複雑・ファジー小説

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異世界は死神とともに
日時: 2016/04/10 22:14
名前: 冶歌(イルカ) (ID: Zq2QG6kE)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=18757

はじめまして、冶歌(いるか)といいますー。
転生ものです。主人公チートを含みますので、苦手な方はご注意ください。




同じ板で『魔法使いと芸術家と紫のコランバイン』という転生関係なしの純ファンタジー書き始めました。
よろしければご覧ください。

Re: 異世界は死神とともに ( No.1 )
日時: 2016/05/03 23:28
名前: 冶歌(イルカ) (ID: aWtSrojt)

1−1 死して生を知る


今時、通り魔に背中を刺されて死亡する、なんてことは当たり前なのだろうか。

まあすくなくとも、平平凡凡人な僕の死に方ではないだろう。
僕はこのまま何事もなく高校を卒業して、何事もなくまあまあな大学に進学し、何事もなくそこらへんの会社で働いて、結婚して、子供をつくって、何事もないけど平和な人生を送り、大往生していくのがふさわしいものだ。というかそれが目標だった。

ところがどうだ。目の前では狂った通り魔が、おそらく僕が落し物以外でかかわることがなかったであろうお巡りさんに取り押さえられている。
道脇で倒れているのは僕。
僕だ。
もう一度言うが、僕である。
お巡りさん二号が僕に必死に話しかけているが、ぴくりとも動かない。それは当たり前で、僕は—————たぶん僕の魂は、電柱のまえでこうして悠々と現場を眺めているからである。

霊、というやつだろう。
これも僕の人生設計の中では一生出会うことのなかった代物だ。いや正しくは出会っていない。なっちゃった。
しかし狼狽したところで神様が降りてくるはずもなく、こうして電柱に寄りかかっているのだ。

思っているうちにお巡りさん三号と四号がきました。

三号は一号に加勢し、通り魔はやっと大人しくなった。よかったよかった。

「よくねえわ」

ぎゃん!?

み、み、みみみみ耳に息がかかったああああ!! 耳はだめだ! 耳はアウトです!

「てめえの弱点なんてしらねえよ。さっさと俺の部屋に来やがれ」

振り向くとそこには、・・・・・・お巡りさん。
記憶によればお巡りさん四号。
黒髪イケメン。ただし口が悪いです、お巡りさん。
一言で言えば怖い。

「な、な、なにようでごじゃっ・・・ございましょうか!?」
「だから俺の部屋に来い」
「は?」
「俺の部屋」

そおおおれはどういうことで!?
ていうかなんで見えてるの!?

混乱する僕にさらなる混乱が訪れる。
周りから物がすべて消えた。



* * *



「ふおおおおおおおおおおお」
「落ち着け」
「ふあああああああああああい」
「返事する前に落ち着け」

草原です、端が見えない草原です、空は白いです、そんな空間にお巡りさんと二人きりです、この人今なにやりましたか、怖いです怖い。

「だから、サツじゃねえ。死神だよ・・・・」
「しっしにがみいい!?」
「おまえ死んだときは平然と状況整理してたのに、なんで死神の方が恐怖大きいんだよ!!」

だって死神って、あれだろ。
魂を食らうんだろ・・・。

僕は魂だから君の食事のために獲られたんじゃないのか。気分はまさに虎に仕留められたウサギだ、というと、お巡りさん四号————死神は、少し驚いたのち、ため息をつく。

「・・・俺は魂なんぞより姉ちゃんクうほうが百倍楽しい」
「さらっと最低なこといいますね」
「俺の職業はな、・・・・死神ってやつはな、」
「スルースキルレベル100ですか」
「魂の生気を集めるんだよ」

生気?

「生き物が生きているうちに、楽しいなあ、生きていたいなあ、と思ったときに出る気のことだよ。おまえはそれが圧倒的に少ない。むしろ無い。問題児。クズ野郎」

さんざんな言われようだ。確かにそう思ったことは少ない。
だが、わざわざそれを叱るためにここに、死神の部屋に呼んだのだろうか。

「もちろん違う。あのな、神はお前たち生命に世界を作ってやっている。それはいわば借金だ。借りた金でなにをしようがかまわないが、それはきっちり返してもらわにゃならん」
「・・・生気で返すのか」
「落ち着いてきたな? そう、生気で返すんだよ。生気はいろいろ便利なのさ。だが俺たち神側のイキモノは生気を作り出せんからな」

ああ、話が見えてきたぞ・・・。
ライトノベルで何十回、何百回と呼んだ展開。でもまさか、自分の身に起こるなんて。
つまり、死神が言いたいのは・・・・


「『転生してでも生気を返せ』・・・ってことですか」


頭いいなあ、お前。
死神にそう言われたが、死神の暗黒微笑のせいであまり褒められている気にはならなかった。

Re: 異世界は死神とともに ( No.2 )
日時: 2016/05/03 23:33
名前: 冶歌(イルカ) (ID: aWtSrojt)

1−2 死して生を知る


それからは早いものだった。
来世での性は男、名前はカルモだと伝えられる。外見については、銀髪緑眼ということしか情報が得られなかった。・・・いいもん、もし外見が悪くてハーレムつくれなくていいもん。ハーレムなんか興味ないもん、ぐすん。
ちなみにいうとスキルゲットとか転生得点とか、あるあるはなかった。まあ、借金返済の・・・生気返済のくだりの中腹あたりから期待はしていなかったので、これについてはあまりがっかりはしていない。

転生の準備だとかいう、怪しげな粉をあたりに撒きながら、死神はふとこちらを振り返る。

「驚かないのか?」
「・・・何が?」
「転生なんて夢物語だよ。いままでに転生させたやつは、死んだことのショックで、話ができるまでに数か月かかった」
「その人たちも、借金のこってたの」
「ああ、まあ。お前は桁が違うけどな」

うーん、このヒトは人の心をえぐらずに会話を終えることができないのだろうか。回収できた生気がすくないってそれ、お前の人生灰色一色って言われているようなものでしょ。さすがに傷つく。

「・・・べつに、まだ完全に信じたわけじゃないさ。即効性の眠り薬を使えば、一瞬で別のところに移動したふうを装うのは簡単だろうし。死んだことも・・・・・・夢か幻かもしれない」
「俺にはその考えこそを都合の良い夢と思っているように見えるぞ」

けらけらけら。死神はなにが面白いのか一人で肩を揺らす。

「ほら、できた。おいお前—————カルモ。こっちへこい」

僕が立ち上がって死神に近づくと、死神は手に持っていた紙袋を宙へほおった。まだ白い粉がたくさん詰まっているであろう紙袋。それは粉をまき散らすことなく、ぽしゅんと音をたてて消えた。
どうやら彼が死神だということは信じられそうである。

草の上には、白い陣が描かれている。
六方星・・・だろうか、極めてまっすぐに線が引かれている。何も考えず粉をまき散らしているように見えたのに、不思議なものだ。
僕がその陣の中に左足を入れると、青白く光り始めた。
こころなしか地面も揺れている。

「はやく入れ。でないと五体不満足になるぞ」
「ぎゃー! はやく言って!」

慌てて右足も中に入れたところで、僕の意識は飛んだ。



* * *



「奥様、男の子がお生まれになりましたよ!」

ロデルス山脈の山頂付近、鳥獣の息遣いが聞こえる森の中の、広大な屋敷で。
古鈴の月第12日(4月12日)、一人の命が誕生した。
おぎゃあ、と大きく泣いて空気に触れた赤ん坊は、うれし涙を流す一人の女性の横に寝かせられる。

「ああ、ああ、私の子。私達の子供! ロベルド、カルドは、お兄ちゃんになるのね!」
「そうだよシュクル。家族がもう一人増えるんだ・・・」

そばにつく男性は女性の手を握りながら赤ん坊をいとおしそうになでる。
今さっき生まれたばかりの生命はロベルドが頭をなでるたび、うー、と声をあげる。

穏やかな目をしてる。

シュクルと呼ばれた女性がつぶやく。

穏やかな瞳、あなたと同じ目をしてる。
髪はきみと同じ、銀色だよ。
そうね、私たちの子だわ—————。

「名前はカルモ(穏やか)にしよう」

二人のどちらがそういったのか、幸せの絶頂のなかではどうでも良いことである。

ロベルドとシュクルの愛子、カルモの誕生の瞬間だった。


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