複雑・ファジー小説
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- 右腕へ転生、背負うは大罪(5/22更新)
- 日時: 2017/05/22 19:53
- 名前: うたかた ◆wr23E0BYk6 (ID: memccPfd)
ある日、不幸な事故によって死んでしまった主人公である犀川 幸太(さいかわ こうた)。
ここまではよくある異世界転生のテンプレであった。
だが、転生先はなんと『右腕』。
テンパるところを一周回って落ち着いてしまった主人公は、あることに気付く。
もう一度死んでしまうことになると。
しかしそこで物語は終わらない。主人公は全く身に覚えのないスキルというものによりゴブリンとして蘇ることが出来る。
これによりどこか吹っ切れてしまった主人公は、何故か持ち越した前世の記憶や異能、そして謎のスキルを使い、異世界で生き抜くことを決意する。
だが、彼はまだ知らない。
彼が何故右腕に転生したのか、何者が異世界に呼び込んだのかを。
________________
初めましてうたかたと申すものです。
今回は、異世界転生の成り上がりものみたいなものを書いていきたいと思います。
これが初投稿なので、至らない点が数多くあると思いますが、温かい目で見守って頂けるか、ご指摘があると幸いです。
更新スペースは不定期ですが、週一度を心掛けていきたいと思います。
第1章
>>01、>>02、>>03、>>04、>>08、>>10、>>11
第2章
>>15、>>16、>>17
- Re: 強欲の右腕 ( No.1 )
- 日時: 2017/06/14 21:50
- 名前: うたかた ◆wr23E0BYk6 (ID: memccPfd)
突然だが、君は転生を信じるだろうか?
別に怪しい布教活動がしたい訳ではない。ただふと、思っただけだ。まぁ、この考えは宗教的なものだがな。
転生とは。。。って説明するまでもないよな。昔は異世界転生だとかそんな類いのものが流行っていた時期があったからどんなものか知っているはずだ。
そんなの知らないって人は、簡単に無双してハーレム作るもんだと思っておいてくれ。
俺も小さいときは憧れてたな。無双してみたりとか女の子からモテモテになったりとか男なら一度はやってみたいものであろう。
おっと話が逸れてしまったな。
結論から言うと、あるみたいだな。転生とやらは。
しっかし生憎俺には、俺ツエーとかハーレムとかは無理そうだ。
転生先がブサイクだとかチートスキルを貰い損ねたとかそういう次元の話じゃない。
じゃあなんだよって話になるが、あれなんだよ転生先が。
転生先が右腕なんだよ。
別に、寄生した獣って訳でもない。
この話が伝わる人がこの世界にいるといいなぁ。
■ □ ■ □ ■
こうなった経緯を簡単に書き出してみる。
俺の名前は、犀川 幸太。今年で24。軍人だった。
俺の居た世界には皆が異能【ギフト】を多少の優劣はあるが生まれ持っており、俺が持っていた異能は能力の解析というか使われたの仕組みを読み取ることが出来るものだった。
ただそれだけのことなのだが【能力簒奪】だとか【万物を奪う強欲】だとか中2な奴がいたな。どうでもいいか。
因みに、異能【ギフト】とは、魂由来のもので人類の新たな進化の形である
、とどこかのご高名な教授が言っていたが、あんまり覚えていない。
別に詳しい説明も要らんだろ。
そんな世界で夏季休暇で同期と遊んでいた最中。俺は死んでしまった。
原因は轢かれかけていた幼女を助けたはいいが、代わりに俺がトラックの下敷きなったからだ。
人としては格好いい死に様だし後悔はないが、もう少し生きていたかったと思う気持ちは正直なところある。
まぁ、身体が動いてしまったものは仕方ないよな。
幼女だったし。
本来なら俺の人生はここで閉じるはずだった。
で、気付いたら右腕になっていたのだ。うん、気付いたら、なのだ。
これ以上の説明も何もない。
こうして俺の人生(腕生?)が始まったのであった。
だが、これだけじゃ異世界に転生したと確信出来る根拠は無いし、そもそも自分の姿を見てるんだって話になるよな。
そこのところをゆっくり説明させて貰いたいのだが、今は少々時間が無い。
俺は意識を左上の方に集中させ、残り時間を確認する。
『【■■■■■の右腕】(呪、腐食)
HP 1/150(低下中、減少中)
MP 0/0(剥奪中)』
時間切れみたいだな。
そう思った瞬間、俺の命を示す値は0になる。
こうして俺の第2の腕生というものは、何をする訳でもなく、呆気なく閉じたのであった。
_______________
名〈(未決定)〉は死亡しました。
■■■■■の固有スキル〈■■蘇生〉により〈未決定〉は、蘇生します。
■■■■■の固有スキル〈■■■■〉により、今回の死因を考察。
。
。 。
。 。 。
結果が出ました。
腐食、呪い、エネルギー不足の三つです。
これにより〈未決定〉はスキル〈腐食耐性(Lv1)〉〈呪耐性(Lv1)〉〈省エネ〉を得ました。
スキル〈■■■■〉により〈(未決定)〉は。。。呪〈■■■■〉により阻害。
。
。 。
。 。 。
次の種族になることが出来ます。
【小鬼(ゴブリン)】、【ワーフォックス】、【カラス】、【人間(ヒューマン)】。
どれを選択しますか。
_______________
突如意識の中にそんなアナウンスが響いた。
どうやら俺の腕生は終わってはいなかったようだ。
しかしいきなりの選択ときたか。
ここでの選択を失敗すると、後々人生(になるのか分からんが)大きく支障を来すことが容易く想像出来る。
取り敢えず【カラス】はないな。
前世は人なのにいきなり鳥になるのはリスクがある。
【人間(ヒューマン)】は・・・、折角の異世界なんだからパス。
残すは【小鬼(ゴブリン)】、【ワーフォックス】だが・・・、ここは成り上がりの定番、ゴブリンにするか。
_______________
【小鬼(ゴブリン)】でよろしいでしょうか。
〈YES〉〈NO〉
※一度決定しますと、変更は出来ません。
_______________
俺は、二度目の問いに迷わず〈YES〉を選択する。
その途端、途轍もない睡魔に襲われ、意識が混濁する。
あぁ、目覚めたら夢であって欲しい。
- Re: 右腕へ転生、背負うは大罪 ( No.2 )
- 日時: 2017/06/14 21:48
- 名前: うたかた ◆wr23E0BYk6 (ID: memccPfd)
意識が覚醒する。
どうやら現実には戻れなかったようだ。
それは、今この俺の姿が物語っている。
明らかに人のものとは思えない緑色の肌。
平べったい顔に無理矢理付けたような曲がった鉤鼻、大きく裂けた口に鋭い牙。
湖畔には、おおよそゴブリンと呼べる姿が映っていた。
一応、自分で決めたことなので驚かなかった、というのは嘘になるが、ある程度は構えられていた。
しかしあれだな。この右腕じゃなぁ。。。
もう一度、湖畔を覗いても映る肩からかけての部位はゴブリンのそれではなく、線の細い少女のものであり、しかもそこには巻き憑くように黒い蛇の紋様が描かれていた。
特段違和感があるわけでもなく、思い通り動かせるのだが、これは目立つ。
何かで隠さないとな。
俺は最優先事項として心にそう書き留める。
が、それよりも先にやるべきことがあるだろうと腹が、ぐぅぅと抗議した。
やっぱ、この空腹を満たすことが最初にすべきことだな。
■ □ ■ □ ■
早くもこの身体になってから七日ほど過ぎた。
こないだし忘れた異世界だと言う説明とこの一週間のdieジェスト、もといダイジェストと行こうと思う。
まず、この世界が異世界だと確信したのは、ゴブリンになっている時点でもう説明しなくてもいいと思うのだが、右腕の時点では分かったのは意識を右上の辺りに集中させると浮かび上がる『ステータス』が理由だった。
勿論、俺のもと居た世界ではこんなもの確認出来なかった。
それに【■■■■■の右腕】の項目に更に意識を集中させると
_______________
【■■■■■の右腕】
■■■■■から切り離された右腕。ランク■。
通常、■■■種は一部が欠損したときその部位は灰となるが、《■■■■》により消失せず、残った。
また、《■■■■》により■■■■■■■■■■■■■■、自我を持っている。
_______________
と、なんとも伏せ字の多い説明をされた。
また、ゴブリンの説明だが
_______________
【ゴブリン】
一番多い鬼種であり最弱の鬼種。ランクF。
見た目は醜悪で、知能はあまり高くないがずる賢い。個の力はそれほど強くないが、群れを成すためその大きさによってランクが変動する。
【詳細を見ることも出来ます▼】
_______________
あとその間の出来事だが、
一日目。
気が付いたの日暮れ寸前だったし、無策では何も取れないと思い、取り敢えず寝床を探すことにした。
良さげな洞穴を見つけたので、途中で採った適当な草を食って死んだ。
二日目。
武器を作ることにした。打製石器を使った槍を作成。
昨日と同じ草をもう一度食べてみた。
今度は死ななかった。恐らくスキルのお陰。
三日目。
作った槍で角の生えた兎【ホーンラビット】を狩る。兎肉ウマウマでした。
味としては、さっぱりした鳥みたいだった。
四日目。
調子に乗って兎を狩りまくっていたところを灰色の熊【グレイベア】に後ろからザクリ。
以後周りに気を張るようにした。
五日目。
特にない。兎を適度に狩って大人しくしてた。
が、茸を食ってしまって死んだ。
六日目。
甲羅を背負った狸【コウラダヌキ】を見つける。
この甲羅が欲しいので住処まで引き摺って行き、どう剥ぐか兎肉を齧りながら悩んでた。
七日目。
狸を水責めにしてみた。
すこし暴れたが、しっかりと仕留められてたし、甲羅も剥げた。
テンションが上がってたら足を滑らし、川へどぼん。
流されたのは少しでよかったが、甲羅は見つからなかった。
と、たった七日間で四回も死んでいるが、無駄死にだった訳じゃない。
しっかりとした意味があった。
この死のおかげで、一日目にスキル〈麻痺耐性(Lv1)〉、〈山菜の見極め〉、四日目に〈物理耐性(Lv1)〉、〈気配察知〉、五日目に〈毒耐性(Lv1)〉、六日目に〈水遊〉、〈死地把握〉を得ることが出来た。
そして死因に直接関係ないことでもスキルを得られることが分かった。
例を出すと、四日目の死因。
それは熊の爪で刺されたり、殴られたりしたことだ。
これにより〈物理耐性〉を得られたのは納得だろう。
が、〈気配察知〉を得られた理由と繋がらない。憶測の域を出ないが、そもそも死んだ理由は奴の気配を感じ取れなかったことだ。
これを無くすために得られたと言えると思う。
つまり、こう言った予防となるスキルも得られることが分かった。
それにしてもまともな刃物が欲しい。
生前どんなに楽してたのか、ゴブリンになってから色々まざまざと実感出来た、植物もまともに切れず、兎ですら一撃じゃ仕留められないそんな石器はいい加減卒業したい。
何処かに武器落ちてないかなと思う、今日この頃。
八日目にして獣以外の生き物に会うことが出来た。
人間様です。
- Re: 右腕へ転生、背負うは大罪 ( No.3 )
- 日時: 2017/06/14 21:41
- 名前: うたかた ◆wr23E0BYk6 (ID: memccPfd)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
プロムーグ魔森林。
そこは非常に雄大な森林と豊かな資源が眠っている場所である。
それ故にいくつかの大国が狙っているが、その大きさと様々なモンスターや亜人が生息しているため現在、ここは地図上で空白であった。
平時、ここでは冒険者が多く見られる。
しかし最近、様々な国からの迫害などから逃げてきた亜人が村を作って暮らしていると実しやかに噂され、その所為で立ち入る者は少なくなっていた。
また、日も暮れ、魔物が活発になる時間であることも一因だろう。
そんな森の中を細身と小柄の男二人組とそれに引き摺られるように狐の尾と耳を生やした少女が歩いていた。
男達の格好は、中央に胸当てとグローブ、短剣という簡素な装備であるが、それだけでもこの森の浅いところでは十分であった。
一方、少女の方は薄く粗悪な布を一枚巻いただけのような恰好であり、防具と呼ぶ以前に服としての役割を果たしているかも怪しいものである。
「もうここらで良いだろう」
「そうだな」
細身は周りを見渡すと、誰もいないことを確認し、思い切り少女を蹴り飛ばした。
少女の腹部と強く打ち付けた腰に鈍痛が走る。一瞬顔を歪めたが涙を堪え、細身を睨んだ。
男達はそんなことは気にもせず、装備を全て解き、ひげた笑みを浮かべ少女に少しずつ近付いていく。
これから何が起こるかは、男達の顔といきり立った一物を見れば、全て分かるだろう。
少女はそれでも彼らを睨み続けた。しかし彼女の身体は小刻みに震えており、恐怖していることは目に見える。
その行為は男達を興奮させるスパイスになっていた。
我慢仕切れなくなったのか細身が少女に手を掛けようとした。
その瞬間!
ビュンと、後方から石が飛んで来てもう片方の小柄の頬に掠め、赤い一線を引く。
「ッ!」
思わず小柄が悲鳴を上げる。
それに驚いた細身が振り返ると、後方に奇妙な入れ墨を持つ小鬼が立っていた。
「んだよ。雑魚じゃねぇか」
小鬼は、恐れられているモンスターの一つだ。しかし、それは飽く迄群れたとき。
一匹では、ただの農夫でも勝てると言う弱さだ。
細身は、思わず吹いてしまった。
この構図は、まるで不良からお姫様を助けようとする勇者様の様ではないか。
しかし相手が悪い。
亜竜に駆け出し冒険者が挑むようなものではないか。
馬鹿な小鬼も居るもんだと考えながら、細身は詠唱を始める。
されど小鬼は何もしてこず、呆けたように細身を見ていた。
直に詠唱も終わり、男の手に火が灯る。
「《ファイアボール》!」
細身の手に灯る火球は、小鬼に向かい真っ直ぐとした軌道を描く。
小鬼はその球を寸での所で避けるが、しかしそれ以上のことはしない。
それが細身の神経を逆撫でしたのか、顔を真っ赤に染める。
「チッ!雑魚が避けてんじゃねぇよ!」
細身は、先程置いた短剣を拾い、小鬼の方に駆け寄る。
小鬼は何かを思い出したように持っていた【粗悪級】とすら呼べない槍をかまえる。
が、細身は構わず突っ込んだ。
大したダメージにならないだろうと踏んだんだろう。
それ故に、切っ先が細身の腕に掠る。普通なら気にも掛けない傷だ。
しかし細身は、バランスを崩し倒れこむ。
その顔は、先程とは対照に真っ青であった。
「お、おいっ!リト!?」
細身は、助けを呼ぶように吠えるが小柄の方も蹲り、口から泡を吹いていた。
細身は先程の少女のように震えて小鬼を睨むが、小鬼は何も反応もせず、細身が落とした短剣を徐に拾い上げる。
少しだけ重さを確かめるように2、3度振ると満足したのか持ち主に近付き、ザクリ。細身の首筋から血が噴水のように吹き出す。
同じように口から泡を吹いていた小柄の命も消された。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はぁ...」
思わず、俺の口から安堵の溜息が漏れる。
一度落ち着きたいところだが、狐娘のケアを優先しないとな。
「大丈夫だ。もう心配ないからな」
俺は、彼女に優しく微笑み、猿轡や縄などの諸々の拘束具を取ろうと近付いた。
が、彼女はさっきよりより激しく暴れ、目尻に浮かべ、瞳は恐怖に染まっている。
これってまさか、
そんな俺の考えを肯定するように
「ーん!ん、ん!」と叫び声を上げる。
そして何かを念じるように瞳を閉じると、周りに冷気を放つ青い炎が浮かび上がる。
言葉が通じないんじゃ...。
そう思った瞬間。
俺の身体は、極寒に包まれた。