める真波さんに思わず冷めた表情になる。
「…真波さんはああいうのが好みなんですか?」
「いやいや!そういうことじゃ、なくて…その、恋愛とか僕はよく分かんないからさ、ちゃんと自覚して、告白まで出来るのは凄いことじゃないかなって」
あー、なるほど。そういうことね
「なら俺も。便乗ってワケじゃないですけど。好きですよ、真波さん」
「えっ!?宮城も好きな人いるの?だれだれ?」
あれ・・・?聞こえませんでした?
俺の告白が簡単にスルーされる。でも興味を持って前のめりになって俺に近づく真波さんに折角だし言おうと思った。
別に隠している訳では無いのだ。ただ二人の時に俺は言おうと思ってて、二人きりのチャンスが今まで無かったのだ。
だから今は絶好の機会だった、だから俺はしっかり真波さんと向き合う形で目線を合わせたあとに言う。
「俺はあなたが好きですよ、真波さん」
「……え…?」
- Re: キミが好き ( No.6 )
- 日時: 2019/09/15 17:21
- 名前: バグ (ID: IxtPF2j4)
しばらくの沈黙のあと、やっと頭の中で整理できたのか真波さんは口を開く。
「お前さ、そういうの良くないと思う」
「そういうの?」
真波さんは、頬を赤くするでもなく視線を泳がせるわけでもなく、はぁとため息混じりで言うかのように呆れた表情で俺から視線を外した。
それに少々腹が立つが、どういう理由か聞くとヤレヤレといった態度で真波さんは答えた。
「女の子にもモテるのに先輩をからかって遊ぶの」
「…は?」
「変な噂とか流されたら困るだろ?」
どうやら俺の告白は冗談だとでも思われているらしい。先程まで収まっていた怒りのボルテージがふつふつと上がってくるのが分かる。
「ハッ!誰かに聞かれてないよね?!新聞部とか居たら大変!」
「…真波さん」
俺が真波さんに告白したところを誰かに見られたのではないかと慌ててベンチから経って辺りを見渡す真波さんに小さく呼びかけ二の腕を掴んで自分の方へ引き寄せると、そのまま近づく唇にキスをした。
「ん?なn……んっ…?…っえ?ちょ」
一瞬では何が起こったか理解しずらいだろうと、真波さんが眉間に皺を寄せたタイミングで一度離して、また口付ける。唇を割って歯列を舌でなぞり口を開けた隙に侵入するが舌を捕らえたと思った途端に腕で喉仏と一緒に首を押し返される。
苦しくなって顔を離せば力の抜けた隙を突かれ、掴んでいた腕を振り払われた。
真波さんも勢いで俺の腕を振り払ったからか立っていた体制を崩してベンチに倒れかかり肘置きに背中をぶつけている。
でもこれで俺の気持ちが冗談じゃないってこと、解ってくれたかな。
怒りを少しだけスッキリさせることは出来て、真波さんを驚かせることも出来たので、してやったり感に舌なめずりする。
真波さんは唇を手の甲で拭うようにして隠しながら肩で息をして下を向いていたせいで見えなかった表情をゆっくり上げた。
その顔は、信じられないものを見るような驚愕と困惑に満ちた訝しげな表情だった。
俺はその表情を見て、なぜだかゾクゾクした。
- Re: キミが好き ( No.7 )
- 日時: 2019/09/15 17:42
- 名前: バグ (ID: IxtPF2j4)
「お、まえ…自分がなにしたか、わかってんの…?」
「わかってますよ、真波さんにキスしました」
「…えっ?なんで、笑ってんの?」
「ああ、すいませーん」
今まで見たことのない真波さんの表情に口角が上がっていたようで、注意されて謝るが表情管理ができない。
つい笑ってしまう、怯えているのか俺に今まで持ったことがないであろう警戒心を見せてくる姿はまるで、警戒心の高い捨て猫を雨の中拾った気分である。雨に濡れて冷えた身体を震わせながらも信用してない相手に警戒する姿が当てはまる。
まあ、真波さんは震えてないけど、俺が近づけば逃げていきそうな距離感を保っている様子に愛しく思う。
謝りながらも笑い続ける俺に、訳が分からないと言った表情で俺を見上げる真波さん。
「おまえ…なに、考えてんの?」
「え?俺ですか?俺は真波さんのこと好きだってさっき言いましたよね?…信じてもらえてなかったみたいなんで、キスしただけですよ?」
あたかも当然のことをしただけだと言って、真波さんに近づく。
真波さんはピクッと動いたかと思えば硬直したので身体に覆いかぶさるようにベンチの腰掛けと座面に手をついて逃げ場を無くし、顔を近づけて悪戯心たっぷりに笑みを浮かべた表情で聞く。
「俺の気持ち、わかってもらえました?あははっ」