複雑・ファジー小説
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- ねぇ、信じてよ。
- 日時: 2011/05/23 21:14
- 名前: キリア ◆Dl2ahzdhQs (ID: ZTrajYO1)
Ⅰ.挨拶
初めまして、キリアと申します。
この名前でお会いするのは、初めてでしょう。
よろしくお願いします。
駄作になると……。
Ⅱ.注意事項
・喧嘩、チェーンメールなどは禁止です。
・もう一度言いますが、駄作になると思います。
・書き方とか、皆様の見よう見まねです。
・内容がかぶるかもしれませんが、悪気はありません。
Ⅲ.前置き
嘘吐き。
その言葉に縛られて、今日も。
相手にしてよ。
嘘吐きだけどさ。
ねぇ、信じてよ。
お願いだから。
Ⅳ.目次
0.ハジマリ >>1 5/15更新
1.知らない、興味ない。 >>2 5/16更新
2.ね、君は誰? >>4 5/19更新
3.え?僕のこと? >>5 5/20更新
4.そう、君だ。 >>6 5/21更新
5.名前は桜。 >>7 5/23更新
更新は、一日一回のペースで進めて行きたいと思っております。
Ⅴ.登場人物
・庵堂 美羽/andou m
女 14歳 主人公
CV「ごめん、興味ない」
「ふぅん。で?」
「嘘吐き」
・宇井亜 瑠歌/uia ruka
女 14歳 主人公の友達
CV「ねぇ、知ってる?」
「だからぁ、大変なんだって」
「嘘じゃないでしょ?」
・星垣 桜/hosigaki ou
男 14歳と思われる
CV「そう、僕は嘘吐きなんだよ」
「ごめんね……」
「そうか、僕が死ねばいいんだね……?」
僕は、嘘吐き。
- Re: ねぇ、信じてよ。 ( No.2 )
- 日時: 2011/05/16 21:12
- 名前: キリア ◆Dl2ahzdhQs (ID: ZTrajYO1)
1.知らない、興味ない。
「ねぇ、知ってる?」
友達の唐突な問いかけに、私は「何」としかいえなかった。
朝のがやがやした教室の中、チャイムがなるのを待つ。女子どうしが固まって、ぺちゃくちゃしゃべり、男子はふざけて走り回る。
後ろを向いて、椅子の背もたれに手をかけてニヤニヤとする友達は、なんとも不気味だった。
名前は、瑠歌。瑠歌は、親友といってもいいほどの友達で、珍説に踊らされやすい。
まさに今、その状況だ。
「私達が幼稚園のころに起きた津波ってさぁ、悪魔の仕業なんだって」
「ふぅん」
興味ないなぁ、とでも顔に書いてあるのか、瑠歌はムッとして、私に語りかけた。
まぁ、正直に興味が無いのだが。
「親戚のおじいさんが言ってた。あの人、嘘は吐かないから」
「へぇ、で?」
「冷たいなぁ。その悪魔がね、何かこの辺に住んでるらしい」
「あっそ」
「……もう美羽には語らないから!」
「いいよ。むしろ嬉しい」
私がこんな態度を取るから、瑠歌はプイっと前に向き直ってしまうのだ。
何にもやることがなくなった私は、騒がしい教室をよそに、しーんとした校庭を、いつまでも見つめていた。
「はーい、ホームルームはじめるわよー」
チャイムより、三分遅れて登場した先生が、手を二回ほど打ち鳴らす。
出席を取るときに、何度も名前を呼ばれたのは言うまでも無いだろう。
何か、ひっかかっていたから。
悪魔?
- Re: ねぇ、信じてよ。 ( No.3 )
- 日時: 2011/05/17 21:15
- 名前: キリア ◆Dl2ahzdhQs (ID: ZTrajYO1)
申し訳御座いませんが、事情により、更新が出来ません。
……まぁ、読者がいるかもあやふやですが。
すみません。明日、更新できると思います。
コメントがほしいなんて死んでも言えないな……orz
- Re: ねぇ、信じてよ。 ( No.4 )
- 日時: 2011/05/19 19:15
- 名前: キリア ◆Dl2ahzdhQs (ID: ZTrajYO1)
2.ね、君は誰?
茜色の光が教室に差し込む様子を、私達は、静かに眺めていた。あの光は強く、明るいけれど、どこか哀しい雰囲気で古くさい学校のこの教室を照らしていた。
座った机が、ひんやりとして気持ちがいい。
午後五時。放課後、何にも用が無いのに教室に残って、うとうとと夕焼けを眺めるのが好きだ。
隣で机に突っ伏す瑠歌も、私も、この教室も、すべてが淡く、輝いて見えるのが、心地よい。
瑠歌も私も、何もしゃべらない。この静かな雰囲気を楽しんでいるのだ。いつも喋っている瑠歌でさえも、黙ってうとうととする。瑠歌が喋らない時間は、此処くらいしかないのだろうか。
瑠歌は、この心地よさを分かっているのではないだろうか?
隣の黒い影が、ゆらりと口を開いた。
「ねぇ、さっきのはなしだけど」
期待を裏切る、甲高い声が私ではなく空にむかって飛んだ。目を合わせず、呟くように。
私は溜息を吐いて、瑠歌と同じように言った。
「空気読めますか?それと、さっきじゃねぇよ。朝からしゃべってねぇじゃんか」
瑠歌が少しむっとして、私に言う。
見なくても、声で分かる。
「“じゃねぇ”とか言ってるからもてないのよ。っつーか、喋らせて」
「“っつーか”も同類じゃねぇのか?」
「…………」
「…………」
とりめのない、小さな会話が消えて、再び心地のよい沈黙が戻ってきた。
教室をぎらぎらと照らしていた日は、明るさを失って、瑠璃色の闇に溶け込んでいく。
日の光のほとんど消えた空は、涼しい初夏の風が流れていた。
「かえるか」
「うん」
生暖かくなった机から足を下ろして、鞄を取る。動く様子の無い、瑠歌がうぅ、とうなった。
瑠歌をつついてやろうと、古くてたてつけの悪い扉のほうに体の向きを変えたとき。
「………あれ?」
男の子が見えた。私達の学校の制服をきちんと着ている小柄な男の子。私達と同じくらいだろうか?薄暗い廊下に、蒼っぽい目がぎらりと輝いていた。
誰だろう?
「どしたん?」
「……いあ、なんでもない」
私はようやく席を立った瑠歌の先に、廊下に出た。
薄暗くて、明かりが淡くともる冷たい廊下に、もうあの子の姿はなかった。
私は、瑠歌にはこのことを言わないことにした。
瑠歌はおもしろそうなことがあると、すぐにあること無いことくっつけて、噂を流す。
このままだと、あの男の子が悪魔になってしまう。
後ろからタッタッタとかけてくる瑠歌が、急に子供に見えた。
見慣れた東京の下町。
道路は狭く、建物は古く、野良猫がたくさんいるけれど、私の好きな、私の町。
すっかり暗くなった空に、ぽつりぽつりと、明かりがともる。
「じゃあね」
「ん」
涼しいこの空の下、家に帰るだけなのに、この景色がメルヘンチックに見えるのは何故だろう。
- Re: ねぇ、信じてよ。 ( No.5 )
- 日時: 2011/05/20 19:51
- 名前: キリア ◆Dl2ahzdhQs (ID: ZTrajYO1)
3.え?僕のこと?
それから三日後の土曜日のことだ。
近所のガキが朝からギャーギャーやっているから、心地の良い布団の柔らかい感触を忘れて、うっかりまぶたを開けてしまった。
去年の誕生日に瑠歌からもらった、クマの時計を見ると、まだ八時過ぎ。
私が窓を開けて、「っるっせぇ!!」と怒鳴った声が、街中をしらけさせたことは、言うまでも無いだろう。
この言葉遣い、どうにかしたほうがいいのかな?
もてるもてない、興味ないけど。
「おい、うるせーぞ」
「はいはい、すみませんねー」
隣の部屋に住む隣人の怒鳴り声とともに、壁がすさまじい悲鳴を上げた。
私も私でうるさいが、隣のジジイはもっとうるせーよ。
うんざりして、布団から這い出すと、私はパジャマのままキッチンに向かった。
「あーあ、せっかくの休日の朝があのジジイとガキで台無しだよ」
呟きながら、コーンフレークを皿にいれ、牛乳をどばどばと注ぎ込んだ。
勢いよく入れられた牛乳が、皿をはみ出して古いキッチンのシンクに滴り落ちた。
錆びが入って、少し黒っぽくなっている牛乳。
「ッチ」
私は乱暴に布巾で牛乳をふき取ると、コーンフレークの入った皿をテーブルに持っていった。
一人で食べる朝食は、あまり美味しくは無い。
時々瑠歌が泊まりに着てくれるけど、やっぱり一人暮らしは一人暮らし。寂しいものは、寂しいのだ。
まあ、隣人やガキに喧嘩を売ったりして、寂しさは紛らわすことができる。でも、とめてくれる人がいないのも、かえってむなしい。
私は、幼いころ起きた津波で、両親と弟を亡くした。
もっと詳しく言うと、五歳くらいのとき。今から、ざっと九年前くらいだろう。
九年も昔のことだけど、あのときのことは、いまだにハッキリと思い出せる。
押し寄せる波。私達をかばう両親。泣き叫ぶ弟。波に飲まれたとき。気がつくと一人きりで、瓦礫の下に挟まっていた。近所のおじさんが、私を助けて、「悪魔だ」と叫んだ。
津波は自然現象だから、誰にも怒りを、悲しみをぶつけられないのが嫌だった。
今は、親戚が持っているアパートに住まさせてもらっている。
取り返せるものなら、取り返したい。あのころを。
悪魔なんか、いなくなれ。
- Re: ねぇ、信じてよ。 ( No.6 )
- 日時: 2011/05/21 12:58
- 名前: キリア ◆Dl2ahzdhQs (ID: ZTrajYO1)
4.そう、君だ。
『ピーンポーン……』
錆びた扉の向こうから古いインターホンの音が聞こえた。相当古い物なので、画面は見えない。だが、予想は出来る。
私は寝っ転がっていた痛んだ畳から起き上がって、扉のほうへ無言で言った。
今日は何のようだろう?
「やっほー、新情報入手だよー!!」
私は、突然の訪問者にあきれて、前髪を持ち上げながら言った。
「……なんだよ、せっかく寝てたというのに。瑠歌、お前時間帯をわきまえろ」
「えー、だってまだ一時だよ?昼食べてないんでしょ?一緒に食べよーよ」
「おごりか?」
「えっへん、おごりだ」
「よし、ちょいまて」
私は瑠歌を玄関に待たせたまま、超高速でパジャマを脱ぎ捨てて、Tシャツとジーパンに着替えた。どちらも安物。
金は、親戚が負担してくれるからいいが、やっぱり悪い気がするので、男物の安物だ。
瑠歌いわく、「美羽が美形だから、ヤサでカッコイイ」だと。
私って美形なのか?と思っても、この家には鏡が無い。
「よし、行こう」
「早ぁ……」
「行くぞッ」
「……んもう」
チャリンコにとびのってファミレスに向かうときの風や、流れる景色は、いつ見ても心地がよく、なんだか懐かしい。
言い忘れていたが、瑠歌はこの土地を買い占められるほど有力な権力を持つ、豪邸のお嬢様だ。
お嬢様にしては格好は普通だし、性格も普通だと思う。お嬢様ぶらないところが、私は好きだ。
だから時々おごってくれたり、服を買いに行くのに付き合ってくれたりする。
私は言葉に甘えて、ついていく。
ファミレスの中は冷房がきいていて、ひんやりとしていた。
いくら初夏だといっても、暑いものは暑い。半そでのTシャツをパタパタしながら店員についていく私達は、普通の女の子達だった。