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- 「神バディファイト友ラン」黒雪姫
- 日時: 2019/09/21 22:38
- 名前: again(train) (ID: fqLv/Uya)
やってしまった…。
まだ他の友ラン小説終わらせてないのに新しいの出しちゃったよ…。
ちゃんと全部完結させられんのか、これ…。
って事で(何がだ)、神バディファイト友ランシリーズ多分第三弾目・「黒雪姫」です。
今回は白雪姫をモチーフ(?)にしたオリジナルパロ小説となっております。
(てかアニメやってる時に出したかった!
もうかなり前に終わったよバディファイト!!
私のメンタルと一緒にね(滅)!!!)
神BFアニメ終了のお知らせを聞いた時の我々の反応
a「…え?」
t「…は?」
a「いや…ちょっと待って。疲れてんのかなウチ今ちょっと幻聴聞こえた」
t「ワイも聞こえた」
a「え、何……最終回って言ったの?最終回って何サイシュウカイってナニソレ食えんの??え、嘘だろねぇお願いだから嘘って言ってよ言えよ言え」
t「嘘だよ」
a「嘘だよな」
t「嘘だ」
a「だよな!」
t「…」
a「…」
t「……again」
a「……なんだtrain」
t「…この世界は、残酷なんだ(ミ○サ)」
a「いっ、いやだああああああああああっ!!」
t「落ち着け!もうどうにもならないんだ!これはもう、決められた事なんだよっ…(ギリッ)!」
a「いっ、いやだあああっ!俺は認めないっ、認めてたまるか……っそんなの嘘だ!!お前は嘘をついている!!俺の心を惑わせようとして、それで…っ」
t「again!!」
a「(ビクッ)」
スッ…(優しく肩に手を置き)
t「……気持ちは分かる。けどな、本当に、どうしようもないんだ」
a「う…うぅう……っ」
t「現実から目を背けてはいけないよagain…。…終わるんだ、すべて。何もかも………。」
☆アニメ一個終了にこの茶番ーーーー
- Re: 「神バディファイト友ラン」黒雪姫 ( No.2 )
- 日時: 2019/09/22 13:47
- 名前: again(train) (ID: 7hcYnd26)
*
「此れより、魔女の処刑を開始する。」
十字架に括り付けられた女は、ただ何を見るわけでもなく、虚空に目線をやった。生気のない、虚ろな表情で、辺りを見渡す。「やれ」「コロせ!」と、狂気と歓喜に満ち溢れた民衆達が、女に向かって石を投げつける。力一杯投げつけられたそれによって、女の身体はもうすでにボロボロであった。石は、女の服と皮膚を裂き、肉に刺さり、指をひしゃげ、骨を折る。全身が血塗れで、足元にはいくつもの血溜まりが出来ていた。
「罪深き魔女に、相応しき報いを!!」
傍らの処刑人が叫ぶ。
それでも女は、なく様子も、痛がる様子も一切見せずに、真っ直ぐ顔を上げる。まるで、その全てを受け入れるかのように。
(これが、私の宿命であるというのであれば、受け留めます。ですから、)
「点火ーーーーー」
(ですから、どうかーーーーーー)
「始めッ!!」
“ボウッ“
(どうか、あの子だけはーーーーーー)
- Re: 「神バディファイト友ラン」黒雪姫 ( No.3 )
- 日時: 2019/09/22 16:31
- 名前: again(train) (ID: 7hcYnd26)
「…………………………………っはぁッ」
息苦しさを感じて、おれは勢いよく飛び起きた。苦しくて苦しくて、乱れた呼吸を整えようと、めいいっぱい息を吸う。
吸って、吐いて、吸って、吐いて。
何度か繰り返しているうちに、少しだけ楽になってくる。寒気も震えも収まらないが、何とか、いつも通りの呼吸を確保できた。
その事に安心したおれはまた、ボフンッとベットに身を沈める。柔らかな枕に埋もれながら、小さく溜息をついた。
(あぁ、またか……)
最近………というより、ずっと前からだろうか。毎晩毎晩夢に現れる、酷い悪夢。二年も前の事なのに、今だに頭から離れてくれない、あの光景。自分の母親が焼き殺されるのを、ただ泣きながら遠くで見ているしかできなかった、あの日の出来事。
「きっと、死ぬまで解放されないんだろうな…」
手枷のように、足枷のように。あの悪夢はいつまでもおれに纏わりついてくる。忘れられたのなら、どれほど幸せだろう。今だって目を閉じれば、ほら。肉の焦げる嫌な匂いがしてくるような気がして、思わず吐きそうになる。駄目だ、気持ち悪い。目眩がする。
「……っぅえ」
喉の奥にせり上がってきた吐き気を抑えて、何とか立ち上がった。木製の床が、キシリと音を鳴らす。
このままじゃきっと眠れない。近くの泉で、顔でも洗って来よう。おれは扉の方へと向かった。
外は、明るかった。
満月に照らされ、辺りの木々が白く光っている。今は多分、丑三時を過ぎた頃くらいか。とても静かだ。風の音も、動物達の鳴き声も聞こえない。だが、不気味さは感じなかった。少々心寂しい気もするが、夜はいつもこうだ。別段気にする事もない。それに、今はそれどころじゃない。
「あたま、痛い……」
さっきから、なんだか頭痛がする。
泉についた時には、幾分か痛みは和らいでいた。締め付けるような痛みからは解放されたので良しとしよう。早めに済ませて、戻ろう。泉に手を伸ばし、触れる。月を映した水面が揺れて、満月がぼやけた。冷たい液体に、チャプンと指を沈めていく。おれはぼんやりとしながら、それを眺めていた。
魔女は基本的に、炎以外で死なない。切られても、殴られても、剥がされても、抉られても、死ぬ事はない。死ねない。寿命なんてないし、不治の病とやらにかかったとしても、その苦しみから解放されることもない。焼かれなければ、死ねないのだ。おれはぼんやりとしながら、水面を見つめた。もしおれがこのまま身を乗り出してこの泉の中に飛び込んだとしたら、おれはどうなるのだろうか。魔女の仔でありながら、人の仔でもあるこのおれは、死ねるのだろうか。肺に胃に身体中に水が満たされ、酸素が行き渡らなくなり、息の出来ない苦しさにもがいて、それでも意識は無くならず、深く奥底に、沈んでいく……。
「………なんて」
そんな想像をして、思考を一時停止させた。沈めていた腕を持ち上げる。不思議と、そのことに恐怖は覚えなくて、むしろ心地良ささえ感じた。何故なんだろう。永遠に苦しみ続けるなんて嫌なはずなのに。ただ、おれの存在は誰にも認められず、忌まれるだけなのだという事実しかないという事。おれが死んでも、誰も悲しまない。死に対して恐怖がない、といったら嘘になる。けど、必要とされない存在だけに、死への恐怖に対して希薄になっている所も、あるのかもしれない。こんな事を考えるのも、そのせいか。
「そろそろ帰るか……………、っ?」
帰ろうとして、立ち上がって、ふと息を飲んだ。木と木の間の草が揺れる。その瞬間。
「っわ」
「っ、」
真っ白な兎と、それから、赤と青の髪をした少年が飛び出してきた。
「あっ、こらっ……」
少年は手を伸ばす格好をして兎を捕まえようとするが、おれと目が合って、動きを止めた。おれもその場に硬直する。兎はピョンピョンと飛び跳ねながら、やがて草むらの中へ消えていった。
「ええと……」
少年はおれと同じ驚いた表情をした。年齢からして、おれと同い年くらいか。
でも、どうしてなんでこんなところに、こんな時間に人間がいるんだ?混乱した頭を必死に動かそうとするが、頭がフワフワして思考がまとまらない。ボーとする。
「君は、ここで何してるの?」
それはこっちの台詞だ。お前こそ何してるんだ。
そう言いたかったが、舌が上手く動かない。少年の輪郭がぼやけた。
次の瞬間、おれは意識を手放していた。
- Re: 「神バディファイト友ラン」黒雪姫 ( No.4 )
- 日時: 2019/09/22 22:23
- 名前: again(train) (ID: 7hcYnd26)
目を開けると、見慣れた天井が視界に飛び込んできた。
(あれ、おれ…確か、泉に行ったはずじゃ………)
そこまで考えてハッとする。
そうだ、おれ、昨日泉に行って、そしたら、草場から男の子が……
(………っ)
慌てて飛び起きようとするが、身体が思うように動かない。アイツは一体どこに行ったのだろう。
「あ、目、覚めたんだな!!」
その時、ちょうど扉が開く音がした。同時に元気な声がして、おれは視線を向ける。見れば、赤と青の髪の昨日の少年が、両手にいくつかの果物を抱え、嬉しそうにおれを見ていた。…何をしてるんだろう。
「……ええと」
「あぁ、起き上がんない方がいいぜ。まだ熱残ってるだろうし、無理して悪化させちゃったら、大変だもんな!」
ニコっと笑って、テーブルの上にフルーツを並べる少年。思考の回らない頭でその様子を見ていると、視線に気づいたソイツは、またニコっと笑った。そのまま近づいてくる。
スッと手が伸びてきて、おれの額に、手の平が置かれた。ヒンヤリとした心地良さに、思わず頬が緩みそうになる。しかし、すぐにソイツが人間であるということを思い出し、顔がこわばった。油断しちゃ、いけない。いくら子供と言えども人間は人間。おれの敵である事に変わりはない。
「な、にすんだよ……」
「ん?熱測ってるんだぞ?……わ、やっぱまだ熱いな…。……どうする?果物採ってきたんだけど、食べれそうか……?」
「……」
言われて、少し喉が乾いてる事に気がついた。クラクラするから、こういう時は甘めの水分が欲しくなる。仕方ない、ここは一つ、コイツを利用してやろう。おれは小さく頷いた。
ソイツはしばらく向こうをウロウロして、あった、と小さく漏らした。多分ナイフを探していたんだろう。テーブルの果実を一つ選んで、こちらに戻ってきた。いつも食べているものだが、赤赤とした美味しそうな果実に、思わず喉がなる。熱だから、余計そう見えるのか。
「なぁ、皿って、何処に置いてあるんだ?」
「ない」
「え?!じゃあ普段どうやって食べてんだ??」
「適当に、そういう果物つまんで、たまに魚食べて。それで済ましてる。」
おれはこれでも、魔族の端くれだ。毎日食わなくても、空腹に悩むことはない。ただ、全く腹が空かないというわけではないから、木の実や果物を口にして生活していた。魚も食べはするが、獲るのが面倒くさいため、こちらは食べる回数は果実に比べて圧倒的に少ない。それに、魚は"焼く"という手間暇がかかるし……火が苦手なおれにとっては、進んで食べる気はしない食材だった。だから食べるにしても、棒で串刺しにして軽く炙るか、もしくは生のまま食べることが多い。ちなみに、生はクソまずい。言うまでもなくクソまずい。訂正する。生で食べたのは、初めの一回だけで、あまりにもまずかったので断念した。ものすごく野生動物が羨ましくなった瞬間だった。苦い思い出ってこういう事を指すのか(物理的に)。うん、生は苦かった。まぁ、生焼けも十分苦いけど。
「それ絶対駄目だろ!」
魔族云々は伏せて軽くその事を話すと、ソイツは青ざめて言った。人間からしたらそれが一般的な反応なんだろうが、おれはもうこの生活になれてしまった。人としてどうなのって思うかも知れんが、おれは人じゃない。知らん。
「家族の人達は?」
「そんなのいない。ここで一人で住んでる。」
「……」
しばしの沈黙。いや、絶句と言った方が正しいのか。唖然とした表情をする少年。おれと同じくらいの年なのに、こんな森の奥で一人暮らし?と言いたげな顔だ。しまった。話しの流れと意識の薄れで、つい喋りすぎた。コイツにわざわざ自分の生活について話す必要なんてなかったのに。何やってんだ、おれは、と思ったが、もう遅い。果物の皮を剥く手が止まり、うつむき出す少年。おれは顔を顰めた。「大変だったんだな…」とか、安っぽい同情の言葉は聞きたくない。ましてや、可哀想になんて思われるのはまっぴらごめんだった。そんなものは不快でしかない。皮剥きを促そうと口を開きかけた時、ソイツはいきなりバッと顔をあげた。
「すっ」
「す?」
「すっっげぇなお前!!こんなとこで一人で暮らしてるって!なんか、すっげぇかっこいい!!」
「はぇ?」
まさかの予想外の反応に、素っ頓狂な声が出てしまう。すごい。カッコイイ。斜め上の台詞過ぎて、その言葉を理解するのにかなり時間がかかった。その間にも器用に果物を剝いていく。おれが困惑していると、少年の方から話しかけてきた。
「なぁ、ここっていつから住んでるんだ?」
「、そんなの、お前に関係ないだろ」
「えぇー…。じゃぁ、名前なんて言うんだ?それだけでも教えてよ」
「っ、だから!お前に教える義理はないんだよ!」
「オレ、友牙っていうんだ!お前は?」
「人の話を聞け!!」
何なんだ何なんだこいつは。さっきおれに「すごい」と言った時、コイツは"こんなところ"に住んでいる事に対する好奇ではなく、純粋に「すごい!」という目をしていた。不思議で仕方ない。こういうのって、大体好奇の目で見るか同情するかのどっちかしかない奴らばかりなのに。コイツは…。それと、勝手に人の心にヅカヅカ入りこんできて、全くの無遠慮!デリカシーなし!あと、お人好しで偽善者だ。なんで知りあいでもなんでもないおれに、ここまでしてくれるんだ?別に、ベットまで運んだとしても、そのまま帰れば良かったじゃないか。なのに、なんで…。
(あ、そっか)
コイツ、ここに迷い込んだのか。
それで、住主のおれなら帰り道を知ってると思って、こうやって抱包してるんだな。だけど、残念ながらおれはコイツを生きて返すつもりなどない。この熱が治ったら、コイツは殺す。おれがここにいる事を口外されては困るからだ。「魔女は見つけ次第殺せ」が通常のこの世界で生きるには、仕方のない犠牲だと思っている。魔族かどうかなんて、いつバレるか分からない。母親がそうだったから。王政政府じゃなくても、村人に見つかっても駄目だし、それに、コイツも学校で世界法律は教わってきているはずだ。おれが魔族の血筋を引いていると知れば、躊躇なく通告するだろう。だからおれは、コイツの優しさに、惑わされてはいけないのだ。
「切れた!」
ちょうど剥き終えた果物を一口サイズに切った少年ーーー友牙が、嬉しそうに声を上げる。ほんの少しいびつな形が、一生懸命剥いたんだな、という事を感じさせた。それがおれのために切ってくれたんだと思うと、また頬が緩みそうになる。駄目だ駄目だ、しっかりしろ、おれ。
「じゃ、はい。あーん」
「……っへ?」
って、コイツは何やってるんだ?!
「?なに…って、あーんしてって、言ってるんだよ?」
「いや、そんなのは分かる!!問題はそこじゃなくて!何平然と食べさせようとしてんだよ!!」
「だって、ビョーキの時は、食べさせてもらった方がいいだろ?それに、無理して動いて悪化したら駄目だって、さっき話したばっかじゃんか」
「でもっ…だからって…っ」
「あーん」
「……」
あぁ、クソっ。人の話本当に聞かねえのな、コイツ!!
小さく口を開くと、一口に切られた果物がコロンと入ってきた。咀嚼すると果汁が溢れてきて、カラカラだった喉を癒やしてくれる。甘い。
「おいし?」
「……ん」
友牙は笑う。飲み込んだ頃合いを見て、また口の中に入れてくれる。ふいに、頭に何かが触れた。友牙の手が、おれの頭を撫でている。大切なものに触れるような優しい手つきで、ゆっくり、ゆっくり。………………………そういえば、おれはこうやって、誰かに付きっきりで看病してもらった事って、あったっけ。母親は、おれを嫌って遠ざけてばっかだったし、父親もおれに無関心だったから
、近づこうとなんてしなかった。周りの執事や家政婦達も、必要最低限の事しかしなかったし、熱を出しても一人部屋に隔離されていただけだった。こんなあったかい手の温度なんて、おれは知らない。
「……っ」
「…っ?!」
気が付けば、おれは泣いていた。自分ではコントロール仕切れないなにかが、咳を切ったように溢れ出てくる。目元を伝って、枕へと落ちていく。友牙の息を飲む声が聞こえた。
「ごっ、ごめん、撫でられんの、嫌だったか?」
「………ん、ん」
静かに首を横に振る。友牙は引っ込めかけた手を、また伸ばしてきた。「撫でていい?」と聞いてきたので、黙って首を縦に振った。友牙の手の平の温かさが、また伝わってくる。その温度に身を委ねながら、しばらくおれは、泣き続けていた。
- Re: 「神バディファイト友ラン」黒雪姫 ( No.5 )
- 日時: 2019/09/23 14:34
- 名前: again(train) (ID: Ga5FD7ZE)
「落ち着いたか…?」
「……ん」
おれが泣き止むと、友牙は優しく顔を覗き込んできた。泣いた後の顔なんて、見られたくない。顔をそらすと、「あぁ、ゴメンな」と苦笑いする声が聞こえてきた。
人前で泣いたのなんて、いつぶりだろう。生まれた時産声を上げて以来、泣いていないんじゃないかと言うくらい久しぶりな気がする。自我が芽生えた頃からすでに父親からも母親からも疎まれていたから、そもそも子供のように"泣く"というのは、許されていなかった。泣けば、母親はいつも顔を顰めて、煩わしそうな表情をしていた。機嫌が悪ければ、容赦なく平手が飛んできた。そんな中で生きていたから、いつの間にかおれは、泣くという事をしない子供になっていた。けれども、コイツの前にいると、なんだか調子が狂わされてしまう。さっきからおれは、コイツのペースにのらされてばかりだ。心がだらしなく緩みきっている証拠なのか。別の意味で、目眩がしそうだ。
「なぁ、あのさ」
友牙が口を開く。顔は背けたまま、「何?」とだけ聞くと、友牙は一息置いて、言った。
「おれの村にさ、すっごく美味しい食べ物があるんだ」
「…は?」
いきなり何を話し出すのかと思えば、食べ物の話?頭の上にクエスチョンマークを浮かべるおれをスルーして、友牙は村について語りだす。
水が豊富にあって、土は作物を育てるのにとても適していて、美味しい食材を育てる事が出来るということ。毎年、村長が東洋から仕入れた「サクラ」という花が、春にとてもきれいに咲くという事。村の人達は皆親切で、優しい人ばかりだ、など。友牙がどれほど自分の故郷を愛しているのかが、ものすごく伝わってくる。
「んでさ…………っあ、いけね、つい喋り過ぎちゃった。ごめんごめん。……だからさ、今度色々持ってくるよ。美味しいものとか、綺麗なものとか、珍しいものとか!!あとさ、おれ今母さんから料理教えてもらってるんだけど、最近ちょっとずつ出来るようになってきたんだよなー!いやー、本当に料理って難しいよ。火加減とか、野菜を煮る順番とか考えなきゃいけないし、切り方にも何個か種類あるし、最初は本当に…悲惨だった…。」
「…ゆ、友牙?」
「でも、本当に最近はなんとか形になってきたから、君にも教えられると思うんだ!」
「………………はい?」
「果物ちょっととか、生焼け魚とか、さすがに栄養バランス悪いどころじゃないから、おれが調理の仕方、教えるよ!」
「……ちょ、」
「大丈夫!材料とか、使う道具は全部揃えて持ってくるから!」
「いやっ、ちょっと待てって!お前、さっきから何言ってんだ?!」
「え?これから毎日ここに来るから、一緒に料理しよう!って、言ってるんだぞ??」
「……はあああっ?!」
思わず大きな声で叫んでしまい、むせ返る。心配そうに「大丈夫か?!」と背中をさすってくる友牙だが、こうなってるのお前のせいだからな。分かってんのかオイ。
「いや、ホンッット意味わかんねぇ!!毎日来るって、何言ってんだよ?!しかも料理教えるって、会ったばっかの知らねえ奴にそんな事言うか普通?!言わねぇしやらねぇだろ!なぁ!!」
「……」
「え?」という顔でおれを見返してくる友牙。なんだよ、おれは変な事言ってねぇだろ。
「……おれらもう友達じゃなかったのか??」
「う"ぐぅッ」
いつの間にかおれはコイツの「友達」になっていたらしい。冗談じゃない。誰か友達だ。おれは敵と仲良くする気なんてないぞ。
「っ…!もういいから!さっさと帰れ!!そんで、ここにはもう二度と来るな!!」
「わかった!!一回帰って、材料揃えてからまた来るな!!!」
「人の話聞いて?!」
何なんだ…。本当にコイツは何なんだ?!
おれの中の常識の中の論外すぎて、「何なんだ」しか出てこねえよ!!何なのホント!!ねえ!!
「あ…、ちょっと熱は下がったかな……?」
"ぴとっ"
「っっっっ!!」
友牙がいきなりかがんで、顔を近づけてくる。と、さっき手の平で測っていた熱を、今度はでこで測り出した。近い近い近い!!鼻と鼻の先がくっつきそうなくらい近い!!
「おっ、おい…っ、離れろってぇ…?!」
「……あれ、また顔赤くなっちゃた…。大丈夫か?苦しくないか……??」
「く…っ」
何たる屈辱!!同じ男とあれど、同年代の子に面識のないおれは、顔を近づけられて真っ赤になってしまった。友牙は、それを熱のせいだと思って心配しているが。勘弁して欲しい。今までだって何度も一人で困難は除いて来たおれだというのに、このペースの乱されよう。この規格外を、どう対処すればいいのだ。
「っ、てか!いいのかよ!!!」
「?何が?」
自分のペースを戻すべくおれは友牙に言った。なんの話といいたげな顔をしていたので、話を続けてやる。
「お前、迷子だろ?どうやって帰るつもりなんだよ。」
「へっ?」
しばしの沈黙。そして、
「あああああああああああああああっっ?!」
「うっるさい!!なんだ!!」
「そっか、おれ……」
「?」
「迷子だったのか!!!」
「気づいてなかったの?!?!」
いやもうここまでくるとかなりの阿呆。しっかりしてるなとは思ったが、人の話聞かないわ抜作だわで、論外と規格外をすでに超えているかもしれない。キングオブ規格外。人の心配よりまず自分の心配をしようか。
「兎追いかけるので必死だったから、自分がどこ走ってたのか、全然気付かなかった……」
「……あの兎食用?食うの?」
「まさか!兎の肉は食べないって、村で決まってるんだ。あれはミミっていって、ミコが飼ってる兎なんだよ。いきなり柵から飛び出して、シレウ”ァの森に入ってっちゃうから…。急いで追いかけてたら、………うん、そこで、君に会った。」
「はぁー…。」
シレウ”ァの森。おれが住むこの森は、そう呼ばれている。珍しい果物や魚が捕れるが、この森の面積はとてつもなく広い。一度迷い込んだ人間が出られた事は、一度もないそうだ。おれにとっては、もうここは自分の庭のようなものだが、それは今だから言える事。当初は散々迷って、野生動物の影に怯えたりもしていたが……。
(ってか、そっか。コイツは別に、帰り道が知りたくて看病してたわけじゃあ、なかったんだな…)
よくよく考えてみれば、そうだ。道を教えてもらいたかったなら、何もここまで親切をする必要はない。おれが目を覚ますのを待ってから、さっさと聞くだけ聞いて帰っているはずだ。つまり、コイツのこの優しさは、打算でもなんでもなくて、もともとコイツが持っている"素"なのだろう。
「………橙色の果実がなる木。」
「え?」
「帰り道だよ。教えるから、全部覚えろ。いいか?」
「!ありがとう!!」
パァッと笑顔になる友牙。
おれは友牙に、帰り道を教えてやる事にした。
「最初に、お前と会った泉があったろ?あそこの、兎とお前が出てきた草場の木、青い葉が実ってるやつ。あの場所から真っ直ぐ入っていくと、オレンジ色の果物が成ってる木があるから、そこを右に曲がって行く。いいか、右だぞ。絶対間違えんなよ。もしそれで違った方にいって戻れなくなってもおれは知らないからな。それから…」
一通り話し終えると、おれは友牙に向き直った。所々聞き返しながらも、なんとか記憶出来たらしい友牙はもう一度、「ありがとう!」と言ってくる。なんだか、こうして誰かに感謝されるのって、すっごくむず痒い。なんて反応を返して良いか分からず、頷くだけ頷いてみせた。
これでコイツもいなくなるだろう。と思っていた。しかし、一向に椅子から動こうとしない。ベットの脇でおれを見つめながら、フワフワと微笑んでいるだけだ。
「……何やってんだよ」
「?」
「もう道は教えてやったろ。だったら、早く帰……」
「君の熱が下がるまで、おれ、ここにいるから」
「はぁ?」
「おれが帰ったら、看病する人いなくなっちゃうだろー」
だから。
そう言って、今はまだ帰る気はないと主張する。まったく、どこまでいってもお人好しだ、コイツは。
「おれは、ここにいるよ」
おやすみ、と頭を撫でられる。重たくなっていく瞼。徐々に暗がりへと満ちていく視界。……なんでもいっか。なんだかとても、コイツのそばにいると、どうしようもなく安心する。
おれは静かに、目を閉じた。
その日の夜、おれは悪夢を見なかった。
- Re: 「神バディファイト友ラン」黒雪姫 ( No.6 )
- 日時: 2019/09/23 22:59
- 名前: again(train) (ID: Ga5FD7ZE)
* * *
「おい」
「?」
「帰るのはいいが、一つ約束しろ。……おれがここに住んでる事は誰にも言うな。お前は森を一人で彷徨い続けて、気がついたら、元の道に戻れてた。そんな奇跡の生還者を演じろ」
何か言いたげな表情だが、その言葉を飲み込んで友牙は「分かった」と返事をした。
「あと、あの兎。見つけたら、お前の村の周辺に捨てとくから、拾っとけよ」
「……ホント、ありがとな…」
次の日、友牙はこの森から出ていった。
* * *
「おーい」
そういって別れたのが、昨日の朝方だった。あの時間帯ならおそらく、正午ぐらいには村に戻れているだろう。頭の中でそう予測をつけながら、友牙の後ろ姿を見送った。森の木々の中に消えていく友牙を見届けてから、また一人になった家へと戻った。お節介焼きのお人好しがいなくなって、静まりかえった部屋に、いつも通りさを感じた。それなのに、どうして、心のどこかがぽっかりと空いてしまったような感覚がするのだろう。いつもの空間に変な違和感を覚えたのも、つい昨日の出来事。だったのだが。
「はぁっ、はぁっ、……良かったぁ、道、合ってたぁー……っ」
「おまっ…、ホントに来たのかよっ?!」
赤と青の髪を揺らして、息を切らしながら走ってきた友牙。両手には、かなり大きめの木箱が抱えられていて、中に入っているものが、ガチャガチャと音を立てる。箱の上に乗せられている袋は、かなりデコボコとした形で、おそらく中には料理用の食材が入っているのだろう。
それにしても。本当にやって来たのが以外だった。しかも、本人はもう料理をやる気でいる。わざわざこんなものまで持ってきて、このややこしい道のりを歩いてきたっていうのか。
「?"毎日来る"って言ったろ??……きーてくれよ、おれさっき、分かれ道んとこで、どっちかわかんなくなってさー……」
そう言いながら荷物を降ろそうとする友牙。しかし、途端にバランスを崩し、箱がグラリと傾く。危ないっ!!急いでその場に駆け寄って、箱を反対から支えた。……ふー…、ギリギリセーフ。
「ったく、気をつけろよな。そんな大きいの、よくそれで持ってこれたな」
「これでもけっこう、鍛えてるんだぞ?」
「はーん…」
鍛えてる、ねぇー。
「でも筋肉そんなついてなくね?」
「…う、今はまだセイチョーカテイなんだよ!!これからつくんだよ!……多分。」
おい。最後多分てなんだ。自信なくなってるぞ。聞いたところによるとどうやら友牙は、街で荷物運びの仕事をしているらしい。なんでも最近始めたばかりで、週に二回の日程なんだとか。働いている理由は、単なる小遣い稼ぎだと言っていた。それと、"将来"の事を考えて貯蓄するんだとか。
「へー……。そいつは偉いじゃんか。まだお前、11か12くらいだろ?」
「当ったりー。今年のニ月に、12になった」
二月。おれと同じ月だ。思ったけど口には出さない。
「君は…ってなあなあ、そろそろ名前教えてくれよー!なんか、いつまでも"君"って呼ぶの、いづいっていうかなんていうか……。」
「……嫌だ」
「えぇー…」
不満そうな声を上げる友牙だが仕方ない。
おれは、自分の名前が嫌いだ。
この世界には「黒雪」と呼ばれる、真っ黒な雪が降る日がある。一年に一度、二月の初めに、一日だけ。人々にとってそれは白い雪が黒く染まるという異常現象で、皆、死の象徴として忌み嫌っていた。黒雪が降る日は外に出ないよう義務付けられている国も、かなり多い。
そんな中、おれが生まれたのも二月一日、つまり黒雪の降る朝だった。黒雪。「黒雪」が降る日に生まれたから、黒雪。この世に、大罪を背負って生まれてきた、惨めで哀れな呪子。誰からも祝福されず、生き地獄を彷徨うの。幼い頃、母親に嫌というほどこの名前の由来を聞かされ続け、おかげさまで、今ではこの名を口にすることすら吐き気が込み上げてくるようになった。
最も、この名前を呼ばれる事は極めて少なかったし、森にきてからは一度も口にもしないし聞きもしなかったが。
「じゃー、君の事、なんて呼べばいいんだ?」
「……「君」でいいだろ」
「だーかーら!それ、変な感じするから、名前で呼びたいんだ!!友達に二人称使うなんて、聞いたことないぞ!」
「いや、そもそも友達じゃねーし」
そう言うも、相手はこの「人の話を全く聞かないキングオブ規格外」だ。おれの小さな反論を華麗にスルーして、顎に手を当てなにやら考え始めている。
しばらく「うーん」と唸っていた友牙だが、唐突にガバッと顔を上げた。毎回思う。その急に顔を上げるの、ビックリするからやめて欲しい。
「おれ、いいこと思いついちゃった!!」
「……?」
「君の名前!!"ランマ"、ってのはどうだ?!」
「はぁ…」
らんま。ランマ。ランマ。頭の中で反芻させてみる。何を持ってしてその名前になったのか。気になるといえば気になるが、そこもあえて聞かない。聞く必要がないからだ。どうせおれとコイツの「トモダチ関係」とやらも、多分長くは保たないだろう。嬉しそうな顔をしておれを見つめている友牙を一瞥して、小さく溜息をついた。
「……お好きにどーぞ」
「!改めて、よろしくなっ!ランマ!!」
部屋に入ると、早速友牙が木箱の中身を取り出し始めた。フライパン、オタマ、鍋、フライ返し……などなど、日常生活で使用されると思われる料理道具を、慣れた手つきでテーブルに置いていく。
「ここって、キッチン使えるのか?」
「そこから?」
使えない。かなり前に試して駄目だった。火を付けるときは、自分の魔術を最小限度まで下げて、それを利用していた。もともと魔女の能力ってのは、争いのためにあるものだ。料理をしたり、お風呂を沸かしたり、洗濯をするためのものじゃない。食べ物(主に魚)を焼くに適した火加減を、魔術で代用するのはかなり苦労する。調節が難しいのだ。
「………どーだろ。ここにきてから一度も使ってないからな……」
「ま、駄目なら駄目で、別のものを作ればいい話だけどな。」
"カチ"
"ボッ"
「あ、ついた」
「うっそぉ……」
嘘だろおい。ついちゃったよ。
(………………深い事は気にしないようにしとこ…)
「じゃあ、まずは、手始めに目玉焼きからやってみようぜ!……って、その前に」
「?」
「料理する時もその格好じゃあ、さすがに汚れちまうよな…」
そういって、おれの全身に視線をやる友牙。おれはもう一度自分の格好を見返してみた。
肩を出したデザインの、薄生地の黒いロングドレス。髪飾りのヘッドドレス。なるほど、これは料理をするに当たって有り得ない服装だ。いつもは適当に食べて済ましているだけに、ずっとこの格好で通してきていたから何も思わなかったが、改めて考えると、そうか。
この服は、おれのイメージ魔術で作られている。脳内でイメージしたものを、そのまま具現化出来るというものだ。本来武器の創造に使われるこれは、おれの日用代理品として有効活用されている。おれがイメージすれば、新しい服装にするのも可能だ。洗濯しなくても、服を綺麗な状態に戻すことも出来る。日用道具も作りだせる。しかし、これにはかなりの体力消耗という欠点があり、作れる物もその個数も限られている。その限界を超えると、翌日は一日ベットで寝たきり状態になる。残念ながら、「願えばなんでも手に入る能力」ではないのだ。
「着替えてくるから、待ってろ。」
衣装チェンジのために一旦外に出ようとすると、友牙に引き止められた。正確には、腕を引っ張られた。なんだ。
「オレ、ランマのために、料理用の服持ってきたんだ!!良かったらそれ着て!!」
「へ」
反応を返す暇もなく、ポンとそれらを一式手渡された。みれば、淡い桃色と檸檬色の布が綺麗に折りたたまれてある。
広げてみると、エプロンと花柄ワンピースだった。
「……友牙。言っとくけど、おれ男だからな(一応)」
「知ってるぞ?」
「なら、いいけど……」
普段あんな格好をしているから、女と間違われているのかと思ったが、どうやらおれが男だということは知っていたらしい。いや、だとしたらおかしくないか?これ、どうみても女物だぞ?
(って、いつもドレスの奴が言えた義理じゃねぇか)
おれの普段着は、かつて母親が着ていたドレスを真似たものだった。いつもほとんど部屋に軟禁状態で、街に出かけた事もなかった。イメージするにしても、自分の中の服装の知識があまりも少なすぎた。それで浮かんだのが、一番多く目にしていた、大嫌いな母親の姿だった。血みたいに真っ赤なドレスに、黄金の、小さめの冠。ドレスのデザインだけを想像して、色は黒に変えた。頭飾りは、王宮のメイドたちのをイメージしたものだ。
何が言いたいのかっていうと、つまり、
「……おれは、進んで女装したいからしてるってわけじゃ、ないからな…!」
小さくそう言いながら、友牙が準備をしている間に着替えを済ませた。膝よりほんの少し上の、ワンピースの裾が足に当たる。
途端、一気に恥ずかしくなってきた。
いつもドレスといえども、あれとこれは違う。着慣れない上に、完全にこれは女物の服だ。…普通に羞恥心が込み上げてくる。
「似合ってるぞ!ランマ!」
隣に立つと、友牙がそんな事を言ってきた。似合っている、と言われても嬉しくない。こっちとしては恥ずかしいだけだ。
「……それ、全然褒め言葉になってないからな」
「えー、なんでだよー。ランマって、線細いし、目とかぱっちりしてて大っきくて可愛いし…。そういう格好も、似合ってていいと思うんだけどなぁ」
「っ、」
言う相手間違えてないか?そういう事言われて喜ぶのは女だけだろ……。あまりにも純粋な目で言ってくるので、おれはもう何も言えなくなる。仕方ない。友牙はこういう奴なんだ。諦めろ。
「じゃあ、さっそくやってみよー!」
「お、おー……」
吊られて掛け声をかけてしまう。
「目玉焼きは、基本中の基本だからな!油を敷いて、卵落とすだけ。簡単だろっ?」
説明しながら、フライパンの上で器用に卵を割って、落とす。卵はジュウッと音をさせながら、きれいな円を描いた。透明な部分が、徐々に白くなっていく。
「……で、後は全体的に見て、良さそうだったら、皿に盛り付ける。……よしっ、次、ランマの番!」
「……」
そういって、フライパンを手渡された。…料理なんてやったことないが、流れとしては至って単純そうだ。見よう見まねでやってみよう。
まずは、油を敷いて、まんべんなく行き渡らせてから、卵を、落として……。
"バリッ"
「「あ」」
失敗した。
円を描く卵の中に、割れたからが落ちてしまう。黄身の部分が潰れなかっただけ奇跡か。
「い、以外と難しいな、これ…」
「あははっ!オレも最初それやったよー。簡単そうに見えて、実は初めは、皆殻入れちゃうんだよなぁ」
言いながら、並べた道具の中から二本の棒の様なものを一組とって、落ちた殻を取り除く。……ずいぶんときれいな形をした木の棒だ。
「…なぁ、その木のやつって、なんなんだ?」
「"サイバシ"。こうやって、料理用に使われる"ハシ"なんだ。見た事ないのか?」
「……あぁ」
そもそも、"ハシ"というものを知らなかった。こういう木の棒のことを、"ハシ"っていうんだな。
しばらくして、焼いたそれを皿に盛り付ける。
昔、朝食に出てきた事はあっても、自分で作った事はなかった。皿の上の目玉焼きに、視線を落とす。……新鮮な感じがして、悪くはない。
「冷めないうちに、食べようぜ!!」
友牙がパタパタと運んで、おれもそれに続く。
テーブルについて、手を合わせる。ちなみに、目玉焼きの他には、採れたてのレタスとトマト、食パンがふた切れずつある。とても美味しそうな色合いが、おれの胃袋をくすぐった。
「「いただきます」」
「……………わ、」
「ん?」
「……すっごく美味しい……。」
「だっろー♪」
嬉しそうに、ニパッと、友牙が笑う。
レタスが、とてもシャキシャキとしていて、歯ごたえがいい。トマトは甘いし、パンはフワフワだ。それに、目玉焼き。自分で作った(といっても焼いただけだけど)からか、昔食べたものよりも、百倍美味しく感じる。なくしたはずの味覚が、戻ってきたような気がした。
「これからも、いーっぱいいろんなの持ってくるから、楽しみにしててくれよな!」
「う、ん」
………………………王宮での食事は、味がしなかった。
いつだって無味乾燥で、一度ども美味しいと感じた事はなかった。
ただ機械的に、食物を体内に取り入れているだけにすぎなくて。
(……ホント、なんでこんな美味しんだろ………)
向かいに座る友牙を見た。レタスを頬張っている。
「……ぶふっ」
「ん?ほうしたんら、らんふぁ??(訳:どうしたんだ、ランマ??)」
「……………………………………………リスみて」
「んぐっ?!」
リスみたいに膨らんだ、ほっぺが面白くて、つい吹いてしまった。リスみたい、と言われた友牙が、何かを言い返そうとして、喉に詰らせてしまう。
「あぁ、ほら、ばか!水水!!」
「……っぐ、死ぬとこだった……」
「何やってんだよ……ったく」
「ランマが、リスみたいとかゆうから!!」
「だって、ホントにリスみたいだったんだよ!しょーがないだろ?!」
そんなやり取りをして、互いに顔を見合わせる。
「ーーーーーーーーぶっ、」
「ーーーーーーーーくっ、」
「「あっはははははははははははっっ!!」」
からの、大笑い。
やばい、楽しい。
誰かと一緒に食べる事が、こんなにも楽しい事なんて、生まれて初めて知った。
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