複雑・ファジー小説
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- 僕は夢の中の君に恋をした【短編】 『完結』 番外編更新
- 日時: 2015/08/14 12:42
- 名前: 電波 (ID: oYpakyoC)
初めまして、電波と申します。
普段はシリアス・ダークの方で小説を書かせてもらっていますが今回浮かんだストーリーがどうしても書いてみたくここで投稿しました。
ただし他の小説も掛け持ちしてることもあり、あまり長くならないよう短編にしてあります。
ざっと数話投稿して終わりにする予定です。
読んでくれる人がいたら嬉しいですw
それと気軽にコメントしてくれると作者的にテンションが上がりますので良かったらくれると嬉しいですw
- Re: 僕は夢の中の君に恋をした【短編】 ( No.7 )
- 日時: 2015/08/08 16:51
- 名前: 電波 (ID: oYpakyoC)
俺とユメが出会って一週間が経った。
今日も俺はいつもと変わらずユメからのタックルに倒れこみ、いつも通りの自己紹介をして今日は何をして過ごすか話しあう。
青い空、植物の海に囲まれながら互いが互いの意見を出し合う。
色々と何にするか迷った挙句、今日決まったのが花探しだった。至って単純で簡単そうに思えるが、俺が見る限りの景色に緑以外の色なんて空と土ぐらいのものだった。強いていうならユメも相変わらずの白のワンピースだ。
ユメはぴょんぴょん飛び跳ねながら無邪気な子供のような笑顔を浮かべていた。
本当に楽しそうにしているな……。
見ている俺でさえ楽しくなってくる……とあぶないあぶない!
つい見とれてしまいそうになるが顔を左右に振って意識を戻す。
その時、
「おーい!勝負は始まってるよー!負けたら罰ゲームだからねー!」
彼女は走りながらこちらに顔を向けて言う。お、おう!と反射的に返事をする俺だが正直この勝負、負けるつもりでいた。別にやる気がないとかそういうのではなく、この遊びはただの口実にしかなかった。
本命は罰ゲームの方だ。
罰ゲームの内容は、負けた方は好きな人を発表するというもの。
なぜここまでのことをするかというと大体察したと思われるが、俺はユメのことが好きだ。
最初の内はただの夢の女の子で相談に乗ってもらってる時もそんなに意識していなかったが、彼女が俺を忘れてしまうと知った時からいてもたってもいられなくて、色々と努力していくうちに彼女のことが好きになってしまった。
そして今日、会って一週間で告白とは早い気がするがどうしても自分の気持ちを伝えておきたかった。たとえ明日には忘れてしまうかもしれないけど、彼女にとってあったばかりの男だけど一言言っておきたかった。
しかし、いざ告白するぞ、となると妙に落ち着かないし変な汗かくし手足が震える。
「だ、大丈夫だ!これは夢だから!これは夢だからまったく全然、問題ないっ!告白したって大丈夫だ!」
必死に自分に言い聞かせながら俺は、一応一生懸命探したていを装うため、草原の中へと入っていった。
それからどれくらいの時間が経ったのか、俺が草原の中から出てくると勝ち誇ったような表情をするユメが目の前に立っていた。
「あれ、よくここが分かったな」
「ふっふん、私はこの場所を熟知しているのだ!だから名無しさんの居場所は手に取るように分かるよ!」
なるほど…と妙に納得する俺。そんな時、ユメが自分の腰に両手で何かを隠しながら不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「では、勝負の結果と行きましょうかね!」
「お…おう!」
ノリの良い彼女はいっせーのーでっ!と掛け声を放ち隠している物をだした。俺もその掛け声に合わせて片手に持っていたそれを出す。
「……」
「……」
ユメが出したのは花びらがとても細かく綺麗な紫色を特徴とした花だった。(後で調べたが彼女が出した花の名前は『オオカッコウアザミ』という海外の植物である)
一方俺が出したのは何処にでもあるようなアサガオの花である。
この時少しの沈黙が流れた。お互いの花の量が圧倒的な差があって不自然に思ったのか、それともこの量を見てふざけているのかと怒っているのか、そんな悪いイメージが俺の脳内に駆け巡った。
「やったぁぁぁ!!」
と思ったらそうでもなかったようだ。
彼女は全身で喜びを体現しながら、こう言う。
「ばっつゲーム!ばっつゲーム!」
内心ホッとする俺。ここまでは計画通り。しかし、問題はここからだ。彼女いない歴=年齢の俺にはどう言えば良いか分からないでいた。
「ほらほら罰ゲームだよ名無しさん!」
「う、うん…」
ああ…どうしたら良い物か。口を開こうにも唇が震え始め、顎もなぜか重くて開けない。
そんな俺を見てか励ますようにユメはこう言った。
「大丈夫だって!好きな人の名前を挙げても私はその子のこと全然知らないから!」
いやいや、好きな人はお前だから!
俺は言いたいけど言い出せずに口をひたすらもごもごさせているだけ。気づけば顔の温度が急上昇、恐らく見た目が茹で上がったトマトのように真っ赤なのだろう。
ユメは頑張れっ!頑張れっ!とにこやかに応援してくれる。
ここまで来たなら言うしかない。
男なら覚悟決めてバシッとしろ!
俺はぎこちなくだが口を開け、そこからようやく声を出すことに成功した。しかし、その声は風が吹き抜けたかのような情けない声で言い出した俺でさえ聞き取れない。
「頑張れっ!もう一回!」
彼女は微笑みながら俺に顔を近づける。勇気づけるためなのか、もしそうだとしたら余計に声が出なくなる!
だが後には引けない。もうやりきるしかない。半場開き直りながら俺は天を見上げ高らかに宣言する。
ええい、ままよ!言ってやれ、もう一回言ってやれ!
たとえどんな答えが出ようとも後悔しない!
悔いを残したくない!
彼女との思い出を残すためだ!
「お前が好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
- Re: 僕は夢の中の君に恋をした【短編】 ( No.8 )
- 日時: 2015/08/08 17:24
- 名前: 左右りと (ID: XaDmnmb4)
初めまして、左右りと、といいます
突然のコメント失礼します!
複雑ファジー板の一番上にあった作品をみよう、というなんとも短絡的な選び方でここに来たのですが……
大当たりでした!!
↑言い方とっても失礼ですね、すみません
でも、いつもはコメライにしかいない私が、何をおもってか複ファに来て
たまたま一番上に電波さんの小説があって……
幸運ですね、こんな面白い作品に出逢えるなんて
最初から一気に読みましたが、とっても面白いです
芸人とかの面白い、ではなく興味深い方の面白いなんですけど
小説の世界に引き込まれる、というか……
世界観も独特(?)な感じで読んでいて、楽しいです
でもユメちゃんの記憶は次にはなくなっているという悲しい設定もあって
テンパくんのキャラは見ていて(読んでいて)飽きないですし
読んでいて面白かったり、悲しかったりはよくありますが
楽しい、と感じたのは初めてです
わたしはこのお話大好きです
続きを楽しみに待っています
*
長々しいコメント失礼しました!!!!!
- Re: 僕は夢の中の君に恋をした【短編】 ( No.9 )
- 日時: 2015/08/08 18:24
- 名前: 電波 (ID: oYpakyoC)
初めまして左右りとさん!
久しぶりに小説投稿してて、個人的にふと思いついたことを書いてた作品を大好きと言って頂いて本当にありがとうございます!!
嬉しさのあまりに何度もコメントを読んでしまいましたw
たぶんあと一話か二話で完結するので機会があったらまた読んでくれると嬉しいですw
- Re: 僕は夢の中の君に恋をした【短編】 ( No.10 )
- 日時: 2015/08/09 01:37
- 名前: 電波 (ID: oYpakyoC)
「お前が好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
声の音量を調整する余裕なんてなかった。俺は喉が枯れるくらいの大きさで言うと、膝に手をついて情けなく息切れを起こした。そしてその後から急な脱力感に襲われ、手足の震えが酷くなった。
「え……?」
「……」
向うから戸惑いの声が聞こえてくる。さっきまで無邪気に笑っていた彼女の対応はどこにいったのか、おふざけなしで本気で黙っている。やめてくれ、なんでこの時だけ黙ってるんだよ…そこは少し明るく振舞ってくれよ…。
懇願するように思うが俺は同時に絶望した。
ああ…やってしまった…。
ついにやってしまった…。
後悔を残さないようにと言った言葉なのに言ったことを逆に後悔してしまった。どうせ明日には忘れるだろうけど、告白というのはやっぱり恥ずかしいし恐い。
沈黙が恐い…。
なんか言ってくれ……頼むから……!
俺はそう願いながら顔を恐る恐る上げた。彼女がどんな表情をしているのか気になったのもあるし、この沈黙にそろそろ耐えられなくなっていたからだ。
しかし、目の前にあったのは予想外の反応だった。
「お前……」
そこにいたのは頬は真っ赤に染めたユメがいた。目には涙を浮かべ、必死にそれを抑えようと表情を引きつらせていた。彼女は俺と視線が合ったことで涙腺が緩み、頬から一つ、また一つと涙が零れていった。
「や、やだなぁ!汗だよ…汗!涙じゃないよ!」
彼女は両手いっぱいに抱えた花を片手で抱えながらもう片方の手で涙を拭う。笑ってはいるものの、心に動揺が見られるのが確かだった。片手に抱えた花がぽとぽと落ちていく。
傷つけちゃったか…。
なんとなく分かっていた。心のどこかでこの告白は成功しないと察しがついていた。自分なんかでは成功しないと分かっていた。失敗すると思っていた。
だけど……!
「ありがとう!」
え…?
今彼女はなんて言ったのだろうか…?
ありがとうって…。
そこでちゃんとユメの表情を見てみると、彼女は確かに笑っていた。目の下は涙で腫れていたが、その笑顔はそれまでに何度も見たような笑顔だった。
「それって…どういう……」
思考がパンクしかけていた。ユメの言葉の意味がどちらに対しての意味か分からなくなり、真偽を確かめようと俺がそう言いかけた時だった。
「だ・か・ら」
ユメはそう言うと、俺にそっと近づいて。
「私も……ってこと」
その言葉を実感する間もなく、俺は彼女に抱きしめられた。優しい手つきで親が子供を撫でるように優しく俺の頭へと手を回し、自分の胸に引き寄せた。俺の顔の横には勝負に使った大量の花があり、少し邪魔くさかったのが印象的だった。彼女の温かな温もりと感触を感じながらユメがさっき言った言葉がようやくどういう意味だったのかを理解したのは一分後ぐらいだった。
俺の顔に再び熱が灯るのを感じた。でもここである疑問が頭の中で生まれた。
「なんで…俺のこと…知らないでしょ?」
彼女は一日経てば俺のことを忘れる。ユメにとっては俺とは初対面のはずだ。なのになんでそんな簡単にオッケーがでるのか分からなかった。
「知ってるよ。毎日私に声をかけてくれたよね。毎日私と自己紹介してくれたよね。毎日私と遊んでくれたよね」
「どう……して?」
驚きだった。
彼女が俺と会ったことを覚えていた。それは何より嬉しいことだがどうにも解せなかった。なぜ今日に限ってなのか、それともユメ自身に何かあったのか…。そんな心配を吹っ飛ばすようにユメは落ち着いた様子で答えた。
「私、昔から外に遊びに行けなくてね。いつも部屋の中で外見てるだけだったんだ」
「……」
ユメはそのまま言葉をつづけた。
「唯一外に出かけたとするなら小学校に行った時ぐらい。と言っても一回か二回なんだけどね。その時にとても優しかった男の子がいてね————」
そして、ユメはその後の自分を淡々と語り続けた。学校には仲の良い友達はいなくて困っているときに、クラスメイトの男子が無愛想だが話しかけてくれたり、学校に行けなくなって部屋の中でずっと一人で過ごしていたりと色々と苦労が重なったエピソードだった。
退屈で何もすることない人生に絶望していたところ、この夢を見た。何不自由のなく伸び伸びと遊んでる中、俺と出会ったそうだ。
最初はただ興味本位で話しかけたらしいのだが、毎日同じ夢を見たり、必死に思い出させようとする俺に揺れたらしい。そこまで聞いてふと疑問になったことを投げかけた。
「最初から…覚えていたのか?」
彼女が言うには俺とは逆で起きている間記憶は保持され、寝ている間は忘れているようだ。
諸々のことを聞いて俺は妙に落ち着いた。彼女も現実を生きてきた。夢だけの存在ではなかった。手の届かない存在ではなかった。
気づけば、俺は彼女を抱きしめ返していた。
ずっとこのままでいたい…純粋にそう思った。しかし、夢というのは永遠じゃない。それを告げたのはユメの方だった。
「もう時間だから……」
そう言うと、彼女は俺からゆっくりと離れていった。まだこのままでいたかったが彼女はするりと俺の手からすり抜けていく…。
「また会えるよな!?」
そんな問いかけに彼女は微笑みながら、
「また会えるよ!諦めなければ!」
彼女のその言葉がやけに耳に響きながら、視界は白く包まれた。ユメの姿が光に徐々に飲み込まれるのを最後まで見届ける。そこでもユメは最後まで笑っていた。
—————————————————————————
目が覚めると、俺はベッドの上で寝ていた。
そして今日が、
始まった。
- Re: 僕は夢の中の君に恋をした【短編】 『完結』 ( No.11 )
- 日時: 2015/08/10 01:11
- 名前: 電波 (ID: oYpakyoC)
目の前にあったのはいつも通りの日常。いつも通りの散らかった部屋にいつも通りの朝。
俺は普段の生活と変わらずベッドから起き上がり、歯を磨き、服を着替え、朝食を口にする。変わり映えのない日常に俺は案外退屈しながら、少し家でごろついた後、気分転換も兼ねて外へと出かけた。
今日が土曜日ということもあってか外に出かけている人が意外と多い。特にカップルとかカップルとかカップルとか。
俺への当てつけかと言わんばかりにイチャイチャしながら歩いている。
彼女がいない俺にとってはとてもいられた場所じゃない。
早々にこの場を立ち去ろうじゃないか。
そう自分に言い聞かせつつ、足早にこの場を離れていく。
それからどれくらい歩いたのか、俺は近くのベンチに腰を置いた。ふぅ…と一息吐くと、自分の頭上にある木々の木洩れ日を見上げながら落ち着いた気分になった。
俺の今いる場所は一つの近くの散歩としては有名なスポットだ。一つの川を挟んで沢山の木々が並ぶ道で春には沢山の花を咲かせて沢山の観光客や地元の人が立ち寄る場所でもある。
今はその春でも何でもないのでここで散歩する人は少ない。
落ち着きたい時には絶好の場所だ。
それからボーとしていると、なぜだか朝の出来事を思い出した。朝の出来事と言ってもただの夢だ。
内容こそはあまり思い出せないが、何か大切なことを誰かと約束した気がする。とても温かくて、どこか切ない気分がどうしても残っていた。誰かと話していた。それだけは分かっていた。
けど、誰だったんだ?
「約束……」
ふとこんなことを呟いた。
俺は誰と約束したんだ?相手はどんな奴だった?男?女?
どんなに思い出そうと努力してもどうしても思い出せない。もしかしてどうでも良い約束なのか?ひょっとしてしょうもないことなのか?
俺の中でそんな考えが流れ始めた。
その時、
『忘れないから!』
「ッ!?」
ふと頭の中で流れたとある言葉。女の子の明るい声が頭の中で響いた。なぜかとても聞き慣れた声で、違和感を感じさせなかった。そして一瞬だが、その声の主の顔が映画の一場面のように浮かび上がった。
「ああ……覚えてる」
覚えてる、確かに覚えてる。俺は誰かと不思議な場所で約束をした。どんなことで約束したのかは覚えていないが、何か重要なことを約束した。そして、今見た彼女のその表情はとても明かるげだったが、どこか切なげだった。
ここからどんなに思い出そうと頑張ったが結果は変わらなかった。
現状が変わらないまま数分が経ち、ここにいて考えても仕方ないと判断した俺は家に帰ることにした。だが、このまままっすぐ家に帰る気分でもなかったのでどこか寄り道してから帰ろうと考えた。
俺はベンチから立ち上がり、何も考えず足を進める。どこに行くかも分からない行き当たりばったりで…。
しばらく歩いていくうちに一軒の花屋を通り過ぎた。どこにでもあるようなおしゃれで可愛らしい小さな花屋だったが店の前に置いてある花に目が留まった。
紫色の細かい花びらがたくさんついた花。花の隣にはプレートがあり、そこには『オオカッコウアザミ』と書かれていた。たぶんあの花のことだろう。特に珍しいというわけでもなくどこにでも生えてそうな花なのになぜだろうか。
この場で見るのは初めてなのに前にもどこかで見たような気がした。
———————————————————
「はぁ…」
俺はため息を吐いて道を歩いていた。片手にはさっき花屋の前に置いてあったオオカッコウアザミが花束として抱きしめられた状態にある。
なぜこんなものを…。
思い出も何もない花を衝動的に買ってしまうのは初めてだった。きっとさっきの夢の記憶に関連してるのかと思われるが、それより優先すべきがこれをどこに飾るかで困っていた。
家に飾るとしても花瓶なんていう大層なものは置いてないし、ましてやわざわざ花瓶を買う気にもならないし…。
再び零れるため息。
その時、俺は足を止めある場所へと視線を向けた。
俺が歩いている歩道の向かい側の歩道に黒い服を着た男性や女性が複数人ある建物に入っていくのを見た。黒い服と言ってもそんな怪しいものでもないやつだ。
所謂、喪服だ。
たぶん、誰かが死んでその告別式か葬式のどちらかだろう。
まぁ、他人の俺からしたら関係のないことだ。
俺はそう思いながら歩き出そうとした時だった。
「……!」
建物から人が出てくる際、開いた扉の向こうに死んだと思われる女の子の遺影が視界に入った。ここの歩道と向うの歩道の距離は決して近いわけではないが、それは確かに女の子だって分かった。
その写真が目に入った瞬間、なぜだか体が反射的に動いていた。間に車道があるにも関わらず、俺は関係なくそこを突っ切った。そして、建物の扉を勢いよく開け、構わず中へと突き進む。
「お、おいなんだね!君は!?」
「ちょっと誰か!!この子止めて!!」
「きゃあ!!」
色々な年齢層の人達が俺を見ては色々言ってくるが俺はそれを気にすることなく進む。ここで一体俺は何をしているんだ、頭の中ではそう理解しているのに体が言うことを聞かなかった。
そして、式が挙げられていると思われる会場の扉を半場突き破るような形で開ける。それと同時に死んだ女の子の身内や親戚が軽い悲鳴を上げたりして、一斉に俺を見ていた。
息も絶え絶えになりながら俺はそれを気にすることなく、ある方向へと視線を向けた。そこには銀髪の髪に子供っぽさを残す無邪気な笑みを浮かべる女の子が遺影に収められていた。
俺は急な脱力感に襲われ、その場にへなへなと座り込んでしまった。片手に持っていたアザミも今の行動で花びらが無残に散り、それがまるで死を表しているかのような状態だった。
ウソだろ…。
『やっほぉぉ!!』
お願いだ…。
『よし、じゃああなたはテンパ君だね!』
やめてくれ…。
『うん、テンパ君が言うことが本当なら次の私はあなたを忘れてる……だけど、私であることに変わりはないから誘ってくれると嬉しいな!』
ウソだと言ってくれ…。
『ごめんね。全部忘れちゃって…』
何でお前が…。
『だから、あなたがまた私に会ってくれると嬉しいなーって思う!』
何で……。
『また明日ね、ミンミン君』
また会えるって…。
『私も……ってこと』
約束したじゃないか…。
『また会えるよ!諦めなければ!』
「ユメ……」
そして、突然前触れもなく頭の中に流れてくる夢(ユメ)の記憶。唯一欠けてはならないとても大切な記憶だった。なのに俺はなぜ…どうして忘れていたんだ。気づけば俺は涙を流していた。
横たわるユメの棺桶の近くに位牌へと視線を移す。
そこには、
『夢原 愛子(ゆめはら あいこ)』
と彼女の名前が記されていた。
「やっぱり……」
俺はやっと思い出せたと心の中で呟いた。この夢(ユメ)物語で唯一現実を見つけ出したのだ。
なぜなら、俺は以前ユメに会っていた。
〜終わり〜