複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- わたしの姉が名探偵らしいのだが
- 日時: 2012/05/04 17:36
- 名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
「と、いうことは……」
「はい、警部。犯人は第一発見者である山田さんで間違い無いでしょう」
——わたしの姉は、世間一般的に言う名探偵らしいです。
◆
初めまして、風春です。
これは、大学生でありながら探偵をする姉と、そんな姉の職業をよく思っていない妹の物語です。
苦手な推理描写を克服するためにつくった小説ですので、至らない部分が多いと思いますが宜しくお願いいたします^^
◆注意
推理小説です。人が死にます。流血描写等は極力抑えますが、やむない場合には表現します。
見る人を選ぶような表現がある場合には、目次に※印を入れておきますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。
犯人の動機が不十分だったり、トリックが拍子抜けなものだったりしますが、素人の書いた物と思って目を瞑っていただければ幸いです。
◆目次
「大学食堂殺人事件(解決済み)」 >>1 >>4-6 >>9 >>12-13 (おまけ>>14※オタク要素含む)
- Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.1 )
- 日時: 2012/04/24 17:57
- 名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
- 参照: 1
わたしの姉——猫名部明は、いわゆる「チートキャラ」なんだ。
県選抜のバレーボールチームのエースでありながら、若者向けファッション雑誌「LOVEING」の読者モデル。
わたしが一年浪人してやっとのことで入学した某有名大学に首席で現役合格してしまったトンデモない頭脳をもち、彼女に告白して見事に玉砕した男は数知れず。
しかも、彼女が通う大学には、彼女を極端に崇拝する「猫名部明たんファンクラブ」なる物が存在し、その会員数は全生徒の三分の一は優に超えているらしい。
これだけでも、彼女がいかに並外れているかは理解できる。だが、こんな肩書きは彼女にとってただの前振りに過ぎない。問題は、姉——いや、猫名部明の「職業」についてである。
猫名部明は、探偵なのだ。
◆
「猫名部さん、隣で昼飯食ってもいい?」
「猫名部さん、俺もいいかな」
「じゃあ俺も! いいよね? 猫名部さん」
大学の食堂である。わたし——猫名部優は、姉である猫名部明と姉妹水入らずで、日替わりランチを食べていた。
姉は多忙で、大学にもあまり顔を出さない。それゆえ、姉が暇な日を見計らって、わたしは何ヶ月も前から姉と食事をする約束を交わしていたのだ。
だが、浅はかだった。
まだ食堂に入って十分も経っていないというのに、姉に話しかけてきた男の数は五十七人!女の数は四十一人!男女合わせて九十八人である。
そして、わたしたち二人を合わせると九十八+二で百人。ちなみに、この食堂にあるイスは百個であるため、学食にいた全ての生徒が姉に話しかけてきたということになる。
「ねぇ、猫名部さん、いいでしょ? 君、あんまり大学に来ないんだからさ、もっと俺たちの想いも尊重してよ」
先ほど、姉の隣に座ろうとした男が、畳み掛けるように早口で言った。あーあ、せっかく二人っきりでご飯食べられると思ったのに。
そんなことを思っていた矢先、姉が突然立ち上がった。
食堂にいた全ての学生が、「どうしたんだ?」という風に、一斉に姉のほうを見る。
「……ど、どうしたの? 猫名部さん」
男は少し怯えながら言った。それに対し、姉はにこやかに言った。
「すみませんが、今、久しぶりに会った妹と一緒に昼食をとっているんです。あなたの想いももちろん尊重したいです。ですが、今はわたしと妹の思いを尊重してはくれないでしょうか」
食堂に、静寂が流れた。
「……わかったよ。じゃあ、次大学に来たときの予定には、俺との昼食をちゃんと入れておいて。忘れないでね」
「はい。ではまた」
そう言うと、姉は微笑みながら男に手を振った。男はそれを見て少し頬を赤らめたようだった。
「ごめんね、わたしのせいで手を止めちゃって。じゃ、食べよっか!」
「……うん!」
言い忘れていたが、姉は性格も良いのだった。
- Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.2 )
- 日時: 2012/04/06 13:56
- 名前: ゆぅ (ID: IKB3uVe4)
はじめまして。
ゆぅと申します@
私推理もの大好きなンでクリックしてみました。
猫名部・・・珍しいお名前ですね*。
これから面白くなりそうです@
暇な時私の所に遊びに来てくださいね@
一応、推理モン書いてます=
でゎでゎ、更新頑張って下さい。
楽しみに待っています!!
- Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.3 )
- 日時: 2012/04/06 14:09
- 名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
ゆぅさん>>
あわわわわっ!コメントありがとうございます!
自分も推理モノ大好きです。面白くなるように頑張りますね!
ゆぅさんのお名前は存じているのですが、時間がなくてゆぅさんの小説はまだ読ませて頂いていないので、時間があるときに一気読みしたいと思います!
コメント本当にありがとうございます!更新がんばりますー!
- Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.4 )
- 日時: 2012/05/05 08:23
- 名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
- 参照: 2
姉にとっての久々の学校は、わたしにとっては久々でも何でもない。
他の学生がサークル活動や合コンに勤しむ中、わたしは真摯に全ての講義に顔を出している。こんな物好きは、キャンパス中探してもわたしぐらいだろうな、と無駄なことを考えながら、日替わりランチのメニューであるミートスパゲッティを口に押し込んだ。
ふと、隣で姉が愚痴をこぼす。
「あーあ、ミートスパゲッティかぁ。ここのご飯は和食がおいしいのに、洋食の日に来ちゃうなんて……わたしったら、なんて運が悪い……」
それを耳にした周囲の学生たちが「猫名部さん! わたし今日はA定食にしたの! よかったら食べて! ついでにわたしも食べて!」とかなんとか騒ぎ出したが、姉はにこやかにスルーした。
「あーあ、でも退屈よね」
「……なにが?」
姉は、ふぅ、とため息をついて言う。こんなにたくさんの人間に周りを囲まれて「退屈」とは一体どういうことか。もしわたしが姉の立場だったら、対人恐怖症になって自宅警備員でもやっているはずである。
「ほら、だって、平和すぎるじゃない? 最近、目立った事件とかもないし。あっても、小学生が誘拐された〜とか、中学生が放火〜とか、高校生が麻薬〜とかばっかりよ。わたしはもっとこう……密室現場のトリックとかを解きたいのよ!」
「密室現場って……あのね姉ちゃん、ここは三次元なんだよ。ドラマの見すぎ」
「ごめん、ごめん。でも、憧れるじゃない? 金田一さんとか江戸川さんとか鳴海さんとかの見事な名推理! わたしも、たまにはあぁいう難事件を解きたいものよねぇ」
「……ドラマじゃなくて、マンガの見すぎだったか……」
落胆。肩をガックリと落とす。そういえば姉の部屋にはものすごい量の推理マンガがあるが、まさか姉が探偵になったキッカケはあれじゃあるまいな。
——と、瞬間。
「うわあぁあぁあぁあぁあぁあぁあ!!」
叫び声がした。
声の主は……女性だろうか?中性的な声で、性別が掴みかねるが、かろうじて女であることがわかる程度の高さである。
「誰か、誰か……! ひ、人が!」
そして女は、決定的な一言を搾り出した。
「人が——死んでる!!」
ざわつく食堂。第一発見者の元へと走り去るギャラリー。わたしの隣でにやりと笑う姉の顔。
そしてわたしは、目を細めて呟く。
「姉さん、願いが叶ったよ」
- Re: わたしの姉が名探偵らしいのだが ( No.5 )
- 日時: 2012/05/03 18:27
- 名前: 風春 ◆8avsdZrJXE (ID: nWEjYf1F)
- 参照: 3
「死亡者はこの大学の学生、耶麻れい君。発見されたのは食堂に隣接されているトイレ入り口の隅。彼の友人、また、第一発見者である熊餅アヅサさんによると、彼は昼食のラーメンを手に零してしまい、それを洗うためにトイレへ行ったらしい。そして、彼の帰りがあまりにも遅いので心配し、見に行ってみると倒れていた……間違いないね? 熊餅アヅサさん」
「はい。間違いありません」
通報してからたったの三分後にやってきた警部らしき男の問いに、こくりと頷く女。どうやら先ほどの叫び声の主は彼女であったらしい。
彼女——いや、熊餅アヅサは、可愛いとも可愛くないとも言えぬ、いかにもな平均的日本人の顔をしていた。身長はパッと見ただけでは判断に苦しむが、大体百六十五センチ前後であろう。日本人女性の平均身長は百六十センチ前後なので、彼女は平均よりやや背が高い。まぁ、気にするほどのことでもないか。
「おい、中津具刑事! 死体の状態はどうだ?」
「はい、死後硬直三十分は経っていますね。死因は——」
「毒死」
「えぇ、そうそう、毒……え?」
「流血も目立った傷も見受けられない。これは毒死としか思えませんね。そして耶麻さんは喉を自らの両手で押さえ、苦しみながら死亡しています。これは恐らく塩素による呼吸不全での死亡でしょう。ヘビ毒などの可能性もありますが、こんな有名大学にヘビなんかが迷い込もうものなら、とっくの昔に排除されているはずです。その他の可能性も、何らかの理由で除去することができます」
「お、おまえ……まさか、猫名部明じゃないか!?」
警部は姉の存在に気づくや否や、ギンと姉を睨んできた。
「お前、まさかまた俺たちの仕事に口出しする気か! 頼む帰ってくれ! この前だって、お前のせいでノルマとり損ねたんだぞ!」
「帰るも何も、わたしここの学生ですし。あ、警部。申し訳ありませんが、食堂の出入り口を閉鎖しておいてくれませんか? どさくさに紛れて、犯人が逃亡する可能性もありますからね」
「猫名部ェ! 未成年の癖に俺に指図すんじゃねぇ! 俺はもう今年で四十五なんだぞ!」
……わたしの姉、事件に口出ししすぎてすっかり警察に嫌われているようだ。警察の皆さんごめんなさい、かわいらしい妹に免じて許してやってください。
「あのー、横岳警部。猫名部明……って、何ですか?」
先ほど姉にいい所を取られてしまった中津具刑事が、警部に問うた。どうやら、彼は姉のことをご存知ないらしい。
警部は、そんな彼を哀れみの目線で暫し眺めた後、嘆息した。
「……ハァ。中津具くん、まだ刑事になって一ヶ月しか経っていない新米の君は知らないだろうけど、こいつは俺たち警察の手柄を全部もっていくハイエナ野郎だ。君も、うっかりノルマをとり損なわないように注意したまえよ」
「あ、え、で、でも……」
苦笑いしながらうつむく中津具刑事。それを不服とした警部はしかめっ面をした。
「んん? 何か問題でもあるのか?」
「い、いえ! ありません、ありませんとも! ……でもあの女の子……なんか死体に触ってますよ」
「何!? おい猫名部ェ!! 死体に触るな! というかもうお前何もするな! 昼飯食っといてくれ頼むから!」
大慌てで姉と死体に駆け寄る警部。てか、人が死んでるのにのんきにご飯食っとけっていうのも、おかしな話だと思うのだが。