複雑・ファジー小説

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短篇集、Monochrome《無意義な罰-完-》1
日時: 2015/12/20 16:24
名前: 自由帳 (ID: kAWEuRKf)

僕は、虹が大好きだった。

虹が好きだから、雨が好きだった。
雨が好きになれたから、その後に来る晴れも好きになっていた。

曇りだけはどうも気に食わず、僕は1つ気づいた
「僕は彩りが好きなんだ」と。

気づいたからこそ僕は色に囲まれたいと求めた。
それからと言うもの、僕は一心不乱に筆を、ペンを、そんな何かで自分の世界を描き続けた。
いつからか僕はその世界をcolorfulと名付け、そんな世界の物語をキャンパスの上に書き続けた。


だがある日、僕の世界____colorfulは消えてしまった。


原因不明の異常現象だ。その日を境に世界は色彩を失い、全てが明暗だけで描かれる続ける事になっていった。
その世界、新世界を人はMonochromeと呼んだ________。


短篇集、Monochrome。

















皆様はじめまして、そしてお久しぶりですか。自由帳です。
思いつくままに書いて行く短篇を、俺の始まりのサイトであるここで終わらせたいと思い投稿を始めていきます。

ジャンルは混合です。
コメントやメールなど、気軽にお願いします。

リクエスト等も対応しております。

それでは始めましょう。



<//:index>
-完結短篇集-

「これはそんな人間の性、夜行性を失い損ねた人間の何の変哲もない話。」
____無意義な罰(完)
>>1->>2 >>5->>6


-連載中短篇集-

「私はただただ無心に銃弾を放ち、ヒトを肉片に変える。」
____SiKi(未完)
>>3->>4

-SS-

葉月蝉(近日投稿予定)

-予定作-

夢バイヤーと人魚姫(予定作)


無意義な罰 ( No.2 )
日時: 2015/12/18 19:04
名前: 自由帳 (ID: kAWEuRKf)

朝目覚めて、最初に彼はまた溜息をついて時計を見る。
またというのは昨日も一昨日も、その次も、そんな調子に続いていると言うことだ。

時刻は午前六時、現在高校二年生である彼は部活動等には所属していない事に加え高校から家が近く、自転車でおおよそ十分程で着いてしまう。つまり、彼の脳がこの時間に覚醒するということは何らかのミスなのだ。
だが彼はそのような事で溜息を吐くほど、幼稚ではない。

この彼の溜息は、例えるならば赤子が産声を上げるような、そんな存在証明のような物なのだ。

それこそ言い訳がま強くなってしまうのだが、彼にとってはそれが当たり前になっている。それはおそらく産まれてしばらくした、明確な意思を持って以来ずっと、当たり前になっている。

彼は人類の歴史に逆らうかのように産まれてきた。
ホモサピエンスの歴史を巻き戻るように誕生した。
人の過ちを過ちと認めさせるために産まれてきたかのような。

天性的に『夜行性』のホモサピエンスなのだ。

生活習慣で夜行性のような体質になる人も居るのだろう。だが彼はそのような事にはなっていない。
生まれつき視力が極端に悪く、聴力が極端にいいのだ。
それはつまり、周りの音がより一層大きく聞こえるという事であり、本来保有すべきでは無い能力、障害となってしまっている。

だからこそ彼____俺は、今また溜息吐いた。
また始まる、憂鬱な昼間に対しての吐き気を、その溜息に込めて。

SiKi-1- ( No.3 )
日時: 2015/12/18 23:16
名前: 自由帳 (ID: kAWEuRKf)

-SiKi-





私たち、小さく言えばヒトは、大きく言えば生命は一つの法則の上で生 きている。
弱者は死に強者が生きる、歪まない一つの法則、弱肉強食の定理。

私はただただ無心に銃弾を放ち、ヒトを肉片に変える。
味方の士気を与え、敵に死期を与える。
私の仕事は、そんな残酷な作業だ。

「命だけは……」
「これは戦だ、愚か者」

命乞いに耳を傾けるわけもなく、アサルトライフルの弾丸を敵だった物を貫通する。

声にも聞こえない慟哭が何処からともなく響き、ヒトが物に変わる。
戦とは、そんな非情な物なのだ。

優しさ何て無い、ただただ本能的に殺戮を繰り返す死に場所。

SiKi-2- ( No.4 )
日時: 2015/12/19 10:20
名前: 自由帳 (ID: kAWEuRKf)

一つの部隊を制圧した我々は、1人の青年と対談を行っていた。
それは機密裏に行われ、この事実知っているのは革命軍の中でも上層部の僅かな人間だけだ。


「オッサン達は、どうして戦おうとするんだ」

戦争の真っ只中の、その戦争というのは革命軍と政府軍の内戦なのだが、私が今対面しているのは政府軍の一部隊の頭を務めているという青年だ。
私は革命軍のリーダー。我々は敵同士という訳だ。
青年は腕を組み、我々に警戒の意を示していた。当たり前の事だ。

「私とて、敵に情報をやるつもりはないんだがな、そういう君たちは何のために戦うのかね」

敵対勢力の、形式は違えど一つの勢力をまとめる権力者の対談の場。
それは少し間違えれば命が飛ぶ、という雰囲気ではなかった。

「先に語れ、と」
「何もそういうつもりではないよ。そうだな……敵であり若者である君の意見を知りたいだけさ、こんなジジイの意見に毒される前にな」
「俺はただ、そう命令されてるだけだ」

長年争いごとに関わり続けた私には分かっていた、彼が発言が建前である事を。
彼はどうやら気づかれていないと考えていたようだが、ここはその空気に流されるべきだと年の功が答えを出した。

が、私は彼の真髄を探ろうと言葉を選んだ。

「命令ねぇ、それは愛する王様からの命令かい」
「……挑発のつもりか、ナラヌ・フール」

彼は私の名前を呼び、私はそれに返すように「そんなつもりは無いよ、ハンダトルト・マーゼフ君」と。

「ただ私は、君が何を重んじてこの戦場に居るのか……つまりは本音を聞きたくてね」

口角を少し上げ、瞳を覗いて問う。
彼は失笑し、私の事を睨んで答える。

「オッサン、ナラヌ・フールは噂通りの人間だな、人の心を見透かし何事にも躊躇がない……流石は民の英雄と言ったものか。
オッサンみたいな人間は好きだ、教えてやる。俺の目的、そんなものは無いんだよ」

「目的が無い…それは殺戮を楽しんでいるという意味かね?」
「無論違うな。俺はただ戦わねばならない理由があるだけだ」

「それはそうだろう。私だって無意味に殺戮者に成っているわけでは無い、私は王政のエゴイズムで動く国を変えたいから戦っている」

「俺は、いや政府軍の兵士は王政に人質を取られ戦っている」

彼は涼しい顔で、なんの違和感もなくそう口に出して組んでいた手を組み替えた。
その事実を聞いても、私は驚きはしない。
それを変えようとしているのが我々反乱軍なのだから、それは当然の事だ。

むしろ彼の思考は私のものと似ていたからこそ、私は彼に死期を与えるべきだとすら感じた。

「なら何故私の元に来ない?」
「人が皆、オッサンみたいに強いわけじゃない。俺は逃げ出せもせず戦う方が向いてんだ」

「……ハンダトルト・マーゼフ君。君はジャパンという国を知っているか?」

無意義な罰 P2 ( No.5 )
日時: 2015/12/19 19:35
名前: 自由帳 (ID: eldbtQ7Y)

「おはよう」

彼のクラス、2年X組。
他愛の無い思い入れのない、変哲の無いクラス。

異常は彼一人、夜行性の彼だけがこのクラスで異質な存在として存在し続けていた。
幸いなことにイジメ等は行われず、むしろクラスメイトは彼を守るように、なおかつただの友達と同じように振舞ってくれていた。

彼____俺のクラスを仮にXとしたが、おそらくこのクラスでXが相応しいのは俺自身だ。

「眠たそうだな」、と毎日のように話しかける友人。
「もういい加減慣れたさ」と強がる俺。

実際この肉体が、意識が、この世界に順応する事は無い。一度だって、在ったことすら。
この肉体は一般的なホモサピエンスのそれとは少し違う。それがサイボーグという事ではなく、ただただ違うのだ。

男女の肉体構造が違うように、そんな些細で大きな違いがあるのだ。

「この問題を解ける人」

教師の問に答える者はいない、それもいつも通りだ。
だからこの次の言葉を聞く前に答えを口に出した。

俺は所謂天才らしい。俺からしてみれば天災とでも笑う所なのだが、どうもそれは笑いどころではないらしく、この頭脳は願ってもいない数式の解を口に出すように信号を送る。

無意義な罰 P3 ( No.6 )
日時: 2015/12/19 23:12
名前: 自由帳 (ID: kAWEuRKf)

欠点があるとすれば、視力と適応力だ。

俺は夜にしか生きられない種族の、かつて悠久の夜が存在した時代の遺伝子を保有している。だから今の言葉で表すと「夜行性」が丁度良かった。
だが、実際「夜行性」ではなく「夜行専」の構造なのだ。

俺の遺伝子は太陽の光で大きく劣化する。

その劣化速度は通常のホモサピエンスのおおよそ三倍。つまり俺の肉体と脳は周りの人間よりも三倍速で動いている。

脳に関してはコンピューターにこそ負けるが、少し過去のコンピューターならば同等のスペックを保有している。

そこから分かる、分かってしまう一つの事実。

それは、俺はあと10年もしないうちに身体が朽ち果てて死ぬ。
通常のホモサピエンス以上の老化はしない。
外見は何も変わらず、内部が蝕まれて朽ち果てる。

本来夜に生きていれば、おそらくは通常のホモサピエンスよりも数十年長く生きられると学者は言っていた。

だが俺____彼は、孤独よりも死を選んだ。


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