複雑・ファジー小説

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【新撰組】誠の旗を抱いて【中篇集】
日時: 2013/07/21 14:11
名前: 夢現 ◆4FKa5dUojw (ID: rE1CEdls)


 浅葱色の羽織を羽織った男たちはどんな色男よりも輝いていて。

 京を護る彼たちを、私は敬い尊敬する。
——この誠の旗を抱いて。








*史実に基づいたフィクションです。
*どこの掲示板で書けばいいかわからなかったのでとりあえず此処に。
*恋とか友情とか、そんな新撰組の日常を描いた中篇集。



       7.21すたーと。


Re: 【新撰組】誠の旗を抱いて【中篇集】 ( No.1 )
日時: 2013/07/24 16:47
名前: 夢現 ◆4FKa5dUojw (ID: rE1CEdls)
参照: 佐々木愛次郎は一途に愛す。


「雛」
 とても美しい顔立ちの男が私の名を呼ぶ。
 "雛のように未熟で小さいお前にぴったりだ"と貴方が言った、私の名を。
「……愛次郎。なぁに?」
 彼の名は佐々木愛次郎ささきあいじろう
"新撰組美男五人衆"と呼ばれる彼は、先刻云った通り美しい顔立ちをしている。
 そんな彼と幼なじみの私は、四六時中……とまではいかないが一緒にいる。

 こんな美しい男が幼なじみので劣等感を感じないのか? と訊かれたことがあるが、実はそうでもない。
 顔の次元が違うのだ。比べてもどうにもならない。
 とかいう私も、実を言うと近所では別嬪さんと言われているのだが。
 自意識過剰? いいや、違います。
幼い頃からそう言われているのだから自覚しても可笑しくない。
 というか、美しい顔立ちをしていて、自分の美しさに気づかない、所謂"無自覚"というやつなんていないのだ。

 ……そんな私と愛次郎は、お互いを知り尽くした幼なじみでもあり、相思相愛の恋仲でもある。

Re: 【新撰組】誠の旗を抱いて【中篇集】 ( No.2 )
日時: 2013/07/21 01:24
名前: 夢現 ◆4FKa5dUojw (ID: rE1CEdls)
参照: 佐々木愛次郎は一途に愛す。


 だが、こんな幸せが続くなんて、有り得ない話だ。
 ……現に今、その幸せが壊れようとしている。

「え……? 芹沢殿が私を妾に……!?」
「……ああ」
 妾、というのはとどのつまり、私の場合でいうと、芹沢殿の二番目の女になるということ。
 ……いやいやいや。待て。芹沢殿は私と愛次郎が恋仲であるということを知ってるのではなかったかしら!?
 それなのに私を妾にしようと!?
 芹沢殿に良い噂はない。
 ……なんて意地の悪い男なんだ。
 そんなこともあって、私は丁重に断ることにした。
「……愛次郎。私の答えは勿論"いいえ"、よ」
「言うと思った」
「本妻ではないのが幸いだけど、妾も嫌よ。良い噂は聞かないし……愛次郎のことだってーー」
 そこまで言うと口をつぐんだ。
 ……愛次郎が悪戯な笑みを浮かべていたから。
「……何よ」
「別に?」
 フフン、と鼻歌を歌う愛次郎。思考が駄々漏れである。

Re: 【新撰組】誠の旗を抱いて【中篇集】 ( No.3 )
日時: 2013/07/21 14:12
名前: 夢現 ◆4FKa5dUojw (ID: rE1CEdls)
参照: 佐々木愛次郎は一途に愛す。


「……はぁ。お願いだから。断っておいてね」
「わかってるって」
 愛次郎はそう言うと私をキツく抱き締めた。
「え、ちょっと!」
 何をしているのだ、この男は。
 ……抱きつき魔か?
「あー、良かった。これで雛が断らなかったら俺、どうしようかと思った……」
「断らないわけないでしょ」
 芹沢殿には悪いけど私、芹沢殿の妾だけは絶対嫌!
「芹沢さんにはそう言っておく。だから、雛、いつか俺の本妻になってね。一生懸命愛すから」
「……えぇ。そうね」
 愛次郎がこのようなことを言うのは日常茶飯事。だから特に吃驚はしない。
 ……ただ……
「ふふ、雛、顔真っ赤」
「……煩いわね……」
 ——愛次郎は新撰組。いつ何処で死ぬかわからない。
だけど私は愛次郎を信じる。
本当に結ばれるのかわからないけど。

 ——今日も、私は夢の現にさ迷う。
 誠の旗を抱いて、その時が来るのをひた待つ。


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