複雑・ファジー小説

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あの日の約束を
日時: 2017/02/26 16:57
名前: 堕天使 (ID: woIwgEBx)

堕天使です!第二作目がんばりますよぉ!!

この話は実際に体験したことを脚色したものです!
(登場する人、団体名は全てフィクションです)

それでは、楽しんでください!

Re: あの日の約束を ( No.2 )
日時: 2017/02/26 17:38
名前: 堕天使 (ID: woIwgEBx)

アニメみたいな唐突な出会いは本当にあるよ
確信してる。だって実際にあったからね

男の子は私に気付いたみたい。
じっと見つめてくる。
女の子みたいな華奢な体に肩まである髪。
ぱっちりした目に今にも吸い込まれそう。
「何?」
声も可愛い。まるで天使だ。
「聞いてるの?これだからガキは」
前言撤回。天使じゃない。
天使の皮を被った悪魔だ。
目付き悪いし、態度も悪い。
「ガキって君何歳?明らかに年下じゃん」
「15だけど」
嘘...まさかの年上。
「う...」
思わずだらしない声が漏れる。
「小さいの気にしてるんだからピンポイントでコンプレックス指摘しないでよ。おいで」
「え?」
「看護師さん来ちゃうから」
大人しく従う。
「名前は?」
こういう時って答えていいの?
まぁいいか.....
「山田桜」
「ふーん。僕は蜷川 圭(にながわ けい)。まぁ仲良くしてあげる」
何かと上から目線なのが気になるがそれは置いといて。
「何してるの?」
ずっと気になってたことを聞いてみた。
「今日は何月何日でしょうか?」
いきなりクイズ!?
「えと、7月2日」
「ピンポンピンポーン」
うわぁ凄い棒読み。
「で?」
「七夕でしょ?もうすぐ」
「うん」
「だから病気が早く治りますようにって」
「これ、短冊か」
ここまで書くんだ。じゃあ
「そんなに重い病気なのかな?」
思わず声に出た。私は知ってる。
病人がこれを言われて一番傷つくことを。
「ご、ごめん!」
「重いよ。とっても。手術なんだ。七夕の日に」
あ、気にしないんだ。
「これ、どのくらい書くの?」
「分からない。不安がなくなるまでかな?」
そうか。やっぱりこの人も怖いんだ。

その時私は俯く圭くんの横顔がとっても切なく見えた。

Re: あの日の約束を ( No.3 )
日時: 2017/02/26 20:17
名前: 堕天使 (ID: woIwgEBx)

圭くんの手術は、成功率30%なんだって...
でも手術をしないと絶対に『死ぬ』
30%に命をかけてる。それを知った私の目からは涙が流れていた...

「え?ど、どうしたんだい?えっと、えっと...」
慌ててキョロキョロする圭くん。普通に可愛いとこあるじゃん。
「ご、ごめんね...急に」
「なんで泣いたの?」
キョトンとする圭くん。
「何でだろう。よく分からない」
俯く圭くん。そして呟いた。
「30%にかけるの。夢を叶えるために」
「夢?」
「今行ってる学校は私立飯田橋南中学しりついいだはしみなみちゅうがくなんだけどね...?」
「えっ!?」
私が驚くのも無理はない。だって超一流学校だもん。
「それで一流高校に入学して、一流大学へ行ってノーベル賞をとるんだ」
「んと、頭良いってこと?」
「どうだろう。ただね、天才になりたいんだ」
「天才?」
真顔で凄いこと言い出す圭くん。
「僕はね、頭が良いだけが天才ではないと思う。最後まで諦めず、貫き通す人。それが天才だよ」
優しく微笑む圭くん。その笑顔はとても純粋で、美しかった。
その時、ドアが開いた。
「山田さん!?出歩いちゃいけないわよ!」
腕を引かれ連れていかれる。
圭くんは何か書いている。そしてその紙を見せてきた。
そこには、また来てねと書いてあった。

Re: あの日の約束を ( No.4 )
日時: 2017/02/26 20:25
名前: 堕天使 (ID: woIwgEBx)

翌日
圭くんの病室に行くとまた短冊にお願いを書いていた。
次の日も次の日も。
圭くんも私もお互いに心を開いていった。

7月7日。ついにこの日が来てしまった。
圭くんのベッドの横で、俯く圭くんの親。
手術の直前。圭くんは私に言った。
「絶対死なないって約束する。待ってて。桜」
圭くんは運ばれていった。
3時間後。医師が出てきた。

Re: あの日の約束を ( No.5 )
日時: 2017/02/27 16:00
名前: 堕天使 (ID: woIwgEBx)

「すみません。全力は尽くしたのですが...」
その一言で私は視界が真っ黒になっていった。


圭くんの両親が泣きわめく中、私は声も上げず泣いていた。
その時私の中をいろんな思いが巡っていた。


『圭くんがいなくなってしまった悲しみ』
『役立たずの医師へのいらだち』
そして、
『約束を守れなかった圭くんへの複雑な気持ち』

自分の病室に戻るとベッドの上で思いきり泣いた。
シーツがグシャグシャになったのも気付かずに...
「あの時、絶対死なないって...約束...したのに...」


神様は願いを全ては叶えてくれないんだ。
せっかくの七夕なのに...圭くんは


次の日、圭くんの病室に行ってみた。
何もない。あれほどあった短冊も。そして、圭くんも。
その時、後ろから声が掛かった。
「山田さん?」
圭くんの母親だった。
泣きすぎたのか、目は真っ赤で化粧がグシャグシャになっていた。
「はい」
力のない声で言う。
「これ、圭から。お手紙だって。あの子少し変わってたからね。友達がいなかったの。だから山田さんと会って凄く嬉しそうだった。それなのに...」
また、泣き出す圭くんの母親。
こういう時ってどうすればいいかな?
「ありがとうございます」
とりあえずそう言って手紙を受け取り、病室を出た。

手紙の内容はこうだった。

Re: あの日の約束を ( No.6 )
日時: 2017/02/27 16:12
名前: 堕天使 (ID: woIwgEBx)

『桜へ

君がこの手紙を読んでいる時は僕はもう死んじゃってるのかな。
僕は、天才にはなれなかったな。
僕はね、桜に言いたいことがある。
人は全員が凄いことができる訳じゃない。天才はごく僅か。
桜は天才になれるかな?なれなかったらなる手伝いをするといい。
花は美しい。でも土がなければ咲けないんだ。
だから天才にならなくても良い人になってね。
せっかく僕が手紙書いたんだから捨てないでよね。

                           圭より』

何かと上から目線なのが圭くんらしいな...
せっかく泣き止んだのにまた泣けてきちゃった。
圭くんは天才だよ。
だって、最後まで諦めず貫き通したでしょ?
圭くんが言うように私は土になるよ。
でも私が咲かせる花は圭くんが良かった。
夢が夢があるのに!なんで...いなくなっちゃったの...


初恋だったのかもしれない。
久しぶりに他人に興味を持った。





圭くんとの約束は守れなかった。
でも私は大切なことを教えてもらった。
ありがとう。圭くん。
そっちに行くのはまだ先だけど。
いつまでも友達だから。


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