複雑・ファジー小説

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空へ向かう鳥と黄昏の世界
日時: 2016/04/13 20:03
名前: 猫のスーパーハルサメ (ID: qESkNdgF)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?mode=view&no=11024

_その少年には翼があった

はじめまして、猫のスーパーハルサメと申します
始めての小説投稿なので、幼稚かつ読みにくい文章になると思いますが暖かい目で見守ってください(笑)

この小説には残酷な表現がありますので苦手な方はご注意を
それではよろしくお願いします

〜目次〜
登場人物
>>1
>>2

用語解説
>>3
>>4

序章『飛翔』
零話「天使族侵攻時代の日記」>>5

壱話「幼い日の記憶」>>6 >>7

弐話「お転婆娘」>>8>>9

参話「父の遺産」>>13>>14

肆話「無剣流」>>15>>16

伍話「覚醒」>>17 >>18>>19>>20>>21

陸話「戦いの果てに... 」>>22

漆話「時は流れ」>>23

番外編1「メルフィンの誕生日ケーキと変なテンション」>>24


第一部『翼と剣』

一章『翼の生えた少年』
一話「パーティーの夜」>>27>>28

二話「母の行方」>>29>>30

三話「そして旅へ」>>31

番外編2「この世界の神話や宗教について」>>33

のれりさんによるムファンのイラスト >>32

二章『探索』
四話「魔法剣士」>>34>>35>>36

五話「剛腕」>>37>>38

六話「男」>>39>>40

番外編3「この世界の歴史について前編」>>42

のれりさんによるメルフィンのイラスト>>41

三章『占い師の眼』
七話「とある村」>>43>>44

八話「翠の館」>>45>>46

九話「母の居場所」>>47>>48>>49>>50

番外編4「この世界の歴史について後編」>>51

四章『発見』
十話「王都」 >>52>>53

十一話「父の正体」>>54>>55

十二話「神の子供たち」>>58>>59>>60>>61(>>60はTe9さんによるカイのイラストあり)

十三話「生と愛」>>62>>63>>64>>65>>66

エピローグ「翼が抜け落ち天使は人間となる」>>67

  
第二部『血の匂いと終焉』

五章以降の登場人物>>70

新用語解説※随時更新>>71

五章『神への叛逆』
十四話「日の届かぬ場所」>>72>>73

十五話「復讐の仮面」>>74>>76

十六話「地獄からのシシャ」>>77>>78

十七話「雨の降る夜」>>79>>80

十八話「北へ」>>81>>82>>83>>83はのれりさんによるユシャンのイラストあり)

六章『北の天国』
十九話「天使の園」>>86>>87

二十話「兄を名乗る男」

二十一話「謎の女」

二十二話「白髪の姫君」

二十三話「古からの長」

二十四話「師」

二十五話「死」

二十六話「告白」

七章『恋』
二十七話「本当の気持ち」

二十八話「約束」

八章『決戦』
二十九話「仮面の男」

三十話「永遠の命—」

三十一話「破壊」

三十二話「運命の悪戯−」

三十三話「罪には罰がいる」 

三十四話「喜劇という名の悲劇—」

三十五話「紡がれる糸」

三十六話「いずれは滅び—」

三十七話「仮面のひび」

三十八話「永遠も終わり」

Re: 天使の翼 ( No.62 )
日時: 2016/03/14 12:05
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

十三話「生と愛」

 「中々やるな... ...」

 男は余裕たっぷりの表情で言った。
 今、俺は奴と剣を交えている。
 勝負は奴が優勢。なぜなら、どちらも一歩も引かない状況ではあるが俺は疲れているのに対し、奴には疲れの色が見えないからだ。

 「ふん!俺は弱者には名を名乗らないことにしているがお前は強者だ。名乗らせていただこう!」

 男はそう言い、名を大声で名乗った。

 「我が名はハルキュエール!王国一の剣士にして、左大臣ゴルランゲスの配下よ!」

 こいつ、神の子供たちではないのか!?
 
 「神の子供たちではないのか?」
 「ああ、私はただのゴルランゲス様の配下、他の種族がどうなろうと私には関係ないからな。だが、しかし、ゴルランゲス様には忠誠を誓っている。だから、ゴルランゲス様に刃向かう貴様は殺さねばならぬのだ」

 っち... ...狂信者ってやつか... ...
 こういうタイプの敵は自分はどうでもいいが主君は守るタイプの奴だ。魔物にもこんなタイプのがいたが、倒しても倒しても、主君を守ろうとして厄介だったな... ...

 「俺が名乗ったんだ。貴様も名乗ってもらうか」

 え?俺も名乗るのか、まあいい。名乗るか

 「俺はメルフィン、見ての通り、冒険者だ。あと、左眼の色で分かるが、神の子だ」

 そうは話すとハルキュエールは驚いたような顔をした。

 「神の子だと!?通りで眼の色が違うと思った... ...つまりは剣士としての才能は常人より長けている。これには警戒せねば... ...」

 ハルキュエールは警戒したのか剣を両手でもち、守りの態勢にはいる。
 守るなら守ればいい、その分、俺が攻撃させてもらう。
 ここで炎剣流はまずい。城も巻き込む可能性がある。ならば、無剣流を使うしかない!

 「はぁ!」

 無剣流上級技 無心剣を繰り出す。この技は無心王剣の下位互換となるのだが、威力は他の流派の究極奥義並みに高いのでいつもはこちらを使っている。

 「な!?無剣流!くそ!氷山!」

 男の前に巨大な氷の塊ができる。
 無心剣は氷の塊を破壊するが、そこで威力はほとんど消える。

 「言い忘れていたが、俺は水剣流最上級流派氷剣流の使い手よ」

 ん?水剣流最上級流派?どっかで聞いたことあるぞ?
 
 「水剣流最上級流派って雷神流じゃないのか?ネールスも言ってたし」

ハルキュエールはネールスという名前に反応したのか急に嫌そうな顔をする。

 「ネールス〜?あのバカはそんな嘘をついていたのか、俺に一度も勝てなかったくせになぁ」
 「お前、ネールスと何かあったのか?」

 そう聞くと奴は「あいつは雑魚のくせに俺にいつも刃向かってた!死んで清々したよ!」と愚痴を言い出した。

 「そのネールスなら俺が殺したんだが」
 「ん?お前が殺めたのか?なら、翼の生えた少年は貴様か!よく見たら貴様の使っている剣も光業剣だな!そうか!お前が殺めたのか!よくやった!」

 なんか褒められた。よっぽど嫌っていたのだろう。

 「だが!貴様は私の敵だ!ネールスを殺したのは感謝するがゴルランゲス様に敵対したのは許さん!殺してくれる!」

 そう言い放ち、奴は剣から青い波動を出した。

 「氷剣!」

 俺はとっさに避ける。波動は地面ぶつかり、地面が氷で覆われる。

 「俺の氷剣流はぶつけた物の温度を【奪う】流派、少しでもぶつかったらそのぶつかった物は温度を奪われ氷になる」

 な!なんて凶悪な流派だ... ...あれに当たらないように技を放ち、敵を倒す... ...難しい... ...
と、考えていると俺はある方法を思いつく

 「なあ、ハルキュエール、この戦いをすぐに決着させる方法があるんだが、それをやらないか?」

 こう、喋るとハルキュエールは食いついてきた。

 「ほう?どんな方法だ」

 そう聞かれると俺は考えた方法を語った。

 「俺とあんたが向かい合う。それで同時に自分の使える最強の技を使う。それでより強い方が弱い方の技を食い破り、技を打った本人を殺めるってわけだ。どうだ?乗るか?」
 「面白い!乗った!」

 そう言い、俺は奴と向かい合う形になった。
 少しの間、静寂の時が流れる。そして、俺が剣を握った瞬間、ハルキュエールも剣を握った。

 「無心王剣!」
 「氷剣流最上級奥義氷王水剣!」

 二つの波動がぶつかる。
 両者共に互角... ...いや
 【無心王剣】の方が威力は高かった。
 無心王剣は青い波動を食い破り、ハルキュエールに向かっていく。

 「くっ!」

 ハルキュエールは剣で無氷王剣を止めようとするが力が及ばず、波動がハルキュエールの腹に貫通する。
 
 「ぐあっ」

 ハルキュエールは大量の血を吐く。
 そして、倒れる。

 「俺の勝ちだぜ、ハルキュエール」
 「そうだな... ...貴様の勝ちだ。ゴルランゲス様... ...申し訳ありません... ...」

 ハルキュエールは今にも泣きそうな目でゴルランゲスに謝罪した。
 そして、目を瞑り、二度と起きることはなかった... ...

 「俺は敵としてのハルキュエールは嫌うが一人の剣士ハルキュエールとしては尊敬するよ。安らかに眠れ、ハルキュエール」

 俺は彼の冥福を心から祈り、歩くことにした。
 後はゴルランゲスただ一人だ... ...
 ゴルランゲスを殺し、母さんを救う!

Re: 天使の翼 ( No.63 )
日時: 2016/03/13 18:21
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

下へ降りるとカイさんが倒れていた。
 最初はカイさんが負けたのかと驚いたが、すぐ近くに両手のない死体が転がっていたので、カイさんの勝利だと認識した。
 俺はカイさんに歩み寄り、意識はあるかどうか確認した。
 そうするとカイさんが目覚めた。

 「カイさん!大丈夫ですか!?」
 「んんっ... ...メルフィン君か、ああ、なんとかね... ...」
 「この死体は?」
 「ああ、それは神の子供たちのリーダーベクトルさ。なんとか倒せたよ」

 神の子供たちのリーダー... ...結構な大物だな... ...だが、リーダーが死んだんだ。神の子供たちはもう機能しないだろう。
 と、考えていると周りにムファンがいないことを疑問に思った。

 「そう言えばムファンは?」
 「ムファン君なら、さきほど、階段の隣にあった地下階段に降りて行ったよ」

 そうか、地下に行ったのか... ...

 「じゃあ、俺達も地下に行きましょう」
 「そうだね」

 そして、俺とカイさんは地下へと向かった。
.
.
.
 地下はなにやら焦げ臭かった。それもそのはず、地下には所々、 魔法を使ったと思われる跡がある。
 おそらくムファンが業火を使ったのだろう。

 「しかし、ムファンがいませんね」
 「ああ、そのようだね。どうするメルフィン君?」
 「そりゃ、ひたすら探すしかないですよ」

 そうして、俺たちは地下を探索することにした。
 地下は暗いが、一本道だったのですぐに奥にたどり着けた。
 そこにはドアがあり、いかにもな怪しさを醸し出していた。

 「じゃあ... ...開きますよ」
 「ああ、任せた」

 恐る恐る、俺がドアを開けると目の前に粉が発生し、目に入ってしまった。

 「な!?」
 「さあ、死んでもらおう!」

 低い声が鳴り響いた。おそらく、ゴルランゲスだろう。
 まずい、どこにいるのか分からない... ...

 「氷の刃〈ラム ド グラース〉!」
 「な!?ぐふうう!」

 カイさんの声が聞こえたかと思うと、ゴルランゲスの叫び声が響いた。
 俺が目をこすり、目に入った粉を全て出し、目を開いた時にはゴルランゲスはいなく、目の前に階段があるのを見つけた。

 「すまない、ゴルランゲスには逃げられた。しかし、頭の良い男だ。油断してる隙に逃げられてしまった」
 「このしたに、母さんとムファンが?」
 「おそらく、ね。あの状況だと、ムファン君も捕まったと考えた方がいいだろう」
 
 カイさんはあっさりとムファンが捕まった可能性を言うが、その声には焦りが混じっていた。
 ムファンが捕まったかもしれない... ...そう考えると呼吸が荒くなる。
 ゴルランゲスは狡猾な男だ。ムファンを盾になにをするか分からない... ...
 焦りと緊張を持ちながら、階段を降りた。
 階段の下は更に一本道が続いていた。
 しかし、そんなことどうでもよくなるくらい、憎い男が女を二人横に寝かせながら薄汚く笑いながら言った。
 
 「メルフィン!貴様が近づいて見ろ!この二人のどちらかを殺す!さあ、選べ!貴様が殺して欲しいのは母か!友か!」
 「こいつ... ...なんてことを!」

 カイさんが信じられないと言うように喋る。

 「てめぇ... ...ぶっ殺してやる!」

 憎しみを込めて、俺は叫んだ。

Re: 天使の翼 ( No.64 )
日時: 2016/03/22 13:08
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

「ふん!喚け!貴様が不利なことに変わりはない!」
 「てめえ!俺は今すぐにでもお前を殺せるんだぞ!」
 「ああ、そのかわり、この二人の内、どちらかも道連れになるけど、ね」

 この外道... ...そこまでして、地位と名誉が欲しいか!

 「メルフィン君... ...」
 「カイさん、どうすればいいんだ... ...俺は」
 「... ...」

 方法は三つある... ...
 一つはゴルランゲスが母さんとムファンを殺す暇もなく、瞬殺剣で斬り殺すこと... ...だが、瞬殺剣は人を殺す程のぱあはない。この方法はとても難しい... ...
 二つ目はムファンを捨て、母さんを助けること... ..だが、俺にはムファンを捨てられない... ...だって仲間だ... ...友を捨てるなんて... ...
 三つ目は母さんを捨て、ムファンを助けること... ...だが、これも駄目だ... ...母さんは今まで俺を育ててくれたし、ここで母さんを捨てれば今までの旅は無駄なものになる... ...
 どの方法も駄目... ...どうする... ...くそう... ...
 いや、決めろ... ...友を取るか、母を取るか... ...
 俺の額には汗がびっしり流れていた。
 これはおそらく、人生で一番の決断だろう。
 
 「さあ!選べ!母か友かをな!」

 ゴルランゲスの卑怯なやり方には怒りしか湧かない... ...だが、決めた。
 俺は... ...







友... ...いや、俺は恋をしているムファンを取る!

 「ムファンだ... ...ムファンを救う... ...」
 「ふん!いいだろう... ...貴様の母であり憎き天使族はここに死んだ!」

 ゴルランゲスが右手で短剣を持ち、母にそれを斬りつけようとする。 
 俺はそれをただ見ているだけだった... ...
 そう「俺」は... ...
 カイさんは違った... ...

 「【光速】!」

 カイさん叫んだと同時に姿を消したと思ったらゴルランゲスの右に立っていた。

 「な!?貴様!まさか【光速】か!?」
 「その通りさ、僕が光速のカイ... ...そして、喰らえ!【光速剣】!」

 カイさんは腰にあった剣を抜いたと思ったらなぜかゴルランゲスの右手が失われていた。
 
 「な!?馬鹿な!?ぐはぁ... ...」

 ゴルランゲスは腰をつき、今にも逃げようとする。
 逃がすか!

 「この野郎!」

 俺は真っ先に剣を抜き、ゴルランゲスに瞬殺剣を放つ。
 ゴルランゲスは避けきれずに背中に喰らってしまう。
 
 「おのれ!小僧が!くっ... ...暴風〈タンペット〉!」

 俺とゴルランゲスの間に激しい風が起こる。    
 風が止んだ時にはゴルランゲスは姿を消していた。

 「逃げたか!」
 「いや... ...はぁはぁ... ...この地下は一本道... ...ならば、あの先にいったに違い... ...ないさ... ...」

 カイさんが酷く疲れている。
 何があったのだろう。
 あの光速はそれほど疲れるものなのか?
 ... ...そういえば光速のカイって... ...?

 「カイさん!光速のカイって?」
 「ああ... ...前、兵士が言ってた光速ってのは僕のことさ... ...詳しいことはあとで伝えるよ... ...もう三回使ったちゃったからね... ...」

 そう言うとカイさんは首を垂れ、起きなくなってしまった。
 気絶したのだろう。
 だが、申し訳ないがカイさんは後回しだ。
 今はゴルランゲスだ!
 
 「ん... ...んん?」

 すると、ムファンが芽を覚ました。

 「ムファン!無事なのか!」
 「メル?ああ!メル!ここはどこなの?」
 「地下の二階さ... ...あの先に光速がいる。追いかけよう」
 「そう言えば私、ゴルランゲスに捕まって?なにがあったの?」
 「ゴルランゲスに捕まって... ...人質になってたのさ、カイさんが救ってくれたけどね」
 「そうなの... ...カイさんが気絶してる?つまり光速を三回使ったのね... ...まあ、今はゴルランゲスを殺すことに集中ね!」

 ムファンの口振りからカイさんが光速だというのは知ってるのだろう。
 まあ、いい。
 ゴルランゲスは右手を失った。今は俺達が圧倒的に優勢... ...
 殺してやる... ...ゴルランゲス

Re: 天使の翼 ( No.65 )
日時: 2016/03/14 18:28
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

はぁはぁ... ...右手を失った... ...くっ... ...光速があんなところにいるとは!
 だが、ここに立てこもれば大丈夫だ。
 私の土の生成魔法によって作った壁は頑丈だ。いくら、凄腕の魔法使いとはいえ、これを破壊できる魔法はあるまい... ...
... ...いや、あの魔法使いではなく剣士が破壊するのか?
 あそこで生きてたということはハルキュエールを殺したのだろう... ...
 ハルキュエールは確実に王都では最強の剣士... ...それに勝ったということは、とてつもない破壊力の流派を使っているのだろうか?
 馬鹿な... ...だとしても... ...この壁は破れまい... ...
 そう安心しているのも束の間、壁の向こうから何やら声が聞こえてくる。

 「なによ!この壁!?かなり硬いわ。私の魔法でも破れるかどうか... ...」
 「なら俺に任せろ!... ...はぁ!」

 小僧の放ったであろう技によって壁にひびが入る。
 そうか... ...安心なんかしちゃダメだな... ...
 
 「どんなことをして逃げようとしても無駄なのか... ...」

 おそらく、後少しでこの壁は破壊されるだろう。 
 下手したら、その反動で崩れた壁の破片が心臓なんかに刺さるもしくは倒れた壁の下敷きになる... ...
 更に奥に逃げるか... ...
 いや、逃げても無駄だな... ...奴らは地の果てまでも追ってくるだろうな... ...それほど、私が憎いのだろう... ...
 だが、私は逃げ、いずれ左大臣の地位を取りも... ...そうだ。
 なんで私はこんなくだらないことをしているんだ。
 私はアイファー様に仕えると心に決めていた。
 アイファー様があの夜、出奔すると私に伝えた夜にその夢は崩れた。
 あそこで私は死ぬべきだった。
 なのに、なんで生きようとして、あの憎んでいた上級貴族と同じ遊びをしているんだ... ...
 ああ... ...
 くだらない、実にくだらない... ...
 申し訳ありません... ...アイファー様
 今、あなたの元へと... ...



 向かいます。
.
.
.
 地下の奥へ進むとそこには巨大な壁があった。
 おそらく、ゴルランゲスが作ったのだろう。
 あいつは只の貴族ではなく、魔法使いとしても人並み以上だったのか... ...

 「メル!私に任せて、暴風〈タンペット〉」

 先ほどゴルランゲスが使っていた風魔法を使う。
 真似をしたのか?
 いや、その時ムファンは気絶していたからたまたま同じ魔法を使っただけだろう。
 ムファンの使った魔法は激しく吹き、周りを荒らすも壁にはひび一つつかない。
 
 「なによ!この壁!?かなり硬いわ。私の魔法でも破れるかどうか... ...」

 ムファンが急に弱気になる。
 ムファンの魔法でも破れないということはかなり硬いのだろう。
 だが、無剣流の技を使えば流石に壊れるだろう。

 「なら俺に任せろ!... ...はぁ!」

  俺は無心剣を壁に向かって放つが、壁は少しひびが入った程度だ。

 「っち... ...無心剣でも無駄か... ...なら、あれを使うしかない... ...」

 こういう壁程度に無心王剣は使いたくないんだけどね。
 まあ、仕方無い。奴を捕まえるためだ。
 
 「すぅ... ...はぁ!」

 俺は無心王剣を放つ。
 紫色の波動は壁に激突し、壁は木っ端みじんに砕け散る。

 「よし!あの向こうにゴルランゲスが!」
 「いや... ...待って!あそこを見て!」

 ムファンが指差した先には何やら人が倒れているようだった。
 いや、倒れているんじゃない... ...死んでいる... ...
 そして、それはゴルランゲスだった。
.
.
.
 ゴルランゲスは死んだ。
 あの時、短剣を喉に刺し、自殺した。
 こちらとしてはゴルランゲスが死んだから結果オーライなのだがなんとも言えない気分になる。
 ゲルスィート六世はユシャンが素早く医師の下へ連れて行ったこともあり、一命は取り留めた。
 そのことにゲルスィート六世は感謝しており、逆臣ゴルランゲスを成敗し、自分を助けてくれたことの恩返しとして、俺たちをパーティーに誘うらしい。 
 パーティーの内容は分からないが楽しみだ。
 母さんは体に傷の後は見られなかった。
 それと、囚われていた時の記憶がないらしいのでおそらく、ずっと昏睡状態だったのだろう。
 まあ、無事でなによりだ。
 そして、明日はパーティーの日だ。
 王族がいつも何を食べているのか楽しみだ。

Re: 天使の翼 ( No.66 )
日時: 2016/03/15 23:19
名前: 猫のスーパーハルサメ ◆15FVZlz4dc (ID: qESkNdgF)
参照:

朝になった。
 起きるとまず、失明するんじゃないかと思うくらい眩しい朝日が目に入ってきた。
 次に目に入ったのは周りに置かれている綺麗な陶芸品だ。
 おそらく国王の趣味だろう。
 俺達が寝床にしているのは国王のコレクション倉庫だ。
 国王救った英雄ならもっといいところに寝かせてくれてもいいのにと思うのだが残念ながら全ての部屋が満員らしい。
 
 「んんー、おはようメル!」

 朝だというのにムファンは大きな声で俺に挨拶をする。 
 
 「おはよう... ...って朝からうるさいぞ」
 「いいじゃないの!朝から元気なのはいいことよ!」
 「俺の気持ちを考えてくれ... ...あれから一週間、母さんは存在を隠さなきゃいけないし、俺は背中の翼を隠さないといけないし... ...」
 「ま!私は城の図書館から魔法辞典を見つけ出して新しい魔法覚えられたから満足なのよ!」
 「へー」
 「なに興味なさそうに!」
 「だってどうでもいいし」
 「な!なんですって!?」

 うるさいムファンをはねのけ部屋を出る。
 部屋を出ると偶然、向かいの部屋からも人が出てきた。
 ユシャンだ。
 
 「おはよう、ユシャン」 
 「んー... ...おはよう... ...お兄ちゃん... ...」

 ユシャンはまだ寝ぼけているようで目を擦っている。
 
 「ユシャン、眠いんなら顔を洗ってくれば?」
 「うん、わかった... ...」

 ユシャンはそう言い、顔洗い場のある方に向かう。
 俺はユシャンの出た向かいの部屋のドアを開け、中にいた人物に声を掛ける。
  
 「おはようございます。カイさん」
 「ああ、メルフィン君か、おはよう」

 カイさんは何か本を読んでいるようだったがパタンと本を閉じ、俺に挨拶を返す。

 「ああ、すいません。読書の途中でしたか」
 「いや、この本にも飽きていたところだったし、ちょうど良かったよ」
 「そう言えば、あの後、お咎めなしだったそうですね」
 「まあね、国王陛下の寛大さには感謝すべきだね」 
 
 あの事件の後、カイさんは光速であることが王国側にバレてしまった。
 流石にカイさんも諦めたのか自首をしたが、国王は自分の命を救ったお礼にと、カイさんを許してくれた。
 カイさんは国王を寛大だといったが、はっきり言うと本当に寛大ならカイさんが近衛隊長になりたくないと言った時点で許すはずだろうから、少なくとも寛大ではないだろう。
 
 「神の子供たちのリーダーを倒したのも許してくれた理由の一つでしょうけどね」
 「まあ、神の子供たちもリーダーが生きていれば今のように崩壊はしなかっただろうね」

 神の子供たちはあの後、リーダー死亡のことや、国王暗殺に関わったとして、大半の構成団員がとらえられ、事実上の崩壊となった。
 
 「生きていたところで国王暗殺の罪状は変わりませんし、いずれは崩壊してましたよ」
 「ははっ、そうかもね」
 「すいませーん、もうすぐお食事の時間です」

 メイドの人が俺たちを食事に呼びにやってきた。

 「あ、はい。分かりました」

 パーティーは朝にやるらしい。
 普通は夜にそのやるものだと思うのだが俺たちが早く旅立つのを心配し、朝にパーティーをやることにしたらしい。 
 普通にゆっくりしていくつもりなんだけどな 
 まあ、いっか
.
.
.
パーティー会場に着くと会場にいた人間に一斉に拍手された。
 多分、王を救った英雄が来たから感動のあまり拍手したのだろう。うん、絶対そうだろう。
 パーティー会場のど真ん中にはユシャンがいた。
 あいつ、顔洗い場に言ったと思ったらもうパーティー会場に行ってたのか。
 ていうか、もう肉とか食べてるし... ...
 さあ、俺たちも肉を食べないとな。
 そう食事の場所に向かおうとするとたくさんの貴族に囲まれた。

 「えっと... ...なんでしょうか?」

 俺が用件を聞くと貴族たちは口を開いて「私の娘をどうか嫁に!」とか「私の近衛隊長に!」だとか、どれもそいつらのくだらない内輪に巻き込まれそうだったのでてきとうな返事をしてその場を立ち去った。
 だが、たまにとても可愛い貴族のお嬢様に声を掛けられてドキッとしてしまうが何故かムファンに足を踏まれ、その場から離れさせられた。
 あいつ、俺のこと隙なのかな?
 いや、所詮は親友感覚なんだろう。俺はムファンのこと好きなのにな... ...
 そんなこと考えていても仕方がないな。今は食事を食べることに集中しろ!
 食事はやはりとても豪華だった。
 血のように赤いワインや噛むと肉汁が溢れる肉、棒のように長いパンなど、いつもは食べられないものばかりだ。
 なにから食べようかなー?

 「お!君かわいいね!ちょっと話でもしない?」
 「私、あなたみたいな性格の人、苦手克服なのでお断りします」
  
 隣でなんかめんどくさいのが起こっているなーと思ったらムファンが王子様のような衣装を纏った男に話し掛けられていた。
 よし、逃げよう。

 「えー、いいじゃん。僕、見た目で分かると思うけど王子様なのさ!それも第二王子!兄が后様の子だから国王になるのは無理でも、左大臣の地位には着けると思うよ!」

 こんなやつが左大臣に着いたらマトーレ王国滅びるな。

 「結構です!あなたよりもメルの方が百倍マシよ」

 マシって... ...なんか俺も悪いみたいだなそれ... ...
 まあ、所詮は只の幼なじみか... ...

 「へえ、そのメルってのはどこにいるのかい?」
 「あれよ」

 そう言いムファンは俺を指差す。
 
 「おい!何指差してんだよ!巻き込むなよ!」
 「いいじゃないの!メルもちょっとだけ関係あるし」
 「ないよ!米一粒もないよ!」
 「へえ... ...君がメルかい?もしかしてあの逆臣ゴルランゲスを成敗した英雄メルフィン?」

 第二王とやらは少々、俺が気にくわないみたいだ。
 それもそうだ。こんなボロボロのマントを羽織っている男に負けるなんて悔しいだろう。
 
 「あのー、俺は関係ないんで食事に戻ってよろしいでしょうか?」
 「いや!決闘だ!この僕と決闘しろ!」
 
 出たよ。こんな感じで決闘申し込む奴。

 「いいでしょう。王子様とはいえ、手加減はしませんよ」

 そんな感じでパーティー会場の真ん中で決闘が始まった。
 会場にいた人間は全て俺と王子様をみている俺の実力に興味津々なんだろう。

 「いくぞ!第二王子コーパス参る!うおおおおおお!」

 王子様は俺に突進してくるが構えが素人同然だ。
 守りも薄いし、あんなんじゃすぐにカウンターを食らうだろう。
 俺は常人よりも容赦なく攻撃するだろうしな。

 「はぁ!!」

 俺は無剣流初級技の無剣を放つ
 この技は威力は高いが隙がありすぎるので実用性はほとんどない技だ。
 だが、こういう相手になら十二分通用するだろう。

 「うわああ!」

 剣は一応、命の安全のために木刀にしておいた。
 王子様に死なれても困るしな。
 その木刀によって放たれた技は王子様の脚に直撃し、頭から王子は倒れる。
 勝負あったな。

 「うおおおおおお!」
 「さすが英雄!」

 野次馬からは歓声と感嘆の声が鳴り響く。

 「くそう!もう一度だ!」

 一方王子は諦めてないようで、まだ戦おうと思ってるらしい。
 すると野次馬の中からとても身長の高い男の人が王子様を止めに入った。
 顔がどことなくゲルスィート六世に似ているおそらく、第一王子の人だろう。

 「コーパス、終わりだ。お前は負けたんだ」
 「エカルス兄さん!?いや違う!負けてなんかいない!」

 そう言い、王子様は俺のマントを掴んでくる。
 おい、何すんだ。マントが破けたらどうするんだ!
 と次の瞬間

 マントが外れ、俺の背中にあった翼が露わになった。


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