複雑・ファジー小説
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- 空へ向かう鳥と黄昏の世界
- 日時: 2016/04/13 20:03
- 名前: 猫のスーパーハルサメ (ID: qESkNdgF)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=11024
_その少年には翼があった
はじめまして、猫のスーパーハルサメと申します
始めての小説投稿なので、幼稚かつ読みにくい文章になると思いますが暖かい目で見守ってください(笑)
この小説には残酷な表現がありますので苦手な方はご注意を
それではよろしくお願いします
〜目次〜
登場人物
>>1
>>2
用語解説
>>3
>>4
序章『飛翔』
零話「天使族侵攻時代の日記」>>5
壱話「幼い日の記憶」>>6 >>7
弐話「お転婆娘」>>8>>9
参話「父の遺産」>>13>>14
肆話「無剣流」>>15>>16
伍話「覚醒」>>17 >>18>>19>>20>>21
陸話「戦いの果てに... 」>>22
漆話「時は流れ」>>23
番外編1「メルフィンの誕生日ケーキと変なテンション」>>24
第一部『翼と剣』
一章『翼の生えた少年』
一話「パーティーの夜」>>27>>28
二話「母の行方」>>29>>30
三話「そして旅へ」>>31
番外編2「この世界の神話や宗教について」>>33
のれりさんによるムファンのイラスト >>32
二章『探索』
四話「魔法剣士」>>34>>35>>36
五話「剛腕」>>37>>38
六話「男」>>39>>40
番外編3「この世界の歴史について前編」>>42
のれりさんによるメルフィンのイラスト>>41
三章『占い師の眼』
七話「とある村」>>43>>44
八話「翠の館」>>45>>46
九話「母の居場所」>>47>>48>>49>>50
番外編4「この世界の歴史について後編」>>51
四章『発見』
十話「王都」 >>52>>53
十一話「父の正体」>>54>>55
十二話「神の子供たち」>>58>>59>>60>>61(>>60はTe9さんによるカイのイラストあり)
十三話「生と愛」>>62>>63>>64>>65>>66
エピローグ「翼が抜け落ち天使は人間となる」>>67
第二部『血の匂いと終焉』
五章以降の登場人物>>70
新用語解説※随時更新>>71
五章『神への叛逆』
十四話「日の届かぬ場所」>>72>>73
十五話「復讐の仮面」>>74>>76
十六話「地獄からのシシャ」>>77>>78
十七話「雨の降る夜」>>79>>80
十八話「北へ」>>81>>82>>83(>>83はのれりさんによるユシャンのイラストあり)
六章『北の天国』
十九話「天使の園」>>86>>87
二十話「兄を名乗る男」
二十一話「謎の女」
二十二話「白髪の姫君」
二十三話「古からの長」
二十四話「師」
二十五話「死」
二十六話「告白」
七章『恋』
二十七話「本当の気持ち」
二十八話「約束」
八章『決戦』
二十九話「仮面の男」
三十話「永遠の命—」
三十一話「破壊」
三十二話「運命の悪戯−」
三十三話「罪には罰がいる」
三十四話「喜劇という名の悲劇—」
三十五話「紡がれる糸」
三十六話「いずれは滅び—」
三十七話「仮面のひび」
三十八話「永遠も終わり」
- Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界【旧名 天使の翼】 ( No.73 )
- 日時: 2016/03/22 01:13
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
- 参照:
「お前、よく俺の住んでいる場所が分かったな」
「まあね、あらゆる情報を集めて探し出したんだ」
俺はあまり情報を出さないようにしたのにバレるもんなんだな。
「まあいい、今日はパーティメンバーを呼んで食事をするんだ。お前も食べてけ」
「え!?お兄ちゃん!聞いてないよ」
あ、そういえばユシャンと母さんに言うの忘れていたな。
「ごめん、言うの忘れてた」
俺が手で頭を抑えながら謝るとユシャンが拗ねたように腕を組みながら「しょうがないなー、今回だけだよ」と許してくれた。
「ファインどうする?食べていくかい? 」
「いや、いいよ、君には一つ言わなければいけないことがあるから、それを言うためだけにきた。他の事なんかどうでもいいよ」
言わなければいけないこと?
なんだろうな。
「前、君に渡した手帳があったろ?」
「ああ、あったな」
「実はあれ、書いた人間は僕なんだ」
「... ...は?」
こいつがなにを言っているのか分からない。
冗談だろ?
「お母さん!?どうしたの!?お母さん!?」
すると家の中からユシャンの声が聞こえてきた。
「どうした!?ユシャン」
俺が家に入ると母さんが倒れていた。
ユシャンは母さんをなんども揺さぶり、起こそうとするが母さんは一向に目を覚まさない。
「どうしたんだよ... ...母さん!?」
「お母さんが... ...」
「君のお母さんリリアは死んだよ。僕が殺した。」
後ろからファインがゆっくりと歩いてきてそっけなく言った。
- Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界【旧名 天使の翼】 ( No.74 )
- 日時: 2016/03/25 23:27
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
- 参照:
十五話「復讐の仮面」
「母さんが死んだ!?嘘だ... ...そんな嘘をつくなあああああッ!!」
こいつは嘘をついている... ...母さんが死ぬわけがない!
天使族は長命だ... ...そんなすぐに... ...
「君の母さんは油断しやすいみたいだね。 だから密かに君の母さんの喉に痛みも感じさせないように針を入れ、そのまま僕の魔法でズブリと一発さ」
こいつは何かを喋っていた俺の耳には入ってこなかった。
当たり前だ。
母さんが死んだという事実を認められなかったんだ。
そんな説明、聞いてられなかった。
聞いてて... ...腹の底からなにかが沸き上がってくる。
「知るかよ... ...てめぇ... ...」
俺は感情のままに奴に向かって剣を斬りつける。
だが、ファインは横を向き、物理結界を放ち、攻撃は結界に阻まれる。
「怒りで忘れているようだけど僕は物理結界の壁で守られている。 今の君の攻撃じゃあ、この物理結界は破れないだろうね」
「そんなこと関係ないッ! 俺はお前を倒すのに手段は選ばん! 母さんを返せえ!」
ファインはその言葉一つ一つを聞いては笑い声を上げ、そして満足そうにいった。
「君は母を殺されたことで腹を立てているようだが、所詮は人の命、いつかは消えるものだ。それが少し早く、それもただ人の手によって消えただけだ。 冷静になれ。そして、僕はおとなしく立ち去るから、追わないでくれたまえ」
ファインはそういいながら薄気味悪く笑い、家を出ようとする。
だが、俺は奴に向かってある疑問を投げつけた。
「なんで母さんを殺したんだ?」
そう聞くとファインは急に体の動きを止め、ゆっくりと俺の方を向いてきた。
「それ、いう必要あるのかい?」
「ああ、なんで母さんが死ななければいけなかったのか知りたいし、それに手帳の持ち主とお前が同一人物ってやつも気になる」
ファインは少しの間、頭を掻きながら考えるようにしていたが、やがて頭を掻くのをやめ、俺に向かってこういった。
「天使族を殺したいほど憎んでたら本当に殺しちゃったってところかな?」
「は?なんだよ... ...それ」
俺は理解できなかった。
天使族が憎い?なんで?お前は何もされて... ...いや... ...手帳を書いた人間と同一人物なら... ...
俺は悟ったような顔をしていたのだろうか
ファインは不気味な笑い声を高らかにあげ、俺に向かって静かにこういった。
「おや?分かったかい?僕が手帳の書いた主と同一人物... ...手帳の持ち主フェニは僕だよ。 大切な人を奪われ、激しく憎しみを抱いたら何故か不老不死を手に入れちゃってそこから復讐が始まったってわけ」
「さっき、お前、人の命はいつか消えるものって言ってたよな。 なら、それも運命だと受け入れるべきだろ?」
「それとこれとは別さ。僕は不老不死を手に入れたから仮面を被らなければいけなくなった理由の天使族を憎んでいるだけさ」
こいつ... ...自分の事を棚にあげやがって... ...
「次の僕の目的はコルレ天使国を破壊すること、まあ、君には関係ないだろうから僕はいかせてもらうよ。」
コルレ?ああ、一年前に建国したっていう国か... ...
「そこはどんな国なんだ?名前からしさて天使族がいたりするのか?」
「その通りさ、天使族が人口の七割を占める国さ。突如として現れ、元々あった国を滅ぼし、建国した謎の国、もちろん各国はコルレを滅ぼそうとしたが天使族の堅い守りとマトーレ王国が参加しなかったため敗北、コルレは未だにあそこに居座っている」
「で?お前はそれが憎いのか?天使族がいるから」
「もちろん、あそこには天使族の族長がいるという噂だ。この何百年と経た知識と魔力で、復讐をするのさ!」
ファインは声が裏返るほど大きな声で笑い声を上げる。
「君には関係ないだろ?むしろ、今まであんな目にあったから天使族が憎いだろ?どうだ。僕と共に天使族を滅ぼさないかい?」
「それもいいかもな、俺があんな目にあったのは天使族のせいだからな」
そうだ... ...差別されてきたのも... ...あいつらのせいだ... ...だけどな
「断るよ。俺はお前を殺そうと思う」
俺は強くはっきりと言うとファインが訝しく思ったようで俺になぜと問うように訪ねてきた。
「なぜ?君には関係ない国だ。それが滅びようとも関係ないし、むしろ君には好都合だろ?」
「コルレって国がどうなろうと確かに俺には関係ないし、興味もない。だがな、お前は母さんを殺した。その時点でお前は俺に殺されるかもしれないと思った方がいいぞ。なぜなら、俺はやると決めたら諦めるということは選択肢から除外するからな」
そうはっきり言うと、ファインははぁとため息をつく
「なら、仕方ないね、僕はこれで逃げさせてもらうよ」
「させない!」
ファインが素早く立ち去ろうとするのをユシャンが斧を投げ、ファインの行く手を阻む。
「っち... ...厄介なやつめ... ...ならば仕方ない... ...少し、相手になろうか」
- Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界【旧名 天使の翼】 ( No.76 )
- 日時: 2016/03/28 21:23
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
- 参照:
数百年前... ...
ある男がいた。
男はかつて、最強の剣士として名を馳せていたが、ある事件によって剣を捨てた。
天使族侵攻によって... ...
天使族の攻撃は凄まじく、彼の故郷は崩壊寸前まで陥った。
彼もまた、天使族に敵わず大切な剣を失う。
もう勝てないと悟った彼は北に家族と共に逃げようとする。しかし、北の国は入国を拒否し、結局家族は天使族の弓矢によって死に、男もまた、深手を負い洞窟に逃げる、この世に絶望した彼はせめて後世に役に立つようにと天使族侵攻について手帳を記す。
書き終わったあと、自分にはもう何もないと後悔し、死のうとする。
しかし、神は彼を生かした。
洞窟の奥にあった書物を見つけ、それを声に出して読んでしまった。
その文字が魔法であり、不老不死をもたらすものだと気づいた時にはもう、数々の魔法を習得していた。
剣を捨てた男は魔法を取り、天使族侵攻によって失われた巨大魔法すら習得した。
そして、魔力を無限に使用するため魔力を無限に増やす代わりに一生外せなくなる呪われし仮面を自ら被る。
ただひたすら、天使族を殲滅させるために... ...
そして、数百年が経過した。
男は... ...
.
.
.
「さあ、君の斧で僕を攻撃してみろ」
ファインは両手を広げ、早く攻撃してこいと言わんばかりの格好だ。
ユシャンはその挑発に乗り、ファインの横に向かって斧を振り下ろす。
しかし、物理結界に阻まれ、斧はファインの目の前で止まる。
「どうした? その程度かい? 所詮はちょっと力が強いだけの子供、僕には敵わないさ!」
ファインはそうユシャンを鼻で笑い、魔法を唱える
「光剣<リヒトシュヴェーアト>」
光でできた剣がユシャンの右手首を貫通し、ユシャンは悲鳴を上げ、斧を手から離し、そのまま気を失う。
斧が落ちた衝撃で床には大きな亀裂が入り、人が落ちそうなほどに大きく割れる。
「なーんだ、その程度か、これじゃあ、僕より弱い昔の人間の結界も破れないよ」
ユシャンの攻撃を鼻で笑うファインに対して、俺は剣を向けていた。
「その剣で何をするつもりだい? 僕を殺そうってんなら無理な話だ。無心王剣ですら僕の結界は破壊できない。無駄なことさ」
「無駄じゃないさ...喰らえ!無心王剣!」
俺は一心不乱に無心王剣を放って放って放ちまくる。
ファインは横を向いたまま右手の結界で攻撃を受け止めていたが徐々に押されていく。
「どうだ!だんだん押されていっているだろう!」
その発言にファインは何の効果があるのだと言わんばかりに笑い、そのまま無言を貫く。
「余裕の表情だけど、後ろを見な!」
「ん?」
ファインは何があるのかと後ろを見るがそこには先ほどユシャンの斧によって出来た大きな亀裂があった。
「な!?」
「気づくの遅いぞ! さあ!落っこちやがれ!」
とどめの一発と無心王剣を放ち、ファインは結界ごと亀裂の中に落ちていく。
「はぁはぁ... ...やった... ...」
さすがに無心王剣を連続で使うと体力が持たずにその場に倒れる。
それに続くようにドアが開き、二人の男女が入ってくる。
おそらくムファンとカイさんだろう。
「ごめん!遅れた!って何これ!?ユシャとメルは大丈夫なの!?」
「ああ、俺は大丈夫だ... ...ユシャンは気絶はしてるがおそらく軽傷だ。介抱すればすぐ起きるだろう」
そう言うとカイさんは俺に近づき、俺を手で支え、こう質問する。
「一体何があった!?この大きなひびはなんだ!?」
「それについては後ほど詳し──「危なかったよ、君の作戦はなかなかだメルフィン君、ここはマズいと考えたよ」
ファインが亀裂をよじ登ってきた。
- Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界【旧名 天使の翼】 ( No.77 )
- 日時: 2016/03/31 20:54
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
- 参照:
十六話「地獄からのシシャ」
ファインはしぶとい。
こいつは亀裂に落ちたというのに何故かは知らないが這い上がってきた。
生命力はゴキブリなのか?
「落ちたときはさすがに駄目かと思ったよ。 だって僕は不老不死の肉体ではあるが不死身の肉体ではない。つまり、死なないというだけで普通に殺されるんだ。だから、物理結界を覚えた。なのにそれと関係なしに、あんな所に落ちたら死ぬに決まっている。危なかったよ。本当にね」
ファインはいかにも楽しそうに語る。
っち... ...こいつはどういう魔法を使って... ...
「さあ、お話は終わり、君にさっき落とされたせいでちょっと怪我をしてね、僕は退散するよ。代わりに彼らに相手してもらうといい」
そういい、ファインは玄関の方に行き、ドアを開く。
外は既に夜だったようでドアの向こうは真っ暗だった。
そして、その闇から何かが一つ動いた。
否、一つではない「無数」の何かが動いていた。
「紹介しよう! この集落の墓場から掘り起こした死体を全部アンデッド化させたことで誕生したゾンビ達さ!」
ファインの紹介によってゾンビ達は低く呻き声をあげ、ドアの方からゆっくりとこちらに歩いてくる。
「っち... ...」
アンデッドか、厄介だ... ...
もう死んでるせいか、斬っても斬ってもしぶとく襲いかかると聞く。
腐った肉体からは悪臭を放ち、見た目は気持ち悪く、なるべく見たくない。
そんなアンデッドが俺に向かってやってくる。
正直、気絶しそうになる。
だが、ここで戦わなければ死ぬ。
あっちはすでに死んでるから問題ないだろう。
「それじゃ、僕はおさらばさ。 じゃあね!」
ファインは軽い足取りでドアを出、そのまま夜の暗闇に走って行く。
「逃がすか!妖精召喚〈フェアリーサモンズ〉」
カイさんの手のひらから虫のような羽を生やした人に似た生物が現れ、ファインを追う。
「カイさん、あれは?」
「あれは、妖精さ。古代から森の奥にいると呼ばれている小さな生物。あれは召喚したものの叶えたいことを叶えようとする性質を持つ。だから、私は今、ファインを追跡しろと妖精に命令し、妖精はおそらく追跡を終えたあと、私たちの所に来て、道案内をしてくれるだろう」
「はぁ」
よく分からないがつまりはファインを追うってことかそれはありがたい。
そして、今俺はファインを追うのではなく、このアンデッドを片付けることだからさっさと片付けようか。
「う゛あ゛あ゛」
アンデッド達は呻き声を上げながらぞろぞろと家に侵入してくる。
これはやるしかないか。
「はぁ!」
瞬殺剣を放ち、およそ十体のアンデッドの首をはねる。
死にはしなくても混乱して、アンデッドに襲いかかるだろう。
その予想が当たり、アンデッドは近くにいたまだ首の繋がっているアンデッドに襲いかかる。
首の繋がっているアンデッドは首を斬られたアンデッドを喰おうとするが、首の斬られたアンデッドは対抗し、共に倒れる。
「よし!作戦成功だ!」
そうして、再び入ってくるアンデッドをムファンの火の魔法で焼き尽くし、家に入れないようにする。
完璧だ。
これで勝利は確実。
さあ、ファインの所へ向かわなければ
「ぎぃぁぁぁぁ... ...」
そう安心していたのも束の間
他のアンデッドとは明らかに格が違う者が入ってきた。
- Re: 空へ向かう鳥と黄昏の世界【旧名 天使の翼】 ( No.78 )
- 日時: 2016/04/01 20:15
- 名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
- 参照:
そのアンデッドは他と違い腐敗臭はせず、綺麗な死体のままだ。
黒い髪に紫の瞳、生前は美少年だっただろう。
そのアンデッドに向かってムファンは火の魔法を撃ち込む。
アンデッドは焼き焦げるが次の瞬間、再生して元通りになっていた。
「は!?ありかよ。そんなの!」
思わずそう叫んでしまう。
だが、今までのアンデッドは炎魔法で殲滅できたが、こいつには効かない。
なかなか、厄介なやつだ。
おそらく、ファインが遊び心満載で創ったのだろう。
迷惑な野郎だ。
「ここは俺に任せて! ムファンは気絶しているユシャンを介抱してくれ!」
「了解!」
ここで無心王剣を放てば奴は倒せるかもしれないが家も崩壊するだろう。
母さんのいない家なんてもう必要はないが崩壊した家の下敷きになるのは勘弁なので、瞬殺剣を放つ。
「うっ... ...」
先ほどのファインとの戦いで体力を消耗しているのかはたまた、アンデッドとの連戦で疲れたのかは分からないが一回、瞬殺剣を放っただけで息が激しくなる。
だが、アンデッドは終わりだろう。
そう、安心していたが、アンデッドは首をはねられたら後、また再生し、何事もなかったかのようにこちらに歩んでくる。
「こいつは今までとは格が違う... ...俺はもう体力が保たない... ...カイさん、頼みます」
「ああ、分かった。氷の刃〈ラムドグラース〉」
カイさんの剣が氷に変化し、アンデッドの周りに集まり、アンデッド諸共、巨大な氷と化す。
カイさんがパチンと指を鳴らすと氷は粉々に砕け、アンデッドもそれに巻き込まれバラバラになる。
「やったな」
カイさんが安心したように言うがまだだ... ...
奴はまだ、蘇る。
予想は当たり、アンデッドは氷の中から肉体を一つ一つ繋ぎ、復活する。
「しぶとい奴だな... ...まあ、いいだろう攻撃していけばいずれ倒れるだろう」
カイさんはそう楽観的に考えるが俺はそう思わない。
アンデッドはおそらく再生能力は最強レベルだ。
「うあああァァァァァァァァ」
アンデッドはそう言いながらカイさんに噛みついてくる。
初めは避けては攻撃を繰り返していたカイさんだが流石に体力が保たないようでその場に剣を落としてしまった。
「な!?」
カイさんは驚き、動きが鈍くなっている。
そこへ、アンデッドがカイさんに襲い掛かり、カイさんの右腕に噛みつく。
「ぐああ!」
噛まれたことでカイさんは大きく叫ぶ。
そして、噛まれた所は青黒く変色している。
「まずい、アンデッド化する!」
確か昔読んだ本でアンデッドに噛まれた者は初級解毒魔法で噛まれたところを解毒しないとそのものもアンデッドになるって書かれてた... ...
このままじゃカイさんが!
「く... ...解毒〈デザントクスィカスィオン〉」
そう心配していたが、やはりカイさんは解毒魔法を覚えていたようで噛まれた傷口を手で押さえ、魔法を唱え解毒する。
「メルフィン君、私はもう心配いらない。だが、あのアンデッドはムファン君に襲い掛かっていく、確かムファン君は解毒魔法や回復魔法が使えない。さらに、僕は先ほどの解毒魔法でもう魔力切れだ。すまない、彼女を守ってくれ」
守れって言ったって体力はもう限界だし、あいつには聞かないし、何か身を守るものでも... ...身を守るもの?
ああ、あの『オフダ』とやらがあったじゃないか
あれに対アンデッド用の効果があるかは分からんが、一か八かだ。
行くしかない... ...
そう決断したあと、俺はポケットに入れていたオフダを取り出しアンデッド目掛けて貼り付ける。
効果はあったのかアンデッドは「ウガアアアアア」と悲鳴を上げ消滅していく。
このオフダとやらはアンデッドなんかを消滅させるためのものだったらしい。
だが、これでもう安心だ。
「ムファン!ユシャンは無事か?」
俺はムファンに近寄りユシャンの容態をたずねる。
「介抱はしたし、直に目覚めるわ、そう言えばメル、気になったんだけどリリアさんは?」
「... ...母さんは... ...」
俺が暗い顔をしているのに気づいたのかムファンは察した様子で
「そう... ...ファインに?」
俺は小さく頷くと、ムファンはがっくりとうなだれ、顔を下に向ける。
よく見ると、膝には小さな水滴がぽろぽろと落ちていた。
彼女は泣いていた。
「泣くなよ... ...ファインを倒して仇を討とうぜ」
俺は慰めるように言うが、その声には元気がなかった。
だが、静寂の空間は一つの呻き声でかき消された。
後ろを向くと『アンデッド』と化した母さんがこちらへ向かっていた。
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