複雑・ファジー小説

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転生者は邪神召喚士
日時: 2016/04/19 22:35
名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)

題名の通りです。
更新は不定期、チマチマ頑張ります。
掛け持ちをしているので、更新が物凄い空くことがあります。

それらの条件がOK!という方はどうぞ

Re: 転生者は邪神召喚士 ( No.1 )
日時: 2016/04/20 21:03
名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)

8月。晴天。
真夏の太陽がじりじりと照りつけ、アスファルトを焦がしている。テレビのニュースで熱射病に注意してくださいというこのシーズン。
彼——篠崎竜太は、足をふらつかせながらもゆっくりと自宅へと進んでいた。

「あ゛あ゛あっちぃ……ニートにこの気温は辛いぜ……」

職業はニート。所謂、社会不適合者である彼は26歳。親の金で生活をしているようなクズである彼は唯一の趣味であると言ってもよい、ライトノベルを購入し帰宅している途中であった。
自宅は、それほど遠くないボロアパートの一室だ。彼は、自宅のドアを潜ると。そこには

包丁を持った男がいた。

(は?)

彼は呆然とした。こんなボロアパート。盗みなんか来ないだろうと、不用心だったのも認めよう。だからって包丁持った男が帰宅したら居るだろうと誰が想像しようか。

「っ!!」

急に家主が帰ってきて気が動転したのだろう。男は真っ直ぐ竜太に突っ込んできて。それを呆然としていた彼は避けられる筈もなく。
腹に、包丁が突き刺さった。溢れる血。
それは、腰を通り、足を通って床へ流れ出る。

(ふざ……けんな……!)

誰が好き好んで、殺人されたい等と思ったのか。しかも苦しむようなやり方で。
男は、既に逃げ出していた。今から救急車を呼ぼうにも出欠多量で死ぬ。

(もう……終わりか……。早かったなぁ)

意識が朦朧としてきた。ここで意識は完全に闇の中に沈んだ。


目を覚ますと、見慣れない部屋にいた。

Re: 転生者は邪神召喚士 ( No.2 )
日時: 2016/04/23 16:49
名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)

目を覚ますと篠崎竜太は、見知らぬ部屋にいた。いや部屋といって良いのかすらも分からない。
壁、天井、床。その全てが星空で構成されており、そこに立てていなければ空中に浮いていると思えるほどで。奥行きも天井の高さもまるで分からない。

「あれ……さっき刺されたよな…俺?なのに何で意識がある?三途の川って訳でもないみたいだし」
「それはだねぇ少年。君は今、死んでいながら生と死の狭間にいるんだよ」

後ろから話しかけられた人物に竜太は振り向いた。
その人物は浅黒い肌をもった純黒のフード付きローブを着ている青年だった。

「ようは君を生き返らせてあげようと言うわけさ。ボクってば最高に優しいね。そう思うだろう少年?」
「アンタ、何者だ?神様?異世界転生でもさせてくれるのか?」
「イグザクトリー。その通りだ、少年。僕の名前はジョン・ドウ。よろしくね?」
「ジョン・ドウなんて神様が居るかボケ」

ジョン・ドウというのは日本で言うところの『名無しの権兵衛』だ。そんな神の名を彼は聞いたことはなかったし、彼の容姿やジョン・ドウという名前からある一体の神格を思い付いた。

「アンタ、ニャルラトホテプだろ?」

《這い寄る混沌》《無貌の神》《暗黒神》《闇にすむもの》《大いなる使者》《燃える三眼》——貌がない故に千もの異なる顕現を持ち、特定の眷属を持たず、狂気と混乱をもたらす自らの暗躍するクトゥルフ神話の神格のなかでも特に質が悪い神格の一体だ。
その名を言うと目の前の男は笑い。

「ああ、そんな名前で呼ばれた事もあるね。話を本題に戻すね。君は神様のミスで死んでしまったんだ」
「まぁそりゃよくある話だよな」
「で、その神様はそのミスを最高神に知られる前に隠蔽しようとした」
「隠蔽!?」
「ああ。そうだ。しかもそれが僕が大っ嫌いな神様でね。奴を蹴落とすついでに君を生き返らせてやろうと言うわけさ。優しいね」
「俺はついでかよ……それにお前の娯楽に付き合わされるわけだろ……もうちょっと美人のチャンネーの神様とか居なかったのかよ……」
「まぁまぁそんなことを言うなよ。チート能力もつけてやるぜ?」
「例えば?」
「十二体の獣神の無詠唱召喚とか、僕達、クトゥルフ神話の神格の詠唱ありの召喚とか」
「前は知らんけど、後ろ滅茶苦茶強いじゃねぇか……ガチでチートだな」
「納得したかい?じゃあ詳しくは彼女に聞くと良い。いってらっしゃい♪」

すると竜太の足場が急に喪失し、暗黒この中に落下していく。

「てめぇふざけんじゃねぇーーーーーー!!」

落下していきながら、叫ぶ竜太の声を完全に無視し、ニャルラトホテプは笑いながら言う。

「さぁ君の物語を見せてくれ。その物語は平和か、殺戮か、無限に広がる物語を君が選び、君が作るんだ。ああ楽しみだなぁ」

這い寄る混沌の貌は喜悦に染まっていた。




Re: 転生者は邪神召喚士 ( No.3 )
日時: 2016/04/24 20:46
名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)

落ちている途中、意識を失った竜太は体全体に感じる硬質な感触で目を覚ました。

「ん……ここは」

目の前に広がっていたのはとても豪奢な部屋だった。
天井から吊り下がっているのは、竜太が一生見ることがなかったであろうシャンデリア。それがいくつも並び、部屋全体を照らしている。
そして竜太が座っている椅子はただの椅子などではなく、物語に出てくるような背凭れの異様に高い所謂、玉座というものに座っていた。

「お目覚めですか?転生者様」
「ああ。今、起きたところだけど……っ!?」

竜太が声の掛けられた方を見ると、そこには美少女がいた。
転生前の世界では、見られなかった美しさ。それは人間が作り出したものではここまでの美しさは生まれないだろう。そういう意味では彼女は神に作り出されたと言えるだろう。
銀髪はポニーテールで、サラサラと僅かな動きをするだけでたなびく。
金色の瞳は、常世の全てを見通せそうで、ほとんどの男を虜にするだろう。瞳孔は縦に割れ彼女が人間でないことを証明していた。
頭頂部にある彼女の髪と同じ色をした獣の耳——おそらく犬系の——がついており、巫女装束の隙間から出ている銀色の毛並みを持つ尻尾が、瞳孔よりも強く人間でないことを証明していた。
そして腰に差されている二振りの日本刀が異様な存在感を放っていた。

「どうされましたか。転生者様」
「いや……おま…君があまりに綺麗だったのと、腰の日本刀に目が行って」
「うふふ……お上手ですね。転生者様。素の貴方のまま接していただいても結構ですよ。それに刀に目が行くのは仕方ないかと。転生者様の世界ではこれは滅多に見られない物でしょうから」
「まぁそりゃねぇ……あとお前の耳と尻尾。偽物じゃないよな?人狼《ヴェアヴォルフ》?」
「ええ。その通りです。私の名前はフェリス・ヴィニトルと申します。気軽にフェリスとお呼びください」

目の前の美少女——フェリスは微笑む。尻尾はパタパタと嬉しそうに揺れ、彼女に気持ちの裏表がない事を表している。

「俺の名前は……あれこれって転生前の俺の名前で良いのかな。あのクソイカレ邪神のことだからなんか本名は不味い気がする。んじゃあ俺のことはシリュウとでも呼んでくれ」
「ではシリュウ様と。なにかこの世界について質問等がございましたら、今お答え致しますが。私が知っていること限定になりますが」

フェリスが何処から取り出したのか、眼鏡をはめる。教師モードという事なのだろうか。

「じゃあ……ここ、何処?」
「ここは原初の城と呼ばれるところです。といっても城の形はとっておらず地下に伸びる十階層構造になっているのですが。因みに今いる階層は十階層目の玉座の間というところです。階層には私のような守護者がおり、私を含め八人が階層を守っております。その他にも無数のモンスターや、住んでいる者はおりますがシリュウ様とほぼ互角の力を持つのは、その八人だけかと」
「じゃあ、フェリスを含め、守護者が裏切る可能性は?」
「自らの意思で裏切ることはまずありません。外的要因が働いた場合は別でしょうが」

じゃあ、外的要因が働いた場合は、裏切る可能性があるのか、と竜太——シリュウが考えていると。

「あっそうだ。フェリス」
「はい?何でしょうか?」
「たしかフェリスと同じようなのがあと七人いるって話だったよな?」
「ええ。そうですけど」
「その七人を中間の五階層目に全員呼んでくれる?話の続きはそこでしよう」
「了解しました。ところでシリュウ様。行き方、知ってるんですか?」
「全然知らねぇ……一緒にいこうぜ」

ええ。と笑うフェリスの横で、カッコつけるのはもうちょっと先にしようと思うシリュウであった。

Re: 転生者は邪神召喚士 ( No.4 )
日時: 2016/04/27 21:03
名前: 黒陽 (ID: .1oO/8Qg)

現在地は原初の城、第九階層。そこには原初の城の使用人たちや、シリュウの部屋がある。つまり居住区というようなフロアである。その他にもバーやダーツ、ビリヤード等の遊戯施設。食堂まで兼ね備えている。
その階層のシリュウの部屋では。

「むぅ……」

と、唸るシリュウの姿が。その理由は自らの容姿、服装だった。
身長は、転生前とほとんど変わらない170センチ中盤の身長。体重もほとんど変わった実感はない。しかし髪の長さが異様なほど変わっていた。腰ほどの長さのある黒髪。色は殆ど変わってはいないが長すぎる髪に、邪魔くさいと思わないでもない。そして転生前は当たり前のように白かった眼球は黒く変色し、瞳の色は日本男子ではありきたりの黒から海を思わせるような蒼色に。
格好は、ニャルラトホテプが着ていた純黒のフード付きローブ。右腕、左腕は包帯に覆われ、一切の露出がない。
そして、自室に戻ってきてから思ったのだが、魔法の杖的なものが自室にもなかった。
召喚士という立場ならば、必要ないのかもしれないが、先入観というか、己のプライド的なものがそれを許さなかったのだ。

「どうかされましたか?」

そう、語りかけてきたのは玉座の間からずっとついてきてくれているフェリスだ。

「いや、なんというか、俺って一応魔導士的な立場だろ?だから魔法の杖的なものがあるものかと……」
「ありますよ?」
「あるの!?」
「はい。右腕か左腕で、何かを探すように手を動かしてみてください」

フェリスはがさごそと、何かを探すように空中で腕を動かす。それをシリュウも真似をすると、ずぷりと湖面に腕を沈めたような感触があり、そこで腕を動かすと、なにかにぶつかった。それをシリュウが掴み、引きずり出すとそこには漆黒の装丁がされた一冊の本が握られていた。
その本の表紙には一切の絵が存在せず、金色の文字で題名が描かれていた。

Liber AL vel Legus

「《法のリベル・レギス》?」
「はい。それがシリュウ様の主武装である《法の書》です。その本には邪神を召喚させる祝詞が記載されおり、シリュウ様の思うがままに、剣にも縦にも姿を変える代物です。最後のページにはシリュウ様の事が記載されているようです」

シリュウはそれを興味深そうにペラペラと捲っていく。その中には数え切れないほどの邪神と交わる祝詞が記載されているのだろうが、それは今はどうとでも良い。後で読めば済むことだ。シリュウが見るべきはラストページ。自分のことについて書かれているところだ。
シリュウは、ニャルラトホテプから、自身の仲間のことも、強いては自分のことについて殆ど知らない。先ずは自分のことを知るのが重要である。
ラストページに記載されていたのは、フェリスが言っていた通り、自身の情報だ。名前は勿論、身長体重までこと細やかに。
しかし、彼の目を引いたのは、自身の種族名。そこには、

「異形種、邪神に見初められた人間……?これはギリギリ人間なのか?いや異形種って書かれてるからアウトだよなぁ……」

でも異形種なら簡単には死なないのがお約束のはずだ。シリュウは、よしと一息つくと、机にあった拳銃を自身のこめかみに当てると、一切の躊躇いなく引き金を引いた。
しかし、鮮血が舞う事はなく、銃弾が頭に当たる瞬間に、黒い障壁が展開され、銃弾を木っ端微塵に粉砕した。
痛みも、銃弾が与える衝撃すらも一切伝わらない。

「おお……」

と、シリュウは、感嘆の息を漏らす。

「それは《邪神の盾》と呼ばれる《加護》の一つですね。シリュウ様の強さで言えば大抵の攻撃が防げるはずですが」

問題は、その大抵が何処まで通用するかだよなぁとシリュウは、頭を悩ませる。拳銃は防げても、アサルトライフルの銃弾が防げませんじゃあ話にならない。それに物理的な攻撃は防げても魔法による攻撃が防げないというパターンもある。
フェリスが、「はず」と言っているため、何処まで耐えられるかは彼女にも曖昧なのだろう。
召喚士という職業柄故にこういう障壁系のものはありがたいが、あまり頼りにしない方が懸命だろう。
自身の力を過信しすぎて死にましたなんてダサすぎる。
それに、自身の強さも検証しなければならない。
召喚士を含め、魔法使いというのは近接戦闘が遠距離戦闘の強さに反比例するというのが、ライトノベルでのお約束だ。
とりあえずは、この原初の城の守護者に勝てるほどの力があれば、すぐに裏切られることもないだろう。

「フェリス、戦闘で幾つかの検証をしたい。出来れば、守護者と会う場所は闘技場的な場所にしたいんだけど」
「それには及びません。そう言われるかと思い、守護者の集合場所は予め、五階層目の闘技場にしてあります」

そうか、とシリュウが満足そうに頷くと、シリュウとフェリスは九階層目から五階層目へと転移をした。


Re: 転生者は邪神召喚士 ( No.5 )
日時: 2016/04/29 00:16
名前: 黒陽 (ID: wpgXKApi)

月光のような、優しい光に包まれて転移してきたのは、樹海の中に建てられた円形闘技場の中だった。
高さは100メートルを超え、その直径は150メートルに近い。ローマのコロッセオの様な雰囲気が樹海とよくマッチしている。

「風情があるねぇ……その転移の仕掛けはどうなってるんだ?」
「この首もとのチョーカーが転移の道具になっているんです。シリュウ様にも後程、プレゼントしますね」
「チョーカーは勘弁してほしいんだけど……」

フェリスは首もとのチョーカーを指さす。それは三日月のアクセサリーが付けられた黒のチョーカーだ。しかしそれは装飾品というよりは首輪に近く感じさせた。名札でもつけたら完全に犬の首輪になるだろう。まぁ彼女は人狼だし犬のようなものなのだろう。多分。

ここ原初の城、第五階層は樹海になっている。そこに渓谷や、川、山などがある自然豊かな階層だ。
ここでは、広大な畑や水田があり、自給自足も行えるようになっている。
その中には、林檎、蜜柑、葡萄などが育てられる果樹園のような物があり、それでバーの果実酒を作っている。その果実酒を作る酒蔵も兼ね備えている。
そんな原初の城の生命線といっても、過言ではない階層の主である二人の男女が歩いてきた。

女の方は、腰よりも長いエメラルド色の長髪を結ぶこともなく下ろしている。
髪と同色の玲瓏な瞳は底知れぬ叡知を感じさせる。
露出部分が殆どないドレス風の装束を着ている。自身の肩程の高さがある杖は、殴打用の武器ではなく、それこそ魔法の杖のようだった。
対して男の方は、女の初雪のような白い肌と比べ、浅黒い。ロングコートを着てはいるがその下には何も着ておらず、腹筋や胸板が丸出しになっている。灰色の髪はシリュウほどではないが肩の辺りまでは伸びており、それを軽く結んでいる。
瞳の色は髪と同じような灰色で、獲物を求めるような猛獣のようになにかに飢えているように感じさせる。背中に背負った狙撃銃はただの狙撃銃などではなく、異様な雰囲気を感じさせる。

「ようこそ、転生者殿。我らが守護階層へ。私の名はエイリス・フォン・アルーヴだ。よろしく頼む」
「ああ。歓迎ありがとう。俺の名前はシリュウだ。呼び捨てだろうが何だろうが俺は気にしない。好きに呼んでくれ」
「では、シリュウ殿。ここにいらしたのは何用か?」
「全階層守護者に……集合命令が来ていた。聞いて……なかったのか?」

エメラルドグリーンの髪を持つ美女ーーエイリスは微笑を浮かべているが、対照的に浅黒い肌の男性は、ぶっきらぼうというか、無愛想だ。

「ああ。そうだったな。すっかり忘れていた」
「全く……守護者としての自覚が、足らん。……ヴァーン・フォン・アルーヴだ」

浅黒い肌の男ーーヴァーンは、エイリスを冷たい眼差しで見つめたあと、手を差し出してくる。一瞬なんのことかとシリュウは思ったが、すぐに察し同じように手をだし、握手を交わす。
どうやら、無愛想ではあるが心根は良い様だ。

ごほんと、エイリスが空気を変えるように咳払いをするとシリュウに話しかける。

「ヴァーンは、私の弟なんだ。私が少し抜けているせいか無駄にしっかりしてきてな……」
「へぇ……姉弟だったのか」
「俺達のことなんか……どうでも良いだろう」

姓が一緒で、妙に親しかったから夫婦などではないかと思ったが姉弟だったのかと、シリュウが少しスッキリすると、ヴァーンがパチンと指を鳴らす。
すると、闘技場の土が盛り上がり、一体の人形を形作る。

「まだ、自分の能力を……使ったことが……ないんだろう。これを使え」
「ああ。悪いな」

シリュウが礼を言うと、自身の言葉に魔力を込める。





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