複雑・ファジー小説
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- 戻りたくて、戻れなくて。
- 日時: 2017/10/15 12:13
- 名前: 川瀬梨穂子 (ID: 344/XKJR)
時間が戻せるなら、あの頃に戻りたい。ごめんね。私のせい。だけどね、もっともっとそばに居たかった。
小学4年生の頃の私は、叶わないことがわかっていながらも幼馴染の凜に想いを寄せていた。私の名前は青葉真里。青葉真里と赤坂凜だから、出席番号はいつも1こ違い。その上、クラスもいつも同じ・・・まあ、いわゆる腐れ縁というやつだ。4年生の始業式、クラス名簿を見て凜は言った。
「うっわ〜!また真里と同クラかよー!」
「まーたそんなこと言っちゃってー!ほんとは嬉しいくせにー!」
「まあ、そうだな。お前といると楽しいし。これから10年、20年経っても俺の隣で笑ってろよ!」
凜が、顔を赤く染めて言った。
「もう!からかわないでよね!」
私はその時知らなかった。それはからかっているわけではないということを。
- Re: 戻りたくて、戻れなくて。 ( No.2 )
- 日時: 2017/10/15 21:14
- 名前: 川瀬梨穂子 (ID: QXFjKdBF)
「真里、一緒に帰らないか?」
凜がまた、顔を赤く染めて言った。
「うん、いいよ。」
今日の凜はなんだかかっこいい。顔を赤く染めながらも、凜は一生懸命だ。
「ねえ、凜。凜は私のことどう思ってるの?」
「えっ!えっとそれは・・・。」
「あ、言いたくないなら言わなくていいよ。」
どうしてだろう。なんだか顔が熱い。このまま時間が止まればいいのに。
いつの間にかそんなことばかり考えて、ついに私は認めることにした。私は、凜のことが好きだ。
この瞬間が私が凜に恋をした瞬間だった。
「今日クラス名簿見たときに『10年、20年経っても隣で笑ってろ』って言ってくれたじゃん?」
「まあ、うん。」
「私も・・・。私も、凜と一緒にずっと笑ってたいよ!」
ドキドキする。なんだかキラキラして嬉しくて、嬉しくて・・・。
これが、恋なんだ。その時の私はそう思っていた。まさか、これから苦しくなるなんて思ってもみなかった。
いろんな話をした。そしたらいつの間にか家についていた。凜の家と私の家は隣だ。
「じゃあね!また明日!」
「ああ、また明日な!」
もう、ドキドキが止まらない。明日がすごく楽しみになった。
- Re: 戻りたくて、戻れなくて。 ( No.3 )
- 日時: 2017/10/15 22:01
- 名前: 川瀬梨穂子 (ID: QXFjKdBF)
「ふあ〜。眠いよ〜。」
いつもならすぐに寝付けるのに、凜のことを考えていて全然眠れなかった。
こんなにも想ってるのは、私だけかなぁ?昨日は結構いい感じだったと思うんだけどなあ。
「凜、おはよー!」
「おはよー。真里、昨日ちゃんと寝れた?クマできてるよ。」
「当たり〜。全然ねれてないからもうすっごい眠い。」
凜がいつも優斗と待ち合わせしてるところまで来た。
「じゃあ、また学校でね!」
「ああ!」
それから少し歩いて、いつも由佳と待ち合わせしてるところまで来た。
「由佳!おはよー!」
「おはよー!今日の時間割はどんな感じ?」
「うんとー、 図工、算数、国語、理科、体育。」
「いいなー、社会なくて。私は音楽、図工、体育、社会、社会!社会が2時間あるとか最悪〜。」
「真里、好きな人できた?」
「えっ!な、なんでわかるのっ!?」
「やっぱり!だっていつもと表情が全然違うもん。」
「そ、そういう由佳こそ好きな人できた?」
「えっ!なんでわかった!?」
「なんか雰囲気違ったから。」
どうやらお互い好きな人ができたようだ。
「真里の好きな人は誰なの?」
「り、凜だよ。」
「そうなんだー。私は、優斗だよ。」
「そっか。」
恋バナで盛り上がっているうちに学校に着いた。
「じゃあねー。」
「うん、また帰りね!」
教室の前に立つ。今日は、馴染めるかどうか決まる日だ。気合い入れて・・・GO!
「みんな、おはよー!」
「おはよー!」
うん、決まったー!多分これ馴染めるパターンだ。良かったー!
さっそく、凜のことを探す。あ、いた!だけど私の気持ちはすぐに沈んだ。
凜の隣には女子がいて、その女子とすごく話が盛り上がっていた。
「昨日と同じ顔してる・・・。」
思わず、つぶやいてしまった。なんだか胸がぎゅうって苦しくなった。
それが苦しさの始まりだった。
- Re: 戻りたくて、戻れなくて。 ( No.4 )
- 日時: 2017/10/15 23:53
- 名前: 川瀬梨穂子 (ID: QXFjKdBF)
凜の隣にいるのは、井上晴香ちゃんだ。たしか、ピアノが上手で聞き上手。だけど、あんまり話したことがない。だけど席が近いから多分すぐに仲良くなれるだろう。
私の班はこんな感じだ。私が1号車の一番前で、私の隣は凜だ。私の後ろが飯田優斗(由佳の好きな人)で優斗の隣が晴香ちゃんだ。良かった。うまくやっていけそうなメンバーだ。
算数の授業の時に私と凜は頭が良い方で問題を早く解き終わったから、ノートの端に薄く鉛筆で文字を書いた。
:今日も途中から一緒に帰れる?:
:うん、良いよ!広瀬と別れたところで待ち合わせしよう。:
先生がこっちに来そうだったから、2人で急いで文字を消した。先生がノートを見て、
「良い考えですね。2人とも、黒板に考え方を書いてください。」
と言った。
考え方は、みんなから評判だった。
晴香ちゃんは、話してみるとすごく良い子だった。なんだかすごく信用できる子で私が凜のことを好きということも言ってしまった。秘密にすると言ってくれたから。だけど、今日の授業の間時間はずっと胸が痛かった。やっぱり晴香ちゃんと凜はすごく楽しそうに2人で話してる。なんだか、私が入る隙もない。
帰り道、行きと同じように恋バナで盛り上がった。
「今日は優斗と喋れたー?」
「ううん。クラス違うから全然ダメだよー。」
「じゃあ、計画立てよう!授業の間時間に由佳のクラスと時間が合ったら、由佳は私のこと呼んで。で、由佳はドアのところに隠れて私が優斗を呼ぶ。どう?」
「良いね!じゃあさっそく明日実行でいい?」
「うん!OKだよ!」
「で、凜とはどうだった?」
「うーん。このあと待ち合わせして帰る約束はしてるよ。だから、いい感じだとは思うんだけど・・・。」
私は由佳に今日のことを全部話した。すると由佳は言った。
「お人好しなのは真里のいいところでもあるけど、ちょっと悪いところだよ!?普通今日仲良くなった人に今日好きな人言う!?言わないでしょ!多分晴香ちゃん凜のこと狙ってるよ!」
「そうかなあ。晴香ちゃんはいい子だし、もしそうだったら言ってくれると思うけど。」
「とにかく、晴香ちゃんには気をつけな!あと、晴香ちゃんと凜が楽しそうに喋ってたら割り込むこと!いい?じゃあ、また明日ね!」
「うん、バイバーイ。」
由佳のいうことは意外にためになるし、試してみよう。だけど晴香ちゃんを疑うのはやめよう。
そう考えながら、凜が来るのを待っていた。
- Re: 戻りたくて、戻れなくて。 ( No.5 )
- 日時: 2017/10/16 21:50
- 名前: 川瀬梨穂子 (ID: SgaRp269)
それから5分くらい経って、凜が来た。
「あ、わりい。待たせたか?」
たったの5分。わかっていたけど私にとっては1時間に感じられた。だけど私は、
「ううん、今来たとこ。」
と嘘をついた。
「真里はさあ、好きな人っているの?」
このタイミングで聞きますっ!?
「り、凜こそ好きな人いるんじゃないの?」
「ああ、いるよ。」
「誰なの・・・!?」
怖いけど聞いてみた。だけど、聞かなくてもわかる気がした。
「それは」
「やっぱり言わないで!!」
「まじかよー。てか、急になんで?」
それはって言ったあと、凜が「は」の口をしていた気がして胸が苦しくなった。
でも一緒にいて楽しくないなんて思われたくないから、無理に面白い話をした。
「そういえば昨日由佳がさ、『ドンガラガッシャーン!』って言いたかったのに『ドガルレガラガッシャーン!』になっちゃったの!何回言っても噛むもんだからさー、もう面白くって面白くってー!」
「真里、無理してる?」
私はけっこううまく笑えたと思ったんだけど、やっぱり凜はなんでもお見通しだった。
「えー?そんなことないよー?」
私は気づかれたくなくて苦笑いした。
「真里、俺何か嫌なこと言った?」
逃げようとしたけど腕を掴まれて逃げられなかった。もう、泣きそうだ。凜が私の顔を見た。
ポタッ
「えっ?泣いてる?真里ごめん!きっと俺が何か無神経なことでも言ったんだよな?ほんとにごめ」
「凜のせいじゃないよ。」
だけど涙は止まらない。
「真里、本当に」
「晴香ちゃんのことが好きなくせに・・・。」
つぶやいた声は、はっきりと凜に届いてしまった。
「い、今のはなんでもないから!」
「寄り道しないか?近くの公園に。」
「えっ・・・。」
- Re: 戻りたくて、戻れなくて。 ( No.6 )
- 日時: 2017/10/21 13:52
- 名前: 川瀬梨穂子 (ID: EjFgzOZO)
凜の背中を見ながら前へ進んだ。
「凜、やっぱり私」
「逃がさないよ?」
ドキドキして嬉しくて、だけど同時に怖くて。いつもの凜じゃない、違う凜がいる。
「怖いよー。」
ついに私は本音を漏らしてしまった。凜が振り向く。
「ごめん。だけど俺、真里には勘違いされたくないんだ。」
「えっ?」
凜、何を言ってるの?晴香ちゃんを好きなんじゃないの?
「真里、ずっと前から好きだ!」
「えーーーーーーーーっ!」
そう言って私は猛ダッシュで逃げてしまった。
それが私にとってずっと残る後悔のタネとなることを知らずに。
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