複雑・ファジー小説
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- 白語り 〜ツクモガタリ〜 (第二話 執筆中)
- 日時: 2017/01/14 22:35
- 名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: EshgQrUZ)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=3394
○はじめに
初めまして、猫又と申します。
シリアス・ダーク板に生息しておりましたが、
今回こちらの複雑・ファジー板に散歩に来ました。
どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
※注意
この小説は人によっては不快な内容を含んでいる恐れがあります。
基本的にギャグですが、シリアス成分が含まれています。
シリアス展開が大嫌いな方は閲覧をお控えくださいませ。
そうでない方はどうぞ読んでって下さい(´∀`*)♪
○追記
上のURLはシリアス・ダーク板で書いた作品です。
このお話はその続編にあたるものなので時間があったら前作もどうぞ……。
参照1400突破!
よりも放置してごめんなさい……飽きって怖——。
——ゴフンゴフン。何でもありません。
こんな感じで亀以上にノロい更新ですが、
見てってくれれば幸いです。それではー
○ 読む上でのお願い。
・根拠の無い中傷や荒らし等々、迷惑行為は絶対に止めて下さい。
・コメント・アドバイスは大歓迎です。
・文才はありませんが、温かい目でご覧下さい。(・ω・`)
それでは未熟な文ですが、
白語り(ツクモガタリ)をお楽しみ下さいませ……。
○目次
◇第一話 白と凪りて福を成す
・プロローグ >>2
・本編 >>3-4 >>8-13 >>17-27
・エピローグ それは始まりの嘘
>>28-29 >>32-33
◇第二話 笑う彼女に服来たる。
・プロローグ >>35-36
・着る者、着られるモノ
>>39-48
○用語解説
・白凪家 >>34
○登場人物紹介
◇白凪千里(しらなぎ ちさと)
天才バカでちょっとココロが壊れている中学3年生。
そのあまりにぶっ飛んだ思考回路について行けない周囲から、
障害児と馬鹿にされているものの、本人はよく分かっていない。
幼いころに父親を、小学6年生で母親を亡くしている。
現在は父親方の祖母の家で暮らしている。
容姿は全体的にぼさぼさ。(和人いわく、モフモフ)セミロングの髪は基本伸ばしっぱなしで、たまにお婆ちゃんに切ってもらっている。
付喪神と会話することができる。
◇富山和人(とみやま かずと)
基本テキトーな中3男子。千里とは小学生からの仲。アタマは悪いが心優しく機転が利く。いつも千里を適当にあしらっているように見えて、影では力になってやりたいと思っているらしく。わざわざ中学校を転校してまで千里のそばに居ることを選んだ。
基本ズレている千里とは違い、男女間の関係を意識しているらしく、
たまに千里が見せるあどけない表情に頬を赤らめている。
◇おばあちゃん(白凪 チヨ)
白髪。お団子ヘアーの典型的おばあちゃん。
両親を失った千里の保護者であり、千里のことを心配しているようだ。
しかし一方では付喪神退治を生業とする特殊な陰陽師の一族であり。そのせいか怪王やハナを消し去ることに命をかけているようだ。
◇塵塚怪王 (ちりづか かいおう)
付喪神の王とされる妖怪。自由奔放でやんちゃな付喪神達を止めるどころか一緒になって遊んでいたりするが、精神が『劣化』して暴走した付喪神を無に帰す重要な役目を担っている。
どこか人間臭く、妖怪としての恐ろしさや威厳はけっこう簡単に崩壊する。千里からはジジ塚と呼ばれている。
本体は古ぼけた小箱らしい。
◇紙代 花 (かみよ はな)
活発そうな黒髪短髪で、どこか猫っぽい人。基本的に服装は白いワンピースだが、実はその下に普段着を着込んでいる。『あらゆるものを無に帰す(水に流す)力』を使い、暴走した付喪神の処理を怪王と共に日本各地で行っていた模様。
普段は陽気で楽しそうにしている反面、精神的に不安定な一面があり、不意に狂気的な行動に出ることがある。
◇付喪神
古びた『モノ』が自我を持つことで生まれる化け物。
生者や死者の思いや怨念。動物や人の魂などをエサとして生まれる化け物で、数もそれなりに多い。しかし人語を操れるモノはごくごく少数なうえ、そもそも動くことも喋ることもできないモノもいるので人懐っこくはない。
依代(よりしろ)である『モノ』が壊れたり、ヒトの強い悪意や邪気に飲まれて自我が薄れると暴走し、人を襲うことがある。
◇冴橋由香 (さえばしゆか)
千里のクラス担任。体育教師であり、いつもジャージを着ている。
教師陣から嫌われている千里の良き理解者でもあるようだ。
◇佐々原友恵 (ささはらともえ)
和人の親友。というか腐れ縁。
陽気で明るく人を引き付けやすい。
どうやら怪王やハナについて何か知っているようだが……?
- Re: 白語り 〜ツクモガタリ〜 (第二話 執筆中) ( No.43 )
- 日時: 2016/05/02 00:33
- 名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: 0apRgaLj)
「ドーパミン。……デナイノ?」
和人にツッコまれた千里は突如しょぼーんとした表情になり、なぜかロボットのようなカタトコで呟く。
「は? なんだそれ。栄養ドリンクか?」
「“中枢神経系”の“モノアミン神経伝達物質”。……カテコールアミンとも——」
「俺、英語“は”苦手なんだ。和訳してくれ」
「英語“も”……だよ?」
「その顔やめろ。テスト前で笑えねえんだよッ! ……マジで」
数日後のテストを思い出したのか若干涙目な和人。対して勉強できなくても悩まないし、実際勉強できるから悩まない千里。
「ははは……あははははッ……く。くくく」
「おっ?」「ん?」
そんな2人の背後から、ついに笑いを堪えられなくなったいじめられっ子の笑い声が響いた。
「く、く……。ご、ごめ……さい、ちょ、笑いが……っ」
どうやら2人のやり取りがツボにはまったらしい千里のクラスメイトさんは、笑いすぎて滲む涙を拭いながら、ひたすら笑いを噛み殺す。
「2人共面白すぎ……です。なんですか、ホント……っ」
さっきまでのことで強張っていたココロが緩んだのか、周囲の目を気にしつつ顔を手で覆い隠す安田に和人がニヤっと笑う。
「や〜っと明るくなったな。え〜っと……」
「お前、じゃない、その……。キミ、名前なんて言うんだ?」
「あ。千里ちゃんと同じクラスの安田彩希…です」
慣れない敬語で歯切れ悪く話しかける和人に少し驚きつつ、答える安田。
今になって恥ずかしくなったのか、照れながら下を向く。
「やっぱ千里(こいつ)と同じクラスかー。色々大変な奴で迷惑かけてたらごめんなー」
「……そういうセリフ、練習してるんですか?」
「ん?」「なんでも無いです」
照れの臨界点を過ぎて毒吐く安田。
そして自覚のない和人。
ゴミ捨て場に続く最後の廊下を恋人のように仲むつまじく歩く2人のあいだに、突如後ろを歩いていた千里が割り込む。
「ねーねー! 何話してる?」
「わっ、お前何いきなり——」
「千里ちゃんの話だよー」
少しだけ千里の扱いが分かってきたのか、驚く和人に代わって安田が年下に接するような言葉を投げかける。
「千里ちゃんは面白いねーって。……あと冨山くんは黙った方がいいよー。…って」
「そっかー」
「おい、今何か聞き捨てならない呟きを聞いたような気がしたんだが……」
「たしかに和人は黙った方がいいかも」
「うんうん。中高生の思春期女子には危険だと思います」
「え? 何で俺が責められんの?」
まさかの1:2で対立する構図に困惑する和人をよそに、安田という名のストッパーが外れた女性陣は暴走を続ける。
- Re: 白語り 〜ツクモガタリ〜 (第二話 執筆中) ( No.44 )
- 日時: 2016/05/10 20:55
- 名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: 0apRgaLj)
「……ほんっとうに。自覚……ないんですか?」
「あ…あぁ! そんな急に危険とか言われても……そりゃ仲の良い連中とかと下ネタ言い合ってたりしたことはあるけども! 女子の前じゃそれなりに気を使って——」
「ん! 分かった。和人はドM」
「ちょ、お前黙ってろ! 話がややこしく——」
「和人はドMだから。荷物いっぱい持つといいよ!」
そう言うなり、安田から荷物を奪い取るとまとめて和人に放り投げる千里。
「うん。それじゃ。行こ、安田さん」
「え、あ……はい。そ、それじゃ冨山さんお先に失礼します」
そうして千里は一目散に、安田はペコリと和人におじぎをしてその場から走り去る。
——和人を置いて。
「は? ちょ、おいま……待てやオイっ!! そりゃねぇだろ流石に!! 俺1人に荷物押し付けて帰んなッ!! てか安田ぁッ!! お前実は気弱なお人好しキャラじゃねぇだろ! 単に人に流されやすいだけで実はけっこうドス黒い性格してねぇか!? いや、おい。ちょ、ちょま……て、って」
必死の制止もむなしく女子2人は消え去った。
そして。残ったのは本の束とゴミ袋。
「はぁ〜ッ」
収集所の目の前ということもあって、持っていくこと自体は苦ではないものの、置いて行かれた事実に頭を抱える和人。
「……仕方ない、やるか」
道端にこんなモノを放置するわけにはいかない。
そんな善意で『もしかしたら本当に自分はドMかもしれない』という迷いを振り払いつつ和人はゴミ収集所と校舎内を往復し始める。
「にしても……ひでぇな、ヒトをドM呼ばわりとか」
単純作業に5秒で飽きた和人がそう愚痴をこぼす。
「まぁ千里(あいつ)のことだ、全く意味は理解していないんだろうがな」
バカのひとつ覚えというか、天才的発想の飛躍(ひやく)というか……。
そんな千里の顔を思い出して、フッと鼻で笑う和人はしかし、そこで考える。
周囲から指を差され、嘲(あざ)笑われようと。
数十人から足蹴りされ、顔中傷だらけになろうと。
何をされてもずっと無邪気な笑顔の誰かさんと比べたら。
「どっちがドMだよ……」
何も知らず、ただただ何も知らずに跳ねまわる想い人(あいつ)へ向けて、和人は仕返しとばかりに苦笑いした。
- Re: 白語り 〜ツクモガタリ〜 (第二話 執筆中) ( No.45 )
- 日時: 2016/06/06 22:28
- 名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: 11yHdxrc)
「遅かったな、待ちくたびれたぞ」
ブロック塀の上からその声が降ってきたのは、千里が安田と離れた直後だった。
おばあちゃんから買い物を頼まれていた千里は商店街へと道を進んでいたのだが、その声に思わず上を向く。
「おいおい……なんだその見たこと無いモノでも見るような顔は。儂ら昨日の時点で顔見知りじゃろうに……」
記憶が無いのか、愛想笑いひとつしない千里に呆れる声を辿った先には着物を着た青年。塵塚怪王改めジジ塚が居た。
えいっと塀から飛び降りる怪王に千里が何食わぬ顔で聞く。
「ハナさんどうしたの?」
「……今日は来ない」
やや間があって、怪王は吐き捨てるようにそう言う
「そっか」
「うむ」
お互いそれ以上追求する気が無いのか、立ち尽くす2人。
「待ち合わせはこの先、スーパーマーケットの2階だ……行くぞ」
歯切れの悪い解答しか出なかったことを気にしてか、怪王はやや強引に話題を変える。しかしその言葉に何のためらいもなく、千里は首をかしげた。
「え? 何で?」
怪王の足が止まる。
「な……何で、って」
「今日は帰りたい気分」
あっけらかんと言い放つ千里。
怪王はそんな能天気生物を見て「……ふぅ」とひとつため息を吐く。
「あのな、お前はモノと会話できるだろう?」「うん」
「だから鬱憤が溜まってる付喪神の話し相手になってくれと、昨日言ってなかったかの?」
「え? 聞いてない」
謝る気配など微塵もなく無責任に、それこそ何の感情も込めずに言い放たれたその言葉に怪王は——。
「……ふっ」
——思わず吹き出す。
「? なんで笑う?」
心配して、というわけでは無いのだろう。
ただ純粋に怪王が笑ったことに興味を示して首をかしげる千里に、怪王は目じりに浮かんだ涙をぬぐいながら言葉を漏らす。
「いやはや。どうも色々悩んでるワシ自身が馬鹿馬鹿しくなってな。……はは。そうか、忘れたか……」
澄み渡った空を見て。
自分の顔を隠すように真上を眺めながら、怪王は何度も何度も噛み砕くようにうなずくと着物の袖でさっと顔をぬぐって千里と目を合わす。
「分かった。……歩きながら話そう」「うん!」
千里はただ純粋にその言葉を飲み込むと、スーパーマーケットへと走る。
怪王は「待て待て」とその背中を追いかけながら薄汚れた小箱に変ずると、千里の学生カバンへと潜り込んだのだった。
- Re: 白語り 〜ツクモガタリ〜 (第二話 執筆中) ( No.46 )
- 日時: 2016/08/13 03:43
- 名前: 猫又 ◆KePkhUDKPk (ID: Iqcykxw8)
そこは小さいながら2階建てのスーパーマーケットだった。
1階に食料品を2階に日用品と雑貨を取りそろえる店内は平日の夕方にもかかわらず空いている。
それが最近近所にできた大型ショッピングモールの影響であることなど知るよしもない1人とガラクタは小さなエスカレータに乗って迷わず2階へと急ぐ。
『よし。着いたな』
「……? なんで、いつもより服。いっぱいある?」
2階へと到着した千里を出迎えたのはフロア一面に置かれたハンガーラックと色とりどりの服だった。
婦人服を中心として背広や着物、果てには子供用ドレスまで取りそろえられたその場所の頭上には、でかでかと『大・古着市』と書かれた横断幕が鎮座している。
『人気(ひとけ)が無いし、会話するにはよかろう? ワシら付喪神の移動手段となるとどうしても人の手を借りざるをえんからな。こういうイベントに乗じてこの地に集まるよう指示している』
どうやら付喪神が1枚噛んでいるらしいそのイベントをバックの中から誇らしげに語る怪王。
「あなたどこから来たの?」
が、そんな怪王を尻目に千里はさっそく近くにあった黒いトレンチコートに話かけていた。
『おいおい、そいつに魂は入ってないぞ。もっとよく見てだな……』
「え? お話しするんじゃないの?」
『お話しすりゃぁいいってものでもなかろうに……』
もう思考が噛みあわないことについては諦めたのか、深々とため息を吐く怪王。
同時に“こやつ付喪神だろうがそうでなかろうが何とでも会話してるんじゃ……”という疑念が浮かぶも、それについて探ると自分の精神が持ちそうにないので泣く泣く、普通の付喪神に話しかけてもらうよう説得した。
「うん。わかった」
案の定。絵に描いたような笑顔で流された。
『ゼッ…タイに分かってないでしょ、あなた』
その様子にまた忠告を繰り返したのは怪王……ではなく。
『バタバタ走り回らないでよ鬱陶しい……。あなたのせいでホコリが舞ってるじゃない、カラダに付いたらどうしてくれるの……?』
それは木製ハンガーに両脇を固定されたベージュのバルーンスカートだった。
- Re: 白語り 〜ツクモガタリ〜 (第二話 執筆中) ( No.47 )
- 日時: 2017/01/14 22:32
- 名前: 猫又 ◆KePkhUDKPk (ID: EshgQrUZ)
ふわっ、と形容すべきかそれともダボッと言うべきか……。
見るからにゆるゆるなその体から、キツイ棘のある言葉が飛ぶ。
『あー、いいわネー人間は走り回れて。私もどこかに走り去りたいわー。こんなさらし者にされるぐらいなら文字通り穴掘って埋まりたいわー。バクテリアが分解してくれないかしら、私のカラダ……ふ、ふふ……』
最終的には自暴自棄になって、不気味に笑うスカートさん。
そんなスカートさんに対し千里は、やっぱり恐怖心など微塵も無いとばかりに近づき、裏地に縫い付けられた成分表のラベルを見ながら、舌っ足らずな舌を回す。
「PET樹脂……含んでるから無理、と思う……。虫に食べさせる?」
『はぁ!? 虫はイヤよ! 穴が開いたままだとみっともないじゃない!』
『おい、お前』
消えたいと言ったかと思えば自分の身を案じるスカートに怪王が苦笑いで声をかける。
するとスカートは千里との言い争いを止め、怪王へと向き直った。
『あらあら、怪王様までご足労いただいたんですか? てっきり使いの者だけだと……』
さっきまでの乱暴な口調から一転、丁寧な言葉使いで怪王と対話するスカート。おそらく目があればジト目で千里を睨み付けているであろう彼女(?)に怪王もまた、あきれ顔で耳打ちする。
『それが、どうもコイツ話が通じん奴でな…付き添いだ』
『…まぁ期待してはいませんでしたけれども。……大丈夫なのですか、この娘』
『こっちが聞きたいぐらいじゃよ。ま、ワシも後ろで聞いておるから気休めにはなろう』
『たしかにこんな身では、贅沢も言えませんわね……』
といった打ち合わせを小声で行い、その間またどこかへ行ってしまった千里を呼び戻す。
『じゃ、聞いてちょうだい。……こんな依代(よりしろ)に縛り付けられた。私の悩みを』
一通りの準備が整い、古着市の喧騒が遠くに聞こえ始めた時。
物(ソレ)は静かに語り出した。