複雑・ファジー小説

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平行世界がとんでもないことになってる件。
日時: 2017/03/09 18:48
名前: さくら花火 (ID: hxRY1n6u)  

少年は戦う。大切なものを守るために。

一人の高校生が平行世界で戦う、そんな話。異世界転生ではないけれど、それに近い。

初投稿です、どうかよろしくです。

Re: 平行世界がとんでもないことになってる件。 ( No.4 )
日時: 2017/03/10 23:59
名前: さくら花火 (ID: hxRY1n6u)  

「おい、起きろ、起きろったら!詩音〜っ!!」

「ん……ああ、夏。って、あれ?ここって同じ場所だよね?」

「うん、そうだけど。どうかした?」

「いや、なんか変な感じがしてさ」

言われてみれば、確かに少しおかしい気がする。パッと見大きな変化はないようだけど…。

「ねえ夏。なんか……変な匂いするんだけど。私の気のせいかな」

「匂い? ……確かにそうだね」

「絶対変よ、この公園。もしかして……これが平行世界ってやつ?」

まさか。  
そう口にしたかったが、上手く出てこなかった。それの可能性について僕も考えていたからだろう。

「とりあえず、歩こう。もしかしたら、何かわかるかもしれない」

「そうね。とりあえず、あっち、行ってみましょう」

そう言って、僕らは歩き出す。そして、遊歩道を抜けてちょっとした広場のような場所に出たとき、何かぬるりとしたものを踏んづけて思わず足を滑らせた。

「いったたた…詩音は大丈夫?」

「ええ、なんとか………きゃあああ!!」

悲鳴を聞き、思わず詩音を見上げると、詩音の顔は青白くなっており、僕の足元を見据えていた。双眼が揺らいでいる。どうかしたのだろうかと不思議に思いつつ視線を下に向けると、そこには、赤い液体が鮮やかな輝きを放っていた。間違いなく、生物の血だった。

「な…なんだよ、これ?」

「わ、わからない。けど、やっぱり、ここ、普通じゃ、ない……」

辺りを見回すと、人の死体が散乱していた。血はそれらから出たのだろう。

と、近くからガサゴソと音がした。

「おい!悲鳴が聞こえたぞ!!」

「こっちだ!」

「生き残りか!?」

「いや、全員殺したはずだが……おい見ろ、ガキだ!!!」

隣にいる詩音が肩を震わすのがわかった。間違いない、この声の主たちが人を殺したのだとわかった。
現れたのは、剣を構えた16人程の男だった。全員隊服の様なものにみを包んでいる。

「男と女一人ずつか。女のほう、なかなかかわいいじゃんか。捕まえようぜ」

「男の方も捕まえて戦力にするか」

詩音の顔が恐怖で溢れるのが感じとれた。少なくとも、あいつらは僕たちのことを捕まえようとしているらしい。だが僕たちは武器を持たず、相手は大勢で、なおかつ武器を所持している。どちらが有利かは言うまでもない。だが、勝機はある。

「詩音。転がっている剣で戦おう。それしかない」

怯えながらも、微かに頷くのがわかった。
怯えるのも当然だ。今から僕たちは敵と同じこと、すなわち人を殺そうとしているのだから。
自分たちが生きるためとはいえ、僕だってやりたくない。だが、仕方がないのだ。そう、こんなこと、詩音を守るためならやりとげて見せる。

そう自分に言い聞かせ、剣を拾う。バドミントンのラケットに比べやや重いが、使いこなせる重さだ。

「絶対、詩音のことは守るから。」

小声でささやき、敵陣に向かっていく。おそらく意外だったのだろう、先頭にいた男の表情が固まっている。

勢いにまかせ、剣を振り抜く。
ザクリという人体が切断される音が耳に届き、続いて男の叫びが聞こえてくる。そして生ぬるい液体が体につく感覚が僕を襲う。
人を殺すというのは、なんとも嫌な気分になるものだ。

この日初めて、僕は人を殺した。例え生きるためでも、決して許されない行為をしてしまったのだ。ああ、胸が苦しい。心臓が弾けそうだ。

だが、まだ残っている。これにより敵は臨戦態勢を整える。

男たちの一人が僕に向かってきて、上から斬りつける。それをなんとか押しとどめたものの、明らかにこちらが不利だ。何せ体格が違いすぎる。

思わず死を覚悟した、そのとき。

「突きぃっ!!」

ブスリと音をたて、剣が男の腹に突き刺さった。この声は間違いない、詩音のものだった。

「……夏!大丈夫!?」

崩れ落ちる男を見下ろしながら僕に問う詩音の声は震えていた。

「うん。ありがとう、助かった。」

これで残りは14人。なんとかなる、かもしれない。とにかく生き残らねばならない。

大切な人を、妹を、そして詩音を、守るためだ。なんだってしてやる。例えこの手が血で汚れようとも。

Re: 平行世界がとんでもないことになってる件。 ( No.5 )
日時: 2017/03/13 20:44
名前: さくら花火 (ID: hxRY1n6u)  

……なんて、カッコいいこと考えたって、状況は絶望的だ。子ども2人で大人、それも兵隊さんを14人倒す必要がある。正直、勝てる気がしない。
ほら、みんな殺気立ってるよ。

「うおおおおおお!」

猛々しく叫びながら、二人同時に襲いかかってくる。だが、冷静さを欠いているだけ、まだマシだと思う。
まず、前の一人が剣を掲げ、首を斬ろうと突撃してくる。
それをしゃがんでかわし、男の足を軽く蹴る。男は勢いのままに倒れ、背中に隙ができる。その背中に剣を突き刺す。
続くもう一人は、足を止めている。今の攻防を目にし冷静に周囲を見渡しているのか否か、判断はできない。
ボクが殺した男のベルトにかけられた鞘を手に取り、相手に突っ込む。突然のことに驚いたのだろう男は、一瞬動きが止まり、だがすぐに剣を構える。
金属がぶつかり合う、鈍い音がする。なんとか片手で受け止めたが、どっこいどっこい。鞘を放せばいいのだが、面倒である。
一度剣を引き、相手のバランスを崩す。そして、相手の首に鞘を叩き込んだ。意思を刈り取るのには充分な威力だろう。

「くっそこのガキども!速く殺っちまえ!!」

ガキならまだわかるが、複数系とはどういうことだ。まさかとは思うが、詩音も暴れている?


はい、そのまさかでした。自分で剣を取れだの言っておいて無責任だと思う人も当然いるだろう。だが、それでも彼女に恋する身としては心配なのだ。

どうやら俺が二人倒す間に、彼女は倍倒していたようだ。
彼女は返り血を浴び、所々が赤く染まっていた。血を浴びながら凛として剣を握る彼女は、ただただ美しかった。

だが、ボクの思考は一発の銃声で書き消された。思わず回りを見渡すが、ボクも詩音も無事だ。銃声が聞こえた方向を見ると、空中に緑色の煙が漂っていた。あれは信煙弾で、仲間を呼ぶつもりなのだろう。

「詩音!早く終わらせよう、増援が来る!!」

「ええ!わかっている!!」

ボクたちはほぼ同時に駆け出す。詩音は鮮やかな剣捌きで、一人、また一人と倒していく。

「ボクも、負けていられないな」

小声で囁き、鞘と剣を構えて突撃していく。これなら囲まれても、二人程度なら対処できるというものだ。

と、前後左右から四人が遅いかかってきた。一人の刀を剣で受け止め、鳩尾に蹴りを入れる。そのまま剣でぶすり。さらに別の男脳天を鞘で叩きつける。

前後の攻撃を避けるために右に動き、剣を振るう。一人の首をはね、もう一人には鞘をおみまいする。





気がつけば、立っているのはボクと詩音だけだった。
勝利を実感し、思わず脱力する。
だが、まずすべきことはこの場を離れること。そのことが頭から抜け落ちていた。

乾いた銃声が公園に響く。

ふと足に痛みを感じ視線を下げると、流血していた。銃撃されたのだと悟る。
油断は禁物、お陰でボクはもう動けない。足を撃たれたのだから当然だ。視線を上げて敵の姿を確認すると、ひぃ、ふぅ、みぃ、どうやら三十人近くはいるようだ。
詩音が臨戦体勢に入るのが分かった。だが、いくら詩音が剣道の天才といえども、三十人の兵士を、ましてや銃を持っている者もいるのに、一人の女子高校生が勝てるのだろうか。答えは明快、ノーだ。

そして再び、足音が聞こえた。今度は少数だが、それでも生まれるのは絶望のみ。

ボクは、死を覚悟した。

Re: 平行世界がとんでもないことになってる件。 ( No.6 )
日時: 2017/03/16 00:16
名前: さくらハナビ (ID: hxRY1n6u)  

 死を覚悟したボクが見たのは、二人の男女だった。
 女の方は自分達とほぼ同年代と同じと思われるが、剣を腰に刺している彼女は随分と大人びてみえる。いかにも女騎士といった感じでかなりの美人である。
 一方男の方は、二十歳くらいだろうか。こちらは武器を一切所持していない。筋肉質で物静かな雰囲気を放っている。
 この二人は共通の服を着ている。だが、敵の集団とはまた違う服だった。再び男女の方を見ると、女の方は静かな怒りを放っていた。腰の剣に手をかけ、今にも抜き出しそうな勢いである。対して男は、敵の集団を静かに見据えていた。

「あいつら、絶対に許さない!よくもハナを!!私が殺してやる!!」

「リン、落ち着け。戦場にいる以上、誰かを失うのは仕方がないということ。俺たちの為すべきことはこの国を守ることだろう。そのために敵を倒す。冷静になるんだ」

「なんにせよ、あいつら殺せばすむ話でしょ!!とっととハナの仇を討つのよ!!」

 言うなり彼女は剣を抜いた。刹那、彼女が駆け出した。敵は無防備で、集団の先頭にいた男の胸から鮮血が舞う。彼女の仕業だと理解するには少々の時間がかかった。

「おい、君たち。怪我はないか」

「え、あぁ、はい。とりあえず…」

「む、銃で撃たれたのか。あとで止血するから、少し離れたところに移動してくれ。ここは俺たちに任せてくれ」

「はい、わかりました。詩音、行こう」

「うん、わかった」

男の目付きが急に変わり、敵陣へとゆっくりと歩き出した。その姿は威風堂々していて、ボクが見ていても十分に恐怖を感じる姿であった。優秀な戦士は背中で語るというのは、本当のようだ。

「はは、こいつ素手だぜ!」

「野郎共、殺っちまいなぁ!!」

「うおおおああぁぁぁ!!」

 こいつら海賊か!?海賊だよね?野郎共って、普通兵士は言いませんからね?

 だが次の瞬間ボクたちは、彼の強さを思い知ることになる。
 まず一人の兵士が剣を抜いて襲いかかる。だが、男は歩みを止めず、平然と相手に向かっていった。敵が間近に迫る。兵士が剣を振り上げ、男を切り裂こうとする瞬間、男が動いた。兵士の腕を掴んで捻り、地面に叩きつけた。よく見ると兵士の腕はあらぬ方向に曲がっている。恐らくもう動けないだろう。そのまま男は歩みを進める。また一人、兵士が男に向かっていく。剣を横に一閃、男はそれをしゃがんで避け、立ち上がると同時に拳を鳩尾に叩き込んだ。兵士が血を吐き、思わず地に膝をつける。その隙を男は見逃さなかった。
 兵士の首を狙い、男の足が振るわれる。

ぼきり。不気味な音を立てて、兵士の頭はだらりとぶら下がる。



公園にいる者全てが恐怖に包まれた。否、女一人を除いては。

Re: 平行世界がとんでもないことになってる件。 ( No.7 )
日時: 2017/03/18 00:55
名前: さくら花火 (ID: hxRY1n6u)  

 恐らく味方であろう二人は、とんでもなく強かった。それはもう、冗談のように。ボクらはともかく、敵兵すらも弱く感じる。それほどまでに圧倒的だった。

「君たち、終わったわ…よ…って、なに、大丈夫?気を失いかけてるわよ…」

はい、二人揃って倒れています。だって真剣持つの初めてだし殺人とか初だし。怖い怖い怖い、平行世界怖い。

「リン、きっと血がショックだったのだろう」

「いや、今の日本は争いの時代よ。今更血液でぶっ倒れるとかあり得なないわよ」

「確かにそうだな。事情を聞いてみるか。」

「ちょいこら、起きなさーいあんたたち」

「ああ、わかりました。話すと長くなりますけど、それでも?」

「ああ、構わん」

と、いっても信じてくれませんよね流石に!別の世界から来たらそこには死体があって、そしたら兵隊さんが襲ってきて慌てて剣とって殺したら撃たれて……長いわ!!

「ーと言うわけなんです」

羨ましいよこの国語力。ちなみに詩音は国語の天才です国語はおーる満点なんです彼女。

「なるほど……平行世界、か。初めて耳にした。リン、お前はどうだ?」

「うーん、ないわね。とりあえず連れて帰りましょうよ。悪い子たちじゃないっぽいしさ」

「そのようだな。それに腕もたつようだしな」

うん、これ、兵隊さんコースですね。
まあ、自分の身は自分で守るっていう意味でもいいかな。それに、少し楽しそうでもある。あ、そういえば。

「すいません、ボクらと一緒にボクの妹もこの世界にいるハズなんですけど……」







あれ?詩音を除いた二人の間に奇妙な沈黙が……

「ジン、本部に連絡お願いして?」

「…ああ」

男はジン名をジンというらしい。ジンがスマホを取りだし耳に当てる。

どうやらスピーカーにしているらしい。相手の声が聞こえてくる。
スマホの向こうでは話し手が変わるところらしい。果たして、どんな声が聞こえるのだろうか。

『あ!お兄ちゃぁん?やっほー!!私よ、優美よ!大丈夫?私が恋しくない?そういやさ、詩音さんも一緒なんでしょ?早く会いたいなぁ!!ちゃちゃっとこっち来てよね!!それじゃあね!!!』

ぷつん。と、電話が切れる音がした。






再び訪れる沈黙。

「…ええと、ずいぶんと騒がしい妹さんなのね?」

「まさに嵐のようだな…」

とりあえず妹は無事なようで、なによりです……

Re: 平行世界がとんでもないことになってる件。 ( No.8 )
日時: 2017/03/18 00:58
名前: さくら花火 (ID: hxRY1n6u)  

……とゆーか、ジンさんリンさん、妹が本部とやらにいるって知ってたんですか……


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