複雑・ファジー小説

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どんな君でも愛してみせる
日時: 2016/10/01 01:04
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)


近頃、変な噂が流れ始めた。
「夜中に光が」だとか「能力者だ」だとかとうとう頭のネジが狂った人が増えだした。

ーーーそう思っていた。

彼女、いや彼、に会うまでは。

そんな迷信、信じる方が可笑しかった。
初めは、自分でもよくわからなかったんだ。

これは、俺ともう1人の人間の話。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.1 )
日時: 2016/10/01 01:31
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)

近頃、昼夜限らず、寝ていたら眩しいぐらい白い光が当たってきて、次に目が覚めた時には変な能力を持ってしまったと騒いでいる者が現れだして、ここらで盛り上がっている。
目覚めるならどんな能力がいいかとか、そんな話で。
でも、そんな光を浴びてるのは億いる人間の指で数える程度で、本当にそんなの浴びてる奴がいるのかも知らない。単なる夢物語が本当の事のように流れてしまっただけなんだろう。

咥えていた煙草を地面に落とすと火を消す為に踏みつけてアスファルトに捩じ込む。コーヒーを買う為、視線の先にあった自販機に近づき、タイムロスをしたくない何時もの癖で入れる小銭を指で掴み準備しながら自販機に近づく。

ボタンが届く距離まで来れば小銭入れへ小銭を入れようと手を伸ばした瞬間、小銭を持っていた右手側から勢いよく人がぶつかってきた。
思いもよらない衝撃に小銭を落として、ぶつかってきた本人へ視線を向けながら注意しろと言葉をかける。

「おい!あぶねぇだろうが!」

「あ、ご…めんな、さい」

俯いていた人物は大きめの白シャツにジーパン、これまた大きめのフード付きの黒くて膝まで裾がある上着を着ている。俺より背が低くて目線を合わせようともせず軽く頭を下げるが申し訳なさそうに謝っているところを見て、人見知りかと俺は苛立ちが増す。

「謝る時は目を見て謝れ、クソガキ」

俺は元ヤンキーだから口は悪い。治す気も無い。目の前の人物に舌打ちをすると、目の前の人物の後方離れた所から大声を上げて人混みを掻き分けてこちらへ近付いてくる男達がいるのに目をやる。

「おいごら!待てや!おら!」

すると、目の前の人物は驚いたような焦ったような様子で顔を上げて振り返っては男達を見て俺の横を通って走って行った。
そんな一瞬の出来事。でも確かに横を通って走って行った人物の顔がハッキリ見えた瞬間だった。まだ幼げはあるが、綺麗に整った顔立ち。白い肌に長い睫毛丸い目。赤い唇、細い首。その下には性別を表す胸があった。

もうすぐ雪が降るかもしれない白い息が出るこの時期に、あの服装は寒さを感じさせた。
何故追われているのか分からないが、それでも、彼女に惹き付けられた。彼女を守らなければいけない気がした。

俺は男達より先にその場から彼女を追って走り出した。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.2 )
日時: 2016/10/01 12:34
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)

いくら相手の足が速くても脚の長さとスタミナ的には俺が勝っていて、追いつかないわけがなく、走る彼女に声をかけ、聞こえていない様だった為、彼女の左腕を掴んで引き、振り向かせる。

「おい!…おい!大丈夫か、お前、何で追われて…」

「…めて……やめ、て」

「は?何言ってる」

「やめて!放して!嫌!」

俯いている彼女になぜ追われているのか聞くと、ボソボソと喋る。何を言っているのか聞こうと顔を覗き込む次いでに耳を寄せると、大声で抗議を述べる。俺の掴んだ彼女の左腕を彼女が放してほしいと腕をブンブン振る。だが、ここで放したらまた逃げられてしまう。俺は小声で子供に言い聞かせるように目線を合わせて早口で下記を述べる。

「おい、大声出すな!何もしねぇよ!っ…!」

「…っあ…」

腕を振っていた彼女は俺の言葉を聞き入れず、それどころか、話している最中に、彼女の左腕を掴んだ俺の右手首まである服がいきなり発火したのだ。
驚いて息を詰めると、声を漏らした彼女の方に反射的に目がいった。彼女は驚いていたが、どこか悲しそうな後悔しているような表情でそれを見ていて、服が燃えたことにより肌に伝わる熱さに彼女から手を離し火を消すために今度は俺が腕を振る番だった。
なんとか火を消せた時には彼女の姿は何処にも見当たらなかった。
何が起こったのかは解らなかった。ライターでも持っていたのだろうか、そうだとしたら驚く必要がない。それにあの表情は、初めて見る人の反応では無かった。

空に向かって息を吐くと、自分の家へ帰るために、帰路へ歩いた。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.3 )
日時: 2016/10/02 13:46
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)

自宅へ着いてからも彼女と起こった出来事が頭から離れずボーッとしてしまう。もう一度会いたいと思ってしまう。叶うことのない願いをして、夕飯を作ろうと、リビングからキッチンへ行き、冷蔵庫を開けた時、玄関のインターホンが鳴った。

客人なんて滅多に来ないうえに俺は一人暮らしで、配達物を頼んだ覚えもないが、呼出音が2回目もあるものだから、冷蔵庫を閉めて玄関へ向かう。

「…はーい、どな…うおっ!」

玄関を開けた途端に変な黒い物体が俺を押しのけ部屋へ入ってきた。その場で体を固め入って来た物を顔だけ向けて見ると、それは人で、昼頃に見た女だった。女なのか少女なのかは疑わしいが、深くフードを被って、俯いている彼女にいつくか質問したかった。

「…お前、何でここ」

「泊まらせて」

「は?」

「追われてるの。1日でいいから…お願い」

未だに俯いたまま彼女は両手の拳を強く握り、歯を食いしばっている。弱々しい声に家から追い出す考えは皆無だった。

Re: どんな君でも愛してみせる ( No.4 )
日時: 2016/10/03 01:00
名前: ミキ (ID: W5vVCrjS)

話を詳しく聞こうと、玄関の扉を閉めて鍵をかければ彼女に靴を脱ぐよう言ってから、スリッパを用意してリビングへと一人で向かった。三人用のソファーに腰掛けると、静かにリビングの扉が開いて彼女が入って来る。
彼女にソファーへ座るよう促すと大人しく隣に座った。

「何で俺の家、知ってんだ?」

「手、大丈夫ですか」

「は?…あぁ、何とか軽い火傷で済んだ」

タイミングを見計らってした質問に彼女は返さず、自分から俺に質問してくる。1度は何のことかと思うが、彼女と会って、忘れられない出来事の一つである為にすぐ思い出し、平気だと告げると、安堵の溜息が彼女から漏れる。
俺から質問するより彼女の話を聞こうと、頬杖をついて彼女を見つめると、案の定声を発する。

「あの時は、ごめんなさい」

「いや、俺も悪かったからな」

「謝罪しなくちゃいけないと思って逃げた後、こっそり貴方のあとを追ってきました」

純粋な気持ちで悪気のない様子からして、本当のことなんだというのが伝わる。だが内心「それを世に言うストーカーと言うんじゃないかな」と呟く。

「あの、泊まっても…いいですか」

ここに来て2度目の質問に俺は頷いて肯定を告げると、ありがとうございますと被っていたフードを取って、顔を上げては律儀に頭を下げる。
顔を上げた時に見える顔にドキッと胸が高鳴るのは気のせいにした。


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