複雑・ファジー小説
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- 僕 が 彼 女 を 殺 し た
- 日時: 2016/08/08 17:23
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
はじめまして!セリと申します。
小説書くの下手なんで意味わかんないとかあると思いますが読んで頂けたら嬉しいです!
あとよろしければコメントお待ちしています
【 登場人物 】
・新田航平 ニッタ コウヘイ
物語の主人公。科学研究センターの研究員。
・橘 由岐 タチバナ ユキ
科学研究センターの研究員。ある日遺体が発見される。
・真島 凌 マジマ リョウ
航平や由岐の同僚。
・山岸飛鳥 ヤマギシ アスカ
航平、由岐、凌の後輩。由岐の事件を不審に思い・・・。
・久遠直登 クドウ ナオト
警視庁の刑事。由岐の殺人事件を追う。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.6 )
- 日時: 2016/08/23 21:31
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
罪悪感、とはこういう気持ちをいうのだろうか。
急に自分のしてしまったことが怖くなる。
だが不思議と後悔はしていない。
自分は異常なのかもしれないとさえ思うほどに、罪悪感がわからない。
ようやく人を殺したという実感が湧いたのかもしれない。
「そうですか。新田さんはもう、落ち着かれましたか」
久遠が言った。
「はい、なんとか。って言っても、まだ受け入れられてはいないですけどね」
新田は苦笑しながら言った。
精一杯辛いふりをしているつもりだ。
この演技が吉と出るか、凶と出るか。
そのあとも話はしばらく続いた。
だがすべての質問に対し冷静に答えた。
ミスはしていないはずだ。
諏訪も久遠も、きっとこの事件に関してそんなに深くは考えていないだろう。
理由としては、他愛もない世間話もたくさんされたからだ。
それが刑事の聞き方なのかも知れないが、話から由岐の事件の犯人が特定できる情報はほぼゼロに等しいのではないだろうか。
「そっか。橘の事件、はやく解決するといいな」
その日の夜、新田は飲み屋で同僚の真島に今日の話をした。
真島は新田の気持ちを察するかのような口調で言った。
「ああ。本当にな」
自分は恋人を殺された可哀想な男だ。
そう言い聞かせながら、新田はぼそっと呟いた。
真島は酒を一口飲んでから静かに言う。
「お前、橘のこと本当好きだったもんな。まさかこんなことになるなんて・・・・。航平もやりきれねえよな」
真島はそう言って俯く。
「まあな。そりゃ好きだったよ」
そう答えよう、そう思いながら言う。
「まあ由岐は、俺のことなんかどう思ってたかわかんねえけどな」
新田がそういい、真島は「お前な」と言ってから言葉を続けた。
「橘もお前のこと本当に好きだったんだぞ。いっつも口を開けば航平って言ってさ。航平と付き合う前から確かに優秀だったけど、付き合ってから余計に研究に没頭してた。恋の力だな」
真島はそう言って微笑んだ。
「どうだか。由岐は研究するのが好きだったんだよ。俺はその手伝いしてただけ。付き合ってるって言っても、全然それらしいことはなにもしてなかったし、ここ最近」
「キスも?」
「一年くらいしてないよ、きっと」
新田がそういうと、真島は驚いた表情で言った。
「嘘だろ!?」
「本当だよ。だからあいつはいつでも研究ばっかりだったんだってば」
「そうかなー、それでも俺と話すときはいっつもお前の話ばっかりだったけどな」
「それ、一緒に研究してる俺の話だろ?」
「いや、まあそれもあったけどさ」
「ほらな。由岐はそういうやつなんだよ」
新田はそう言って酒を飲んだ。
「なんだよ、そんなこと言って好きだったんだろ?」
真島が言った。
好きだった?
もちろんそうだ。
好きだから付き合ってた。
はずだ。
「そりゃそうだよ。お前それ何回聞くんだよ恥ずかしい」
新田はそう言って微笑む。
「だってー、俺はさ、航平と橘がうらやましかったんだよなー。あんなカップルになりてえなって思ってたんだぜ?いつも」
「どこがいいんだよ。お前だって最近まで彼女いただろ」
「違うんだよな、そういうことじゃないんだよ」
「どういうことだよ」
「好きなんだなって伝わってくるんだよ、お前らはさ」
だとすればきっと、真島には嘘が伝わっていたのだろう。
由岐は俺が好きなんじゃない。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.7 )
- 日時: 2016/08/29 00:39
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
「複雑なんだよ、俺らは」
新田はそう言って酒を飲んだ。
「なんだよ複雑って。俺もお前も見習いたいよ」
「だからいいことないって別に」
「いいよ、橘が美人ってだけで十分だろ」
「それは関係ないだろ」
微笑む新田に、真島は落胆の表情で言う。
「ごめん、こんなこと、不謹慎だったよな。橘が死んだってのに」
急に真面目な表情になる真島に、新田もつい表情を引き締める。
「いいよ。って、これも不謹慎だよな」
新田はそう言って苦笑した。
苦笑以外に、どんな表情を浮かべたらいいのかわからない。
「にしても亜里沙ちゃん、落ち込んでるだろうなあ」
真島が言った。
「ああ、わんわん泣いてたよ。由岐のこと、姉みたいに慕ってたもんな、あの子」
新田は事件翌日、由岐の遺体が発見された日のことを思い出す。
正直言って結城亜里沙のことは苦手だ。
由岐が生きているとき、亜里沙は由岐から話を聞いていたのか知らないが余計なことをべらべら話してきて腹が立ったのを覚えている。
それに、ああいう女の子というタイプはそもそも好きではない。
どう対応していいかわからない。
今思えば由岐と付き合う前に告白してきたこともあった。
だが断るとわんわん泣いた割に、翌日には違う男と付き合っていた。
その時点でまずないと思った。
新田的に彼女のことはただのビッチと認識している。
ただの偏見だが。
「感情表現豊かだもんな、亜里沙ちゃんは。ていうより、橘以外ちゃんとかまってくれる女なんかいなかったもんな」
真島が言う。
「確かにな。他の女たちには相当嫌われてるもんな。こりゃセンターをやめるのも時間の問題だな」
「けど橘が死んだって知ったとき、本当に悲しんでたな。橘は上辺じゃなかったんだろうな」
「由岐がいなくなったらつまんねーからだろ」
「それだけじゃないよ。橘親身になって亜里沙ちゃんの話聞いてたから。本当に悲しいんだよきっと」
由岐は、滅多に心を開かない彼女の心も開いていたというのか。
由岐がわからない。
付き合っていたのに、由岐の知らないことがたくさんある。
いいところも悪いところも、きっとまだまだ知らない由岐がいたのだろう。
俺が殺さなければ、の話だが。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.8 )
- 日時: 2016/08/30 16:14
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
* * * * * * * * * * * * *
その日、飛鳥は前日に体調を崩したせいか研究が遅れていた。
これは徹夜パターンか。
誰もいなくなった部屋で、飛鳥は一人背伸びをすると立ち上がり給湯室へ向かった。
マグカップにコーヒーの粉を入れると、やかんのお湯を注ぐ。
コーヒーを手に、自分のデスクへ。
デスクのライトだけになった部屋は薄暗く、飛鳥のデスクの周り以外はあまりよく見えない。
ついこないだまでは、隣のデスクのライトも光っていたのに。
橘由岐が殺害されてから今日で二週間になる。
彼女もまた、飛鳥と共によく徹夜したものだ。
そんな彼女の姿はもうない。
飛鳥は橘由岐のデスクを見つめ、コーヒーをデスクに置くと、橘由岐のデスクに置いてある資料を開いた。
数えきれないほど付箋が貼ってあるノートは、たくさんの情報と計算がびっしり書いてあった。
警察に持っていかれるのも時間の問題だ。
ノートを開いていくと、最後の2ページが空白だった。
彼女はこの2ページを使う前に殺された————。
今まで味わったことのないこの感情はどこへぶつければいいのか。
見当もつかない。
そのとき、研究室のドアが開いた。
飛鳥が入り口を見ると、入ってきたは同じ班の先輩である新田航平だった。
「おつかれさまです」
飛鳥はそう言ってノートをデスクに置いた。
「おつかれ。山岸、まだ残ってたんだ」
新田はそう言って飛鳥を見た。
「はい。今日は徹夜です」
「そりゃ大変だな。って俺もぼやぼやしてる時間はないんだけどね」
新田はそう言って微笑んだ。
「あれ、それって、由岐の」
新田は飛鳥のすぐ後ろの椅子に座り、デスクの上のノートを見た。
「はい。橘さん、熱心だったなあなんて」
「そっか。あいつ、山岸とも仲良かったもんな」
新田はそう言いノートをパラパラとみている。
「新田さんはもう大丈夫なんですか」
飛鳥がそういうと、新田は「なにが?」と答える。
「橘さんがあんな形で亡くなって、落ち着いているみたいなので」
「ああ、いつも通りにしてないと泣いちゃいそうで。なんて」
新田は苦笑した。
「すいません、変なこと言っちゃって」
「いいんだよ。それにつらいのは俺だけじゃないよ。山岸だってそうだろ」
「そりゃまあ。でも私の方こそ、こうしてないと平常心保てそうにないので」
「お互い同じだな」
「あの新田さん」
「ん?」
「犯人、誰だと思いますか」
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.9 )
- 日時: 2016/09/07 19:31
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
「え?」
つい聞き返してしまった。
動揺が悟られていないといいが。
「ああ、いえ。深い意味はないんです。ただ、気になって」
山岸は冷静に言った。
彼女が言うように、きっとこの質問に深い意味などない。
「さあ、俺にはさっぱり。山岸は?誰かとか、思ってるの?」
さらりと聞いてみた。
山岸にばれているとは考えにくいが返答が怖い。
「いえ。私も特には。それに、詳しくすべて知ってるわけじゃないですし。ただ————」
「ただ?」
冷や汗が出る。
「ただ、外部の人間じゃないみたいですし、今いる仲間の中に殺人犯がいると思うとゾッとするので」
ちょっとまて。
「や、山岸。なんで外部の人間じゃないってわかるんだ?まだわからないのに」
少し焦ってしまった。
なぜ彼女は外部の人間ではないと断定しているのだ。
警察はなにも言っていない。
それに、由岐を殺害後財布を盗んだ。
勿論、単純だが強盗に見せかけるためである。
彼女がそんなことを知っているわけがない。
山岸は当たり前のように答えた。
「なんでって。橘さんはこの研究室で殺されたんですよ」
「確かに研究室は社員証がないと入れないけど他の人間が社員証を盗んだかも知れないだろ」
「だとすれば、不審な人物が門のカメラに写らなきゃいけないですよね。けど警察の話によれば不審な人物は映っていない。それに、うちのセンター入るには最初にロビーを通るので社員証がない場合には警備員に名前と用件を伝えることになってますよね。でもあの日来客はなかった。社員証があるロッカーへはいけないし、どこかで社員証を奪われたとすれば、被害の声が出ているはずです」
山岸の話を聞き、背筋がゾッとした。
詰めが甘かった。
研究室で殺害したのが間違いだった。
幸い、研究室の監視カメラが壊れれていたことで助かっているようなものだ。
- Re: 僕 が 彼 女 を 殺 し た ( No.10 )
- 日時: 2016/09/18 17:33
- 名前: セリ (ID: cdCu00PP)
とにかく、山岸を誤魔化さなければいけない。
「あの日来客がなかったなんて、どうして山岸が知ってるんだ?」
あくまでも冷静に。
この問いに、山岸はいたって表情をかえずに答えた。
「あの日の来客を調べただけですけど」
「どうして山岸が?」
「気になったもので。何より、橘さんが殺されたなんて納得いかなくて。素人なりにできることはしようろ思ったんです」
「そんなこと、犯人が知ったら山岸も危ないんじゃないか?犯人はこのセンター内にいるってわかってるのに、そんな軽率な行動して大丈夫なのかよ」
頼むから余計なことはしないでくれ。
「それはそれでいいんじゃないでしょうか」
「どうして」
「犯人からわざわざ私に正体を見せにきてくれるなら本望です」
「そんな。由岐のために山岸まで犠牲になることはないだろ」
「橘さんを殺した犯人が知れるならそれでいです、私は」
山岸は大きな瞳でまっすぐに見つめてきた。
普段クールで何を考えているかわからない彼女が、こんなにも由岐を慕っていたとは正直思わなかった。
目の前に犯人がいるとは知らずに、山岸は無表情で新田を見ている。
彼女が真相にたどり着くのも時間の問題かもしれない。
だとすれば彼女をこのままにしておくわけにはいかない。
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