複雑・ファジー小説

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暁の星影
日時: 2017/09/10 14:43
名前: 時藤 (ID: KZRMSYLd)

〔序〕

ああっ……この中から早く出なければ……私も……に成って……

そう嘆いたもの達が結果的にどの様な結末を迎えたのか私は気にも留めることは無かった
私は私自身の作品を完成させる事だけが望みなのだから……。

おやっ……気配がしなくなった、まぁいい、次のモノはあの男が持ってきてくれるだろう、私はただ待つだけでいいのだ、私の作品が完成する事を……。





駄文をただ書き連ねるだけの時藤という者です。書いても書いても未完のものばかりではありますが出来る限り書き続けたいと思っておりますので、何卒宜しくお願い致します。

荒らし行為は御遠慮下されば幸いです。

暁の星影 ( No.7 )
日時: 2017/09/15 21:57
名前: 時藤 (ID: fE.voQXi)

〔壱之漆〕

「師匠あれは何だったんでしょう?」

「式神でしょうね、間違いなく、誰か知らないけどあんな鳥モドキ程度で私の実力を試そうなんて!気に食わないわ!」

起き上がり、師匠に近づいて問うと師匠はあの異形が飛び出してきた教室の窓を見ながら苦々しい表示を浮かべていた。

「気分転換に次!行くわよ!次!」

そう言ったかと思うと師匠は素早く運転席に乗り込む

はぁ……。

疲れた事もあってか溜め息が出てしまったが、僕が何を言ったところで師匠は聞く耳を持たないだろうと、観念して助手席へと乗り込んだ。

「行き先は何処ですか?」

「緑峰(りょくほう)高校の体育館。」

案の定
師匠が指定した場所は二件目の現場であった。

「1時間位かかるから寝てても良いわよ。」

珍しい師匠の発言にびっくりして何か裏があるのでは?
と勘繰ってしまったが、よく考えて見れば疲れている様に見えたのだろうと素直にお言葉に甘える事にする。

暫く目を瞑って休んでいる内にどうやら車が停車しているらしい事に気がつく
目を開けてよく辺りを見回すとどうやら既に緑峰高校に到着しているらしかったが、運転席には師匠の姿は無いため
不味い……眠り過ぎたと焦りながら車から飛び出して体育館へと急ぐ。
体育館の入り口はおそらくは師匠が高校に連絡をしていたのであろう扉に鍵はかかっておらず中へと歩みを進める。

「邪魔をしないで貰えますか?」

低い男性の声が聞こえる

「さっきの式神はアンタが仕掛けたものだったわけね、別に邪魔をしているつもりはなかったのだけれど、此方は仕事だから。」

この強気な発言は師匠のもので間違いない。

暁の星影 ( No.8 )
日時: 2017/09/17 22:37
名前: 時藤 (ID: KG6j5ysh)

〔壱之八〕

「困りましたね、私も仕事なんですよ、貴女達に仕掛けが壊されるのを黙って見ておくわけにはいかなんですがね。
どうでしょうか?挨拶代わりに術競べでもしませんか?」

二人の様子を確認する為に近くの棚の近くに隠れながら様子を窺うと何やら紙の札の様なものを相手の男は懐から取り出し刀印を結んだ。

「……………急々如律令」

何事か呟くと男が持っていた一枚の紙切れは歪な真っ黒な烏の様な姿へと形を変える。

それはついさっき窓硝子を打ち破って僕達を襲った異形そのものの姿であったのである。

「行け」

男の言葉に呼応するかの様に男が作った異形の式神は師匠目掛けて一直線に襲い掛かろうとする。

「バン ウン タラク キリク アク」

短く真言を唱えると師匠は自らの眼前に晴明桔梗つまり 五芒星を刀印にて描く
すると 五芒星が眩い光りを放ったかと思うと異形の式神はその光に包まれ霧の様に消えてしまったのであった。

「やっぱりこの程度の方術ではダメですか、それならこれでどうでしょう。」

男は自らの式神が軽く撃ち破られたにも関わらず何故か笑みを浮かべ、懐から先程の紙札よりも年季の入った黄色い紙札を自らの眼前に掲げる。

「……即滅ソワカ!」

短く呪を唱えると男をまるでガードする様に古代中国の文官の様な古臭い衣装を纏ったモノが突如として現れる。

「河魁(かかい)」

男が名前のようなものを口にすると先程まで力なく俯いた様子だったのが確りと姿勢を正し、師匠の方を見据える
その顔はまるで骸骨の様に痩せ細っており、眼窩にあるはずのものがなく、ぽっかりと穴が空いており深い闇をたたえていた。

一瞬その異形の姿にノイズが走った様に霞んで見えた次の瞬間である先程まで男や異形と5メートル程離れた位置に居た師匠の目の前、ほんの30センチ程の距離に突如として不気味な異形が移動したのである。

咄嗟の事に師匠は重心を低くして異形に足払いを繰り出す。

暁の星影 ( No.9 )
日時: 2017/09/20 22:23
名前: 時藤 (ID: /48JlrDe)

〔壱之九〕

あんな得体の知れない奴に足払い!
一瞬呆気にとられてしまったが、昔やんちゃしていた師匠ならわからなくもない対処法ではあった。

いきなりの足払いに異形は怯むかと思いきやもろに攻撃を受けていながらもまるで意に介していない様子で逆に異形に触れた師匠の方が頻りに自らの足を気にする素振りをみせている。

「まさか河魁に肉弾戦でくるとは驚きですね、綺麗なおみ足は大丈夫ですか?」

男は驚いた表情を浮かべつつも何処か相手を嘲る様な雰囲気を醸し出している。


「戻れ!河魁」

男がそう告げると不気味な式神は男の指先へ吸い込まれるように姿を消していき、再び先程の黄色い古びた紙札へと姿を変える。

「どういうつもりかしら?」

「いぇ、もうやるだけ無駄ですので私はこれでおいとましますよ。」

「逃げるのかしら?」

師匠は背中をみせ立ち去ろうとする男を挑発する様な言葉を投げ掛ける。

「逃げる?私がですか?残念ですが私の勝ちですよ、貴女が私の式神河魁に触れた時点で貴女の負けは決まってしまったんですよ、現に貴女は立って居るのがやっとの状態ですよね、河魁が司るのは疾病なんですが、その疾病は一度患ったら最後死に至ると言われているものですから、続きをやる必要は無いと判断しただけですよ、無駄だと思いますが早急に受診をオススメしますよ、それではさようなら。」

男は言いたい事だけをベラベラとたて並べるとつかつかと私の横を何事も無かった様に通りすぎて体育館から出ていってしまった。

「師匠!大丈夫ですか?」

怪しげな男が出ていった直後、師匠へと近付き慌てて安否を確認する。

「大丈夫よ、ちょっと足が痛いだけだから。」

師匠が擦る手をどけてジーンズを捲り上げ右足を確認すると浅黒く痣のようになった右足の表面を黒いミミズの様な気持ち悪い生き物が蠢いているのがはっきりと確認できたのである。

   

暁の星影 ( No.10 )
日時: 2017/09/23 21:17
名前: 時藤 (ID: w4lZuq26)

〔壱之拾〕

一瞬その気持ち悪さに吐きそうになったのを必死にこらえて、独鈷杵を痣へと押し当てて

「オン コロコロ センダリ マトウギ ソワカ」

と薬師如来の真言を数度唱える

すると真言の力が効いたのか表面を這いまわっていたミミズの様な不気味な生き物はすーっと姿を消したのである。

「ありがとう。」

「どういたしまして、ところで師匠あの変な男の言うとおり病院にでも行きますか?」

段々と体調が悪くなっているのか少しふらつきのある師匠を支えながら提案してみる。

「病院は却下ね、どうせ原因不明で片付けられちゃうだろうし……それに時間的余裕も余りなさそうだしね。」

「それじゃあどうするんですか?足が悪いままでは何も先に進まないですよ。」

「そうねぇ。とりあえず知り合いの呪禁師(じゅごんし)に連絡してみるからスマホを貸してくれるかしら」

師匠は此方の返答を待たずに僕のポケットからスマホを取り出し何処かへと連絡を入れる。

「黒瀬?急で悪いんだけどこれから時間ある?……そう、よかった、だったら申し訳ないけど私の事務所まで来てくれるかしら大至急、うん、ごめんねじゃあお願い。」


「今の相手は何方ですか?」

「呪禁師の黒瀬夏紀(くろせなつき)私の幼なじみで古くから呪術に携わる家柄の子で今は御崎神社(みさきじんじゃ)の神主をしている子よ。」

話をしながら師匠を車の助手席まで支え、自身は運転席に座る。


「御崎神社って美人な神主さんが居るといわれている神社ですよね、この前雑誌で見ましたよ!綺麗な方ですよね〜。」

「そう?……綺麗?普通じゃないかしら?……ところで運転は大丈夫なのかしら?」

「ペーパードライバーですけど大丈夫ですよ、師匠は事務所まで寝ていてもらってOKです。いゃ〜早く美人神主さんに会いたいですねぇ〜。」

師匠は何故か少し不機嫌そうではあったが、やはり体調が思わしくないのが原因なのか車が走り出して数分も経過しないうちに、スヤスヤと可愛い寝息をたてていた。

暁の星影 ( No.11 )
日時: 2017/09/26 21:35
名前: 時藤 (ID: a0p/ia.h)

〔壱之十一〕

車を走らせる事約2時間往きよりも時間が掛かってしまったのはペーパードライバーである僕の為せる業であろうか。

事務所横の駐車場には見覚えのない真っ赤な外車が一台停車していた。

師匠を起こして再び支えながら事務所の扉を開く無用心な事だがどうやらカギをし忘れていたようで、しかも電気も付けたままの状態であった。

「遅い!そっちから呼びつけておいて一体何時間待たせるつもりなの!」

事務所に入るなり、甲高い女性の声が響き渡る。

「ごめんごめん黒瀬、どのくらい待たせちゃったのかしら、ペーパードライバーの運転だから時間がかかっちゃって。」

「ペーパードライバーですって?アンタ海外でのライセンスも持ってなかったかしら、嘘をつくならもっとましな嘘をつきなさいよ。」

そう手厳しく言い放つ女性は雑誌に写真が掲載された美人神主さんで間違いなかったのだが、写真と違い大和撫子然とした美しい黒髪などではなく、茶髪のショートヘアという神職らしからぬ髪型であった。

「何で茶髪……。」

不意に心の声が漏れ出てしまう。


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