複雑・ファジー小説
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- 陰陽Master☆〜神々の眠る地で。
- 日時: 2017/06/20 11:07
- 名前: 長月★ (ID: RnkmdEze)
彼女と出会ったのは高校に入学して直ぐの昼休みの事だった。
性格が内向的な事もあったし、まだ一週間という事もありこれといって親しい友人が居るはずもなく、中学時代同様に昼休み時間は図書室で時間を潰すそうと思っていたのである。
図書室に入るなり
一人の女子生徒の姿が目に飛び込んでくる
彼女は透き通るような雰囲気を持ち
顔立ちは端整で女の子としては長身で思わずドキリとするくらいの容姿に、整ったプロポーション、アイドルといわれても良いくらいの美少女である。
乱れの一切ないその制服のリボンの朱色が最上級生である三年である事を示している。
話かけようにも今までまともに女子と会話をした事がない為にどうやって話かけようか悩み
結局図書室に通い始めて三日目経過しても挨拶すら交わせずにいる
ただ彼女が読んでいる本が何であるのか遠目に確認した事だけが進展したと言えば進展した事なのだろうか・・・・。
「土御門家文書(つちみかどけもんじょ)」
彼女が愛読している書物の背表紙にはそれだけ簡潔に記されているのみである。
『 土御門家文書?何だろうそれ?公家さんの家の記録・・かな?ずいぶん変わったものを読んでるんだなぁ・・・・・。』
本日も彼女が読書をしている所を自身も読書をするフリをしながら横目で眺めていた。
ある種の憧れを持ちながらも声さえかける事のできない日々から、まさかあんな事に巻き込まれるなんてこの時の僕には予想すら出来なかった。
この話は「僕」の終わりと「彼女達」との始まりの物語。
*駄文につき閲覧注意・またこの作品は以前掲載していたものを一部再編再構築したものです。
荒らし行為等もご遠慮下さい。
- 陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.1 )
- 日時: 2017/06/20 21:53
- 名前: 長月★ (ID: 06in9.NX)
〈壱〉
千早降るここも高天の原なり集まり給へ四方(よも)の神々
臨(りん)兵(ぴょう)闘(とう)者(しゃ)皆(かい)陳(ちん)列(れつ)在(ざい)前(ぜん)
深夜の校舎内に紡がれる美しい呪詞
少女は構えた短刀を禍々しい異形の化け物へと振り下ろす瞬間、刃は光を放ち放たれた眩しい程の光に化け物は
断末魔の叫びをあげる
仕留めた!
『油断するな』
仕留めたと思った途端に自身の中に眠る者からの忠告が発せられる
異形の化け物は四散したかに見えたのだがその鎌のような鋭い片腕のみを残し一瞬の隙に逃げ出してしまった。
「しまったなぁ〜仕留めそこなっちゃった。」
『早く後を追わなくて大丈夫なのか?』
- 陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.2 )
- 日時: 2017/06/21 11:52
- 名前: 長月★ (ID: a0p/ia.h)
〔弐〕
再び自身の内側から声をかけられる
「わかってますって!」
少女は短刀を構えたまま異形が逃げた南校舎の方へと疾走する。
ハイスピードで移動しているにも拘わらず少女が平然としていられるのは彼女の体内に宿る寄生型の式神
勾陣〈こうじん〉のおかげである
この勾陣はかの陰陽師安倍晴明や指すの神子と呼ばれた安倍泰親(あべのやすちか)も使役したといわれている12天将の1柱であり由緒ある式神である
また史蘇に曰わく土の神は勾陣にして鎮星〔土星の事〕の精と記されている。
少女は化け物を追って誰も居ない夜間の学校を疾走する
「居た!!」
異形を確認し少女は素早く短刀を振り下ろす。
すると確かに命中した感覚はあったのだったが、実際に目にしたのは異形の死骸などではなく
時折図書室に出入りしている
冴えない感じの平凡な男子生徒が血溜まりの中に倒れている姿であった。
「えっ・・・・どうして?・・・そんなっ・・・・どうしよう・・・。」
『追わなくていいのか?逃げてしまったぞ!そんな人間など捨て置いてさっさととどめを刺しに行くべきではないのか?』
勾陣の問い掛けにも少女は動揺してしまっており
その問いかけは聞こえていない様子である。
- 陰陽Master☆〜神々の眠る地で。 ( No.3 )
- 日時: 2017/06/21 22:26
- 名前: 長月★ (ID: EM5V5iBd)
〔参〕
『その者の傷口からしてお前がやったものではないだろう恐らく、あの異形の仕業であろうからお前が気に病む必要もない。だが・・・それでもそんなに死なせたくないのであれば、私を移せば良いだけの話だ。』
『そうすればその人間は蘇るだろう・・・ただし普通の人間としての蘇生ではないがな・・・・如何するかな沙夜華(さやか)・・。』
その言葉を受けて少女は意を決して血まみれになって地に伏している男子学生に近づき
「布瑠部(ふるべ)由良由良止布瑠部(ゆらゆらとふるべ)」
短い秘呪を唱えると、躊躇いなく男子学生の唇に自らの唇をそっと重ねるのであった。