複雑・ファジー小説

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どんな君でも愛してみせる
日時: 2016/10/01 01:04
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)


近頃、変な噂が流れ始めた。
「夜中に光が」だとか「能力者だ」だとかとうとう頭のネジが狂った人が増えだした。

ーーーそう思っていた。

彼女、いや彼、に会うまでは。

そんな迷信、信じる方が可笑しかった。
初めは、自分でもよくわからなかったんだ。

これは、俺ともう1人の人間の話。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.5 )
日時: 2016/10/03 23:24
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)

彼女の顔は俺からすればタイプに近くて、彼女は可愛い顔をしてるからアイドルを見た一般人の反応になってしまう。付き合うとか以前に同じ人間で、同じ世界に生きているのか疑いたくなるような綺麗さを担っている。可愛いけど、可愛いと言葉が出て気分が上がるだけで、決して自分のものにしようとか、手を出そうとは思わない存在だ。
俺のタイプは、可愛いけど、もう少しキリッとしてる感じで美しいと思えるような感じの人だ。
だから、まだ少しホッとした。

夕飯の準備を始めようとソファーから離れると、彼女も立ち上がり俺の後を着いてくる。
何がしたいのか問うと、手伝いたいと言ってきた。

人が加わっての料理は初めてでノリ気では無かったが、泊めてもらう代わりと言われると拒否出来なかった。
二人で簡単にオムライスを作ると、テーブルに向かい合って席について食べる。ちょこちょこ少しずつ食べる彼女にさり気なく質問をしてみた。

「きみさ、名前は?」

「……あ」

「あ…?」

「…あんどう、なつき」

名前を問うと彼女は手を止めて目を泳がし、テーブルにあった雑誌へ目の止めると暫くして小さく声を出す。小さ過ぎて1度は聞けず、聞こえた単語の続きを促すと、俺の目を見て小さな口を動かした。

「あんどうなつき、どんな漢字だ?」

話題を広げようと問うと、雑誌の表紙に書かれている“安藤”を指差し「あんどうはこれ」と言い「なつは四季の“夏”きは希望の“希”」と続けた。
言い終わると「いい名前だな」と呟く俺を無視して食べ進めた。

「夏希って呼んでいいか」

そう問うと、彼女は俺を見てこくりと頷いた。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.6 )
日時: 2016/10/07 04:12
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)

食べ終えると、明日の朝は温かい食べ物にしようと考え、夏希の寝所は自分の寝室のベッドを貸そうと思案し、皿を洗う。
夏希はまだ半分も食べ終えておらず、何か考え事をしているようで、声もかけづらい。

「変な話をしても…いいですか?」

暫くの沈黙の後、夏希がこちらを見て言ってきた。丁度皿も洗い終えたので、テーブルを挟んだ向かい側に座ると聞く体制をとり、なんだと聞く。

「私、貴方に…一目惚れをしました」

「……え?」

「今日、会ったとき、カッコイイと思って……泊めてもらうのも許可してくれる優しい人だし」

突然の告白に素っ頓狂な声が出る。それも構わず、目の前の夏希は照れたように頬を赤らめ俯き持っているスプーンでオムライスを掬ったり皿に戻したりを繰り返し続ける。
だが、話を冷静に聞けば可笑しいとしか思えない。カッコイイというのは人の趣味思考に寄るが、泊めるのは彼女が追われているからという理由と、こんな可愛い、しかも女の子を野宿させるわけにもいかない(外で何かされるかもしれないから)。それで突き放す方が無法者だろう。

優しさとは違う事に夏希は気づいていないようで、それでも一目惚れだと言われて嬉しくないわけが無い。
なんとなく、気まずくなってしまった。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.7 )
日時: 2016/10/07 18:45
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)

「…私じゃ、だめですか?」

俺が黙っていることに不安を感じたのか夏希は涙目で首を傾げて聞いてくる。女のこういうところに弱いのは男だからか、俺の昔からの弱点だ。

「駄目ってか、急に何?夏希の気持ちは仕方ないのかもしれないけど、他の男にもそういうことしてるのかって普通は…考える、んじゃねぇかな?」

俺が気まずげに視線を逸らして頭を掻きながら淡々と述べていると、ふと夏希を見た時、泣いているのを見て一瞬言葉が止まる。続きは流れで話していたから変になったかもしれないけど気にしていられなかった。
夏希が何故泣いているのか分からないのと、自分はそんなに冷たい言葉を発していたのかと言う戸惑いで、固まる。

「……いや、悪い。そんな酷いこと言ってたなら、あやま」

「迷惑!…かけるかもしれません!……でも、貴方じゃないとっ…!」

「…………わかった」

俯いて泣いていた夏希が顔を上げて俺の言葉を塞ぐと、必死に伝えてくる。何故、そんなに必死になっているのか解らなくて…解らないのに、何故か口は動いて肯定の意を述べていた。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.8 )
日時: 2016/10/09 23:50
名前: ミキ (ID: j1BtfBJW)

ありがとうございます、と頭を何度も下げる夏希に、俺は条件を出した。そうでもしないと、いけない気がして…。

「付き合ってもいいけど、1つ条件を出してもいいかな?」

「何ですか?何でもいいですよ?」

これまで話が上手とは思えないたどたどしい口振りだったのが一変して、嬉しそうに笑みを浮かべながら首を傾げて聞いてくる夏希に先程の人物とはまるで別人だと思う。
だが、それは置いておいて、条件を言う。

「俺の質問には何でも応えること、だ。できるか?」

「…はい、大丈夫ですよ。わかりました!」

俺の質問に、顎に手を当て少し考えるような仕草をした後、頷きニコッと笑みを浮かべて了承してくれた。
俺と付き合うことが何故そんなに嬉しいのかは分からないが、こちらからも夏希のことを詳しく知れることだし気にしないことにした。

付き合うなんて、ただの遊びだ…ーーそう思っていたからだ。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.9 )
日時: 2016/10/15 11:01
名前: ミキ (ID: j1BtfBJW)

翌日、夏希は当たり前のように居座り続け、いつか出て行くだろうと放って置いた。

それから一週間後、黒ずくめにサングラスをかけたスーツの男達が訪ねてきた。夏希の写真を見せて彼女を探している、見かけていないかと聞いてきた。俺は「知らない」と答えた。

夏希は進んで外へ出ることは無く、外で何が欲しい、何かしたい、なんて言うことも無かった。だからこそ居ることに反対しなかった。反対した方が後に面倒になりそうだと思ったからだ。
夏希は俺に文句を言ってくることもなかった。気遣いだとは思うがそれは俺達の本来の関係を言葉にすると少し壁を感じた。
その壁を少しでも薄くしようと、俺は外であった今日の出来事等を夏希に話した。

夏希はニコニコ微笑みながら聞くだけだった。

そして、夏希と出会って、もうすぐ一ヶ月が過ぎようとしている。ここ最近、夏希は変な咳をするようになった。初めは風邪かと思い、気にしなかったが、元気な時にいきなり咳をしだして、それも腰を折って胸を抑え、苦しそうにするものだから気になって仕方がない。
病院に行こうと言うと必死に首を横に振り、身元がバレると追っ手に気づかれると拒んだ。

何故、追われているのか聞くと複雑だからと言われた。
夏希と話が噛み合わないことはここ一ヶ月ではよくあった。何か話を隠しているように飛ばして話すものだから解りづらく伝わりにくい。

先程も俺に隠れて咳をしていた。我慢の限界だ。だが今は夜。

明日、俺は夏希ともう一度話そうと、その時詳しく聞こうと決めた。


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