複雑・ファジー小説
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- 君は太陽。
- 日時: 2017/05/15 20:47
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: WVWOtXoZ)
君とふたり、孤独をさ迷う。
目を閉じると暗闇がやってきて
僕はまた、眠りにつく。
いつもいつも、いつだって、僕を夢から引きずり出すのは
君だったんだ
- Re: 君は太陽。 ( No.4 )
- 日時: 2017/04/30 13:32
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: ngsPdkiD)
#朝
「太陽は、いつだって私たちに朝を教えてくれるわね」
煙草を咥えながら、彼女が呟いた。真っ白な壁にかかっている木でできた時計は、まだ6時にもなっていない。また、迷惑な時間に起こしてくれたものだ。
重い瞼と腰を持ち上げ、カーテンを開く。仄白い太陽が、僕を照らし出した。
誰にだって平等に訪れるのだ、朝は。静かにそこにある太陽は、僕の邪魔をしたりなんかしない。
ただそこに在るだけの存在。無くなる、だなんて、誰も考えないのだろう。有ることが全てで、在ることが当然だった。
「太陽は、ひとりぽっちだわ」
まるで……みたい。
ぽたり、と彼女の真っ白な膝に、何かがこぼれ落ちた。それは遠い昔に見た雨、という生き物でないものに似ていて、それが大地に降り注ぐと海になるのだ、と誰かにきいたことを思い出した。温かい声は、いまはもう記憶の向こう側に。
「なくなっちゃったら困るのに、みんな見ようともしないじゃない。いま、何の変哲もない今日という日に、この朝日をただただ見ているのはきっと、君だけよ。お正月でもないんだしさ」
そうかもね。だからといって、太陽は僕たちに特別何かを与えてくれるわけでもないのだから、多分、それでいいのだろう。
「おはよう」
……おはよう。
久しぶりの、ちゃんとした朝の挨拶をして、僕は彼女から目を逸らし、また太陽を見る。
大丈夫。僕は君と違って、1人なんかじゃ、ない。
- Re: 君は太陽。 ( No.5 )
- 日時: 2017/05/02 19:18
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
#煙草
煙草を吸っている彼女は魅力的だ。
小さい頃から父が側でよく煙草を吸っていたので、煙草の煙はそこまで苦手じゃない。だから、彼女が吐き出す白い煙の臭いは嫌いじゃなかった。
彼女が煙草を吸っているとき、僕は決まって彼女の横顔がみえる位置に移動する。彼女は綺麗な顔立ちをしている。すっと通った鼻筋も、薄い唇も、とても魅力的だった。
「何?」
いや、綺麗だなって。
突然こちらに目を向けてきた彼女に、正直に返す。
「そうね、煙草の煙って綺麗よね。冬の白い吐息に似ているわ」
そう言って、また彼女は白い吐息を窓に吐き出す。
「……ん? どうしたの?」
……何でもないよ。
「あっそう」
僕はしばらく呆然としていたけれど、それからまた彼女は煙草の方に意識を集中してしまった。
違うのになぁ。僕は1人、透明なため息をついた。
- Re: 君は太陽。 ( No.6 )
- 日時: 2017/05/04 20:37
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
#雨
屋根を叩く雨の音で目が覚めた。僕はベットからもそもそと抜け出し、白いカーテンを脇に退けて、窓を確認する。雷こそ鳴ってはいなかったけれど、ものすごい雨だった。
「雨は憂鬱ね」
彼女がぽつりと呟く。後ろを振り返ると、真っ白な煙に包まれた彼女の姿が見えた。白い肌と、白いキャミソール。そんな薄着で、風邪をひいてしまわないのだろうか。
「ご心配なく。これでも頑丈にできているの」
そう言って煙を吐き出す華奢な彼女に説得力はもちろん無く、僕はベッドから毛布を取り出し、彼女の肩にかけてやった。びくり、と細い肩が一瞬震えたけれど、彼女は大人しく毛布に丸まった。きっと、寒かったのだろう。彼女は天邪鬼だ。
雨は綺麗だ。雨自体はとても綺麗なのだ。空から降ってくる、天からの清き水。神様が、悪いものを洗い流すために、定期的に雲から落とす。
その対象が、今は人間じゃなくてよかったな、と心の底から思う。雨は時に人間を洗い流す。神様が人間を見限ったその瞬間、雨は容赦なく僕らを裏切るだろう。雨は今はただ、汚れを払ってくれるだけだ。
心の傷も、癒してくれるだろう。雨という時間は、晴れている間に比べればずっと短いのに、とても長く感じられる。雨は長い。まだまだ止みそうにないな、と思った。
- Re: 君は太陽。 ( No.7 )
- 日時: 2017/05/14 18:22
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
*
ある夜、目が醒めると、煙草の臭いが消えていた。いつも僕の意識を乱す煙の臭いが、全く無かったのだ。
飛び起きて、机を見ると、そこにはいつものように日記帳があり、次いでカーテンを開勢いよく開くと、そこには月がいた。オレンジがかった、少し不気味な月だったけれど、月はしっかりとそこにいた。
いないのは彼女だけだった。
いつもの夜。僕は珍しく、太陽の出ている間に起きなかった。起こしてくれる人がいなかったからだ。そう、彼女だ。彼女がいない。
僕は部屋の中を歩き回り、隅から隅を、一生懸命に探した。
どうせ隠れているんだろ。君がそういう性格なのは知ってる。さあ、出ておいで。今なら怒らないからさ!
結局、机の下にも、天井の下にも、あの月の中にも、僕の隣にも。彼女はいなかった。
彼女がいない。彼女はいない。そう、確信してしまったとき、僕はその場に崩れ落ちた。
いつもいつも、僕を夜以外に起こす、はた迷惑な奴、とばかり思っていた。煙草は嫌いではなかったけれど、やっぱり肺は苦しい。僕は、「彼女の吸う煙草」が好きだった。
『ねぇ、煙草、吸う?』
彼女の声が聞こえる。僕の頭の中の、彼女。
嗚呼、そうか。僕は、彼女がいなくなるなんてこと、考えちゃいなかった。
いつもいつも、彼女がいることが、当たり前だと思っていた。
この狭い狭い、2人っきりの世界がずっと続くと、信じきっていたのだ。
「……馬鹿だなぁ」
掠れた声が出る。声を出すのは久しぶりだった。そして、これが最後だと、僕は知っていた。
どこからか、電子音がきこえてくる。僕の隣には依然として誰もおらず、それは冷たい響きを伴って、僕に迫ってくる。
ばいばい、世界。
その言葉は音にならず、僕はそのまま、静かに目を閉じた。
- atogakki? ( No.8 )
- 日時: 2017/05/14 18:28
- 名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY (ID: hd6VT0IS)
こんばんは。亜咲 りん改、小夜 鳴子です。
今回、なんとなーく始めてみた超ss(?)ですけれども、なんとなーく終わらせてみました。わはは。
ストレスが溜まったときや、思考を整理するために、この世界観は丁度よいものです。だからこそ、終わりがなくって、ものすごーく困りました。なので、今回手っ取り早く終わらせてみました。あはは。
解釈は簡単だと思いますし、私自身、細かく設定を決めていたわけではないので、「何だよこれ意味わかんねぇ」で大丈夫です。世界に酔いしれてください(は?)。
よい文章の練習になりました。お世話様でした。
小夜 鳴子
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