複雑・ファジー小説

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陰陽Master☆〜神々の眠る地で。
日時: 2017/06/20 11:07
名前: 長月★ (ID: RnkmdEze)

彼女と出会ったのは高校に入学して直ぐの昼休みの事だった。
性格が内向的な事もあったし、まだ一週間という事もありこれといって親しい友人が居るはずもなく、中学時代同様に昼休み時間は図書室で時間を潰すそうと思っていたのである。
図書室に入るなり
一人の女子生徒の姿が目に飛び込んでくる
彼女は透き通るような雰囲気を持ち
顔立ちは端整で女の子としては長身で思わずドキリとするくらいの容姿に、整ったプロポーション、アイドルといわれても良いくらいの美少女である。
乱れの一切ないその制服のリボンの朱色が最上級生である三年である事を示している。
話かけようにも今までまともに女子と会話をした事がない為にどうやって話かけようか悩み
結局図書室に通い始めて三日目経過しても挨拶すら交わせずにいる
ただ彼女が読んでいる本が何であるのか遠目に確認した事だけが進展したと言えば進展した事なのだろうか・・・・。

「土御門家文書(つちみかどけもんじょ)」
彼女が愛読している書物の背表紙にはそれだけ簡潔に記されているのみである。

『 土御門家文書?何だろうそれ?公家さんの家の記録・・かな?ずいぶん変わったものを読んでるんだなぁ・・・・・。』

本日も彼女が読書をしている所を自身も読書をするフリをしながら横目で眺めていた。
ある種の憧れを持ちながらも声さえかける事のできない日々から、まさかあんな事に巻き込まれるなんてこの時の僕には予想すら出来なかった。

この話は「僕」の終わりと「彼女達」との始まりの物語。




*駄文につき閲覧注意・またこの作品は以前掲載していたものを一部再編再構築したものです。
荒らし行為等もご遠慮下さい。






















陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.4 )
日時: 2017/06/23 18:48
名前: 長月★ (ID: XyK12djH)

〔肆〕

一瞬自らの身に
何が起きたのか理解できなかった。
気が付くと唇に何か柔らかくて温かいものが触れている。

温かい息が頬にあたり
すぐ目の前には憧れだった女の子の美しい顔があった。
僕は
上手く状況が飲み込めずされるがままの状態となってしまっている。

『あれっ?どうして僕は生きているんだろう?確かさっき刃物のような物で刺されたハズなのに・・・・・』

自らの身体を見渡す
すると学生服の胸の辺りには大量の出血を物語る血痕の痕がやはり残されていた。

『僕はどうして・・・・・』

考えを巡らせるうちにだんだと意識が薄らいでいく。
側に居た少女は
「巻き込んでしまってごめんなさい。」

と弱々しい謝罪の言葉だけを残して彼女の足音は次第に遠ざかっていった。

Re: 陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.5 )
日時: 2017/06/24 21:45
名前: 長月★ (ID: RVrqr3ZE)

〈伍〉

「天地玄妙神變加持(てんちげんみょうしんぺんかぢ) 善星皆来悪星退散(ぜんせいかいらいあくせいたいさん)」
灯明のみの薄明かりの中
祝詞を奏上する声だけが辺りに響いている。

「只今戻りました。」

祝詞が終わり、神職らしい人物が祭壇へと拝礼を済ませると同時に静かに障子が開けられ、巫女装束を身に纏った少女が姿を現す。

「えらく、手間取ったみたいですねぇ、沙夜華さんそれに大事なモノを失ってしまっているご様子ですし、これからのお勤めに支障がなければよろしいのですがねぇ。」

「はぃ……申し訳ありませんお兄様、私が至らないばっかりにご心配をお掛けしてしまって……。」

「おゃ?勘違いをさせてしまった様ですね、アナタの心配なんてしたことはありませんよ。大事な式を失った様ですし、明日からのお勤めにアナタは不要ですから、普通の高校生らしく勉強でもしておくように!宜しいですか?沙夜華さん。」

頭を下げている沙夜華に対していいたいことだけを言って沙夜華の異母兄弟である兄の西洞院崇行(にしのとういん たかゆき)は屋式内に設けられた祭場から自らの部屋へと下がって行ってしまった。

陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.6 )
日時: 2017/06/28 17:30
名前: 長月★ (ID: Z38myt1b)

〔陸〕

「もう1日分のノルマは達成した筈だと思いましたが?違いましたか?」

「なんじゃ?機嫌でも悪いのかぁ、さては可愛い妹と喧嘩でもしよったか?」

「喧嘩なんてしていませんよ、そんな事よりさっさとこの部屋から出て行って貰えませんか?」

崇行は自室のベッドを占拠しているモノへと言葉を投げ掛ける。

「嫌じゃ!まだ貰いたりんのじゃ!」

即答!
ベッドを占拠しているほぼ半裸状態といっても過言ではないモノは断固として崇行の進めに応じようとはせず
バタバタと幼稚園児の様に足をベッドの上でばたつかせるという稚拙な抗議活動を開始している。

「とりあえず、服を着てくれませんか?」

下着姿に白衣を羽織っただけの姿である為にバタバタと足を動かす度にチラチラと下着が見え隠れしてしまっている為に崇行は自ら掌で目を覆いながら話かけている。

「なんじゃ?妾のこの姿が不服なのか?嬉しくはないのか?こんな美女の身体を拝めるというのに。」

「アナタが綺麗なのは認めますが、抑アナタは人間ではありません・・・それに残念ながらアナタは現在美女と言うより少女と表現した方が妥当な姿ですしね、私は幼児体型には興味がありません・・・」

そこまで言うと同時に分厚い辞書が眼前に迫ってきた為にひょいっと回避しようと右に避けようとしたのだが、身体が金縛りにでもあったように急に動かなくなってしまった為にモロに直撃を受けてしまった。

「痛いっ、天剛(てんごう)!いい加減にしてもらえますか!怒りますよ。」

「ほぉ〜小僧に何か出来る事があるのかのぅ、男であるにも関わらず当主の座にすら就けぬお前が妾に何ができるのかのぅ。」

「こうするんですよ!天 地 玄 妙 神 変乃 加 持 力 急々如律令!」

素早く呪を唱えるや、式神である天剛に向かい九字を切る。
目映い煌めきと共に格子状の閃光が天剛を襲う。

「無駄じゃ。」

天剛は自らに向かう閃光を避けようとさえせずにその色の白い華奢な右腕だけを前に出すだけで崇行の攻撃を無力化してしまったのである。

「こんなものは攻撃の内に入らぬは、基礎からやり直しじゃのぅ、崇行、じゃが興が冷めたから今日はもう妾は下がるとしょうかのぅ、じゃあな崇行。」 

軽々と攻撃を無力化してみせた式神天剛は、その言葉だけを残し忽然と目の前から消え失せてしまった。

陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.7 )
日時: 2017/06/30 22:18
名前: 長月★ (ID: lU2b9h8R)

〈漆〉

次に意識が覚醒した時には何故か
自宅のベッドの上であった。

『あれっ?確か学校に居て、それから・・・・』

昨夜の事を確認するために自身の体を確認するも刺されたと思われた傷口はなく正常なままの体である。

『もしかして夢だったのかな?』

変な夢を見たのだろうと納得するも
声さえかけられない憧れの先輩との口づけの感触がリアル残る自らの唇に触れる
意外にいい夢だったな等と考えながらも何時も通りに身支度を整える
昨日どのように帰宅したのか曖昧だったが母親に確認すると
普通に帰って来たわよとの事
矢張りあれは夢だったのかと再確認し何時も通りに学校へ向かう。

私立榊学院高校
京都市北区に位置するこの学院は京都府内でも歴史のある有数の進学校である
古くは明治時代後期に神職を養成する為の機関として開校、現在は普通科を主とする一般の高校となっている。
前身が神職養成機関であった事もあり広大な敷地内には鎮守社として稲荷神を祀る社が存在し近隣の神職が時折祭りを行っており、学校行事の一環として生徒も参列する事となっており、有る意味では特殊な学院といえなくもない。

「思うこと みなつきぬとて 麻の葉を きりにきりても 祓ひつるかな」

6月30日ということもあってか朱塗りの鳥居の前に設けられた、大きな茅の輪の前にて若い神職らしい人物が神事の為の練習をしており、菅抜け神事の際の御神歌を高らかに奏上している。

「水無月のなごしのはらひ するひとは 千歳のいのち のぶるといふなり」

陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.8 )
日時: 2017/07/04 23:24
名前: 長月★ (ID: lU2b9h8R)

〔八〕

「橘君、修礼(しゅらい)はいいから祭場の補設を手伝って!」 

声を掛けられた橘という名前の若い神職は自ら作業を中断させると本殿の方へと小走りで消えていく。

「おはよう水森君、茅の輪がどうかしたのかなっ?」

神職が走り去り、茅の輪に近づいてまじまじと見ていた私に声を掛けてきたのは、校医の篁友妃(たかむら ゆうひ)先生であった。
篁先生は何時もの白衣姿ではなく、何故か白衣に濃紺の袴姿である。

「おはようございます。篁先生、まず先に先生のその格好は?どういった意味があるんでしょうか?・・・まさか・・・コスプレですか。」

「コスプレじゃないわよ、水森君は知らなかったんだっけ?この神社、私の実家なの、コスプレなら緋袴にしてるかなぁ〜、1度も身につけたこともないしね。」

自分の姿を見回しながらも篁先生は少し照れたよな仕草をみせた。

篁先生のその整った顔立ちは優しさを帯びていて、しなやかで美しい肢体は大人の女性の魅力を惜し気もなく溢れさせており、学院内でも一二を争う美女として男子生徒はもとより教諭に至るまで評判はすこぶる良いようである。

しかも、今は白衣袴姿の薄着であるため、何時も以上にその立派な胸部が存在感を主張している為に直視し難い状況となっている。

「どうかしたの?水森君、落ち着きがないようだけれど?」

「いっ・・いぇ、なんでもないですよ、大丈夫です。それではこれで失礼します。」

まさか胸を見ないようにしていたなんて恥ずかしくて説明しにくかった為にしどろもどろになりながらも、学院へと踵をかえして立ち去ろうとすると

「ちょっと待って水森君、悪いけど少し手伝ってもらえないかなっ?」

「えっ?」

「これを運ぶのを手伝ってほしいの?駄目かなっ?」

篁先生が指差した方には長い白木のテーブルの様なものが数台置かれていた。

「あれを先生1人で運ぶつもりだったんですか?」

「他の人がやるはずだったんだけど、暇なのが私しか居なくて、それで・・・手伝ってもらえる?」

「良いですよ、女性だけでは大変ですよね、非力ですがお手伝いさせていただきます。」

腕力に自身があるわけなではないが、女性1人に力仕事をさせるのも悪いと思い先生の要請を受ける事となった。


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