複雑・ファジー小説
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- 100万回生きたひと
- 日時: 2011/04/16 04:07
- 名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: L7bcLqD7)
「おれは 100万回も しんだんだぜ。いまさら おっかしくて!」佐野洋子 著『100万回生きたねこ』より抜粋。
Attention.
:ださくおりてぃ
:今後の展開全て未定
:たまに重い
:亀更新
:マイワールド全開
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プロローグ>>1
パターン1/100万回生きた少年/
#1 >>2
パターン2/街の暴れん坊/一樹
#1 >>3
パターン3/天才ピアニスト/ヨハン
#1 >>4
パターン4/暗殺組織のエージェント/
パターン5/容姿端麗の大富豪/
パターン6/お殿様の懐刀/
- Re: 百万回生きたひと ( No.1 )
- 日時: 2011/04/16 02:11
- 名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: L7bcLqD7)
魂は輪廻して巡り巡るもの。これを一般的に『輪廻転生』という。
本来なら一回一回死ぬ度に、不要になった『前世の記憶』は消えてしまう。
でも神サマのサボタージュなのか仏サマの職務怠慢なのか、この世の森羅万象にはたまーにイレギュラーが発生する事がある訳で。
このひとはそんなイレギュラーの一例。
そのひとは百万回死んで、百万回生きた。
あるとき、そのひとは普通の平凡な少年だった。
普通に悲しい事があって、普通につらい事があって、老いて死んでしまった。
あるとき、そのひとは街の暴れん坊だった。
ある日、一人でいたところをよってたかって殴られたり蹴られたりして死んでしまった。
あるとき、そのひとはピアニストだった。
ある日眼が見えなくなり楽譜を書けなくなったそのひとは、絶望して自分の手首を切って死んでしまった。
あるとき、そのひとは大富豪だった。
お金を目当てにたくさんの人が群がったけれど、病で死んでしまう時は一人ぼっちだった。
あるとき、そのひとはお侍だった。
お殿様に忠実に働いたそのひとは、最期はそのお殿様に捨て駒として扱われて自分の腹を斬ってしまった。
あるとき、そのひとの人生はとてもとてもひどいものだった。
それは言葉なんかで表せないほど、ひどいものだった。
あるとき、そのひとは少年だった。
少年はとても頭が良くて、運動神経が良くて、なにより、自分が大好きだった。
少年は制服姿で、ある高校の屋上で言った。
「ボクは百万回も死んだんだぜ。今更可笑しくって!」
どこかの絵本で同じような事を言っていた気もするけど、その本のタイトルさえ忘れてしまった。
- Re: 百万回生きたひと ( No.2 )
- 日時: 2011/04/16 02:29
- 名前: 紅蓮の流星 ◆vcRbhehpKE (ID: L7bcLqD7)
少年は百万回も生きて百万回も死んだので、頭が良いのも運動が得意なのも当然だった。
百万回生きた分の知識を持っているし、百万回生きた分の経験も持っているから。
ある時は学者だったし、ある時は戦士だった。またある時は芸術家だったし、さらにある時は遠い国の王様だった。
だから、少年には毎日がひどく退屈に感じられる。
「…つっまんないなー…」
学校の屋上で風を浴びる少年は、柵に肘をついてつぶやいた。
クラスの女子から人気があったって、皆が知らない事をたくさん知っていたって、周りから期待されたって、そんなのちっとも。
女に囲まれるのは、大富豪だった時にもう飽き飽きしてしまった。そしてそれは全部お金目当てだった。
どういう経路を辿っていっても、結局最後は死んでしまう。人間はそういうもので、そのルートだけは何があっても外れられない。
百万回生きて百万回死んだ少年にとって、自分の人生はまるで弓矢の矢か花火や爆弾、もしくはゲームの使い捨てのアバターのように感じられた。
少年は、程度が低すぎる周りの人間が大嫌いだった。少年は誰よりも自分が好きだったのだ。
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