複雑・ファジー小説

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+SPEED【関係者必読】
日時: 2015/05/09 19:10
名前: +Spead (ID: /z9KW9Ro)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=5

 
しばらく放置してしまい、すみませんでした。新スレでの再スタートになります。名前が違うのは、今のハンネで仲良くなった人が多いからです。


 アドバイスとか、よろしくお願いします。
 ただ、浅い知識だけで執筆していますので、そこらへんはご理解よろしくお願いします。

 Special Thanks:DJ
 本当にお世話になります!!(≧∇≦)


感想、アドバイス、アイデア、質問などはURL先にて募集しています。時々オリキャラ募集もするかもしれません。要チェックですよ!!

Re: +SPEED ( No.2 )
日時: 2015/03/27 11:57
名前: +Spead (ID: mOKQW.49)

<プロローグ>

 何が正義だとか、何が悪だとか。
 そんな難しいことは僕らには何の問題でもなかった。
 本当に正しいことなんてどこにも存在しない。そのことに、いつの日からか、気づいていたから。
 僕らのしたことは決して正義とはいえない。そして悪だともいえないのだろう。

 ただ、僕らが必死で戦い続けたことは嘘じゃない。
 僕らが必死で生き続けた日々は幻なんかじゃない。
 僕らがずっと見続けてきたあの世界は夢じゃない。

 戦いが終わることを望み、花が咲くことを願い続けた僕らが存在したことを、どうか忘れないで居てほしい。




 20XX年。
 かつて地球上の広い範囲で繁栄していた人類は、今は追いやられていた。
 直径10kmに及ぶ巨大建造物、通称<卵殻>。まるで土に埋もれたトカゲの卵がわずかに顔をのぞかせているような外見の、緩やかなドーム型のそれが、人類のあたらしい住処であり、そして終の住処となるであろう場所である。
 世界各地にコロニーを成している<卵殻>には、多くの人類が収容されている。しかしその総人口は、かつての3分の1にも満たない。
 なぜそのようになってしまったのか———。
 それは40年前までさかのぼる。


 まず最初に“それ”が発見されたのは中東だった。
 とある釣り人が、湖で体長3〜4mほどの巨大なザリガニを捕獲したのである。不気味に思った釣り人は、国立の大学の研究室にその巨大なザリガニを引き渡した。
 研究者たちは嬉々としてすでに死んでしまった“それ”の解剖に取り掛かった。その結果、そのザリガニは非常に硬いキチン質の外骨格と、昆虫のような翅をもっていることが分かった。そして、その胃袋からは人骨が出てきたという。
 当然、この出来事は全世界で大きく取沙汰され、様々な憶測が飛び交った。
 突然変異説、地球外生命体説、虚構説……。その騒がれようは、かつて大騒ぎになった古代マヤ文明の予言に負けず劣らずのものだった。
 
 しかしそんな騒ぎも、しばらくしないうちにまた別種の騒ぎにすり替わってしまうこととなる。
 
 初の発見から二週間。アメリカNY上空に、“それら”は現れた。
 空を覆い尽くすほどの巨大ザリガニの大群。
 底知れぬ恐怖に追われて逃げ惑う人々を、“それら”は瞬く間に捕食していった。

 NY壊滅の報せ。
 恐怖は伝染する。多発する自殺者、凶行に及ぶもの……。
 かつてない混乱に覆われた世界を、すさまじい速度で“それら”は蹂躙していった。
 さらに、“それら”の体液を浴びた人間の一部が、おぞましい体の変化を起こし、“それら”と同じように人間を攻撃し、それがまた他人に伝染する、すなわちパンデミックまで発生する。

 この史上最悪の事態に、TV通話で行われた国連会議で、とある議案が速やかに可決される。
 それが<卵殻プロジェクト>。

 最善で、最悪の策である。

Re: +SPEED ( No.3 )
日時: 2015/03/27 10:49
名前: +Spead (ID: mOKQW.49)

<1、ソラへと続く道> 

 散り初めた桜のした、春特有の眠たくなるような陽気の中、彼は1枚の紙切れを手にして走り回っていた。母から整えてもらったネクタイを乱暴に外す。着慣れない制服はやはり走りづらく、しかしそれがうれしくもあった。中学の時の学ランとは違う、ブレザーの着心地。高校生になったのだという実感が出てくる。ゆるんだ口元を引き締めるのは何度目だろうか。
 枝の上で鳥が鳴いた。飛び立つ音も続く。翼が描いた軌跡の向こうに、青く澄んだ空が顔をのぞかせた。ひどく眩しい太陽が笑った。
 あのむこうに、自分の知らない世界がある。自分が求めている世界がある。
 手を伸ばせば、空はずいぶんと近い気がした。
 真実を、掴める気がした。

「へーえ……碧鵺くん、ね。君、相当な物好きだねぇ」
「はぁ……」
 彼———碧鵺翼は値踏みするかのような視線に身を縮こまらせた。目の前に立つのはボランティア部の部長、眞田悠壱。常に人当たりのよさそうな笑顔を浮かべているが、よく見ればその眼光は鋭い。人とコミュニケーションを取るのがわりと得意な翼でも尻込みしてしまうほどだ。
 
 確かに物好きと思われても仕方がない。『ボランティア部』なんてものに入部しようとする奴は。建前だのなんだのを取っ払えば、ほとんどの人がボランティアなぞしたくないであろうこのご時世。
 翼もボランティア活動はあまり好きではない。たしかに笑顔で礼を言われればうれしいが、そのために喜んでボランティア活動をするようなお人好しではないのである。
 ただ、翼にとってのボランティア部の魅力はもっと別の場所にあった。


「碧鵺くんはさ、なんでボランティア部に入ろうなんて思ったの?」
 悠壱が翼から受け取った入部届で紙飛行機を折りながら尋ねる。ふざけているのだろうか、普通なら初対面の相手からもらった紙をその目の前で紙飛行機にしたりなんかしないだろう。そのうえ、手渡した紙は入部届という大切な書類なのである。非常識だ。
 信じられない思いで悠壱の手元を見ていた翼は、質問を聞き逃していた。
「あ……ハイ?」
「んーとねぇ、何でボランティア部に入りたいの〜? ってきいたんだけど」
 てい、と軽く紙飛行機が飛び、尖った先端が翼の額に突き刺さる。紙のくせに結構痛い。
 考える時間はそんなに必要なかった。紙飛行機に華麗な転身」を遂げた入部届をキャッチしながら翼は口を開く。
「えーと、〈守護者〉になりたいから……ですかね」

 答えた瞬間、悠壱の笑顔が一瞬だけ凍りつくのが見えた。地雷か何かだったのだろうか、と悠壱の顔色を窺うが笑顔が更新されてあまりわからなかった。
 〈守護者〉になりたい———幼いころからの、翼の夢。長い間あたためてきたその夢を叶えられる場所をやっと見つけたのだ。
 そして、
「ふーん、了解だよ。入部を許可します」
 サラリとその夢は叶ったのである。


「あ、あとお願いが2つあるんだけど」
 悠壱が眉を下げて笑う。申し訳ない、という表情だろうか。その視線は翼の手に握られた紙飛行機に注がれていて、すぐに合点がいった。「入部届、もう1回書いてくれない?」ということだろう。
「書き直しておきます」
「ありがとう、本当にごめんね。あと、もう1つのお願いが人探しなんだけど、こっちのほうを優先してもらえないかな?」
「人探し、ですか?」
 そう、と悠壱は頷き、尻ポケットからよれよれのA4用紙を引っ張り出した。男子生徒の顔写真が印刷されている。どこかでみたことのある顔だ。

「1年の首席、設樂春臣くんを探して連れてきてほしいんだ。2,3年で探しまくってるんだけど、なかなかつかまらなくてさ」
 翼は力強くうなずいた。

Re: +SPEED ( No.4 )
日時: 2015/03/30 12:35
名前: +Spead (ID: mOKQW.49)



〈2.天才〉

 設樂春臣は天才である。
 春臣は幼いころからその聡明さを発揮した。同い年の子供たちがクレヨンででたらめなチューリップの花をスケッチブックに描いている隣で、彼は黙々とルービックキューブに取り組んでいた。同い年の子供たちが新しいランドセルを背負ってはしゃいでいる隣で、彼は黙々と割り算のドリルを消化していた。
 子供にしては異常なほど極めて冷静。テストも満点が常で、成績表もオール5が当然だった。
 聡明すぎるが故に、まわりからは奇異とみなされた春臣になかなか友達はできなかった。

 だから春臣は、本気の追いかけっこなんてしたことがないわけで。
「な、なんで追いかけてくるんですかッ!!」
「まぁ、いいじゃないのぉ〜」
 
今日は入学式で、日課が午前中で終わってしまった。校舎の中にはほとんど生徒は残っていない。帰宅したか、部活で走り回っているかのどちらかだ。何故春臣が残っているのかといえば、入学早々担任から仕事を預けられたからだ。
 仕事がようやく終わり、午後の予定を立てながら教室を出た。そしたらバタバタと何ともうるさい足音が聴こえたのだ。振り向けば、ゴリラが立っていた。
「待てよ、設樂春臣」
 人語を解するゴリラなんてそうそう存在しないだろう。よく見れば、それは厳つい人間だった。長身の部類に入る春臣でも見上げるほど大きい。
 ゾッとしたのをおぼえている。その人の放つ雰囲気は恐ろしいものだった。
 そして気づけば春臣は逃げ出すように走り出していた。

 そして今に至る。
 ゴリラに似た人に追われて数分。ゴリラの凄まじい足音が離れたと安心していたら、追手が増えた。
なんだか女性的な雰囲気をもつ男子生徒だ。良い笑顔で追いかけてくる。陸上で全国大会に出場したことのある春臣に引き離されないどころか、春臣とは対照的にその息はちっとも乱れていない。恐るべき体力に舌を巻く。
「てかいつまで逃げる気なのよ!? アタシいい加減飽きてきたわよ! まぁイイ男を追いかけるのは好きなんだけどねっ」
 ———逃げなくては。

 いい加減足の回転が悪くなってきた所だ。
 ゴリラとオネエがこちらを追いかけてくる理由は依然として知れないし、そしてこちらが何故逃げているのかもよくわからない。ただ———。

 『楽しい』

 走るのが楽しいってわけじゃない。走るのなら中学のときに散々してきた。楽しいだなんて今更わかりきっていることだ。
 春臣はもっと違うところに楽しさを覚えていた。
 
 誰かと追いかけっこをすることに。

 賢すぎた彼は今まで、年相応の遊びをしてきたことはなかった。おいっけっこなんかは特にそうで、幼稚園の授業の一環で鬼ごっこをした時もいかに体力を温存するかだけを考えて植込みの陰に隠れ、途中で飽きて自首行為をし、ルービックキューブに熱中した。
 だからいままで、ここまで純粋に追いかけっこをしたことがなかったのだ。

 曲がり角。
ちらりと制服の裾が翻るのが見えた。一瞬で隠れるところからして、待ち伏せしているのだろうと推測する。
 ならば、と大きく膨らみを持って角を曲がる。そしてすんでのところで伸びてきた手を避けた。
「あっ……!」
「カナちゃん、バレてるじゃないのっ!!」
 やはり仲間だったようだ。
 潜んでいたのは小柄な男子生徒で、ほかの二人に比べて少々頼りない感じがある。インドア系なのか、首もとでイヤフォンのコードが走りに合わせて暴れている。

 負けたくない、捕まるものか。
 陸上のそれとはちがう、走る喜びに口元が緩む。はたから見たらきっとキモチ悪いのだろう。
 階段に入り、さらに春臣は加速する。二段とばしで駆け上がり、後を大きく引き離す算段だ。踊り場へ出る最後の一段があまり、リズムが狂うが関係ない。手すりをひきよせてクイックターン。
瞬間、
「あぶッッ!!」
「ぐっ!!」

 脳天に凄まじい衝撃。聴こえた潰れた悲鳴。
 一瞬ふらついて階段から転げ落ちそうになるが、手すりが春臣の体を支える。
 衝突事故だ。目の前に男子生徒が転がっている。春臣とは逆に、階段を駆け下りてきたらしい。そして猛スピードで駆け上がってきた春臣の頭が彼の顎にヒットしたと。
……ふむ。

「いってぇ……! 顎バナナになるかも……」
「悪い」
「あ、こっちこそごめん! お前、頭だいじょうぶ?」
「問題ない」
 男子生徒はへらっと笑って立ち上がる。
 
「……あれ、お前設樂春臣じゃね」
「そうだが」
「まじか」
「ああ」

 顎が赤くなった顔が輝く。

「よぉっしゃああああ!!」

 


Re: +SPEED ( No.5 )
日時: 2015/04/27 23:09
名前: +Spead (ID: RxjWcSTv)

< 3. 悪し ① > 

「良くない! 実に良くないねぇ」
 
 いい笑顔の部長。ホコリが空気中を輝きながら舞い踊る、空っぽな部室にて。ゆっくりと日は傾きはじめ、明らかに再利用感のあるその箱の中には、総勢七名のボランティア部員が立っている。いや、六人の部員と、一人の入部予定者と言ったほうが正確だ。
 
 その入部予定者に該当する人物、設楽春臣は状況を理解しかねていた。
 隣には顎に氷嚢を押し当てているなんともアホそうな顔をした同級生、碧鵺翼。
 その二人の脇を固めている二年生、ゴリラもとい須賀本殊と、オネエもとい茶柱御霧。インドアイヤホンもとい秋波奏斗。
 そして真正面に置かれた王座的な木の学習椅子、それに腰かける部長、眞田悠壱。
 なんだか冗談みたいなメンツの間で、神妙な空気が漂っていて逆に吹き出しそうになってしまう。

 なぜこんな空気になったのか、それは見当がつく。
 先ほど春臣は、階段で衝突事故を起こした翼と、その事故のおおもとの原因を作った二年生3人に拉致されてここまでやって来た。そして待ち構えていた悠壱からボランティア部の勧誘を受け、自分に正直になって断ったらこんな空気になってしまった。
 
 断られたぐらいで通夜みたいにならなくても......。

「いや、マジありえない......。断るとかあれだよね、非常識だよね……」
「そうだな……」
 
 悠壱と殊がわざと聴こえるくらいの大きさで耳打ちしあっている。結構心に刺さる言い方で気持ちが震度0程度に揺れる。
 

 しかしそれでも入るわけにはいかない。


 春臣には約束があるのだ。大切な約束が。
 

Re: +SPEED【キャラ募集なう】 ( No.6 )
日時: 2015/05/03 11:05
名前: +Spead (ID: fOW/FHMu)

 
<3、悪し:2>


『ハルくん、高校生になったら部活はもうしないでね。たぶん、陸上とかから勧誘が来るだろうけど断らないとダメだよ。秋那ちゃん寂しがってるから』
 幼なじみからの注意にはふたつ返事だった。すでに自分のうちで決めていたことだから、言われる必要もなかった。
 
 中学の時は部活に明け暮れ、妹である秋那を寂しがらせていた。その当時は部活に夢中でちっともそんなこと思いもしなかったが、今では考えずとも分かる。
 秋那は長い間入院している。両親が4年前に事故で死んでからは、秋那にとって近しい人間といえば、兄である春臣と近所に住んでいる幼なじみの未月来叙くらいだ。そのうちのひとりである兄が、部活に明け暮れ、面会時間に間に合わずに話すこともできないなんて、きっと心細かったに違いない。

 来叔にも、たくさん迷惑をかけていたと思う。不甲斐ない春臣の代わりに彼女が秋那の面倒をみていた。彼女は、『子供のお世話は好きだから』と笑っていてくれたけれど、ほんとうは大きな負担だったに違いない。彼女は優しいから、逆に申し訳なさが募って辛くさえなった。

 俺はもう、部活はしない。




「なるほどね。ふかぁぁぁい理由があるわけだ」
 悠壱がフムフムと頷いた。ゴリラがすすり泣く声が聴こえる。嘘だろ。メンタルが羽毛布団じゃないか。

「でも僕だったらこう思うね。『我が儘いってんじゃねぇよ誰のお陰で治療受けれてんだ』ってね。実際、妹さんのために君は奨学金を獲得しようと日々努力しているんだろ? 君の頭だったら寝てても100点だろうしね。でも君は毎日必死に学校へ通う。クラス委員を務める。先生相手にお愛想を使いまくる。本来はものぐさだった天才が、優しい優等生に変身した。本当は君もさ、僕と同じこと考えたことあるだろ? 自由にさせてくれって。自分は何も悪くないのに、どうして制限されないといけないんだって」
「長セリフお疲れ様です。そんな無責任なこと、当事者じゃないヤツは誰でも言えますよ。妹が悪いとでも言いたいんですか? あいつは病気になりたくてなった訳じゃありません。誰かの支えがないと生きていけないんです。だから俺が支えないとなんです。今まで幼なじみに任せっきりで逃げていた俺が今度は面倒みるんです。なんの苦労もしていない人が勝手なこと言わないでください」







中途半端ですが次回に続きます!
悠壱は俺の嫌いなタイプです。


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