複雑・ファジー小説
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- 異世界は死神とともに
- 日時: 2016/04/10 22:14
- 名前: 冶歌(イルカ) (ID: Zq2QG6kE)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18757
はじめまして、冶歌(いるか)といいますー。
転生ものです。主人公チートを含みますので、苦手な方はご注意ください。
同じ板で『魔法使いと芸術家と紫のコランバイン』という転生関係なしの純ファンタジー書き始めました。
よろしければご覧ください。
- Re: 異世界は死神とともに ( No.3 )
- 日時: 2016/05/03 23:38
- 名前: 冶歌(イルカ) (ID: aWtSrojt)
2−1 異世界は死神とともに
息子のカルドと、その弟のカルモが熱を出した。カルド4歳、カルモ3歳の時だった。
いくら解熱魔法を使っても下がらない、原因不明の熱である。医者を呼んで薬を処方してもらったが、治る治らないはこの子たちの気力しだいだと言う。
二人とも同時に熱を出し、もう三日になる。
カルドはひいきにしている学園の幼等部へ入園する直前のことだから、タイミング悪いなあ、と思っていた。
三日も高熱が続いている今は、そんなことどうでも良い。治って、元気になってくれればいい。
ああ神よ。敬愛する神よ。我が愛子たちを、どうか見捨てぬよう・・・。
* * *
はっ、と息を吸って、僕を目を開けた。
柔らかい・・・布団? 知らない天井がある。右から太陽の日差しを感じるが、僕の部屋はベットの横に窓はなかったはずだ。
上半身を起こして部屋を眺める。体がなんとなくだるくて、枕を支えに起き上がった。はて、僕の枕はこんなに大きかったか・・・。
ログハウスみたいな素朴な風情を感じる、そこそこ大きな部屋。部屋の大きさに比例して窓も大きく、ガラスははまっていない。照明もないが、窓からこぼれる太陽の光で十分明るい。
・・・間違いなく僕の部屋ではない。
がしゃん!
突然大きな音がして、僕の注意は一枚しかないドアに集中する。
いつの間にかドアが開いていて、メイド服の女性が目を丸くして立っていた。足元は濡れて、木のコップとアルミ製のお盆がカラカラと転がっている。
「・・・お、お、奥様ー! しゅくりゅっ・・・シュクル奥様ぁ!」
「あっ」
引き留める間もなかった・・・。ばたばた走っていってしまった。
な、なぜ今時の日本にロングメイド服の女の人が・・・?
と、そこまで考えて、僕はあることに思い至る。
転生。
転生だ。
転生したんだ。
驚愕して目を見張る。ああ、と驚きのため息が漏れた。
起き上がれたことを考慮すると、生まれてからかなり経っているらしい。
さっきのメイドの言葉も聞き取れたし、少なくとも一年はたっているだろう。
メイドがいることも、外国に転生したと考えればおかしくはない。
僕は一人で納得して、うんうん、とうなずく。
「カルモ!」
そこへ、銀髪の女性が現れた。うしろにはさっきのメイドと、見知らぬ男。・・・と、小さな男の子・・・?
銀髪の女性は喜色一面に僕に抱き着く。
お、おう、お母さん、かな? すっごい美人!
・・・あと、あの、えっと、だいぶふくよかでいらっしゃいます。主に胸が。
「良かった・・・カルドより二日も多く眠ってたから・・・もう起きないかと思ったよ!」
男性のほうも、男の子の手を引いて片手で母さんと僕を抱きます。
お父さんかな。現時点での僕自身の年齢がわからないから、男の子は兄か弟かわからない。でも、おそらく家族だろうな。カルド、っていうのは男の子だろう。
みんな外国人風の顔立ち。転生先が外国ってことは間違いないかな。
転生とか家族とか外国とか、外国語とか外国語とか外国語とか、おもに外国語が聞き取れていることに何度も驚いていると、それをぼーっとしているととらえられたらしい。
「あなた、カルド。カルモを寝かしてやりましょう。病み上がりで疲れているだろうから」
若干涙に目を濡らしつつ、お母さんがお父さんと男の子に言う。
お父さんがそれを愛しそうに見つめながら、うなずいてカルドといっしょに出ていこうとする。
しかし、カルドが嫌々と首を振った。
「ぼく、かるものおそばにいるー。ねんねのお話ししてあげるのー」
お父さんにっこり。お母さんにっこり。そして僕にっこり。
かーわいいな、カルドくん。弟ができたらこんなかんじだろうなー。
お父さんお母さんがメイドをつれて出ていき、カルドがベッドの端に座った。
ん、なあにカルド君。ねんねのおはなししてくれるのー、そう、ありがとー。
そしてカルドくんの口から紡がれたのは————
「ふざけんなカルモ、目ぇさませこのヤロー。記憶取り戻すまでに三年もかかりやがって、クソ借金野郎が。とっとと生気集めろやぁ! あと俺は兄! したに見るな! むかつく!」
———死神だった。
- Re: 異世界は死神とともに ( No.4 )
- 日時: 2016/04/24 19:24
- 名前: 治歌(イルカ) (ID: aWtSrojt)
今回説明回なのでgdgdです、すみません。
2−2
カルド・・・死神が語った寝物語は、もしかしたら転生した事実より突拍子なかったかもしれない。
しかし転生したことと、死神が兄だったことと、子供二人産んでおいて(カルドと僕が実の子だったらの話だが・・・)サビのひとつも見えないママ上様の若さに、男子高校生のイロイロを刺激されっぱなしだった僕には、それほど苦労せずに理解することができた。
というかそれが狙いだったんじゃないか。
死神の部屋でも充分できた話だろうから。
「カルモ、お前、生前のことは覚えているか」
「は、はい・・・・うん。転生っていうから、てっきり記憶リセットされるかと思ってた」
よくある小説は、神様の不注意とか、運命の歯車の故障とかで死んで、そのお詫びに記憶有りの転生であった。
僕はお詫びどころか叱られてしまったから。
「ばぁーか、それだったらお前、前世と同じ道をたどるだろ。俺は神として、お前の人生の手助けはできても口出しはできない。お前は生気を、前世と今世の二回分集めねばならんからな」
「要は効率ってこと?」
「まあ。証拠に、転生してから三年、おまえから受け取った生気は一つだけだ。クズだな」
Oh・・・。
死神、関係無いがその姿でトゲトゲ言葉使うのやめてください。
精神的にきっつい。
「・・・まあ、それは置いておく。まずお前が暮らす世界の説明だな」
「うん、それ僕聞きたかったヤツ。ここどこの国? 母さんたち何人? 何語?」
「人界、レーム共和国。あとここでは母様と呼べよ、位は低いが仮にも貴族だ。・・・母様はレーム国出身のエルフォ(耳長)人、父様は隣国のグロビオ王国出身、同じくエルフォ人」
「まてまてまてまて」
三カ所くらい突っ込ませろ!
人界? 貴族? レーム国? グロビオ・・・王国? そしてエルフォ人ってなんだ!
「五カ所だな」
「五カ所だね。・・・ジャナクテ!」
「貴族はわかるだろ。レーム国はリズ大陸の北に位置する雪国だが、毎年緑王月は季節風でしばし春の気候が続く。グロビオ王国はレーム国の隣国だが、国境は隣接していない。魔物が多く生息する森を挟んだ遠き隣国だ。エルフォ人は———」
「まてまてまてまて」
突っ込ませずに話をしろ!
死神は面倒臭そうにこちらを見やるが、こちらは一歩もゆずらない。
だって魔物。
魔物だって?
あのファンタジーの産物魔物とおっしゃるか!
「ああ、言っていなかったか? お前が転生した、ここは、お前のいた世界とは別世界だぞ」
* * *
「エルフォ族は、一般にエルフと呼ばれる。今は純血のエルフォ人は数少ない。俺とお前はそのうちの二人だな————」
異世界。
「エルフォ人は人科のうちのひとつだ。他にはヒューマ族、12歳から成長がとまるドール族、プライドと力の強いドワーフ族———」
別世界。
「人科と対としてとらえられる魔物科には、俗に天使と呼ばれる有翼人族、魔法を使う魔族がいて————」
剣と魔法の世界。
剣と魔法の世界?
「おい、聞いているかカル————」
「剣と魔法の世界!!」
「聞いてねえなカルモそこになおれ」
「あっごめんっごめんっごめんなさいっねえ気管じゃなくて頸動脈狙って首しめるのまじやめておちるー! おちるからー!!」
「ちょうど良い本物の寝物語になるな」
死神は笑みを浮かべながらも、すっと手を離した。
こ、こいつ・・・・。
完璧な暗黒微笑を若干朦朧とした視界で眺めながら、僕はこれからの人生が不安で仕方がなかった。
++++++
○登場人物
+カルモ・ヴァレット
銀髪緑眼(?)。
お兄ちゃん怖い。
+カルド・ヴァレット
黒髪緑眼(?)。
弟いじりおもしろい。
- Re: 異世界は死神とともに ( No.5 )
- 日時: 2016/04/24 19:28
- 名前: 治歌(イルカ) (ID: aWtSrojt)
3−1
転生したと思ったら今世の兄が悪魔だった件について。
「まるで、ら、らのべ? のタイトルみたいだな」
「悪魔なことは認めるのな。お巡りさんは否定したのに」
床にへばる僕を椅子代わりにするカルド。
話を聞かなかっただけで首をしめる幼児に対抗しようと、つかみかかったらこの有様です。そうだった、今は僕も幼児だった。しかも病み上がりだった。
「あれはあの世界の———地球での器の職業名だからだ。世界があるだけ俺の器がある。ねっと、のニックネームを現実世界で呼ばれてはしっくりこないだろう、それだ」
「うん、・・・・うん? たとえは上手くないけど、まあ、そういうものかな・・・?」
「しかし不便だろうから、この世界ではカルドと呼ぶことを許してやろう。喜べ、カス」
「できればカルモって呼んでくれないかな!?」
がちゃ、と控えめな音が聞こえた。
その瞬間、カルドが僕から降りて、一瞬で表情を作り替える。
部屋に入ってきたのはお母さん。否、母様。
「大きな声が聞こえたけど・・・・ってあらぁ! カルモ、どうして床に倒れてるの!?」
「ぼ、ぼくはとめたんだけど、かるもが母様にあいにいくってきかなくって・・・。びょうきがなおったばっかりで、ちからがはいらなくって・・・」
なんてことしてるの、と母様は僕をだきしめる。カルドにっこりスマイル。
母様・・・優しいのはわかりましたが・・・息子を育て直した方が世界のためだと思います。
* * *
あれから数日。
カルドさんの兄弟愛のムチも遠い記憶となりつつあります。いや、忘れないけども。カルドには警戒してるけど。
やっと家族の全貌が明らかとなった。
だってこいつら、仕事とかでぜんぜーん集まらないんだものー。
シュクル・ヴァレット、僕の母様。銀髪碧眼で美人で巨乳、じゃないじゃない、いや豊満だけどそれは気にしない、スケベだめゼッタイ。優しい。
ロベルド・ヴァレット、僕の父様。黒髪緑眼のイケメンさん。仕事は領主様、だけど小さい領地で権力はあんまりないそう。
カルド・ヴァレット。
死神。黒髪緑眼、父様の遺伝子が前面に出た四歳児。暴力魔の疑いが濃厚。
カルモ・ヴァレット。
いわずもがな、僕である。
水たまりを利用してみたところ、銀髪緑眼、母様と父様をたして二で割った色合いだった。・・・ようなきがする。
この世界、鏡がないのです。金属を磨いただけのよく見えないヤツはあるが、ほぼ機能していない。水たまりの方がよっぽどよく見えます。
顔は母様よりだろうか。やったね、美男コースだ。
以上。
昨日、お外解禁されて、遊ぶのを建前に外を探索できるようになった。
いままでの結論は「ここど田舎だわ」。
山の中だった。
しかもかなり深い。
夕暮れ時なんて木々の向こうが闇に染まります。
見つけた限り一本の山道が道をきりひらくだけで、他に外界との繋がりが見当たらない。
今日はその山道を歩いています。
空は真っ青で、木がざわめく程度のそよ風が吹いている。鳥たちの声と羽ばたく音があたりを満たし、春の花が彩っている。
カルドは父様と街に出かけていて、家にはいない。だから今日はひさしぶりの自由だ。
おー! フリー イズ ワンダフル!
・・・なんか見たことない異形の花とか茂ってるけど。
・・・なんか道が曲がりくねってきた気がするけど。
・・・なんか草木の合間から野獣の毛並みが覗いてるような気がするけど。
・・・なんか・・・。
・・・帰る道がわからなくなってきてるような気がしないでもないけど・・・・・・!!
+++++
○登場人物
+カルモ・ヴァレット
銀髪緑眼(?)の三歳児。
得意技は「迷う」。
+カルド・ヴァレット
黒髪緑眼の四歳児。悪魔的精神を持つ。
はじめてのおつかいはまだ先のご様子。
- Re: 異世界は死神とともに ( No.6 )
- 日時: 2016/05/02 22:36
- 名前: 治歌(イルカ) (ID: aWtSrojt)
副題つけてみました。2−2と3−1は何故か修正できなかったのでそのままです。闇の勢力のせいかな・・・(確実違う
おもしろい人物紹介が書けるようになりたいです。
ところで今回はシリアス回です。
3−2 それは既に過去のことだが
とっぷりと闇に暮れた森のなか、僕はとっぷりと途方に暮れていた。
まさに一寸先も闇。どっちが北で南だかもわからない。
———————迷った。
ひん、と涙に濡れた息が巻く。それを聞いて、やっぱり三歳児になったんだな、と18歳の冷静な頭が思った。
僕は木の根っこに座った。女性の足みたいな形だ。
へっへっへ、あんさんいい足してらっしゃるなぁ。などと遊んでみたが、むなしくなっただけでした。ごめんね、僕、まだ男子高校生なんだ。てへぺろ。
春の夜の冷気が足下に忍び寄る。ひどく寒い。
シャツに短パンをサスペンダーで吊っているだけの僕は、ぶるりと体を震わした。
す、と目を閉じる。
僕は同じような寂しい冷たさを知っている。
昔————前世でのことだった。僕はそのとき、やはり今とおなじくらいの、幼稚園に入るか入らないかの年齢だった気がする。
僕は水に沈んでいた。
手を水面に伸ばし、もがいていたが、上に昇るのは大きな気泡だけだった。
その気泡も水面に届けば割れてしまった。
苦しい。
怖い。
助けて。
・・・助けて!
と、水の中に手が入ってきたのはその時だった。手は僕の髪をつかみ、乱暴に引き上げる。
「・・・ク。・・・リク。リク。私の子供・・・」
前世での母である。思い出した。あれは確かに、母だった。
母はときどき僕に暴力をふるった。あんまり顔を覚えていないのは、たぶん怖くて直視できなかったからだ。
「小さいわね。かわいい綺麗な顔。・・・あの人に似てる」
再び押し込まれた水の中、母の声はくぐもってよく聞こえなかった。
その顔が大嫌い、だとか、裏切り者、だとか、しようの無いことだったかもしれない。
本当に、僕にはしようのないことだけど。
「ヒトノコ・・・?」
ば、と目を開けた。
声・・・音? 慌てて立ち上がってあたりを見回す。
なにもない。いない。
心臓がばくばく鳴っているのに、脳から血が抜けたように何も考えられない。
「・・・ツナギ目ノ無イ人形?」
うしろ。
振り返る。僕の目には闇しか写らない。
「ツナギ目ノ無イ人形ハ妖精王ニ献ゲル?」
僕は恐怖で目を見開いた。
視界の隅でなにかが光る。
魔物。
カルドが言っていた。
ファンタジーの産物。
わかった顔して、僕はなにをわかっていたのか。
僕ははじめてそれを見た。
ムカデのような異形の体。首がぬらりと動き、その先に毛のない人間の頭がついている。
肩らしき位置には———大きな鎌が鈍く光っている。
刃を見て、僕は口の奥がからからに乾くのを感じた。
路上の風景がよみがえる。
鮮血————。
通り魔————。
僕の死体————。
背中に刺さる銀色の刃————。
「人形ハ帰リ還スベキ場所ヘ」
僕はそのあと、紅が広がるのを見た。
+++++
○登場人物
+カルモ・ヴァレット
銀髪緑眼(?)の三歳児。
魔物(?)が言うにはツナギ目無い系男児らしい。
+カルド・ヴァレット
黒髪緑眼の四歳児。父親の買い物にトゥゲザーしている。
よい子は寝ている時間であるが、確実によい子ではない。
- Re: 異世界は死神とともに ( No.7 )
- 日時: 2016/05/02 23:37
- 名前: メルマーク ◆kav22sxTtA (ID: kphB4geJ)
こんばんは、はじめまして。
題名が気になってクリックしたのですが・・・すごくおもしろいです!
ラノベと転生物が大の苦手なのですが、文の書き方やキャラがきちんとまとまっていてぶれて無いからなのか、すごく読みやすかったです。
まさか転生物を好きになる日が来るなんて思いもしなかったのですが、よろしければまた、ちょこちょこ覗きに来たいと思いますっ!