複雑・ファジー小説
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- 皇帝陛下が召喚された
- 日時: 2011/11/28 18:18
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: no9Kx/Fb)
えー。どうも。更新の遅さに定評のある神村です。この小説は週一更新に挑戦してみよう!と思って書かせてもらいます。と言うのもですね、未だに最初に書き、今も細々と書いている小説を覚えていてくれた方がおりまして。そんな人が待っていてくれて更新出来ないとは情けない!せめてものお詫びに!というわけですよ。ちなみに更新日は土、日どちらかになります。必ず更新させてもらいます!その他の日も更新する時もありますが稀です(笑)
は?お前には無理無理と思いつつ楽しんで頂けたら光栄です!
では幻想の世界へ。
*目次*
人物紹介 >>2 ←11/20更新
第1話「皇帝陛下が少女に召喚される」>>1
第2話「初対面には自己紹介を」>>3
第3話「悪夢と空洞を」>>6-7
第4話「違う世界に住む人」>>8-10
第5話「思い出と不器用な優しさと」>>13
第6話「学校へ行く準備」>>14
第7話「侍魂来たる」>>15 更新中……
★お客様★
揶揄菟唖 様
- 第4話「違う世界に住む人」 ( No.8 )
- 日時: 2011/11/08 23:22
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: no9Kx/Fb)
……更新遅れて申し訳ないorz
第4話「違う世界に住む人」
屋敷に戻ったらまずマリアの傷の手当てをした。痕が残りそうな傷は“奇跡”と呼ばれる癒しの力を使って治し、残らなそうな傷は消毒をしつつ手際よくガーゼと包帯で包んでいく。マリアはその様子を物珍しそうに眺めていた。
「うわぁ……。グラスさんキラキラしててすごいです」
「ん?キラキラ?ああ、この力か。これはだな」
とそこまで言ってグラスは固まった。言えない。これは代々皇帝に伝わる、国で崇め奉っているウェルネス神から賜ったとされる力なんだよ、とは。
感嘆の息を漏らし目をキラキラさせて説明を待つマリアにも流石に言えそうになかった。
「これは……神様がくださった奇跡だよ」
と簡潔に説明する事にした。もちろんその一言だけでは意味不明な事もグラスは痛いほど分かっていた。
「うわぁ!グラスさん神様と知り合いなんですか!?」
「ん……まぁ知り合いと言えば知り合いだな」
「すごいです!!あ、あの!神様ってどんな人なんですか?」
それで納得し更に目を輝かして問うマリアの様子にグラスは眩しいものを見るような気持ちになった。この年頃はこんなにも素直なのかとグラスは感心した。
「さて……な。どんなと言われても困る。あれはどう形容したものか……。そうだな、神様にとって人間とは“全も一も同じ”なのかもしれないな」
「???」
「つまり、どれほど多くいたとしても一人の価値と同じという事だよ」
「え?それって冷たいような……」
「そうでもないぞ?逆を言えば例え一人でも多くの人間と同じ価値なのだから」
「んん?マリアわかんなくなりそう……。つまり神様って優しいのですね」
「さてどうだろう。私に言わせればあれの仕打ちは“残酷”以外の何物でもないけど」
「え?」
「なんでもない。さて腹がすいたな。何か食べようか」
グラスが小さく呟いた独り言をマリアが聞き返すとグラスはなんでもないと笑って立ち上がった。
「はい!わたし作ります!!」
「え?マリアがか?」
「はい!作らせてください!」
マリアが張り切ってはしゃぐとグラスは眉間に皺を寄せた。
七歳の子供がそんな事をして大丈夫だろうか、怪我とかしないだろうか等その顔には心配がありありと浮かんでいたが、
「うむ。ではよろしく頼む。私は少し神に祈りを捧げねばならないからな」
「おいのり?」
「ああ、習慣だからな。毎日やらないとその…気持ち悪くてな。何、直ぐに済む」
「はいっ」
マリアの頭に手をぽんと軽くおいてくしゃと撫でるとグラスは部屋を後にした。
そして最初にグラスが召喚された部屋に行くと一緒に召喚された大剣の前に立つ。そして跪き手を合わせた。
この大剣はただの大剣ではない。幾つもの伝説と共にあり、神より賜った神剣なのである。その力の強大さはグラスがよく知っている。
「今日も我が愛する祖国を、愛する民を見守りください。神の御加護を」
目を瞑り、決まった祈りの文句を告げる。これは初代皇帝から受け継いできた習慣である。もちろん、形だけでなくちゃんと気持ちを込めて祈っている。
「うにゃあああぁああ!!」
グラスが祈り終わって部屋から立ち去ろうとした時、さっきマリアといた部屋の近くからマリアの悲鳴に近い絶叫が響いた。
「マリア!?」
グラスが慌ててマリアの所に駆けつけるとそこには物凄い勢いで燃え盛るフライパンとその前の小さな踏み台から落ちたと思われるマリアがへたり込んでいた。
「マリア!クッ……。仕方ない。炎の精霊よ、我が命に従え!“消えろ”」
グラスがそう言って右手で薙ぎ払う仕草をすると燃え盛る炎がまるで迷う仕草みたいにユラユラ揺らめいた。そして数秒後、グラスの言葉通り消えた。
その様子を見てグラスは愕然として、
「私の命令を精霊が躊躇った…だと!?」
と呟いた。グラスは皇帝として「神の代行者」の異名も受け継ぎその力も継承した。代行者というからには神と同等の力はある程度の範囲なら持てる。そして先程の行動も範囲内だった。
グラスはそこまで考えて頭を振った。今考えるべきはそうではない。
「マリア、無事か?火傷はしてないか?」
「ふぇ……ぐらすさぁん」
腰を抜かしたマリアに手を差し出しそのままぐいっと立たせ、ざっと様子を見た。どうやら怪我はしてないようだ。
「情けない声を出すでない。ほれ、料理はいいのか?とありゃ駄目だな」
「うっ」
「ああ、泣くな泣くな。私も手伝ってやるから」
ぶわっと涙を溜め、泣き出しそうなマリアにグラスはオロオロとしながら宥めるように言った。流石に炭と化した料理?をそのままにしては可哀想だ。
「ほんとう?」
「ああ。私の素晴らしい腕の見せ所だな」
少々茶化した言い方をしつつグラスは手際よく料理の準備をしていく。その姿はとても皇帝には見えないくらい手馴れていた。もちろん豪奢な法衣は着たままの姿なのにだ。
「うわぁ……。グラスさんすごいね」
「何がだ?」
「だって野菜を切るのも早いし、フライパンのこげを取るのだって数十秒だし」
「このくらい普通だろう?」
「フライパンさばきも見事です!」
「そうか?まぁこれでも長く生きておるし」
そう雑談をしつつ料理はちゃっちゃっと出来ていく。それは魔法のようにマリアの瞳には映った。マリアがグラスが料理を作っている様子に見惚れている間に料理は出来てしまった。結局マリアが作ったのは簡単なサラダだけだった。
そしてダイニングルームで向かい合わせに座ると、
「サラダにかかっているドレッシングは私のお手製なんですよ!」
「そうなのか?それは凄いな。どれ?いただきます」
グラスがそう言ってマリアお手製のサラダを一口口にする。そしてピシリと固まった。
「うっ(こ、これは……不味いというか…。ここまでくるともはや珍味と言った方がいいかもな。しかし何だこの味は……。酸味とか甘味とか塩辛さとかその他もろもろの味が襲い掛かってくる。ここまで食べた事のない未知の味だと感心まで覚えるから不思議だ)」
たっぷりと沈黙した後グラスはハッと正気に戻った。やけに冷静だったのは意識が遠い所に飛んでいたかららしい。
「ど、どうですか?おいしい?」
「え!?」
マリアに上目遣いに聞かれてグラスは再び固まった。
「マリアはこれを毎日食しておるのか?」
「?いいえ?それは今日が初ですよ。でもこの前のも凄い味がしたなぁ」
「ふ、不憫な……」
グラスはくぅと法衣の袖で涙を拭う仕草をした。こんな不味さが宇宙の珍味並みにミラクルを起こしているのを食べなくてはならないなんて。それではあまりに不憫だ不憫すぎる。
- 第4話「違う世界に住む人」 ( No.9 )
- 日時: 2011/11/08 23:32
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: no9Kx/Fb)
「そういえばマリア。マリアの家族はいないのか?」
「いますよ?叔母さんが。でもこの国の召喚長をしているから忙しくて一年の殆どいないんです」
「そうか……。しかし女だてらに召喚長とは凄いな。大分出世しているではないか。ん?という事はずっと一人でこの屋敷に住んでおるのか?」
「んー?そうではなかったんだけど。前にはね、叔母さんが契約していた召喚獣の“しののめさん”っていう人が一緒に暮らしていました」
「しかし、今はそれらしい気配がないが」
「はい。一ヶ月前に叔母さんがひとでぶそくとかで連れてっちゃいました」
「なんと無責任なことよ……」
マリアがあまりににこやかに語るのでグラスは余計に不憫に思えた。なんと健気な子だと感動を覚えない事もない。
「よし!わかった。少しずつマリアに家事を教えようではないか。育ち盛りにこのようなよく分からん味を食していては毒だ。…と話してばかりでは駄目だな。せっかくの料理が冷めてしまうぞ」
「わぁ……。ありがとう、グラスさん!いただきます!」
「ふふ。どうぞ」
マリアの元気な声にグラスは笑みを浮かべる。そしてその後に続いた「おいしいぃ!」という言葉に笑みを深めた。
「というか知らない料理だけど、おいしい!これ!」
「ああ、すまない。私の故郷の料理だ。故郷の料理しか作れなくてな。それは家庭料理として親しまれていて郷土料理としても有名だったんだ」
そう故郷の事を語るグラスはこれまで見た表情の中で一番優しい表情を浮かべていた。マリアはズキッと胸の中が痛んだ気がした。
「しかし、マリアに教えるのにそれではいかんな。ここの料理も知らないと」
「そう……だね」
「?」
急に元気をなくしたマリアにグラスは疑問を抱いたが触れようとはしなかった。
食事が終わった後はマリアがグラスの話をしきりに聞きたがり仕方なくグラスが知りうる世界の各地にある昔話等を話した。かと思えば家の事はマリアも手伝うと家事を一緒にやったりと他人が見たら微笑ましい家族の休日みたいな事をして夜まで過ごした。流石に寝る場所は違くてグラスは安堵の息を吐いた。恐るべし、子供の元気。夜になる頃にはグラスはくたくたに疲れていて今日は早めに休ませて貰った。
- 第4話「違う世界に住む人」 ( No.10 )
- 日時: 2011/11/08 23:32
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: no9Kx/Fb)
その夜グラスは自分に割り当てられた部屋のベットに腰掛け、右耳につけているイヤリングに右手を当てていた。
「我が呼び声に応え、起きるがいい。我が使い魔となりし者よ」
『んぁ?んー……おう、グラディスか。久しぶり……だよな?』
グラスの右耳につけているイヤリングの宝石の部分から若い男性の声が聞こえる。電話越しのようなその声は陽気で軽薄そうな印象を与える。
グラディスの付けているイヤリングは通信機能を備えている。どんなに離れていても同じ端末を身につけている者同士なら会話可能という優れものだ。
「起きたか。ちなみに六十年ぶりだな。貴様の声を聞くのも。もっともあの頃はそんなに軽そうな男の声には聞こえなかったがな」
『わぁ……。お前相変わらずというかむしろ悪化してんじゃねーか。その人間嫌い。んでもって六十才手前の頃と比べてんじゃねーよ。流石に変わるって』
グラスの通信相手の名はレイス・メイビアと言い、かつてグラスの一番信頼の置けた忠臣でもあった。
「私が言っているのは話し方もだ。もう少し威厳があっただろうが」
『無茶言いなさんな。こんな若い頃に戻って気分も戻ったんだよ。てかお前仮にも幼馴染兼悪友にむかってそれはねぇーよ』
「悪友ね……。まぁお前はある意味“悪”友だったな」
悪という文字を強調してグラスは言った。口調はどこか楽しげだ。
『うぐッ……。悪かったよ、あんときゃ。けどよ、お前にもその原因はあったんだぜ?』
「反省の色はなしか」
『へいへい。反省しておりますよ。で?俺を“起こした”理由は?何か困り事か?』
「ん?ああ、少し…な。お前、私の代わりをやれ」
『おいおい。今なんつった?代わりをやれとか聞こえたような。幻聴は辛いねぇ』
「ふざけるな。幻聴ではないぞ」
『えぇ!?なんでまた……』
「む。それは……だな」
グラスは今までに起きた事を簡単に話した。何故か召還された事、マリアの事、そしてしばらく帰れない事等を。流石に恥ずかしいところは飛ばしながら。こいつにマリアの言葉で泣いた事を知られたら死ねるとグラスは本気で思っている。
『ぷッ。おお前そんなちっちゃい子に召還されちゃったの?あはははは!ご愁傷さん!』
「首かっ飛ばれたいか?」
レイスの笑い声に苛立ちを覚えたグラスは淡々と無機質な声で告げた。何の感情もこもっていない声ほど恐ろしいものはない。
『スミマセン。そんなに怒らんといて。つーかお前その子になんて呼ばれてんの?皇帝陛下様はないんだろ?』
「当たり前だ。あの子は私の身分なんて知らないだろうな」
『じゃなんて?』
「…………グラスさん」
ポツリと聞き逃しそうな小さな声でグラスが呟いた。
『ぶ』
レイスは耐えた凄く耐えた。とても笑いたい。だって天下の、神様仏様グラディス様と言われるアイツが完全無欠超人が。しかも、グラスディスが無邪気に笑っているところなんて残念ながらレイスは見たことがなかった。それが「グラスさん」なる親しみを覚える呼び方で呼ばれていようとは。一瞬でも幼女と戯れて笑っているグラディスの図が脳内をよぎったのをレイスは心底恨みたくなった。首がさよならしてしまう。
「しかもマリアってなんでか愛しく感じるんだよな。娘がいたらこんな感じだろうか」
『ブフォ!?』
止めの一言。あ、駄目だ俺のライフはもうゼロだ。
レイスはそんな事を思いながら笑いを堪えた。よく耐えた、俺と自画自賛しながら。
グラスの実に幸せそうな声を聞きながらレイスは、
『お前、それ恋じゃね?』
「ば、馬鹿を申すな!?わ、私がいつ恋愛感情を語ったというのだ?!」
『ハイハイ、そういう事にしといてやんよ。んじゃお前の身代わりやっているわ』
「あ。おいッ!」
一方的にレイスの方が通信を切った。
「相変わらず人の話を最後まで聞かない奴だな。もう一つ頼み事があったというに。それにマリアの事は娘のようだと言っただけではないか」
元戦友の変わらぬ様子にグラスは苦笑を漏らす。それでも彼の変わらぬ様子にほんの少し嬉しく思ったのは内緒だ。レイスという人物は一見すると軽薄な人物に思われがちだがその実恐ろしく聡い人物だった。晩年の彼は皇帝の右腕として随分恐れられていたものだ。懐かしいなとグラスは淡い笑みを浮かべた。自分の不老不死がなければ彼とはずっと親友でいられたかもしれない。「悪友」と形容しなくとも。
「まぁ今更何を悔いても仕方がないか。それに“悪友”と“親友”に大差はないしな」
あくまでそれは一般的な解釈の意味で自分達が指している意味とは違う事を知っていた。
- Re: 皇帝陛下が召喚された ( No.11 )
- 日時: 2011/11/11 17:09
- 名前: 揶揄菟唖 (ID: XZqXnkia)
- 参照: http://www.kaki-kaki.com/bbs_test/view.html?517203
おひさしぶりです!
よませていただきました!
グラスさん・・・
あんたってひとは・・・
料理もできるなんて・・・
ストライクです、結婚してくd((ry
マリアちゃん・・・
料理できないとか・・・
どんだけかわいいんだ・・・
よし、結婚しようk((ry
そして新キャラキター!!!
レイスさんの口調が好きです
結婚を前提につきあってくd((ry
そしてこんな素敵な小説を書いている神村さん・・・
結婚してくd((ry
・・・こほんっこほんっ
次の更新も楽しみに待っています!
ではでは失礼しました・・・!
- Re: 皇帝陛下が召喚された ( No.12 )
- 日時: 2011/11/15 23:21
- 名前: 神村 ◆qtpXpI6DgM (ID: no9Kx/Fb)
>揶揄菟唖 様
えーと、まずは二度目の励ましとコメントありがとうございます!!それでもってこんなにたくさんのキャラに対する愛をありがとうございますぅうう!!もう土下座なんて惜しくない…!!
しかも楽しみに待ってますとかどんだけ作者を喜ばせれば気が済むんですか結婚しましょ((殴
はーもう、胸が一杯になりました……!これを励みに頑張ります!