複雑・ファジー小説
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- アルヒ・マギア【更新再開】
- 日時: 2014/03/06 00:37
- 名前: R (ID: J9PmynZN)
世界が大いなる魔法の光に包まれた時、全てが【無】へと還元されるであろう。
知恵も力も築き上げてきた文明も。そして魔法も。
【無】に還り【生】を生むのだ。【無】とは終焉ではない。全ての始まりなのだ。
【生】へと繋がる唯一の術なのだ。
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「はじめまして」の方は、はじめまして。
作者のRと申します。
本作は作者のオリジナルストーリーとなっております。
小説内に出てくる魔法は作者の造語となっています。暖かく見守ってやってください(切実)
残酷な表現が入る可能性もあるので充分に注意してください。
尚、荒らしの方の立ち入りは禁止となっていますので、荒らしの方は早急にお帰りください。
追伸 更新が亀です。のろのろ歩んでいくので宜しければ、お付き合い下さい。
- Re: アルヒ・マギア【更新再開】 ( No.6 )
- 日時: 2015/01/21 00:50
- 名前: R (ID: J9PmynZN)
第一章 始まりの刻
昨晩、テルス王国の門を見張ってた兵士が何者かに殺害されていたという報告が入った。その話は、城に仕えている騎士団や魔術師団の中でも既に大半の者たちの耳に入っており、話題となっていた。
「物騒な話だね。一体誰がやったんだろう……」
命の間で朝食のパンを頬張りながらフィアナは呟いた。その言葉にフィアナの隣に座っていたアイアスが不機嫌そうに応じる。
「多方、マルム帝国の手先だろう。テルス王国を嫌っている奴らと言えば、それくらいだ。何故我が誇り高きテルス王国を憎むのだ。尊き国民の命を侮辱しおって…」
アイアスは、怒りでヤケになっているのか先程からパンやスープを食べ続けている。既に五個目のパンを食べ終わり、三杯目のスープに手を伸ばしていた。
「アイアス…食べ過ぎじゃない?この後の訓練に響くよ?」
半ば呆れていたフィアナがそう言うとアイアスは、ふっと見下すように笑って言った。
「騎士団の訓練は、激しく体を動かすんだろうが魔術師団は違う。魔力を練る事で体力と魔力は消耗するが食後の運動時に訪れる脇腹の痛みと、それに伴った吐き気なんぞに襲われることはない。まぁ、お前は盛大に吐い……」
言い終える前にフィアナが叫んだ。
「や、やめてアイアス!!」
雪の様に白い頬に赤みが差し、放った叫び声はやや裏返っていた。かなり大きな声だったので大食堂で食事をとっていた大半の者がフィアナに視線を注いでいる。フィアナは縮こまり
「まったく……心配した私が馬鹿だったわ…」
と小さく呟くと再びパンを頬張った。
すでに大食堂は、いつもの雰囲気を取り戻している。フィアナが黙り込んでいるので彼女の機嫌が直るまでの時間つぶしにアイアスはスープのおかわりを取りに行った。
- Re: アルヒ・マギア【更新再開】 ( No.7 )
- 日時: 2015/02/12 19:59
- 名前: R (ID: J9PmynZN)
アイアスが元の席に戻ると同時にフィアナは立ち上がり、見向きもせずに立ち去っていった。その姿を立ち尽くしてぼんやりと見ていると背後から誰かに話しかけられた。
「アイアス、何やったんだ?フィアナすごい顔してたぞ」
アイアスの前には、大柄で立派な髭を蓄えた中年の騎士が堂々と立っていた。顔には額から右頬までかけて大きな傷痕がある。昔の戦で付いたものだろう。そのおかげか人相がとても悪い。
「はて、私には、さっぱり。それよりアーバス軍隊長こそ、こんな所で何を?国に七人しかいない、魔法戦士殿の来るような場所では、ありませんよ?」
アーバスは、むっとした表情で答える。
「おいおい上司にそんな口、聞くもんじゃあないぞ。相変わらずだなぁお前は」
そう言うとアーバスは先程とは一転し無邪気に笑った。アーバスは中年の男性だというのに、どこか少年の様な素振りを見せることがある。
「軍隊長こそ相変わらずで何よりです。最近、姿を見ませんでしたがどうしたんですか?」
「いや、まぁ色々とあってな……おっと、こんなとこで立ち話ししてる暇はねぇんだった。それじゃあな」
アーバスは質問をするりと逸らし大食堂の出口へ向かった。
アイアスがその姿を見届けていると、ふと何かを思い出したかのようにアーバスが振り向いた。
「フィアナにちゃんと謝っとくんだぞ」
そう一言言って、にやっと笑うと命の間を後にした。
アーバスが出ていくと、ようやく椅子に座りスープを飲んだ。
(……冷たい)
アーバスとの立ち話のおかげでスープは、冷め切っていた。
残そうかとも思ったが、それも勿体無いと思ったのでアイアスは冷めたスープを一気に飲み干した。
- Re: アルヒ・マギア【更新再開】 ( No.8 )
- 日時: 2015/01/21 00:56
- 名前: R (ID: J9PmynZN)
白く殺風景な空間にアイアスと大剣を構えた騎士の姿をした甲冑が向かい合っている。
張り詰めた緊張感の中、甲冑が大きく大剣を振り上げアイアスを目掛けて勢いよく、一直線に飛び込んできた。
それと同時にアイアスが腕を前につき出しルミナ<星の光>と唱える。
手のひらに描かれた魔法陣から淡い光が発せられ、甲冑を包んだ。途端に甲冑の動きは緩やかになり、先ほどの勢いは消え、軽々と避けることができた。
アイアスは、するりと背後に回り込むと今度は、手のひらの魔法陣を甲冑に向かって腕を真横に振りゾーク<破壊>と唱えた。
すると先程の淡い光とは対称的な禍々しい闇が甲冑を覆い、ベキベキという音と共に甲冑を潰し金属の塊としてしまった。
アイアスは、それを見下ろすと前方に向けて軽く蹴飛ばし、ふぅとため息を吐いた。
何もない空間にこれ以上いても不毛だと思って、アイアスは、目を瞑り頭の中で扉をイメージした。そして、ゆっくりと目を開くと、何もなかったはずの空間に小さな木製の扉ができていた。
扉を開いてみると、その先を何も見えない。
ただ、ただ暗い闇が続いている。ここを通り抜けるのは、いちいち不安になる。
どこかおかしな場所へ飛んでいってしまうのではないか。入ったら最後、出られないのでは無いかと。何度も通ってきたのだが、いつになったら慣れるのかも、分からない。
(きっといつまで経っても慣れないのだろうな)と腹を括って、アイアスは扉の向こう側へと脚を伸ばした。
- Re: アルヒ・マギア【更新再開】 ( No.9 )
- 日時: 2014/12/06 00:40
- 名前: R (ID: J9PmynZN)
扉の向こう側は、見慣れた訓練場の一室だった。力の間と呼ばれるここは、騎士や魔術師の訓練の場だ。そこには、数人の騎士や魔術師が居て、各々の話をしていた。
一日の訓練を終えたアイアスは、流石に疲れきっていて、体がとても気怠そうだ。石でできたベンチに腰掛けると、両手を真上に上げ伸びをした。魔力も体力も、すっからかんになったアイアスは、徐ろに窓の外へと目を向ける。既に日は没みかけ、やや紫がかったオレンジ色の空が広がっている。半分だけ顔を出している太陽を背に数匹の小鳥達が仲良さそうに飛んでいる。実にのどかな風景だ。
これを見ていると、血生臭い現実を少しは、忘れられて心が安らぐ。この世界を生きる者たちにとっては、束の間の休息なのだろうが。
(人は何故、争うのだろうか?争いの結果として何が得られるというか。ただ、虚しいだけが。信頼を失い、尊き命さえ失うことになる。それなのに何故争う?幸い、平和と協調を重んじるテルス王国に生まれついた私は、争いごととは縁遠い所で生きてきた。しかし、時が経つにつれ私は、この世界の闇を知った。国が違うだけで同じ人間が争う必要なんて、どこにある?無意味な争いなどしてはならないのだ。この世界に平和が訪れるというのなら、喜んで糧となろう)
物思いに耽っていたアイアスの元へ誰かが近づいてくる。
白のローブに身を包んだ男性。ローブの色からすると恐らく国王に使える使用人だ。
彼は、アイアスの目の前で立ち止まるとゆっくりとした口調で告げた。
国王が直々にお呼びになっている、と。
- Re: アルヒ・マギア【更新再開】 ( No.10 )
- 日時: 2015/01/21 01:06
- 名前: R (ID: J9PmynZN)
(一体何事だろうか?国王が私のような一介の魔術師を名指しするなんて)
アイアスは、自分が招集を受けた事に、大きな疑問を抱きながら王の元へと向かった。
指定された広間に行くとそこには、小柄で真紅の頭髪をした一見、少年の様な姿の男が立っていた。そしてその傍らには、男との会話に花を咲かせているフィアナの姿があった。アイアスの姿に気づいたフィアナは、男に向かって言った。
「ヴェル見て!アイアスも来たよ!」
ヴェルと呼ばれた男は、頭に被っていたローブのフードを脱ぎながら、アイアスの方を見ると片手を上げた。
「ようアイアス!お前も呼ばれたのか?」
アイアスは、二人の方に向かいながら言った。
「あぁ、そうだ。それにしても何故お前如きが呼ばれたんだ?」
「全く非道い言い様だな。俺だって立派な魔術師なんだぜ」
「…その身長じゃあ威厳も何もないだろう。どう見ても訓練学校の生徒にしか見えないぞ。一体、いつになったら成長期が来るんだ。十九歳にもなって小さすぎるだろう。同期として恥ずかしいぞ」
アイアスが辛辣な言葉を告げると、やはりヴェルは、むっとした表情になった。
「アイアスってデリカシーなさ過ぎだよね。それこそどうかと思うけど」
フィアナはアイアスに噛み付くようにそう言った。
流石のアイアスも悪いと思ったのか渋々
「すまん、言いすぎた」
と小さく呟いた。
「ぷっ、っくっくっくあはははっははははは」
アイアスは、急に笑い出したヴェルの方を見てその場に立ち尽くしている。
「…何がそんなに面白い?」
「はっはっははぁあああ、いやぁ笑った笑った。アイアスがらしくないことをしたせいで腹筋が痛えや」