複雑・ファジー小説

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円舞の国のアリス——Who are you?【キャラ募集中】
日時: 2014/03/01 20:26
名前: ブラウ ◆Tegn1XdAno (ID: XpbUQDzA)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode=view&no=7833

————始まりを探すゲーム。

 そんなこと、誰も興味はないだろうなと、彼は思った。ほら、みんな見向きもせず楽しそうに殺しあっている。三月兎は特にだ。
 彼の右手にも鈍色を宿す銃が。あぁ、そうか。結局こんなもんか。こんなもんだよね。

 誰にも認められることなく、彼は空の左手で虚空を握りしめる————






・このスレにはグロテスクな表現や暴力的な表現が含まれます。予め御了承ください。
・私は不思議の国のアリスが好きです。こうしてそれをモチーフにした作品を書くまでに至りました。
 ですが、それによって他のアリスファンの方々のイメージを壊してしまう可能性がございますので、見る方は自己責任でお願いします。
・オリキャラを募集しております。参照のURLよりリク依頼・合作依頼掲示板のスレへ行けますので是非御投稿下さい。




目次

序幕 >>1

一話 汝夢見し >>3-16

Re: 円舞の国のアリス——Who are you?【キャラ募集中】 ( No.1 )
日時: 2014/01/01 23:07
名前: ブラウ ◆Tegn1XdAno (ID: aAxL6dTk)



 まるで笛の音のような。


 それはフルートによるハイトーンの音色によく似ていた。
 細く、緩く、たゆたう不透明な音色。正体は判然としない。隙間風か、刃が切る音か、誰かの喉笛か、本当に楽隊でも近くに居るのか。冷たい音色が不規則に頬をなぜる。繰返し繰返し、ゆるゆると緩慢に、けれど不確かな冷気を伴って。音に質量も温度も有る筈がない。これは本当に音なのか。真偽を確かめる術はなかった。彼はすでに全てを切り捨ててしまったから。
 頭をもたげる意志すらもはや無い。黙視できない外郭に包まれた彼は、血の通わぬ手足を人形のように整えただ横たわっている。実際のところ、考えも感じもせず生きているだけのそれは、人形と相違無いのだ。
 始まりを期しない。終わりも乞わない。ただ続く。ひたすら続く。ぬるま湯のような時の中、果てなく無意味を紡ぎ続ける。時間がすり減り、肉が露出し、骨が灰塵と化そうとも。何一つ変わらないのだ。何一つ進まないのだ。

 何一つ、元には戻らないのだ。

 静寂。それすらも認識することを許さない。許されない。そこには全てがあるのに、その一片にすら触れることはできなかった。美しき凍結のモニュメントも、観劇者が居ないのならば価値はない。
 高く澄んだ音色はどれだけ澄んでいても、その透明なガラス細工に罅を入れてしまう。招かれざる侵入者。単なる異物だ。何一つ壊していないくせに、その空間がバラバラに砕けてしまう。
 バラバラに。散らばる、散らかる。
 音もなく宙へ浮かび上がった韻律は、だから規格も位置もチグハグだった。そもそも読む者が居ない。必要とする者も困る者も。
『——Alice,』
 溶けていく。全ての韻律は溶けていく。
 形成された側から文字は銀色の靄となり、空気に溶けて消えてしまう。まるでその存在を、この空間が許していないように。浮かび上がった側から側から、掻き消され、ひび割れ、空気に溶けていく。
『Alice?』
 意思の形が溶ける。誰にも看取られることなく。
『Alice!』
 銀の色彩が溶ける。その耀きを虚空へ投げ捨て。
『Alice...get up soon.Alice?』
 明滅する文字。そして、壊れて。
『——、アリス』
 銀糸が躍り狂う。ほどける事も絡み合うことも無く。
『ねぇ……アリス。早くおいで』
 音もなく確固たる形もなく。しかしただ言葉の質量だけが溜まっていく。しっとりと空気をたわませる、清廉なる吐露。
『おいで、アリス。此方へ。君の居場所はないけれど、さ』
 滴る笑みを蟠る銀の字に託して、さぁ。誰も望まぬ始まりを。
『——最高のゲームを、提供しよう』

 誰にも止められぬ終わりと共に————



Long time no see. Having hope to see again,
We are glad from the bottom of my heart____
Welcome to the Unknown World!

Re: 円舞の国のアリス——Who are you?【キャラ募集中】 ( No.2 )
日時: 2014/01/02 00:52
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: 0T0BadNT)

ブラウ様初めまして、風死と申します。
独特で雰囲気が漂う文章と薄暗い感じの雰囲気が素敵ですね。
始まりを探すゲームとはいかなるものか、なぜみんなが楽しそうに殺しあっているのか色々気になることがあってそそられますね♪
執筆がんばってください。

Re: 円舞の国のアリス——Who are you?【キャラ募集中】 ( No.3 )
日時: 2014/01/03 20:37
名前: ブラウ ◆Tegn1XdAno (ID: aAxL6dTk)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2/index.cgi?mode=view&no=7833


 記憶喪失。つまりはそういうことだ。どうやら面倒事になっているらしいと、彼は理解した。
 何もかもが無いわけではない。記憶の意味も知っているし、失うと言うことも解っている。右手左手の区別もつく。視界に写り込んでいる物は、右から木製のキャビネット、黒ずんだ鉄の壁、蝶番の軋んでいるドア、その奥に立つ男、また壁、棚、棚。そしてあの黒光りするものは拳銃。火薬を用い鉄の弾丸を打ち出す。危険なことは言わずもがなだ。それも問題なく思い出すことが出来て、だから、勿論。
 目の前に銃を突きつけられることの意味も、重々承知していた。
「——死ね」
 何が起きるのか。数瞬先の未来を映すビジョンが脳内で閃く。酷く的確な狙いだ。弾丸は直進し胸を貫通、恐らく心臓の位置。そのまま背後の壁か棚か何かに当たり、自分は血を撒き散らし倒れる。The END。即死か、出欠多量か。何か言い残す暇はあるだろうか。恐らくは無い。いや、そもそも言い残すことなど無いだろうが。自分は記憶喪失なのだから。そう、つまり、だから、こんなことは全くの無駄で。
 電流のように体を駆け巡った危険信号にともない、彼は左方向へ倒れ込んだ。
 風圧。ごく小さな鉄塊が空気を切り裂き自分の直ぐ側を通過した——ような気がした。実際のところどうなのか、彼の目が捉えることはなかったが。
 勢い余って肩を強か床に打ち付ける。湧き立つ埃。思わず顔をしかめた。
 痛い。だがそれだけだ。生きている。手足も動く。風穴が空いた気配は、ない。
 沸騰したような血液が急に下がってきて、彼はどっと襲ってきた疲労感と共にため息をついた。正面にはいい案配にキャビネットが設置されている。遮蔽物としての役目は十分果たしてくれるだろう——と、思った矢先、立ち上がろうとしていた彼の頭上近く、轟音と共に穴が開く。立て続けに二つ。びくりと反射で頭を伏せた。

Re: 円舞の国のアリス——Who are you?【キャラ募集中】 ( No.5 )
日時: 2014/01/05 21:16
名前: ブラウ ◆Tegn1XdAno (ID: aAxL6dTk)

 カラン、と薬莢の転がる音。続けて沈黙、静寂。発砲した誰かは様子を伺っているらしい。
 彼は慎重に体を起こしつつ、どうやら本格的に不味いなと嘆息する。
 記憶が無い。やはりこれは致命的だ。なぜ自分が撃たれなければならないのかも分からない。闘うべきか、逃げるべきか、最善策は。いや此方は丸腰だ、勝機がない。まず此処は何処だ。何故自分はここにいるのだ。知らなければ逃走計画を立てることすら出来ないだろう。
 思い出せない。
 経歴も、親族も、友人も、趣味も、仕事もそして——
「っ、名前も、か……」
 がらんどう。渇れた泉のように、何も閃いてこない。乾いた胸の内が皹割れているかのように潤みを欲す。しかし痛みはない。ぽっかり空いた空間は虚しすぎて、苦痛どころか悲しみも現実味も無かった。先程は近すぎる生命の危機に咄嗟に動けたが、再現するのは難しいだろう。次は確実に、撃たれる。
 そうこう考えているうちに、相手は痺れを切らしたらしかった。
「——出てこいよ、あぁ?」
 声変わりを既に終えている、胴に響く声。男だ。
 鼓膜が肉声で震えるのは、ずいぶん久方ぶりのような気がした。痛い。ひりついた喉に前振りもなく液体を流し込まれたような。そんな経験があるのかどうかは謎だが、彼はそう感じた。
 ささくれだったその声は不機嫌さを隠そうともしない。酷く投げ遣り。しかし力が無いわけではない。いや、むしろ強硬。どんな不条理だろうと無茶だろうと平気で押し付けてきそうな声音。というか、彼にとっては突如として鉛弾を打っ放してきた相手自身が不条理なのだが。次の瞬間、何処か平坦さを強いているような、抑揚の無い声が紡がれる。

Re: 円舞の国のアリス——Who are you?【キャラ募集中】 ( No.6 )
日時: 2014/01/07 22:10
名前: ブラウ ◆Tegn1XdAno (ID: aAxL6dTk)

「黙って出てくるんなら撃たない。……今のうちだ」 
 彼は逡巡した。軽く目を瞑る。
 選ばなければならない。選択肢は二つだ。突然発砲してきた相手の前に身を晒すか。キャビネットの陰に隠れたままか。見たところ出入り口は相手が立ち塞がっているであろう一つしか認められないのだから、いずれにせよ対峙は避けられない。そしてどちらにしろ、逃がしてもらえそうにはなかった。しかし、どう考えようと銃器を持った相手に何の心得もない自分が勝てるとは思えない。このまま身を潜めてどうなる。追い詰められて撃たれるだけだ。しかしあの銃口をまた間近で目にすることになるのも遠慮したい。
 ——伸るか、反るか。どっちにしろ同じのような気もするのだ、どちらでもよかろう。
 一歩踏み出す。同時に、聞き覚えのある破裂音。
 撃たれた。
「馬鹿かお前……」
 声が降る。今度は声の発生源が近い代わり、やたらと位置が高かった。それもそうだ、彼は今床の上に寝転んでいるのだから。
 銃弾は当たらなかった。僅かに右の肩を掠っただけだ。ショックでもんどり打って倒れたのはご愛嬌。この狭い部屋で跳弾が無かったのも幸い。そして相手が一撃しか放たなかったことも。
 はじめて相手の顔を見ながら、彼は静かに同意する。
 バカだ、うん。
「マジで出て来るかよ、普通」
 黒髪の青年は、呆れ一割困惑一割、残りは敵意と言った具合で彼を見下ろす。
 否応なしに目が引き寄せられるのは、やはり底無しに黒く光る拳銃。獲物を欲するかのように、鈍く禍々しく光を跳ね返す。次に古めかしい黒のロングブーツ。彼の胸を容赦なく踏みつけ、肺を圧迫している最中である。
 ボロ布を体に巻いている……と思ったら、よくよく観察してみるとそれはコートだった。使い古された深緑の、恐らくはフロックコート。


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