複雑・ファジー小説

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わたしの姉が名探偵らしいのだが
日時: 2012/05/04 17:36
名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)

「と、いうことは……」
「はい、警部。犯人は第一発見者である山田さんで間違い無いでしょう」
——わたしの姉は、世間一般的に言う名探偵らしいです。



初めまして、風春です。
 これは、大学生でありながら探偵をする姉と、そんな姉の職業をよく思っていない妹の物語です。
 苦手な推理描写を克服するためにつくった小説ですので、至らない部分が多いと思いますが宜しくお願いいたします^^

◆注意
推理小説です。人が死にます。流血描写等は極力抑えますが、やむない場合には表現します。
見る人を選ぶような表現がある場合には、目次に※印を入れておきますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
犯人の動機が不十分だったり、トリックが拍子抜けなものだったりしますが、素人の書いた物と思って目を瞑っていただければ幸いです。

◆目次
「大学食堂殺人事件(解決済み)」 >>1 >>4-6 >>9 >>12-13 (おまけ>>14※オタク要素含む)

Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.11 )
日時: 2012/04/27 18:56
名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)

ソルトさん>>
はじめまして^^
こんなカス小説を読んでくださるなんて感激です……!!ありがとうございます!
塩素のところは、自分でも説得力がでるように頑張って書いたので、そういって頂けると本当に嬉しいです!

応援ですって!?あわわわわ、ありがとうございます!
またお暇なときにでも見に来てやってくださいませ^^

コメントありがとうございました!

Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.12 )
日時: 2012/04/30 11:08
名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
参照: 6

「そしてあともう一つ、犯人を絞ることのできるヒントがあるんです」
ぴん、と右手の人差し指を立てて、姉はひっそりと呟いた。
「……ヒント、だと?」
「はい、警部。耶麻れい君は、死亡する前に、ラーメン——いえ、とんこつラーメンを食べていましたね」
「……あぁ、そうだ。彼はラーメンを食べていた。しかし、それが一体なんだっていうんだ?」
警部は怪訝そうに顔をしかめる。それを見て、姉も少しだけ顔をしかめた。
「……警部。着目すべき点は、“ラーメン”ではありません。“とんこつラーメン”が、重要なのです」
「は? それこそ意味不明だな。ラーメンの味が、事件とどう関係するんだ?」
その点についてはわたしも全くの同感だ。別に、この事件の前に被害者が、たとえ味噌ラーメンを食べていようと塩ラーメンを食べていようと、何も事件に関係は無いハズである。しかし姉は、期待はずれだ、とでもいう風に肩をすくめた。
「ハァ、仕方ありませんね。それでは、学生の皆さんに聞いてみましょうか!」
「は、学生!?」
「ね、猫名部さん、学生の方々に聞いても、何も意味はないような……」
警部と中津具刑事が止めに入ったが、姉は口を閉じない。
「みなさん! とんこつラーメンといえば、何でしょうか? 一斉に答えてくださいね。せーのっ!」


「猫名部さんの嫌いな食べ物!」


学生たちは、口をそろえて言った。約百名の学生の声が、学食中にこだまする。
「皆さん、ありがとうございます! そうですね、わたしはとんこつラーメンが大嫌いです!」
……は?は?は?
あぁ、確かに姉はとんこつラーメンが嫌いだ。大嫌いと言っても過言では無いだろう。匂いをかぐだけでももどすし、近所のラーメン屋にはとんこつラーメンしかないから、ラーメンが食べたくなったら片道二十分の屋台に行くしか無い。
でも、なぜそんなことを学生たち全員が知っているんだ?姉が自分からとんこつラーメンの話を周囲にするとも考えにくいし、第一姉は滅多に大学に来ないじゃないか。
すると、姉がにやにやしながら口を開いた。
「はい、そこの困った顔してる我が妹さん、どうしてみんな、わたしなんかの嫌いな食べ物を知っているんでしょうか? 二十文字以内で答えてください」
「……さぁ」
そんなこと知るわけ無いだろう。事前に打ち合わせでもしていたかのようなハモり具合だったぞ、さっきのは。姉は楽しそうに、両手で×マークを作った。
「残念、不正解! 模範解答は、“猫名部明にはファンクラブが存在するから。”でした!」
「……姉さんの、ファンクラブ? それが一体なんだって……」
と。
頭に何かが浮かんだ。
被害者は、姉がいる学食で、姉の嫌いなとんこつラーメンを食べていた。もしも彼が姉のファンクラブだとしたら、姉の前でとんこつラーメンなんて頼まない。でも、もし、姉が学食に入る前に、彼が既にとんこつラーメンを頼んでいたとすれば。
「耶麻くんは、姉さんに嫌な思いをさせたくないがために、ラーメンを急いで食べ終わり、死んだ……ってこと?」
「……そういうこと。彼は、学食に入ってきたわたしに、一番最初に話しかけてきてくれたの。匂いがわからないように、マスクまでしてね。周りの友人の証言によれば、耶麻くんは生粋の九州人。普段からとんこつラーメンばかり食べていたらしいわ」

食堂にいた全員が、耶麻くんの食べていたラーメンの器を、神妙な表情で眺めていた。

Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.13 )
日時: 2012/05/05 08:20
名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
参照: 7

数秒間が空いた後、第一発見者の熊餅アヅサが、思い出したように右手を挙げた。
「……あの、そういえば食堂のおばちゃんが、食堂でラーメンを頼むのは耶麻君ぐらいだ、って言っていたのを覚えています。犯人はそれを知っていたから、犯行を行うことができたんじゃないかと……」
姉はそれを聞き、にこりと笑う。
「そうですか、ありがとうございます」
すると警部は、我慢できないと言った風に、肩をふるわせた。
「おい、猫名部明! いい加減焦らしてないで、さっさと犯人を言ってくれ!」
「でも、少しばかりためておかないとつまらないじゃないですか。まあ、でもそろそろ、こんなことをした犯人ちゃんを吊るし上げる頃合ですし、やりますか」
姉は、うーんと肩を伸ばし、欠伸をした。大丈夫かこの人?
警部も中津具刑事も、不安そうに姉を眺めている。
「とりあえず、今までに出た犯人の条件を、もう一度確かめましょう。まず、この大学の生徒であり、妹と同じ講義に顔を出している人物だということ。次に、わたしのファンクラブの会員さんだということ。そして、耶麻れい君がいつもとんこつラーメンを食べていると知っている——いわば、彼と親しい人物であるということ。この三つですね」
「異論は無いな」
警部は納得したように頷く。姉が満足げに微笑んだ。
「そして犯人は、耶麻君しかとんこつラーメンを頼む学生がいないことを見越して、鍋の中に塩素を溶かしたハズです。中津具刑事、あとで鍋の中を調べてみてください。おそらく塩素が出てくるでしょうから」
姉は中津具刑事をチラリと一瞥したが、すぐに目線を変えた。中津具刑事はかなりドギマギしていて、哀れである。姉は続ける。
「犯人は塩素を鍋の中に溶かした。ということは、必ず犯人は食堂に一度来ているはずです。しかし、一度食堂に入ったのに何も頼まずに出たりなんかしたら、食堂のおばちゃんに怪しまれる。ですから、犯人はまだ食堂から出ていない。つまり、ここにいる学生の中に、必ず犯人がいるのです」
ざわつく学生たち。互いに互いを疑い始めている。
学生の一人が、大声を張り上げた。
「ちょ、待ってくれよ猫名部さん! こんな所にずっといたら、犯人に殺されちまうかもしれねぇじゃねぇか! は、早く出してくれよ!」
それを皮切りに、学生たちのざわつきが更に大きくなる。
「君たち、静かにしなさい!」
警部が激昂するが、全く意味は無いようだった。しかし姉はのんきに笑っている。
「みなさん、落ち着いてください。犯人に、もう人を殺す気などありませんよ。なにしろ、これは計画的犯行。標的は耶麻君ただ一人だったんですから——そうですよね、第一発見者であり殺人犯の……熊餅アヅサさん?」
「なんだと?」
警部が目を見開いた。熊餅アヅサは、驚いたように振り向く。
「……どこで分かったんですか?」
「おかしいと思ったんです。いくら友達だからって、帰りが遅い異性を、わざわざお手洗いの中にまで入って探しに行くでしょうか? 普通、そこは空気を読むと思いますけど。それに、あなたの服の襟に桃色の液体が付着しています。つい最近ついたと思われますが、ここの食堂にそんな色のメニューは置いていません。ですから、それは恐らく薬品。つまり、あなたは理学部だろう、と最初から踏んでいました。塩素を盗み出すのも、さも簡単だったんでしょうね」
「……お見事ですね。さすが名探偵……」
熊餅アヅサは、表情を歪ませながら後ずさる。姉は彼女の腕を掴み、言い聞かせるように呟いた。
「さぁ、白状してもらいますよ。なぜこんなことをしたのかを」
それを見て、目をうるませる熊餅アヅサ。が、観念したようにうつむき、口元を歪めた。
「……っ、仕方なかったんですよ……! アイツは……アイツは、わたしのレポートを盗んだんです!」
「……レポート?」
姉は、表情を強張らせる。
「それは、提出しないと単位が危ぶまれるような、とても大事なレポートでした。わたしは、一ヶ月程かけて、完璧なレポートを作り上げたんです。その日は、期限の三日前くらいだったでしょうか。突然、彼がわたしの家に押しかけてきて、お酒に弱いわたしに、度数の強いお酒を飲ませたんです。そして、わたしが酔って寝ている間に、あいつはわたしのレポートを盗んで消えた……そのせいで、わたしは単位をとり逃した……」
「レポートごときで、人を殺したっていうんですか!?」
姉が叫ぶ。警部と中津具刑事は「落ち着いて」と言いながら姉を抑えている。熊餅アヅサは、何もかもあきらめたような笑みを浮かべていた。
「もう、済んだことです……警察の方、早くわたしを連行してください」
中津具刑事は、助けを求めるように横岳警部のほうをチラリと見たが、警部は「行け」とでも言うかのように、顎をクイッと突き出した。中津具刑事は嘆息。
「……十二時四十八分、殺人容疑で逮捕しますね」
「ちょ、ちょっと待ってください! まだ話が終わって……」
姉が中津具刑事に駆け寄るが、中津具刑事は申し訳なさそうに熊餅アヅサを連行するだけだった。

落胆の表情の姉。仕方なく、わたしは姉に声をかけた。
「姉さん、事件解決だね」
「……そうね」
力なく呟く姉。とりあえず励ましておく。
「……姉さんの推理、すごかったよ。でも、犯行動機が薄っぺらいからって、それを否定することはやめておいたほうがいいと思う」
「どうして?」
姉さんは、理解できないと言った表情でわたしのほうを見た。探偵の姉に、わたしがこの手の話の意見などをしてもよいのだろううかと一瞬戸惑ったが、やはり言っておくことにした。
「犯人は、たとえそれがどれほどちっぽけなことであったとしても、そのことの為だけに、自分の人生を棒に振っているんだから。もしそれを全否定してしまったら、犯人は、何にすがって生きていけばいいと思う?」
「……ごめん」
「姉さんが謝ることは無いよ。基本的に、悪いのは犯人なんだし」
姉は、わたしの方を見ると、「優しいんだね」と小声で呟いた。優しい姉に、自分のことを「優しい」と褒めてもらえるのは、正直なところ嬉しかったりする。

窓の外を見ると、熊餅を乗せたパトカーが警察署に向かって走り出していた。

Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.14 )
日時: 2012/05/04 17:35
名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
参照: 7.5


深夜、飲み屋にて。

「中津具。今日はどうだった? 今まで万引きとか落し物探しとかばっかりだったから、殺人はビビったろう?」
「はい、少々ヒヤリとしましたが……無事に解決してよかったです! まぁ、ほぼ猫名部さんの手柄なんですけどね」
「全くだ。アイツがいなくても、俺は事件を解決に導けたのにな! 人より少し頭の回転が速いからって、何も警察の邪魔をしなくても……」
「ですよねぇ……あ、猫名部さんといえば、猫名部さんの妹、可愛かったですよね!」
「中津具……君は仕事中に何を見ているんだ……?」
「す、すいません! でも、つい目が美少女を追っちゃうんですよね……」
「ハァ、まぁいいか。だが、美少女といえば妹じゃなくて姉のほうじゃないのか? 妹も妹で可愛いが、如何せん地味だし……」
「そうですかね? 僕は妹さんのほうが好きですけど? ……姉のほうは、気取りすぎて女子大生っぽくねぇんだよな、もっとおかっぱで、メガネで、でもスカートはミニ。靴下はニーハイで決まりだろ。絶対領域はもちろん外せねぇし……」
「ん? 中津具、お前何ボソボソ言ってるんだ?」
「あ、いや、なんでもありませんよ警部! ささ、ドンドンお酒いっちゃってください!」
「ん、おぉ! 今日は久々に俺の飲みっぷりを見せてやるか!」
「ヨッ、警部! 頼もしいです!」


Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.15 )
日時: 2012/05/04 20:12
名前: 蒼 (ID: rKVc2nvw)

こんにちは。

すごい面白い小説ですね。

塩素のやつも自分じゃ思いつかないようなトリックでした。

本当にすごいです。

これからも頑張ってください!


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