複雑・ファジー小説

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夜に舞うは百火繚乱
日時: 2018/01/21 16:32
名前: hiGa ◆nadZQ.XKhM (ID: UPSLFaOv)

 スカーレット・シーフはこう言った。
 泥棒が正義で何が悪い。
 ってね。



〆story
第一話 勧誘じゃなくて脅しじゃねーか
>>1 >>2 >>3 >>4
第二話 何でこんな色物ばっかりなんだ
>>6 >>7 >>8
第三話 これからは、頼っていいんだ
>>10 >>11 >>12 >>13 >>14

Re: 夜に舞うは百火繚乱 ( No.5 )
日時: 2017/09/04 15:32
名前: hiGa ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)


幕間



「一話分でどっと疲れた気分だぜ……」
「もうちょい頑張りや、まだこの幕間が残ってんねんから」
「んだよ、この幕間って」
「それは俺から説明しよう。この幕間は言うなれば漫画の最後にあるおまけコーナー、読んでも読まなくても変わらないが、何となく本誌だけ追ってる人よりも優越感を得られるあのコーナーのようなものだ。ちなみにこの作品で言うと>>0にリンクが載せられていない」
「絶対将来的にこの幕間読まれなくなるんだろうな……」
「そもそも今でさえ一人も見ぃひん可能性もあんでー」
「流石に虚しすぎねぇか、それ……」
「まあそのうちファンでもできたら変わるやろー」
「わりぃ、できる未来が見えねぇ」
「悲観的やなぁ、せやからモテへんねん」
「うるせぇよ、自称美少女」
「あー、ひっどひっど!」

「漫才はさておき説明を続けよう。このコーナーは作中の適当な人物が読者と言う名の神様からの質問……は来ないので作者が話したいことを代わりに話すコーナーとなっている。ラジオ形式と呼ばれるものを昔からやってみたかったらしくてな、このように会話文のみの幕間となっている。おまけらしい手の抜き具合だろう?」
「ラジオ形式にしちゃ、言葉の発言者載っけてなくね? これ誰が話してるか分かるのか、読者?」
「そもそも俺はまだ作中で名前が明かされていない。それと、作者が台本小説が苦手らしくてな、このスタイルに逃げている」
「いや、だからこれ誰の言葉なのかどう判断しろと……」
「今作はキャラの個性を強くしすぎた気がするというのが作者の声らしい。話し方で大体メインキャラの区別がつくというのを狙っているらしい。戦闘中の>>3あたりがいい例だ」

「確かにかなり癖のある話し方のやつがいるな……」
「ここの三人で言うたらうちが関西弁、蓮が粗暴な感じ、堅物くんは比較的固めの口調ってところやな」
「まあ、そうだな。君はただの方言なのにとても目立つな」
「ま、目立つんは黒崎ちゃんのカリスマのおかげやねんけどな」
「…………」
「こういうアホなんだ、そっとしといてやれ」
「そうだな」

「にしても、何でこんな濃いのばっかりいやがるんだろうな」
「それはうちから説明したるわ!」
「もうちょい静かに喋れ」
「この作者は基本的にな、おおまかな設定と、書きたいストーリー、特にクライマックス想像してそこに持ってくための設定やストーリーを考えるケースが多いねんけどな、そこに……」
「そこに至る前に更新しなくなってしまうことが多々見受けられましてよ」
「むー、セリフ取られた。それで今回はいつもと違ってまず始めに……」
「最初に……キャラの設定、とか、固めて自由に動かそう、って決めた……らしい、よ?」
「……せやから、奔放に動けるように」
「なるほどな、自分勝手動いてくれるキャラ濃いやつが必要だったって訳か」
「皆してうちのセリフ取らんとってーや!」

「拗ねたが、いいのか?」
「構わねぇよ、どうせ言うほど怒ってねーし」
「静か、に……なった!」
「お前、結構辛辣なんだな……」
「この子には少しそういうところがありますわ……」
「そういった、キャラの特徴が発覚する今後更新される第二話も、よろし……」
「よろしく頼むで! 見てや! 今度はうちももっと目だったるから!」
「これ以上目立つつもりなのかよてめえは……」




「やれやれ、騒がしいネ。あんな子達だが、これから頑張ってくれるから、ぜひとも皆今後もよろしく頼むヨ。……まあ一番心配なのは作者だがネ」

Re: 夜に舞うは百火繚乱 ( No.6 )
日時: 2017/09/08 14:14
名前: hiGa ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)

第二話 何でこんな色物ばっかりなんだ


「スイッチ……オン!」

 わざわざいう必要もないのに、そう言った少女は部屋の明かりをつけた。明かりのついた部屋で一際大きく目立っていたのは当然のごとく人間ではなくて、先ほど蓮とその他が演じた大乱闘の痕跡であった。社長室の床は下のフロアを巻き込む形で陥没し、ところどころ焼け焦げている。そればかりか、アクエリアスと呼ばれた少女が生み出した水のせいで池のようになってしまっていた。

「私の部屋だというのに、派手になったものだネ」

 話す言葉は批判的なのに、どうでもよさそうに依頼主の男はそう言った。初めから、こうなるとわかっていたようでもある。実際、この真下のフロアは部屋こそあるが機材は何一つ置かれていない空きフロアだと彼は説明した。蓮の実力を量る必要があると決めてから、大事な機材は全てもっと下のフロアに移したらしい。

「さてと、自己紹介の前にこのフロアを元に戻すとするかネ。堅物君」
「わかりました」

 眼鏡をかけた黒髪の少年が、一歩前に出る。この声は一番初めに蓮に対して仕掛けてきた男だと彼自身すぐに思い出した。堅物と呼ばれた彼が手を陥没した床にかざすと、まるで床が生きているかのように踊り、元々の形へと戻った。その様子をじっと眺めていた蓮であったが、ただただ驚愕の一言に尽きた。
 元通りになった大理石のフロアを手で撫でてみるが、何も変なところなどない、平らで滑らかなフロアとなっている。

「どうダイ? 能力者は自分だけではないと君は理解したカイ?」
「ああ、流石にこんなもん見せられたらな」

 それで、どんな能力なんだ? 関心を惹かれていることを、もはや隠そうともしない蓮は同年代の少年に尋ねてみる。高校の制服を身に着けたままであり、学校や塾の帰りに直接ここに来たのだろうと考える。その制服は、全国的に有名な進学校のものであったからだ。
 かっちりと制服を正しく着用しており、先ほど堅物君と呼ばれた理由が垣間見える。背は蓮よりも少し低く、170程度であろう。

「まずは名前からでいいだろう。黄金川 重吾(こがねかわ じゅうご)。コードネームは堅物。能力は、金属と鉱石を自由に操ることができる。現状、訓練が追い付いていないから形状の変化が精いっぱいだが、おそらく将来的に手で触れずとも自由に動かせたりもすると思う」
「別にそこまで詳しい情報求めてなかったんだけどな」
「彼は真面目なんだヨ。君も見習うとイイ」

 一言余計だ。そうやって釘を刺した蓮は、次のメンバーの方へと目をやる。真っ白で、ひらひらとしたワンピースを身にまとっており、背筋がしっかりとした少女だ。この女も同年代かと察知する。白く透き通るような肌や、立ち振る舞いから何となく貴族のような印象がある。髪は肩ほどまでに伸びており、少し茶色っぽい。

「白宮 天空(しろみや てんくう)ですわ。コードネームはスノーホワイト。能力は、自分や手で触れたものを自由に浮かせ、移動させられるものでしてよ」
「何だこのお嬢様口調……」
「あー、この子ほんまもんのお嬢様らしいで。白宮グループのご令嬢」

 にしてもこの口調は痛いとうちも思うけどな。蓮にだけ聞こえるように黒崎はそう呟いた。
 育ちがいいというのは理解した。背も女子にしてはかなり高い部類であろう。ヒールを履いて少し高く見せているとはいえ、蓮と目線は早々変わらなかった。蓮自身、身長は最後に計った時には175センチあったので、それは間違いない。

「別に気を遣わなくても結構でしてよ。普通に接してください」
「いや、当たり前だろ。はなからそのつもりだ」
「流石に無礼すぎると私も怒りますので、身の程はわきまえておくことをお勧めしますわ」

 これ以上けんか腰になっても仕方ないと、蓮が先に折れた。適当にうなずいて、最後の一人の方へと視線を向けた。アクエリアスと呼ばれていた少女は、それまでの二人とは違って蓮よりも年下のようで、その部屋にいる誰よりも、ずっとかわいらしい背丈をしていた。蓮の胸の位置にようやく頭のてっぺんが届くといったところだろうか。
 目はだらしない半開きで、どこか眠そうにしており、髪の毛は真っすぐ肩の少し下まで伸びているが、ところっどころ寝ぐせのようなものがついている。青みがかった瞳は、眠気で少し濁っているが、きれいな色をしていた。

「水野 瑠璃(みずの るり)……アクエリアスって、呼んで。能力は……水を操れる、みたい。小学校の、六年生……です」
「この子は、色々とマイペースな子ですの。話しているとじれったく思うこともあるかもしれませんが、急かさないであげて下さい」
「安心しろ、お前の話し方よりまだ受け入れられる」
「私も、あなたの無礼さよりは遥かに受け入れられますわ。人にこうして自己紹介させたんですから、あなたも名乗ってはどうですの?」
「おい、会ってすぐなんだから喧嘩はやめろ。……君も自己紹介、してもらっていいかい?」

 それもそうだなと、蓮と黒崎はお互いに顔を見合わせた。どちらが先に言い出すか、少し目線で相談する。結果として、顎で指示されたとおりに蓮の方から名乗ることとなった。



>>7

Re: 夜に舞うは百火繚乱 ( No.7 )
日時: 2017/09/21 16:56
名前: hiGa ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)

「もう大体知ってんだろ? 紅川 蓮(あかがわ れん)、炎や熱を操ることができる能力者だ」

 能力の応用できる範囲は広いため、この場においては割愛した。中学から一人で、高校に入ってからは黒崎と二人で能力をどう応用できるかを探求した。その結果、発想と練習次第でいくらでも応用は効くのだと分かり、実際に発展させてきたため、この場だと時間を無駄に取るためだ。

「黒崎と会ってからは色々あって、一緒にコソ泥みたいなことをすることになった」
「コソ泥言うんやめーや、正義の盗賊やろ?」

 不法侵入と窃盗に正義も糞もねーよ。吐き捨てるように蓮はそう言い、黒崎はふてくされた。

「まったく、夢も希望も無いやっちゃな。じゃ、うちも自己紹介しよか。うちの名前は黒崎 未来(くろさき みらい)、能力は嘘にまつわる力や。あんたらが嘘ついても一発でわかるし、うちのつく嘘は絶対分からへん」
「はぁ!? おまっ、能力者ぁ?」
「そっか、蓮に言うんも初めてやったな。言い出すタイミング無かってん、ごめんごめん」

 一年以上の付き合いだというにも関わらず、彼は初めて相方の少女の秘密を知る。嘘を見抜き、嘘を自在に操る力。確かにこの女にそんな力があってもおかしくはないと妙に納得する。あっさりと人をからかいながら冗談や嘘でクラスメイトを翻弄し、胸のうちの深いところを決して人に見せないこの少女なら。思い返してみると、黒崎相手に隠し事ができた試しも無い。

「でもな、よー考えてみ? あんたが超能力者やっていう与太話すぐ信じた理由もこれで分かるやろ?」
「いや、分かった……にしてもてめえなあ……」
「まあまあ、唯一の友達の黒崎ちゃんのこと、許したらなあかんやろ?」
「唯一じゃねえよ! 人をぼっちみたいに言ってんじゃねえ!」
「あ、友達とは認めてくれんねんな。うちも嬉しいわ」
「やかまし、どうせいつもの嘘だろ」

 今の蓮に、彼女のおふざけに付き合う余裕は無かった。能力者と呼べるような、呼べないような地味な能力とはいえ、彼女は自分にすら能力を隠してきた。自分自身は彼女を信頼し、これまでずっと彼女に自分の力の秘密の全てを打ち明けてきたというのに、彼女はというと仲間である自分に何も打ち明けようとはしなかった。
 それで強いショックを受けるほど、やわで幼いメンタルを彼もしてはいなかったが、それでも少しこれまでずっと隠されていたという事実が、疑念を植え付けてくる。

「ま、蓮が言いたいことも理解できるけど、一旦信用してもらってもええかな? うちにもあんま大っぴらに言われへん事情はあんねん」

 その時黒崎が作った困惑の表情に嘘があるとは、彼も信じたくなかった。けれど、先ほど彼女の言った彼女自身の能力が引っかかる。言ってしまえば、どんな嘘でも信じさせることができるのだ。もしこの言葉が嘘で、自分が利用されていただけなのだとしたら、それがどうにも気がかりでならない。
 けれど、信じた方がいいのだろうとは彼自身思っていた。信じたいかという願望はさておき、不信感を抱く意味があまりないと思われたからだ。本当に自分のことを信用していなければ、互いにチームとして、犯罪に手を染めるようなことはしていなかっただろう。たとえ目的は正義だとしても、逮捕のリスクは充分にある行為だ。そんなリスクを共有してきた黒崎が、自分を全く信用していなかったとは思えない。彼女が真にどういう人間かはこれから見ておいたほうがいい。

「しゃあねえ、信じる」
「あんたが感情で動かへんやつで助かるわ」

 まるで蓮ならそう判断すると知っていたように、黒崎は淡々とそう告げた。少し最後微妙な空気になってしまったが、簡易的な自己紹介は一旦終了となった。そのため、蓮は今度は黒崎でなく、それ以外の三人の方に向き直り、彼らが名乗った時に疑問に思ったことを尋ねてみる。

「そういえば、コードネームって何だったんだ?」
「ああ、やっていることがやっていることだから活動中に個人名が特定されないためのものだヨ。我々が真っ向から敵対する連中に、些細な個人情報でも与える訳には行かないからネ」
「できるだけ本人をモチーフにしたりして分かりやすいものになっておりますの」
「俺は色んな知人から堅物と呼ばれているからな。わかりやすく、名前の特定もし難いから堅物とつけた」
「飾りっ気全くねーな。そういうほうが好きだけどよ」
「私は名前にしろとついていることと……」
「上流階級で姫を連想して白雪姫でスノーホワイト。ちょっとひねった感じと中二らしさが出てる感じな」
「一々余計な口をはさんでくるの、やめてくださります?」

 あんたらほんまに相性悪いな。そう言って黒崎が二人の間に割って入る。この困惑の表情は確実に本心だろうなと、全員が確信できた。

「水が使えるから、水野だっけ? はアクエリアスなのか?」
「それも……ちょっと、ある」
「その子、ただ飲み物として好きなだけですの」
「最初は、ジンジャーエールにしようと……してた!」
「流石にしまらないという理由で、本人が好きで本人をイメージしやすい、両者納得できる名前ってことでアクエリアスになったんだ」
「安直生真面目男にメルヘン女、不思議ちゃんの小学生って……何でこんな色物ばっかりなんだ」
「しかも蓮にしてもただのチンピラやしな。正統派美少女の黒崎ちゃんが中和するしかないなぁ、これは」
「何でこんな色物ばっかりなんだ」
「今何でもっかい言うてん。蓮、とりあえずお説教や」



>>8

Re: 夜に舞うは百火繚乱 ( No.8 )
日時: 2017/09/21 16:55
名前: hiGa ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)


「君たち、そろそろいいカナ?」

 こほん、そう一つ咳払いをして社長が割って入ってくる。そういえばまだ話の途中ではあった。

「この調子だと日が昇ってしまうからネ。まだここで仲良くなってくれとは言わナイ。これから黒崎君の指示で紅川くんともう一人で活動を実行する任務を何度か行ってもらウ。それにより、仲間としての連帯感を深めてくれたマエ」
「その場合、まずは今晩のうちに、うちらのコードネーム決めといた方がええと思います!」

 元気よく右手を挙げて、黒崎はそう提案した。確かに今のうちにそれだけは共有しておいた方がいいだろうと、蓮以外の全員がうなずく。その様子を見る限り、素性がばれないようにするというのは、全員が共通して警戒しているんだなと蓮は強く理解した。そんなことは蓮自身も重々承知だったが、周囲もそれを共通認識していることは、周囲のものを仲間として受け入れる後押しにはなった。
 先ほどの激しい戦闘にも慌てる者は一人もいなかった。そこから考えても、背中を預けるには問題ない、むしろ預けさせてもらえることに感謝するべきだろう。

「できるだけ君らをイメージしやすいものにしてもらえると助かるヨ。今後また、メンバーが増減するかもしれないからネ」
「また? 増減? 増員だけじゃなくて脱退も今までにあったのか?」

 社長の言葉尻を捕らえて蓮は噛みついた。噛みついたというよりも反射的に浮かんできた疑問をそのままぶつけた、といった方が正しいだろう。今となっては先程まで感じていた彼らへの疑念はあらかた無くなっていたのだから。
 一番表情に思ったことが出やすそうな白宮の表情を蓮は窺った。思った通り、何やらかつて仲間が減ったことがあるようで、臍を噛んだような顔をしている。これは、深入りしない方がいいだろうな、瞬時にそう判断した彼はすぐさま話を逸らした。

「まあ、後から入ってきたやつが覚えやすい方がいいだろうしな」
「その通りだ、紅川。能力にまつわるものでも、自分自身の性格を表したものでも構わん」
「お前堅物だもんな……。ぶっちゃけスノーホワイトみたいな横文字の名前は少し恥ずかしいし、俺はもうちんぴ、ぼふぉっ!」
「はいはーい! 黒崎ちゃんに提案がありまーっす!」

 蓮が適当に自信のコードネームを決めてしまおうと思ったところに、無理やり、勢い任せに黒崎が割って入った。それも、確実に蓮が続きを言えなくなるように腹に拳を一発入れて、だ。唐突な衝撃に、蓮は空気を勢いよく吐き出した。そのままむせてしゃべれなくなってしまう。

「コードネームはやっぱりかっこええ名前がええやんか。蓮ってさ、名前から川を取ったら『紅蓮』ってなるやろ? でもってやっとったことは盗賊やん。せやから蓮のコードネームは“スカーレット・シーフ”! 決定!」
「話聞いてたか! 横文字は恥ずいから嫌って言ってんだろ! てか原ぶん殴ってんじゃねえよ!」
「嫌なん? せやったらしゃあないなあ。明日学校で能力使ってうちと蓮が付き合い始めたって嘘流したろっかな」
「うっ……ぐぅ……じゃ、じゃあ。いや、ダメだ……うーん……」
「悩むなや。そんなうちと付き合いたくないか」

 顔よくても中身に難がある。単刀直入に黒崎に蓮は突き付けた。仕返しのつもりで言ったはずなのに、その言葉にむしろ黒崎は爛々と目を輝かせて感激していた。

「聞いた? 皆聞いた!? こいつうちのこと可愛いって言ったで! 何ややっぱり黒崎ちゃんのこと、蓮も気に入って」
「うるせえ! お前の軽口聞くのもそろそろ休憩させろ。いいよ、そのくそ恥ずかしい名前で!」
「やりぃ! さっすが黒崎ちゃん。あ、せや社長さん、うちの名前は“ネロ”でお願い。イタリア語で黒って意味やねん」
「俺、今からでもレッドとかにしちゃダメなのか……」
「蓮がコードネーム呼ばれて照れとる姿見たいだけやから許さへんで」
「はあ! そんな理由なのかよ!」

 楽しそうに蓮をからかう黒崎に、彼は間髪入れずに混ぜっ返す。微笑ましいといえば微笑ましいやり取りなのだが、既に黄金川も白宮も、水野も飽き始めてきていた。

「うるさいヨ。自分らが日陰に隠れなきゃならないと、忘れてないかネ」
「ぐ……わりい」
「本当に、そういうところ聞き分けのいい子で助かるヨ」

 そういって社長は部屋の奥の方へと歩いていく。先ほど戦闘に巻き込まれなかった、机のあたりだ。社長室のデスク、つまりは彼自身が昼夜使っている場所に腰かけて、五人の様子を眺める。
 五者五様の姿を見て、面白くなりそうだと彼は相好を崩した。

「さて、初めの仕事は次の土曜日の夜ダ。黒崎くんが指示を出したり、裏で手を回してほしイ。紅川くんの相方は誰がいいカナ?」
「初めは俺がいきますよ、社長。白宮は仲が悪そうですし、水野と紅川だと能力の相性が悪そうです。もう少し馴れてからの方がいいかと」
「分かっタ。我々の活動の細かいことは黒崎君に伝えておいタ。土曜までに聞いておいてくれたマエ」

 軽い口調でOKと黒崎は応え、その様子を確認して蓮もうなずいた。よろしいと社長もうなずき、時計の方を見た。

「それじゃみんな、今日は遅くまで失礼したネ。黒崎君たちの依頼料もちゃんと支払っておいたヨ」
「はい、ありがとうございまーす」
「依頼料ってより慰謝料もらった気分だぜ」
「ふふ、確かにそうだナ。もう夜も遅い。今度こそみんな帰りたマエ」

 はい、そう言い残して全員が一様にその部屋を後にした。一人残された部屋の中、満足そうに社長の男は微笑んだ。そしてその後、ぽつりとつぶやいた。そんな彼の脳裏には、蓮からぶつけられた言葉が響いていた。

「もう二度と、我々は仲間を失わない」



次>>

Re: 夜に舞うは百火繚乱 ( No.9 )
日時: 2017/09/22 16:46
名前: hiGa ◆nadZQ.XKhM (ID: hgzyUMgo)


幕間



「幕間の時間やでー!」
「騒がしいですわね、もう少し控えなさい」
「まあまあ、堪忍してーや。本編と違って幕間の主人公はうちってことになってんから」
「そうなのですね、それにしても今回の幕間は私たちだけですの?」
「蓮はコミュニケーション取るには粗暴すぎるからうちがレギュラーになってん。でもって人間多すぎるとひたすら幕間長引くから、とりあえず二人、たまに三人ってことにしてん」
「それにしても私でよろしかったんですの? 堅物男や粗野な炎使いは前回出たとして、アクエリアスや社長もおりますが」
「あ、それはメタ的な理由があってな、社長の話し方打ち込むのめんどいねん」
「まあ、何となく想像つきますわ……。そうだとしてもアクエリアスは……」
「二人で会話が続けられそうになかってん、あの子独特すぎるやろ……。比較的常識人の白宮ちゃんにお願いしてん」
「比較的とはどういうことですの? 私はまごうことなき常識を持った人間でしてよ」
「えっ」
「えっ」
「正直、蓮と黄金川くんが一番常識的とは教えへん方がよさそうやな」

「ところで、今回はこの幕間で話すことは決まっておりますの?」
「あ、それはバッチシやで。今回は皆の名前の由来を語ろうと思っててん」
「名前の由来、と申しますと?」
「そのまんまや、例えばうちの名前の黒崎ってのは、イメージカラーが黒で、嘘つきな人間だから“さぎ”って入れたかったんやけどそのまま入れるのもな、ってことで黒崎になってん」
「そういえば、作者はBLEACHが好きだと聞いておりますわ。もしかしたらそれも後押しした理由の一つではなくて?」
「よお分かっとるやん。でもって下の名前の未来、っていうのはライ(lie)っていうんを入れたかったらしいわ」
「なるほど。そういえば私たち、基本的にイメージカラーと能力にまつわるものが名前の中に入っておりますわね」
「せやな。蓮はちょっと違っててな。紅蓮っていうただ色だけをベースにして名前が付けられとんねん」
「なるほど、とするとアクエリアスは水の能力者なので水野、青っぽいイメージなので瑠璃という名前ですのね」
「せやせや、白宮ちゃんは白のイメージで、貴族っぽい宮って字を使って名字ができて、空中浮遊の能力やから天空ちゃんになってん」
「堅物は金属を使うことと、黄金色というところからあの名前なんですのね」
「黄金みたいに、腐敗して色あせることなく真面目な人間であり続ける、って表してんねんて」

「そう言えばコードネームはどうやって決まっておりまして?」
「うーん、うちの名前は黒色なら何でもよかったらしいわ。オスキュラスでも、ブラックでも」
「私のコードネームは白雪姫がベースだとのことですが、実はお姉さまから頂いたという」
「ちょい黙り、それ今言うことちゃうからな?」
「も、申し訳ございませんわ……」
「アクエリアスはみずがめ座やから、水にまつわる能力としてと、瑠璃ちゃんのぶっ飛んだ性格を表すエピソードをつけれるってことで」
「あまり嬉しくない理由ですわね……」
「主人公はできれば堅物みたいな適当感溢れるものより、中二寄りでも横文字にして締まるようにしようと思っとったらしいわ」
「それでスカーレット・シーフなんですのね」

「そういえば、この小説ってどういうジャンルですの?」
「バトルアクション入るけど、基本的にはステルスして、戦闘は最小限に、って感じやな。多分終盤はそうも言ってられへんやろけど」
「どれくらいで終わる想定なのでしょうね」
「あ、それ作者に聞いてきたわ。登場人物一人ずつ掘り下げて、五人で依頼こなして一件挟んでラストミッションして終わりの予定らしいで」
「意外と早く終わりそうですのね」
「そう思うやろ? この作者大学三年で忙しい学部って情報入っとるし定期的にカキコから失踪するからそうも言い切られへんで。地味に作品掛け持ったりしとるしな」
「それに、あくまで予定っていうのが恐ろしいところですわね」
「うちらに愛着湧いたら辞められへんくなるかもな!」

「それではそろそろ、次回予告でもしとこか」
「そうですわね。次回は、黄金川 重吾と紅川 蓮による共同任務!」
「依頼主は公家の子孫のご令嬢! 詐欺により奪い取られた思い出の絵画を取りもどすため、うちらが美術館に忍び込む!」
「しかし鳴り響く非常警報、果たして三人の盗賊の運命やいかに!」
「次回もよろしく頼むで! 以上、幕間でした! パーソナリティーはうち、黒崎 未来と」
「白宮 天空でお送りいたしました!」


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