複雑・ファジー小説

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不老不死は、眠れない。
日時: 2016/08/29 20:05
名前: 波坂@携帯 (ID: ZTqYxzs4)

どうも波坂です。
気分転換として書きはじめました。



人間は、もしもあらゆる願いを叶えると言われた場合。何を思い浮かべるだろうか。
莫大な財産。超常的な力。絶世の美貌。そしてーーーー不老不死。
人間の最高にして最悪の欲望。甘く美味い毒。
そしてこれは、不老不死の人間の、長い永い物語。



この小説は基本一人称視点で書いています。


>>1「俺は不老不死」by不老不死の人/>>2「フハハ!殺れるもんなら殺ってみろ!」by不老不死の人/>>3「空から〇〇〇〇が降ってきた」by面倒嫌いの人/>>4「こんなんニーターや!」byニーターの人/>>5「私は屑だ」by三流記者の人/>>6「異形だったよ」by三流記者の人/>>9「私は生きていた」by人を踏み台にした人「元気百倍!」byアソパソマソ/>>11「こんにゃくと卵下さい」by一級死亡フラグ建築士/>>12「貴様が悪の元凶か……」by有名人(笑)/>>13「ふざけるなよ」by約2013歳/>>14「壁ドン顎クイの威力(物理)は凄かった」by現在進行形で喰われてる人/>>15「アーユーオーケー?」by通りすがりのトム・ウィルソン/>>19「や、山姥だぞ」by人喰い妖怪/>>20「……喋るの久しぶりだったし」byヤマンバちゃん/>>21「一回死になさい」byスーパー☆BBA妖怪/>>24「お前達の考え世紀末過ぎるぞ」by寂しかった人/>>25「「大の大人がすると気持ち悪いぞ(悪くてよ)」」by妖怪ダブルス/>>26「許してやれよ。王国も破綻寸前なんだよ」by妖怪の朝ごはん/>>27「俺のライフはもうゼロよ」byタ〇シード仮面/>>28「後で覚えておいてよ?」by中二病的要素の塊/>>29「黒歴史がまた一ページ追記された」by梨の妖精

Re: 不老不死は、眠れない。 ( No.26 )
日時: 2016/08/24 17:20
名前: 波坂@携帯 (ID: ZTqYxzs4)

朝ごはん、
妖怪二人は、
俺を喰う。

伏見茨。



と、いう訳で現在進行形で、両手に花と言えなくもない状態の伏見茨だ。
右を見てみよう。艶やかな煌めく金髪を伸ばしたソプラは、俺の右手が干からびる程に吸っている。血は再生で供給されるけど、吸血がめちゃくちゃ痛い。ソプラ曰く、俺には吸血鬼の魅了チャームだの催眠だのが再生で全く効かないから、吸血しているときの麻酔効果も無いらしい。ソプラ、痛いってわかってんなら自重しようか。
左を見てみよう。癖だらけの所々跳ねた黒髪を暫くの間は放置していたであろう、その歳にしては異常な長髪のヤマンバちゃんが、絶賛俺の左腕を喰っている。絶賛するな。正直すげえ痛い。泣きたい。もしかしたらもう泣いてるかもしれない。素直に痛いから止めろと言ってやりたい。
しかし、ソプラはまだしもヤマンバちゃんは、人を喰わないと生きていけないからなぁ……。
……ヤマンバちゃんめぇ……何が「喰わせなかったら、もし警察に捕まったとき茨が関係してるって言ってやるからな」だ。お蔭様で俺は晴れてお前達二人の食料だよ。ソプラなんか交渉(物理)をかましてきやがった。解せぬ。

さぁ皆!この金髪美女と黒髪ロリの両手に花状態になりたい奴はいるか!?是非変わってやるぜぇ!命の保証は本当の意味で無いけどな。







「…………」

絶賛俺は一人で死んでいる。死ねないけど。
理由?そこの口に血を付けた腐れ吸血鬼と腐れ山姥と俺の周りの血の海を見れば一目瞭然だろ?
結局これでも死ねないんだよなぁ…………はぁ。ちょっと期待したぞ。

「大丈夫か?おい、茨?」

ヤマンバちゃんが声をかけてくれたがスルー。ちょっと俺は今激痛で頭が混乱中なんだ。

「……返事が無い。ただの茨のようだ」

「ソプラぁ!?ただの茨ってなんだよ!?」

てかお前ドラ〇エ持ってたのかよっ!

「全く、勇者に桧製の棒しか持たせないなんて王国は良い度胸してると思わなくて?」

「許してやれよ。きっと王国も破綻寸前なんだよ」

寧ろ俺は何故魔王という強敵に向かって、ひたすら死ね死ね呪文を唱えまくる奴の方が疑問だ。

「ああ、大丈夫だ。まぁ誰のせいかは言わなくてもわかるがな」

俺がそう言うとシュンとした様子で目を伏せるヤマンバちゃん。え?なにその反応?なんかいつものトゲトゲ感が無いんだけど。

「……ご、ごめん」

「貴様ァ!何者だァ!」

こいつ!さては偽物だな?成敗してやる!

「茨。妖気は昨日と変わりなくてよ」

妖怪達の間で知覚できる妖怪レーダー曰く、偽物じゃないらしい。え?ネーミング?何の事かわからないなぁー(棒)。

「お前……ちょっと傷つくぞ……」

頬を膨らませるヤマンバちゃん。
ところで貴様は自業自得という言葉を知っているか?
まあいい。許してやらんことはない。

「いやな……ヤマンバちゃん。急にそんな態度取られたら焦るぞ。
てか一々そんな態度で人喰ってたら人喰い妖怪なんてできねぇだろ」

ヤマンバちゃんは焦った様に喋りだす。どうでもいいけど口に付いてる血、さっさと取ってくれねぇ?

「いや、それは茨だから……って言うかその……。
そ、それよりヤマンバちゃんって言い方止めろよ!」

いや、俺ヤマンバちゃんの本名知らないんだけど……。

「ウィス〇ーとでも呼べば良いのか?」

「……茨。それは流石に酷くてよ」

「ウィ〇パー?何だそいつは」

そうだった……こいつこんな容姿の癖に妖怪時計を知らなかった……不覚。

「じゃあガハ〇さんで」

「そっちは妖怪じゃないわよ」

「誰だよ〇ハラさんって」

ええい!めんどくせぇ奴だ!こうなったらこれでどうだ!

「木ィィィィィィィィィィィ〇ァァァァァァァァァァァクゥゥゥゥゥゥゥンンン!」

「……最早妖怪ですら無くてよ」

「……茨、なんでお前は今銃を構えるような動作をしたんだ?」

じ、冗談に決まってんじゃん!そもそも性別が違うだろ俺。馬鹿か。
ヤマンバちゃんは短くため息をついて自分の名前を明かす。

「病場……病場璃子(やまいば/りこ)。それが私の名前だ」

Re: 不老不死は、眠れない。 ( No.27 )
日時: 2016/08/25 22:48
名前: 波坂@携帯 (ID: ZTqYxzs4)

まあ、なんだかんだで二週間が経った。
ヤマイバちゃんは相変わらず俺の肉をちぎっては喰いちぎっては喰いを繰り返し、ソプラは俺の血を吸っては飲み吸っては飲みを繰り返していた。
結論「俺のライフはもうゼロよ」
正直、俺の心はズタボロだ。ズタズタに引き裂かれた上でボロボロにされてるんだ。ここ重要。
ソプラ曰く、吸血鬼は人間の血以外も食えない事はないが、生命力的なものを得る為にはやはり人間の血が必要。俺厳密には人間じゃねぇけど?
ヤマイバちゃん曰く、人喰い妖怪だから、人以外を喰っても生命力的なものは満たされないらしい。不死身の俺はいいのかよ。
俺曰く、爆ぜろ貴様ら。

「ああ〜どっかに陰陽師でも居ないかな〜」

俺がふざけて言った台詞に反応したかのように、インターホンが鳴る。
多少面倒臭いと思いつつドアを開ける。
そこに居たのは……………え?

「済みません。白崎というものです。ここに妖怪は居ますか?」

すっと白い髪を伸ばした若い男が俺に尋ねる。いやがっつり居るけども。
コイツ、なんか神主みてぇな服装してやがるし……マジで陰陽師来ちゃったよ。ヤベーよ!

「べ、別に妖怪なんて居ないんだからねっ!」

「気味が悪いです」

……ふっ。ツンデレの良さが分からんとは所詮二流よ。…………俺、何やってんの?

「てか妖怪?なんだそれ?」

ここは安全策としてシラを切っておく。
だって……バレたらヤマイバちゃんとソプラが追っかけ回されて退治されて、俺の部屋に平穏が戻るだけじゃ…………言ってもいいかな。

「実はここには吸」

俺の背中に、一本のボールペンが刺さる。
しまった。ソプラには使い魔がいるから迂闊に言えねぇ……。

「きゅ?」

「き、キュートな女の子がいる!」

タキ〇ード仮面か俺は。俺はロリコンのつもりはないぞ。
……て待て。仮に俺が今現在誰か人間に恋するとしたら……歳が1800年以上も違う奴に恋するとか俺ロリコンじゃねぇか……。

「……あの大丈夫」

チィッ!こうなったらとことん引かせて帰らせてやる!

「いいかぁ!この部屋には見た目小学三年生と金髪の色気のある美女が住んでいて、毎日俺の貪り尽くしてくるんだぜぇ!俺の部屋には俺から出た液体が至るところに染み付いてるぞ!」

「……へ、変態だぁー!」

一応言っておく、嘘は付いていない。
見た目小学生三年生はヤマイバちゃん。金髪の色気のある美女がソプラ。毎晩どころか毎朝も喰われてるよ。体液?血液だ。
寧ろなぜ変態呼ばわりされるのか謎だー(棒)






「白崎、どうだ?」

「ありゃ居ますね。大妖怪の妖気を感じましたよ。天狗や鬼位はいるんじゃないすかね?」

「ほぉ…‥そいつを討ち取りゃ俺達も出世だ」

Re: 不老不死は、眠れない。 ( No.28 )
日時: 2016/08/27 21:04
名前: 波坂@携帯 (ID: ZTqYxzs4)

質問がある。
いや、その前に概要説明しとくか。
俺こと伏見茨は、近所のスーパーに買い物をしに行った。
その時ついでにお得用パックで卵が安かったから、複数買いしようと思ったが、俺に店員の一言が突き刺さる。

「お一人様、一パックとさせて頂きます」という言葉が。

俺は急いで家に帰り、なんか家で中二病的な訓練をしている二人を引っ張ってきて、卵を見事三パックゲットした。(中二病的な訓練ってのは、ヤマイバちゃんがソプラに妖気の使い方を習っていたらしい。妖気?ほらあれだよ。ソプラが俺を爆発させたり血の海を蒸発させたりしたアレ)
因ちみにソプラは日傘を差しているから大丈夫らしい。……お前、何故そんな高そうな日傘を持ってやがる……!
人通りの少ない場所に出て、腕時計を確認したら時計は十一時を現していた。
今日はバイトも無ぇしゆっくりできるな。そう考えたのは覚えている。


さて、問題です。



俺こと伏見茨、不老不死の体に現在進行形で突き刺さっている、この長槍はな〜んだ?

答え?被害者の俺が知るかよ。
内蔵を貫かれたらしい。俺が悲鳴を出そうとすると、出たのは尋常では無い赤色の胃液混じりの血液だった。そのまま無残に膝を付いて倒れる俺。うわぁ鉄臭……。汚ぇ……自分で言うと悲しくなるな。

「茨!おい!茨!」

ヤマイバちゃんが俺を必死に揺さぶり声をかける。そして俺に刺さっている槍を…………ちょっ!バカ!一気に抜くな痛ぁぁぁぁぁぁぁあ!
あ…………視界がぼやけてきた……。
ヤマイバちゃん、泣くなよ。そんな悲しい顔するなよ。
ーーーーだって、お前の嬉しさで笑った顔。まだ見てないからな。
そして俺の意識は白く凍りつき始めーーーー




ーーーー体が沸騰したかのように弾け、復活した。

俺達三人が「うん、知ってた」と異口同音を述べる。
……ああ……死にてぇ……何が『お前の嬉しさで笑った顔、まだ見てないんだからよ』だよ!誰これ!?こんなの言って恥ずかしく無ぇの?恥ずかしいわ!死にてぇぇぇぇぇ!

「頼む……俺を殺してくれ……」

「良くてよ」

ちょっ!そこ本気にする奴があるかぎゃぁぁぁぁぁぁ!
ソプラが!ソプラがあの漫画とかで良くある手刀で体を貫くやつやってきたぁぁぁぁ!めっちゃ痛ぇぇぇぇぇ!内蔵がぁ!俺の背骨がぁ!
そして俺の意識は白く凍りつき始めーーーー(謎のデジャヴュを感じる)



ーーーー体が沸騰したかのように弾け、復活した。
うわぁ、無限ループ怖い。

「……私達を無視するのもいい加減にして頂けますかね?」

声がしたので振り向くと、そこには…………コイツ、前俺ん家来たやつじゃね?
とにかく神主みたいな恰好をしたやつらーーーー多分、陰陽師達がいた。
…………え?バレてた?ソプラとヤマイバちゃんの事、バレてた?

「お、お前達は!」






「…………誰だ?」

ゴメン、そんなここで会ったが百年目とか言わんばかりの表情されても困る。
全員が驚いた顔……やべぇ、めっちゃ面白い……駄目だ……まだ笑うな……。
と、いち早く気を取り直した奴が話始めた。

「私達は陰陽師、『河川かせん家』の者達だ」

「よし、ソプラ、ヤマイバちゃん。帰るぞ」

「人の話を聞けえぇぇぇ!」

「うるせぇぇぇ!中二病要素はもうソプラで間に合ってんだよ!」

こっちなんてみろ!金髪紅瞳吸血鬼だけでは飽き足らず妖気なんてものも使っちゃうんだぞ!もう中二病はお腹いっぱいだ!

「後で覚えておいてよ?」

……やべぇ、墓穴掘った。
いやね?俺も陰陽師は知ってるし実際『河川家』ってのは有名所だ。ついでに言うとその『河川家』の奴らが本当に呪術を使えるのは知ってる。
ただ、俺からすればもうそんなもんには興味無いしどうでもいい。
さて、今日の昼飯は何にすっかな……そんな事を考えていた俺の鼻が、なにか壁のようなものに当たった。……はぁ。面倒臭い奴ら。

「おいおい、人が帰ろうとしてんのに結界で囲むとか、お前らマナー違反だぞ」

結界ってのは、要するにATフィ〇ルドを思い浮かべればわかる。わかんねぇならとにかく半透明の壁があるって思えばいい。

「貴方、結界の事を知ってるんですね」

「んな事よりどけてくんね?帰りてぇし」

面倒臭いな。俺は面倒事が世の中で三番目に嫌いって言ってんだろ。
てかどんだけ構って欲しいんだよ。カマチョか?カマチョなのか?やーい!カマチョカマチョ!

「妖怪を黙って帰す訳にはいきません」

「俺は妖怪じゃねぇよ。馬鹿か」

「嘘を付くのはよろしくない。貴方には大量の妖気がこびりついている。そんなもの、人間には妖怪と肌を擦り合わせでもしないと付かないレベルですよ」

……擦り合わせるどころかダイレクトアタックされた件について。
知っているか?山姥に添い寝されるとドキドキ(激痛)で夜も眠れないぜ?

「てかさ?俺戦闘脳じゃないんだよ。わかるか?なんでもかんでも戦闘で解決するのは二次元の中だけにしとけ」

「いいえ、貴方は、正確にはそこにいる金髪の妖怪。それはとてつもない妖気を放っています。そんな危険なものを野放しにはできない」

……OKコイツの事がだいたい分かった。

「おいソプラ、ヤマイバちゃん。コイツ多分残念エリートタイプだ」

その言葉にピクンと眉を動かしたのはその残念エリート。てかこんな些細な事に反応する時点で残念エリートなんだよな。

「どういう意味ですか?」

「簡単な話だ。お前みてぇな人間は自分が間違える筈が無いとか思っちゃってて、自分がやってることは正義だと思って、そして一人で言うんだよ。『ああ、今日も俺カッコイイ』ってな。物事の本質は何もわかっちゃいやしない。
別に人間性を否定する訳じゃ無ぇけど……。お前、どうせ妖怪=悪の方程式とか作っちゃってるパターンだろ?で、自分が悪に負ける訳無いとか悲しい事思ってるパターン。
例え、自分と違う意見が証明されても無理矢理自分の意見を通そうとする、集団で最も必要とされないタイプ。一度Noって言うとNoしか言わなくなる子供だ。
‥………一人で痛いことやるなら勝手だけど俺達を巻き込むなよなぁ……………なんで俺達がお前の中二病的エリート意識(笑)の餌にならなきゃいけないんだよ。ほら、帰った帰った。お前らだけで陰陽師ごっこでもしてろ……………………あ」

……やべぇ、図星な事言い過ぎた。
ちょっとどうすんの?ヤベーよ。残念エリートが顔に青筋浮かべて激おこプンプン丸だよ。

「死ねぇぇぇぇぇ!」

うわぁ……技を使いながら『死ねぇぇぇぇぇ!』』とか……こっちまで頭痛くなりそうだ。

とりあえず!なんかビームがきたので体を捻って回避。なんかもうソプラと喧嘩してたらビームくらい避けれるんだよなぁ……。
まあこっちは余裕だしソプラ達はどうなったか…………あ。



ソプラ。日光ダメじゃん。
日傘。ないとダメじゃん。
…………たった今、日傘に攻撃の流れ弾が当たって布が無くなったんだけど……。
そして、ソプラに日光が降り注ぎ、ソプラがバタンと倒れる。

…………本格的にヤバい……。

すると陰陽師がソプラを人質にとってヤマイバちゃんを捕縛。おい!正義の味方(笑)が何やってんだよ!

「貴様ァ……死ねぇ……妖怪風情が……僕を馬鹿にしやがってぇぇぇぇぇ!」

おい、残念エリート。さっきまでのクールな雰囲気とキッチリとした敬語はどうした。
俺の体になんか呪術的なもの。要するにビームとかエネルギーの塊が降り注いだ。
熱い!痛い!ちょっとテメェら手加減しろ!
俺の視界がブラックに染まる。あー、どうやら体が弾けてバラバラになって目が無くなったみたいだな。さて、こうなると何もできなくなるから……取り合えず気合いを入れて目玉だけ再生。

さて、視界が回復したし何が映るかなー。
おーっと!オンミョウジーズ、まさかの二人を担いでどこかへ行ったぁ!誘拐!人さらい!完全に悪役だぁー!
…………マジでヤベーよ。

Re: 不老不死は、眠れない。 ( No.29 )
日時: 2016/08/29 19:47
名前: 波坂@携帯 (ID: ZTqYxzs4)

俺こと伏見茨は絶賛苦悩中だった。
それは別に、卵が全部割れたとか、卵が全部割れたとか、卵が全部割れたとかの理由ではない。いやそれもあるか。
先程の場面を思い出してほしい。俺は全身がバラバラ所か粉々になっていた。
つまりだーーーー俺の服まで粉々になったんだ。
そしてーーーー俺が再生するのは肉体だけ。
さぁ問題だ。
日中、全裸の男が歩いていたらどうなる?

答え、お巡りさんのハートフルコミュニケーションが待っている。

どうすればいいんだ……あのオンミョウジーズの位置は分かってる。なんでかって?俺の人差し指が誰か一人についているからだ。
意味がわからないだって?じゃあ説明してやる。
俺の体が粉々になったとき、その粉々になった肉体が幾つかオンミョウジーズの奴に付いたんだ。
で、俺は粉々になった場合は、何処をどう治すかある程度任意で操ることができる。
で、俺は右手の人差し指以外をここで。人差し指だけはオンミョウジーズの連中の誰かにくっつく形で再生させたって訳だ。おかげで俺は今、やーさん見たいに人差し指を詰めた状態になっている。
因みに全身をオンミョウジーズの方で再生させなかったのは、流石に粉々になった粒の一つや二つで全身を再生するのは無理だったからな。
さて、ここまで解説したはいい。勝利への道筋も見えた。ヒロイン救出のストーリーも完璧。俺に足りないのはーーーー服だ。

おおっと、どっかの誰かが今隠れている橋の下に近付いてきた。やべっ!

「いや〜困ったわ〜」

それはこっちの台詞だ。

「あらどうしたの?」

「親戚が趣味でこんなの送ってきたんだけど……要らないしねぇ」

「これはちょっと……ねぇ」

「だからここに捨てようと思って」

そんな会話をしながらおばあちゃん達が何かを置いていった。
……もしかしたら服かも知れない。てか人の服を剥ぎ取るってどこの世紀末だよ。マイ〇ラはゾンビの着てた装備着るときあるけど。
段ボールを開けると、そこにはあった。
ーーーー衣服とは言い難いが、体に纏うものが。

「……これ、黒歴史がまた一ページ追記されたぞ……」








どうすればいいんだ……。
こんな緊急事態に放り込まれても私は何もできないぞ……。
私ーーーー病場璃子は廃屋の中でそう思った。
私は今、妖怪様の手錠とやらを掛けられている。どうやら呪術の類がかかっているらしくて、力が全く出ないんだ。
しかし、私以上に心配なのはソプラ姉だ。今、私は壁に倒れ込んでいるだけだが、ソプラ姉は日の当たるところで、銀のワイヤーで体を負かれて水浸しにされている。吸血鬼といえどここまで弱点を攻められては風の前の塵だ。
ソプラ姉はぐったりとしたままで、その顔はいつも以上に顔色が悪く、白いを通り越して青白い。
茨については心配してないぞ。アイツは大丈夫。
そして私達の近くに取り囲むようにいるのはーーーー陰陽師の奴ら。

「まさか吸血鬼だったとはなぁ!お陰で楽に処分できるな!」

「全くその通りだ。吸血鬼は強いが日中はただの人間よりも貧弱なものよ」

ふはははは!と大笑いをする陰陽師達に私は歯噛みすることしかできない。
プライドの高いソプラ姉なら反応するはずが、もうそんな気力も残ってないみたいだ。
……ここで終わるのか?
私、もう死ぬのか?
折角……折角……友達ができたのにか?
……好きな人が、できたのにか?
私の服をポタポタと零れる水玉が仄かに濡らす。
昔は、泣くことなんてしょっちゅうあった。
親に捨てられて泣いた。山を追われて泣いた。その山が開発によって皆が死んだのに泣いた。人を喰って、そんなことをしている自分に泣いた。
私の人生はずっと泣いてばかりだったぞ。
でも、最近。やっと幸せっていうものが、ちょっと分かったと思ったのに……ここで終わりなのか……?
せめて、せめて最後に、……アイツに…………あのバカに…………会いたかった……ぞ。

「おっ邪魔っしまーっす!」

その唐突な無遠慮過ぎる声が、部屋に反響し、私の悲しい雰囲気をぶち壊す。
……聞き覚えのある声だな……まさか!?
その扉のドアノブが、回される。

「だ、誰だ!」

陰陽師の一人の声に、ドアノブを回したまま、部屋に入らずに答える誰か。いや入れよ……。

「なんだかんだと聞かれたら!答えてあげるが世の情け!」

……ホント、こういうところアイツっぽいな……。

「世界の平和を守るため!愛と真実の悪を貫く!ラブリーチャーミーな不老不死!」

……でもまあ、アイツのこういうところ。

「伏見茨だぜぇっ!」

私は嫌いじゃない。

扉が開けられ、人影にしてはやけに図太いものが入って…………は?
……なんだ……これ。

周りを見渡すと、陰陽師達までもが口を開けて驚いている。
……私は何が何だかわからないんだが……。

「き、貴様ァ!」

「なんだ!この悪徳陰陽師!」

声は確かに茨だ。
だが、その身に纏っているものから茨の容姿は完全に隠れている。
と、いうか、あれ着ぐるみだろ……。





「何故ふ〇っしーになっている!」

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!人が気にしていることを喋んなぁぁぁぁ!」

……気にしてるなら止めろよ……。

「梨の妖精だぞごるぁぁぁぁ!」

そのふなっ〇ーとやらの着ぐるみ(?)を着ている茨(?)がその姿で陰陽師の一人に向かってドロップキックを喰らわせた。

「馬鹿なのか貴様!」

「恥ずかしくないのか!」

「一生の黒歴史だぞ!」

「だから人が気にしてること言うなっしー!」

……なんか口調が変わったな。

「おのれオンミョウジーズめ……」

「オンミョウジーズとはなんだ!」

茨の台詞に反応する陰陽師達。なんかサッカーチームみたいな名前だな……。
茨がその着ぐるみの腕で陰陽師を殴り飛ばす。呪術による攻撃が飛んでくるが、茨ほ案外素早い動きで避ける。

「痛ってぇぇ!」

前言撤回。こけて頭を打った。

「よくもやってくれたなっしな……ギタギタにして殺るなっしー……!」

「ふな〇しーはそんなこと言わないだろ!というか転倒にいたってはお前のせいだろ!」

「黙れなっしー!血汁ブシャーッ!」

茨が体当たりで敵に当たり、頭突きを喰らわせた。喰らった陰陽師は鼻から鼻血を流した。
と、そこに呪術が殺到する。
おい!お前らの味方がいるんだぞ!?何やってんだ!
間一髪茨がそいつを何処かに投げて、茨はそこから謎のジャンプ力で弾幕を回避した。今骨が砕ける音が茨からしたんだが……。

「痛い……足が砕けた。
……お前ら……何やってんだ?」

ソプラ姉を引きずり日光の当たらない私の近くへと置く茨。
そして近くにしゃがみ込んで、ソプラ姉の体に巻き付く銀のワイヤーに手をかけながら喋りかけた。

「私達には妖怪退治という高等な義務がある。それゆえ多少の犠牲は致し方無い」

「今更取り繕うな残念エリート。何だその高等な義務(笑)って。俺には到底理解できん」

怒ったように声を上げるのは先程茨が残念エリート扱いしていた奴。流石にそれは可哀相だから止めてあげろよ……。

「黙れ!妖怪風情に理解など求めていない!」

「だから妖怪じゃねぇ……」

「あそこまで粉微塵にしてやったというのに蘇るとは……貴様何者だ……」

「だからただの不老不死だっつの」

「…………は?」

茨の発した台詞に、札を構えていたほかの陰陽師までもが静まる。
私も初めて聞いたときはこんな反応だったな……。

「……この反応もう飽きたんだが……。だから死なないだけの人間だ」

ところで茨。お前だいぶシリアスな台詞言ってるけど服装のせいで台なしって事に気付いてるか?

「ふ、ふざけるな!嘘を付くのも大概にしろ!さては貴様、手品師だな?
……な、ならば我等が負ける道理は無い!
ただの人間に負けるほど脆弱では無いわ!」

…………そうだな。確かに茨には負けないだろう。
でもそれは茨が死ぬ前提の話だ。終わりの無い戦い。永遠の寿命を持つ茨とそれをすれば、どちらが先に負けるかは目に見えているだろうが。

「確かに俺じゃ勝て無ぇけどよ…………てかなんで俺こんなバトル漫画的な台詞吐いてんだよ……?
……大体、陰陽師ってのは人間の味方じゃ無ぇのか?俺を人間って認めたの、お前だぞ?」

「黙れ!人間とも妖怪とも区別のつかぬ化け物が!」

その陰陽師は茨の事を、最初に茨に会った頃の私と同じような呼び名で呼んだ。
……私が言えた事じゃないんだが、今は茨の事を化け物なんて言いたくない。
だって、アイツは良い奴だから。私が出会ってきた中で、ソプラ姉と同じぐらい良い奴だから。

「化け物……ね。お前らヤマイバちゃんかよ。てか手品師設定どこ行ったし……。
まあいい、それとさっきの答えだ。俺じゃ勝て無い。ムス〇のラピュ〇王国何度でも蘇る作戦も俺にする気は無い」

「そうだ!貴様が我等に勝てる筈も無い!」

そう言い放つ陰陽師。確かにアイツラは大人数で、茨は一人。勝てる訳も無い。
…………ところで茨……流石にそれは可哀相だろ……。
私は茨のやっている事を見て、流石に酷いと思う。いや、別にあんな奴らだしいいか。



「じゃ、頼むわソプラ」

その言葉と共に、先程まで倒れていたソプラ姉がフラリと立ち上がる。
こちらからはその顔は窺えないが……絶対怒ってるだろうな。

「貴方達……随分と吸血鬼を侮辱して下さって……覚悟はよろしくてよ?」

Re: 不老不死は、眠れない。 ( No.30 )
日時: 2017/04/10 11:34
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ (ID: 0rBrxZqP)

その背中からは吸血鬼の凶悪さが滲み出ていた。すごい重圧が飛んできて下手すれば味方だと分かっている私まで怯えそうなくらいだ。
ガチガチと陰陽師の連中が歯を鳴らしているのが分かる。遠巻きに見ても把握できると言うことは実質的かなり怯えているのだろう。

「灰になれ」

ソプラ姉がかなりの怒気を孕んだドス黒い声でそう言い放つ。瞬間に紅い光の矢が放たれた。
その紅い光は陰陽師の男の頭を掠めるカタチで通過し背後の壁をスナック菓子のように吹き飛ばした。豪風が吹き荒れコンクリート粉が舞う。
だが私には分かる。まだソプラ姉は力を抑えてるだて。仮に今のが本気ならば、あの一撃は爆発だけで敵を全滅させていただろう。

「お前らぁっ!さっさと撃て!撃てぇ!」

もうヤケクソなんだろうか。男はそう叫びながら自分も札を構えて攻撃する。
カラフルな弾丸がソプラ姉を襲いかかる。それに対して彼女は何もしなかった。
直後、爆発が起こり爆炎が視界を包み込む。が、その中から一つの紅の矢が飛び出て陰陽師の1人の肩を抉る。右肩が無くなった陰陽師の右腕がクルクルと空中で旋回して落ちた。その光景に泡を吹きながら倒れる男。

「もう貴方達に慈悲は無いわ……後悔しても遅くてよ」

ソプラ姉の光の矢が次々と陰陽師達に襲い掛かる。腕、足、脇腹、頭と失った部分こそ様々だが皆平等に致命傷を負う。

「何故だ……」

最後に残ったリーダー格の男は1人でボソボソと呟き、

「何故だぁぁぁぁぁぁぁあ!我々が妖怪風情に負けるなど有り得ぬぅぅぅぅう!」

そう叫んだ。
妖怪風情。なんでそんなことを言うんだと思うが仕方ないことなんだと気が付いた。
私やソプラ姉みたいな人を犠牲にして生きる妖怪は人間からは嫌われる存在なんだ。それはもう、そう生まれてきた以上変えようのない事実なんだ。

「妖怪妖怪煩くてよ」

その一言をソプラ姉言った後、光の矢が無慈悲に男の頭を消し飛ばした。







「ったぁーく、なんでお前あんな全力でやっちまうかなぁ。お陰で俺がおぶって帰ることになっちまったじゃねぇか」

はろう。あの後陰陽師達の残骸の服を着て何とか梨の妖精から脱した伏見茨だ。にしてもソプラの奴、あの後妖力の使いすぎで倒れやがって。お陰で俺がこうして背負って帰るハメになってんじゃねぇか。
丁度いいから一つ事実を教えてやろう。幾ら女性とは言え重いものは重いんだ。女性が羽みたいに軽いって言えるのは日頃鍛えている主人公の言えるセリフであって、死なないだけの俺が言えるようなセリフじゃねぇんだ。つまり要約するとソプラ重い死にそうたすけて。

「ヤマイバちゃん、コイツどうかしてくんない?……おいヤマイバちゃん?」

「……こっちも疲れてるんだからそれくらい自分で持てよな」

コイツ……今ソプラのことをそれって言いやがったぞ。なんてやつだ。
いやヤマイバちゃんの腕力からしたらソプラは軽いのか。クソ、なんかプライドが踏みにじられた気分だ。
結局ヤマイバちゃんが傘を持ち俺がソプラを背負うという妥協案で解決した。いやさっきまで俺が片手で傘さしてたんだよ。ソプラの為に。

「んん……う」

ソプラの吐息が耳にあたってゾクッとした。この野郎なんてことしやがる。お陰でちょっとビクってなっちまったじゃねぇか。
こうして大人しくしていりゃホント綺麗な顔だ。正しく人形みてぇに整ってる。肌は透けそうなくらい白くて不健康まっしぐらな印象しかねぇけどそれを差し引いても充分美人だ。
寝顔は可愛いってか。全くそれは昔っから変わらねぇ奴なんだな。
俺達はそのまま無事に帰宅することができた。
……クソ、今頃になって割った卵が惜しくなってきた……。


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