複雑・ファジー小説
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- ソリチュード
- 日時: 2014/08/09 15:01
- 名前: コンデンサ (ID: gOBbXtG8)
友達なんか要らない。1人がいい————
孤独を身に感じすぎた故、人間関係に対する考え方が大きく変わってしまった少女がいた。
そんな少女は転校先で、とある少年とその仲間達と出会う。
彼らと会話を交わす中で、少女の凍りついた心は、ゆっくりと確実に溶かされていく————
- Re: ソリチュード ( No.1 )
- 日時: 2014/08/10 08:17
- 名前: コンデンサ (ID: gOBbXtG8)
私"速水由希"は放課後、教室に残った。
居残り授業じゃない。ただ、帰りたくないだけ。1秒でも長く、家以外の場所にいたいだけ。
家に帰ったら帰ったで、毎日父さんと母さんが五月蝿い。だからできるだけ、家には長居しないことにしている。
高校なだけあって、部活は何処も血気盛んに活動している。
そんな部活動の掛け声が五月蝿くて、私はヘッドホンで耳を塞いだ。
こうすれば、ちょっとは1人の時間に浸ることが出来る。読書にも集中できる。
「————しかし君の時といい、つくづく彼も役得だよね」
「記憶にないです」
それでも邪魔はつき物だ。私がいる教室に、生徒が2人やってきたらしい。
とりあえずその2人の存在は無視する。でも絶対、向こうは私に関わってくるに違いない。
何せ————
「由希ちゃん、ちょっといいかい?」
————その2年男子"日比野浩太"が、私に関わってくる理由に心当たりがあるから。
「何」
私は渋々ヘッドホンを外し、そこそこ顔立ちが整った彼を見上げた。
気付けば彼の隣には、私を勝手に"先輩"と呼んで付き従ってくる1年生女子"美津濃真希"もいる様子。
気疲れすること覚悟で、2人と会話をすることに。
「薫ちゃんについて聞かせてほしいんだけど」
あぁ、やっぱり。ある意味予想通りだ。
薫っていうのは、この学校に通う2年生女子"朝比奈薫"のこと。
彼女は私の幼馴染で、クラスメイトで、関係的には悪友。それか腐れ縁ってトコだ。
だけど薫は、ここ最近たまにしか学校に来ないようになった。
たまに来たときに見てみれば、凄く疲れたような顔をしていることが多い。
話しかけても表情は虚ろで、返事も気の抜けたものが多くて、誰とも喋ろうとしない。
前まではクラスのムードメーカー兼トラブルメーカーって感じで明るかったけど、今と比べるとまるで正反対。
そんな薫だけど、私は何も知らない。本当に、全く知らない。
薫の身に何があったのかは、寧ろ私も気になるところだ。まずあの変わり様、気にするなという方が無理だ。
だから、ただ知らないとだけ答える。
「知らない」
「ほんとに? 由希ちゃんと薫ちゃんは幼馴染って聞いたけど」
この女誑し、相当能無しみたいだ。
いくら幼馴染だからって、何でも知り合ってるってわけじゃない。
そんなの、幼馴染じゃなくて親友だ。親友って言う関係を持たない上に知らない私が言えたことじゃないけど。
「確かに幼馴染だけど、所詮他人だから。何でも知ってるわけが無い」
私は読書を再開する準備を進めながら、ヘッドホンを再びつける。
日比野は諦めたみたいで、じゃあねと一言だけ私に告げて帰っていった。
残った真希は私に飛びついてきた後、愛してるとかよくわからない単語を耳元で囁いて去っていく。
全く、ヘッドホン越しなのにどうしてこんなにも相手の声が聞こえるんだろう。
大体、愛してるって言葉は真希の立場からしたら好きになった男に言うものでしょうが————
「はぁ」
このまま学校にいても面倒事に絡まれそうなだけなので、私は学校から離れることにした。