複雑・ファジー小説

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【3/3更新】Destiny Game 運命遊戯
日時: 2018/03/03 09:03
名前: 流沢藍蓮 (ID: Yv1mgiz3)

 昔々、あるゲームがあったよ
 異能学園、学園長リェイルが
 弄んだのは少年少女
 悲鳴上げながら死んでいったよ

 昔々、地獄のゲームがあったよ
 生きたいと願っても死に、裏切りに心は傷ついて
 始まったのはDestiny Game
 殺し殺される悪夢のゲーム
 そのまたの名を、運命遊戯、と——。

「さあ、ゲームを始めましょう」


◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ †

 複雑ファジーでは初めまして、流沢藍蓮と申します。
 今作は、皆様からキャラ募集をかけて書き始めます、異能バトルものデスゲームとなります。
 無論、死ネタは出ますし、多少の残酷表現が出てもおかしくはありません。
 それでも構わない方はどうぞ、少年少女の繰り広げる運命遊戯を、ご覧あれ——。

◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ †

〜ゲームの記録〜


 プロローグ ゲームの始まり >>2(※7000文字あります)


《第一ラウンド 小手調べの殺戮ゲーム》 >>3-16

 1 手を取り合えば? >>3-5
 2 生き残るのに理由は要らない >>7-11
 3 残る二人は誰が逝く >>12-16


 小休止 英気を養って >>17


《第二ラウンド 裏切り者にご用心》 >>18-23

 1 マザーグースの詩は歌う >>18-23


《第三ラウンド Destiny Game 運命遊戯》 >>24-

 1 姿の無い策略 >>24-


 エピローグ 血塗られた「資格」 >>


◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ †

 Thanks!
 オリキャラを下さった方々

・アンクルデス様より「シロ」
・硯箱様より「トーン」
・ブナハブラ様より「ゼロ」
・モンブラン博士様より「バロン」
・彩都様より「ハーフ・アンド・セカンド」

  ◆

 執筆中のコメントはお控えくださると嬉しいです。目次を作る関係上支障が出てしまいますので。
 感想等は流沢藍蓮の所有する雑談スレでお願いいたします。


 2017/10/16 執筆開始

DG 運命遊戯 プロローグ ゲームの始まり ( No.2 )
日時: 2017/12/16 15:02
名前: 流沢藍蓮 (ID: Yv1mgiz3)

>>1
 ありがとうございます♪
 これからも暇を見つけて更新していきますので、気長にお待ちくださいませ。
 最近は亀更新です。済みませんね……。

◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ †


 プロローグ ゲームの始まり


  ◆


 異能なんて、異能者なんて、あくまでも小説の中でだけのことだと思っていた。誰もがそんなことを信じ、当たり前の「日常」を生きていた。ある時から、実際に異能者は存在し、少しずつ増え始めているという話を彼女は聞いたが、普通に中学生をやっている彼女にとっては対岸の火事、関係のないことだった。
 今日だって。

「行ってきまぁす」
「気をつけるのよ」

 彼女——花咲華菜はなさきかなは、通学バッグを持って当たり前のように学校へ行く。彼女の家から中学校までは歩いて十分ほど。華菜は茶色のお下げを揺らして、その日も当たり前のようにして学校へ行った。
 教室へ入れば。

「おはよう、信互しんごくん」
「ああ、花咲か。おはよう」

 華菜の挨拶に、信互と呼ばれた少年は軽く手を挙げる。
 落ち着いた雰囲気、鋭い輝きを宿す黒の瞳。学校の黒い制服をそれなりに綺麗に着こなして、優等生にこそ見えないが、そこらの不良とは一線を画す印象のある少年。
 明るい性格の華菜は友達が多いが、どこか孤独を宿す信互は名前の割には友達が少ない。
 それでもそれでも。今日はいつも通りの日だった、


 はずなのに。


「この数式を解いて! 花咲さん、答えてみなさい」
「はいっ!」

 目の前には、ずらりと並んだ一次方程式の問題。今は数学の時間である。
 そこまで難しい問題でもなかった。華菜はその答えを口にする。

「X=3です!」

 自信を持って答えた、


 瞬間。


 日常が、当たり前だと思っていた日常が、


 崩れた。


 グサリ。先生に突き刺さったのは、凶悪な輝きを宿す、


 ——刃物。


「え……」

 先生の身体が崩れ落ちる。
 凶悪に光る刃物を握った男が、生徒たちを睨みあげた。
 次の瞬間。

「キャー! 殺人者だ! 殺される!」
「助けて助けて!」
「死にたくない!」

 上がった悲鳴。生徒たちは教室の出入り口に殺到する。
 しかしそういったところに限って、狭い。
 刃物を握った男は生徒たちが逃げ出している入口へ向かい、握った刃物を振りかざした。
 悲鳴、血飛沫。
 恐怖と驚愕に凍りついた華菜は、動くことすらできないでその様を凝視するしかない。

 しかし、動かないのは信互も同じだった。彼は冷めた目で冷静に状況を確認していた。
 男は殺す。上がる悲鳴。
 華菜の口から、思わず小さな悲鳴が漏れた。
 そしてそれを、男が聞き逃すはずがなく。
 男の目が、華菜をとらえた。

「……こんなところに、はぐれた奴か」

 次の瞬間、男は一気に華菜に肉薄した。「やめろ」という信互の叫び声。彼は割り込もうと走ったが、間に合う距離でもない。それに彼が何か、できるわけもない。なぜなら彼は、一般の中学生にしか過ぎないのだから!

 華菜の席は教室の一番後ろ、信互の席は教室の一番前。二人は殺戮が始まってから、互いに一歩も動いていない。つまり、両者の距離は絶望的なまでに離れている。

「死ね!」

 迫った刃。華菜は己の死を覚悟して、それでも生きようと手を伸ばした。その手が男に触れた。

 その時。

 華菜を突き刺さんと迫っていた刃が、彼女に刺さる直前で止まった。華菜はパチパチと瞬きする。
 華菜の手は男に触れていた。触れた瞬間、男は止まった。
 男は自分を見、華菜を見、血濡れた刃物を見た。
 その目からは、何故かぎらつく殺意は消えていた。
 男は不思議そうに自問した。

「……自分は、何を?」

 そして、彼は知った。
 自分が人殺しをしてしまったということを。
 全てを悟った男の顔が、青ざめていく。

「おれは……何を」

 その後、悲鳴を聞いて駆けつけてきた先生たちが男を取り押さえて男は捕まり、男は裁判を受けることになった。最悪死刑になるだろう。彼はそれほどのことをした。
 しかし華菜は不可解でならなかった。どうして自分が男に触れたとき、男は不意に殺意をなくしたのか。彼女を殺さなかったのか。

 そしてある日華菜は知った。自分には、「触れた相手の殺意や敵意、害意を消す力がある」と。
 以降、彼女は学校内で『救世主』として崇めらるようになったが、彼女の親は「能力者を育てた親」として罵られ、嘲られるようになった。
 華菜の力は平和の力。なのにそれは異能力。
 異能力者は世間の異端。故に蔑まれる定め。
 あの時。華菜は自分の力を使わなければ、死んでいたのに。
 世間は彼女の自己防衛すら、「異能力者め」と否定した。

 ただ一人——風道信互を、除いて。

 彼だけは何も言わず、彼女には以降も同じように接した。
 それは、一年前の変事。
 華菜が中学校に上がって、一月が経った頃の——.


  ◆


「七虹(しっこう)異能学園?」

 その日。ある知らせが、告知された。
 彼女の家に届いたのは、虹色の文字で書かれた綺麗なチラシ。
 そこにはこう書かれていた。

〈全国の異能力者に告ぐ! 七虹異能学園に来たれ! 来た生徒には、その力を社会で堂々活かせるようになる『資格』を差し上げる!〉

 それは、本当に小さなチラシだった。他のものに紛れてしまいそうな、外見的にはそこらのチラシとは何ら変化のないチラシだった。
 しかし、書かれた文章に、華菜の心は高鳴った。

「社会で堂々……」

 能力者は幸せになってはならない。なぜなら異端であるから。
 誰の言葉だったか。そんなことを言っている人を、華菜はテレビで見たことがある。
 しかし、堂々と社会に出られるようになったら? 能力者でも幸せになれるのだろうか。
 だから華菜は決めた。チラシを両親に見せて、言った。

「父さん、母さん。私、ここに入りたい!」

 彼女がチラシの先に見たのは、未来への展望。
 彼女の両親は、彼女の差し出したチラシとその目に浮かぶ強い光を見て、頷いた。

「「華菜がそう望むのならば」」


  ◆


 募集人数は20人、しかし入学希望人数は100人を越える。
 七虹異能学園長のリェイルは事前に送られてきた入学希望書を見、内容を散々吟味して、20人の生徒たちを選びだした。
 華菜の家にも通知が来た。それは、『入学許可証』。
 手紙の中に入っていたそれを見て、華菜は嬉しそうに飛びあがった。
 手紙には、学園内の特殊な規則が書かれていた。

・生徒たちは決して本名を名乗ることは許されず、「コードネーム」を名乗ること。
・生徒たちは学園内で、自分に合った「コスチューム」を与えられる。
・生徒たちは入学前に一度学園に来て、上記の二つを決めること。

 といった内容が。
 ひとまず入学前に、学園に行けということらしいと華菜は判断した。
 手紙に書かれた入学式の日付は今からちょうど一カ月後。
 その日が華菜は、待ち遠しくてならなかった。
 だから翌日、学園に来ることを決めた。


  ◆


「ようこそ七虹異能学園へ。私が学園長のリェイルです」

 学園長リェイルは、ストレートロングの金髪に抜け目のない紫の瞳をした、細身の女性だった。黒いフォーマルな衣服をきっちり着こなした、まるで隙の見当たらない印象。しかしそれでもその口には穏やかな笑みが浮かんでいて、厳しそうな女性なのに威圧感を与えない。
 彼女は首をかしげて、やってきた華菜を見た。

「あなたがここの新しい生徒さんですか? 名前は?」
「華菜です。花咲華菜」
「ああ、平和の力の」

 名乗れば彼女はすぐにわかったようで、成程とうなずいた。

「今日来られたということは、コードネームとコスチュームをご所望ですね?」

 彼女の言葉に、華菜はハイと答えた。
 正直好きにしてくれて構わないのですが、とリェイルは言う。

「中には本名を明かしたくない能力者もいます。コードネームはそのための方便なのです。ですので好きに決めてくれて構いません。コスチュームも同様ですね。私ならば……自分の能力に準じたコードネームにしますがね。わかりやすいので」

 その返答に、華菜は悩んだ。
 自由に決めていいと言われると、かえって決めづらくなるものだ。
 華菜は必死に記憶をたどる。

 確か自分の能力である「平和」は英語でPeace、平和といったら鳩、鳩は確か、英語で……Pigeon、だったかと、平凡であった頃の勉強をかろうじて思い出す。
 平和、鳩。平和の鳩。ピース、ピジョン。ピース・ピジョン!

 ——決まった。

 華菜は、花が咲いたような笑顔を見せた。

「決めました……。私はピース。ピース・ピジョン! 平和の鳩です」

 ピース・ピジョン。口にして改めて、それが自分の名なのだと彼女は再認識する。
 良い名前ですね、とリェイルはほめた。

「では、コスチュームの選択に行きましょうか。そうそう、外見はコスチュームに合わせて貴女の好きなように変化しますので、コードネームを名乗る前の貴方の正体は誰にも、わからないようになっています」

 衣装室に案内しましょう、とリェイルはそっと立ち上がった。

  ◆

 本当に様々な衣装があったけれど、平凡を自称する華菜——もといピースは、結論、平凡なコスチュームを選んだ。
 よく言えば無難、悪く言えば陳腐。白を基調としたどこかの学校の制服にありそうなセーラー服に、頭にはオリーブの髪飾り。茶色のショートボブの髪に、白い長靴下、茶色の靴。
 しかしその服装はシンプルでこそあったが、彼女にはよく似合っていた。
 置かれていた鏡を見て、ピースは頷いた。

「これでいいです。学園長さん、どうもありがとうございました!」

 彼女が動くたびに、頭につけたオリーブの葉が揺れた。
 学園長リェイルはそれを見、優しく微笑んだ。

「これで必要なことは決まりましたね。一応説明しておきますと、この学校は全寮制。ですから一度入学しますとしばし、親元には帰れなくなりますがよろしいでしょうか?」

 それくらい、ピースは覚悟のうちだ。

「大丈夫です! 正直、わくわくがたまらないんです!」
「気に入っていただけて何よりです。そうそう。あなたがこの学校の敷地を出たらコスチュームは自動解除されますが、あなたがこの学校の敷地にまた入ったとき、今回選んだコスチュームは自動で装備されます。コスチュームは変えることができません。……これで確定してもよろしいでしょうか」

 ピースはもう一度、鏡を見た。
 そこに映る姿は紛れもない、平和の使い。

「ええ、このままでいいです!」
「そうですか。それでは決めることは決めましたので、本日はお引きとりを願います」
「わかりました!」

 リェイルの求めに従って、ピースもとい花咲華菜は、コスチュームを着たまま学園の敷地を出た。
 彼女の身体が完全に広大すぎる学園から出たとき、着ていたコスチュームは光とともに消えて、彼女はいつもの普段着を着ていた。
 どんな力が働いたのかはわからないが、今は異能者の時代である。学園長が異能者であっても、何らおかしいことはない。華菜は学園長もまた異能者であると踏んでいた。
 しかし、そんなことはどうでもいいか。
 華菜は学園の敷地を出て数歩歩いたあと、再び学園を振り返った。
 その学園の敷地には広大な森があり、校舎はその森の奥にある。
 不思議な雰囲気のする学園だけれども。そこが華菜の、新しい場所となる。
 華菜は、入学式の日が待ち遠しくてならなかった。


  ◆


 それから約一ヶ月。
 ついに訪れた入学式の日、華菜もといピース・ピジョンは、森の中を校舎に向かって歩く道すがら、驚くべき人に出会った。
 藍色の髪に青の瞳、中世の騎士みたいな鎧姿。
 彼は彼女の知っている「彼」とは違ったが、宿す雰囲気は変わらなかったから。
 思わず、彼女は呼んでしまった。

「信互く……」
「違う、ソーマだ!」

 咄嗟にその言葉に反応した彼。彼はやってきたピースの存在を認めると、何だとつぶやいた。

「……お前か。ここでは何と名乗っているんだ?」
「ピースです。ピース・ピジョンです」
「平和の鳩か、お前らしいな。こっちはウィルド・ソーマだ。ソーマと呼んでほしい」
「ソーマ?」
「Sword Masterだからソーマ。スペルもそのままSwormaだ。……由来は省く」

 彼は、いつもの彼らしくクールに対応した。
 しかしピースには疑問があった。
 七虹異能学園は異能者しか来られない学園。ソーマが信互であったとき、彼が異能を持っていたことをピースは知らなかった。
 だからピースは彼に訊ねた。

「信互く……じゃなくて、ソーマくん。何か、異能とかあったの?」

 ああ、と彼は頷いた。

「この力のせいで、不運を強いられてきたんだ。申し訳ないが、相手がお前でも話さんぞ」
「そっか……」

 人には人の事情がある。そこを下手に詮索するほど、ピースは野暮ではない。

 そうこうしている内に、やがて学園の校舎が見えた。
 確か、体育館に集まるようにとかお知らせには書いてあった。ピースたちはその大きな校舎に足を踏み入れ、体育館を目指した。
 途中、様々な人を見かけた。
 ピースみたいに制服姿(ただしブレザーとスカート)の銀髪の少女もいれば、髪の毛が左右で白と灰色に分かれた少年、銀髪でタキシードを纏った少年など。本当にたくさんの人が、この学園にはいるようである。

 みんながみんな体育館を目指していたため、特に考えなくても到着することができた。
 体育館に入った生徒たちは、思い思いに自由に広がった。
 それからしばらくして、体育館の奥から学園長が現れた。何かが始まる予感がする。
 彼女は金色の髪を揺らしながらも、手にマイクを持って皆に声をかけた。

「皆様、皆様。選ばれし能力者の皆様、よくぞお集まりいただきました。私はここの学園長のリェイル。今から校則と、皆様全員に『卒業試験』を差し上げます」

 その言葉を聞いて皆、いぶかしげに首をかしげた。卒業試験? 一体何をしろというのだろう。
 リェイルは、ふふふと微笑んだ。





「簡単です。皆様に殺しあいのゲームを演じてもらえればいいのです」





「……え?」

 その言葉は、あまりに突飛で。みんなの頭に一斉に、無数の疑問符が浮かんだ。
 リェイルは淡々と説明を続ける。

「ここの生徒数は20人です、が。今日を含めて一週間、生徒同士で己の異能を活用して殺し合いを行いなさい。一週間以内に人数が16人未満になっていなかった場合は、私が責任を持って皆様を殺しましょう」
「ちょっと待ちなさいよ!」

 学園長の言葉に、赤いツインテールの髪をした、赤い瞳の少女が反論した。彼女は全体が赤かった。髪も目も着ているワンピースも。
 彼女は目に怒りを宿して、学園長を睨みつけた。

「信っじらんない! あたしたちはこんな、殺し合いなんか望んでいないよっ! 欲しいのは『資格』だけだもん! さっさと寄越しなさいよね!」

 彼女の言葉に、リェイルは柔らかに異を唱えた。

「そんな都合のいい話が、どこにありますか」
「そんなのないよ、わかってる! でもさぁ、何で殺しあいなわけ!? 『資格』が決まった人数しか貰えないものなら、成績順で良かった人から与えていくとかできないわけっ?」
「それでは面白くありません」

 リェイルは笑っていた。嗤っていた、わらっていた!
 綺麗に見えた紫の瞳は、ゆがんだ喜びに揺れていた。
 彼女は赤髪の少女を見た。

「貴女はルールに逆らいますか?」
「当然じゃないの! あたし、この学校から抜けるから! じゃね!」
「できるとお思いですか!」

 踵を返して歩き出そうとした少女。その背中に、リェイルは己の手を向けた。


 次の瞬間。


 グジャァァアア! 聞くにおぞましい音が、して。


「あ…………」


 リェイルの手から伸びた漆黒の茨が、少女を背中から貫き、腹を裂いて一気に広がった。
 血の匂い。腹を開かれ、飛び散った臓物。
 身体をけいれんさせて、倒れ伏した少女。
 あちこちで悲鳴が上がった。それはピースだって例外ではない。
 血、肉、臓物。彼女自身から生まれたものが、赤い彼女をさらに赤く、紅く緋く赫く朱く染めていく。真紅の花が、一瞬にして咲いた!

 リェイルのゆがんだ笑みが、遠くに見えた。
 悪魔の如く、笑いながらも。
 彼女は告げる。





「——さあ、ゲームを始めましょう」





 決して望まぬ殺し合いが。生徒同士の化かし合いが。呪われし運命の遊戯が、悲しみしか生まないゲームが!
 今、幕を開けた。
 生徒たちに、逃れるすべはなかった。


 ——死にたくないッ!


〈プロローグ 了〉

◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ †

 次からは本格的に「ゲーム」が始まります。只今の人数は19人、生き残るは16人、減るは3人。
 一体誰が脱落するのか?

 さあさあ始まった悪夢のゲーム! 死ぬのは誰で、生き残るのは誰?
 次の話に、請うご期待!

DG 運命遊戯 1-1-1 騎士が剣を捧げるは ( No.3 )
日時: 2017/12/16 15:03
名前: 流沢藍蓮 (ID: Yv1mgiz3)


◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ †


《第一ラウンド 小手調べの殺戮ゲーム》


〈一章 手を取り合えば?〉
 

 1 騎士が剣を捧げるは


 早速の人死にに騒然となった体育館。いつどこで暴動が始まったっておかしくはない。誰も彼もが今にも不安を爆発させそうになっていた。体育館は一触即発の雰囲気に満ちていた。 
 そこを。

「鎮まりなさい!」

 よく通った女の子の声が割った。鶴の一声にざわめきは鎮まる。
 見るとそこには年長そうな、紫のツインテール、濃い紫の瞳の少女がいた。あまり幼い感じがしないから、ピースよりは年上だろう。
 彼女は茶色の半袖ジャケットに紫色のホットパンツ、肘や膝の部分には紫色の手甲といった、活動的で動きやすそうな軽装をしていた。
 紫色の少女は、混乱するみんなに言った。

「ねぇねぇみんな、頭冷やしなさいよ! ここでこんなに慌てていても、一体何になるっていうのよ? 確かにデスゲームは始まったわ、大変結構! ならばね、混乱して騒ぐよりも、いかにして自分が生き残るか、それを考えるのが先決じゃないの!? ええ、確かに人は死んだ。あたしもこの目でしっかり見たわ。だけどそれがどうかしたっていうの? あんな見せしめに惑わされちゃ、この先絶対に生き残れないからっ!!」

 彼女の言葉は、混乱するみんなの目を覚ました。皆、心の平穏を取り戻していく。そうだ、そうだ。嘆いていても何も始まらないのだと、目が覚めたように呟く人たちがいる。
 紫の少女はそれを見て、ふうっと溜め息をついた。

「はーい、みんな目が覚めたわね? 一応名乗っとく。あたしはエーテナ、名前の意味なんてないわ。コードネームはテキトーよ」

 彼女は名乗り、笑みを浮かべているリェイルの方を見た。
 首をかしげて、彼女に問う。

「で? あたしたちはこれからどうすんの。どうすればいいの。殺し合いは今すぐかしら? 何か情報をくれないと、動きづらくて困るんだけど」

 その質問を待っていました、とリェイルは大きくうなずいた。
 彼女は説明を始める。


「開会式は終了しました。ではでは、これからゲームのルールを解説しましょう。
 まず、皆様には後で指定した教室に行ってもらいます。そこでお互いに軽く自己紹介しましょうか。このゲームは殺し合いのゲームですが、チームを組みたければ組んでも構いません。単独行動よりも、チームを組んだ方が生存率は上がるでしょう。

 次に。一応ここは学校ですからね? あなたがたの異能力についての授業を行います。ただし途中で抜けたり勝手に殺し合いを始めたりしても、先生は黙認いたします。ここは『学園』とある以上、最低限のことはするつもりですよ。

 そうそう、途中棄権なんて言いだした者は、私が即刻処分いたしますのでそのつもりで。あの少女みたいになりたくなければ、最後まで戦い抜いて下さいね。

 学園内には寮があります。どの部屋を使っていただいても構いませんし、食堂や風呂場もあるので十分に活用してください。ただし不意打ちなどに関しては私は関知いたしません。とりあえずこの学園で、皆様は一定期間過ごしていただきます。

 後で皆様には自己防衛用の小型ナイフを配ります。どう使うかはそちら次第です」


 そう一気に説明を終えた彼女は、ここからが本題です、と悪魔の笑みを見せた。

「期間は一週間。一週間が過ぎるまでに人数が16人未満になっていなかった場合は、私が責任を持って皆様を殺します。皆様の能力は全て把握済み、私は皆様全員を殺すことができます。
 要は、期間内に確実に殺し合いを行ってくださいということです。一週間が過ぎるまでに規定の人数になった場合は、これ以上の殺しを認めません。余計な殺戮を犯した者は、責任を持って私が殺します」

 ——一週間以内に、三人殺せ。でないと皆殺しにする。

 学園長が告げたのは、非情な言葉だった。
 彼女は踵を返して歩き出す。

「では教室に案内しましょう。殺し合う者同士、親睦を深めてみたらいかがですかぁ?」

 その紫の瞳は、狂ったように嗤っていた。


  ◆


 リェイルに案内されたのはごく普通の教室だ。しかし誰もが不意打ちされることに怯え、皆不安そうだった。エーテナが一度は激励したが、この恐怖が彼らの間から簡単に消えるということは、ないだろう。人間不信になったっておかしくはない。
 だからこそ、チームを組むのだ。互いの命を預け合い、少しでも安心を得るために。
 信じれば裏切られることもあるだろうが、信じて得られるものもまた大きい。

 リェイルは、言った。

「とりあえずはまず、皆様に自己紹介していただきましょうか」

 そうしなければ何も始まらない。相手が信用できる人物かどうかもわからない。
 最初はメンバーを代表して、わかったわとエーテナが進み出た。

「さっきも名乗ったけど、あたしはエーテナ。能力? 誰が教えますかっての。あくまでもあたしの意見だけれど、能力は下手に公開すると致命的になるわよ? 生き残りたいならそこは黙っておきなさい。以上」

 彼女の紫の瞳には、真剣さが宿っていた。

 自己紹介を終えたエーテナは、次は誰かと周囲を見渡す。その視線がつと、ピースの上に留まった。
 ピースは困った顔をした。まだ話すことを決めていないのだ。しかしエーテナは促すように彼女を見る。ピースは困り果てて、ついつい助けを求めるようにソーマを見た。
 彼女の窮状に気が付いたソーマが溜め息をつき、代わりに前に進み出た。

「ウィルド・ソーマ。剣を扱う騎士だ。よろしく頼む」

 言って彼は、きっちりと礼をした。どこで覚えたものか、中世の騎士の礼みたいだった。彼の纏う銀色の鎧もあいまって、ピースには彼が本物の騎士であるように見えた。
 ピースは彼が言葉をまとめるまでの時間を稼いでくれたのだと知り、彼に小さくお礼を言った。
 大丈夫だな、と問いかけるように、青い瞳がピースを見る。
 わずかな時間だったけれど、ピースはなんとか自己紹介の言葉を練り上げられたから。
 笑って、前に進み出た。

「ピース・ピジョン、平和の鳩です! よろしくお願いします!」

  ◆

 その後。それぞれの紹介を聞いて、ピースは何となくメンバーを把握した。
 彼らは敵かもしれないが仲間かもしれない。とにかく覚えないことには何も始まらない。
 中には冷たい対応をする者もいたが、そこは人それぞれなのだろう。
 自己紹介が終わったあと、リェイルは言った。

「ではでは。チームを組むのは自由です。今から一時間自由時間をあげますので、皆様は好きにチームを組んでくださっても構いません。別に組まなくったって構いません。自分でリスクとリターンを見極め、好きになさるといいでしょう」

 私はゲームマスターですので殺し合いが始まったら基本、ゲームに直接の関与はいたしません、そう言って。

「それでは。私はしばし教室を出ますよ。一時間後にお会いしましょう。それと」

 彼女は鞄を持っていて、そこから鞘の付いたナイフを取り出した。数えなくてもわかる。あれは、20本あったんだ。しかし赤い少女が死んでしまった今、彼女が出したナイフの数は予想通り19本だった。先ほど『自己防衛用のナイフ』と言っていたから、彼女はそれを出したのだろう。

「最低限の自己防衛手段はあった方がいいでしょう。一人一本ずつ、これを差し上げます」

 教卓の上にナイフを置いて、彼女は教室から出ていった。
 教室がざわめく。誰と組もうか、どうしようか。組んだら一蓮托生だよな、などといった会話が、不安と警戒、希望と期待を込めて様々に飛び交いだす。
 しかしピースは迷わない。彼女には最初から、組む相手がいた。
 青銀の騎士に、花が咲いたような笑顔で笑いかける。

「ソーマくん、私と組もう!」

 ピースの言葉に、ソーマはにやりと笑った。
 彼は右膝を地につけて左膝を立て、腰に差した剣を抜いて、柄をピースに差し出した。
 困惑したままピースがそれを受け取ると、ソーマは剣を動かし、剣の腹を自分の肩にのせるようにした。
 彼は微笑み、芝居がかった口調で彼女に言った。

「我、貴女の騎士になることを誓いましょう」

 それは、彼がピースに自分の命を預けることと同義。
 ピースは思う。確かに状況は一蓮托生ではあるが、これではあまりに一方的なのではないかと。
 ピースはまだ困惑したままで、彼に問うた。

「えっ、ソーマくん。私、そこまで求めていないよ……?」
「我が剣は、貴女のもの。ピース、オレを騎士に叙任すると、言うんだ」
「でも……」

 ソーマは苦い笑みを浮かべた。

「生憎とオレは、そこまで社交的じゃなくてね。あんたくらいしか組みたいって思える相手がいないんだよ。だから」

 青銀の騎士の瞳に宿る光は、真摯な思いを帯びていた。
 彼には他に組む相手がいない。そしてピースも、彼以外に知り合いがいないのは確かだった。
 要はお互いしか、ピースとソーマにはこの学園に知り合いがいない。ピースが持ちかけソーマが受けた。彼の返答の仕方は独特ではあったが、「組みたい」という思いは同じだから。
 ピースは何を迷っているんだと、自分を叱咤した。

(せっかくソーマくんが騎士になるって言ってくれたんだ、私はそれを受けなくちゃいけない)

 渡された剣は重かった。しかしピースは頑張ってそれを握りしめ、持ち直して改めてソーマの肩にのせ直す。

 平和の鳩は、厳かに告げた。

「我、汝を我が騎士に叙任する!」

 芝居がかった口調で返し、ピースは恥ずかしそうに笑った。
 本来はその後、主となった者は騎士に剣を向け、騎士はその刀身に口づけをして騎士叙任式は終わるのだが、ピースに手順はわからない。
 彼女は剣を慎重に握り、その柄をソーマに差し出して返した。
 ソーマは穏やかに微笑んでいる。

 ここに、新たなチームが誕生した。
 平和の鳩と、それを守る青銀の騎士と——。


  ◆


 影間 莉子(かげま りこ)は高校生だ。今年で17歳になる。
 彼女には父親がいない。父親は、彼女が幼いころに病気で死んでしまったから。
 それから彼女は母と二人暮らし。しかし間もなく家計は苦しくなって、彼女はある程度大きくなったとき、アルバイトに出なければならなくなった。

(学業なんて、やってられないわよ!)

 なんとか一家食いつなぐため、莉子はひたすら働いた。しかしそれでも彼女の母は、莉子が高校を中退することには反対だった。
 莉子には夢があったから。医者になりたい、医者になってたくさんの人を救いたい、という夢が。
 莉子の母はその夢をずっと応援し、だからこそ諦めてほしくないと娘に言った。莉子だって夢を叶えたい。しかし、今のままではいずれ、生活は破綻する。
 夢か、生活か。普通に考えれば生活を優先すべきだが、莉子は夢を簡単には捨てられない。だから大いに悩んでいた。

(あたしはあたしの夢を叶えたいよ。でも、そんな自由なんて)


 ——なかった、はずなのに。


 その日、料金請求の手紙の中に紛れていた一枚のチラシが。

『七虹異能学園 入学希望者大募集中!』

 彼女の運命を変えた。

 彼女には「力」があったから。異能力と呼べる力が。
 幸い、それはそこまで目立つものではなかったから、彼女はこれまでずっと、そのことを隠していられた。
 だが、もしも力を活用して『資格』を得られたのならば。まっとうな稼ぎ手段を得られたのならば、今の苦しい現状はきっと変わると莉子は信じた。
 だから彼女は母にそのチラシを見せて、力強く笑ったのだった。

「やりたいこと、見つけたわ」

 今の生活が何とかなれば、きっと医者になることはできる。莉子は学校に入学希望を出した。そして入学希望は受理された。
 コードネームとコスチュームをもらい、数日経って、入学式の日が来る。
 莉子は出発するために玄関先に立ち、軽く右手を上げた。

「じゃあママン。あたし、行ってくるから」
「莉子……」
「違う。もうあたしは莉子じゃない」

 彼女の気の強い瞳がきらりと輝いて、自分のコードネームを告げた。

「あたしはエーテナ。自分の未来は自分で切りひらくんだ」


◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ † ◆ †

DG 運命遊戯 1-1-2 或る稲妻の場合 ( No.4 )
日時: 2017/12/16 15:04
名前: 流沢藍蓮 (ID: Yv1mgiz3)

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 2 或る稲妻の場合


 ——ルールに従うのが、嫌だった。


 だから彼は逆らった。全力で、全力で。

 学校の規則なんて彼の前では無きに等しい。高校に行くのに髪を金に染め、目には金色のカラーコンタクトを嵌め、そもそも制服なんて着ないで鎖ばっかりジャラジャラした派手な漆黒のジャケットを身に纏い、あちこちボロボロに破れたジーンズを履き、耳には鎖の付いたピアス、靴の踵はもちろん潰す。遅刻欠席は当たり前で、授業中も授業とはまるで関係ないことをする。寝る。近くの悪友と喋りだし、騒ぎだす。まだ未成年なのにパチンコ屋に行き、下級生を脅してお金をむしり取る。何回も彼は先生に補導されて親が呼び出されたことも多々あったが、彼は反抗するばかりで一行に従おうとはせず、誰もが匙を投げた。彼はどこからどう見ても不良生徒に他ならなかった。

「俺は俺で好きにやるんだよ! 俺の人生だぜ? 勝手に歩く道決められてたまるかよ」

 そんな彼の名前は雷門寺 秋羅(らいもんじ あきら)。幼い頃から稲妻を自由に操る力を持っており、その性格と相まって極めて危険な人物とされていた。
 それなのに、勉強なんてまるでした形跡がないのに彼の成績はいつも学年トップであった。典型的な不良生徒なのに頭が良く、故に先生も彼を落第にできない。
 問題児、雷門寺秋羅は、色々な意味で学校の有名人であった。

 そんな彼も、「不出来な子」として親から勘当されて一カ月が経つ。親切な友人の家に居候させてもらっていた彼はその日、あるチラシを見つけた。

『七虹異能学園 入学希望者大募集中!』

 彼には別に、どうしても『資格』が必要な事情なんてなかった。だからそれは無視しても良かった。確かに彼は異能者だが、彼自身他者の評価なんてまるで気にしない性質なので世間から冷たい目をされるのも慣れていた。
 しかし彼は入学希望書類を出した。彼の居候先の友人は、その理由を聞いて呆れた顔をした。

「まったく、秋羅らしいよねぇ。本当に自由なんだから」

 その理由とは、単純に、

「異能学園だって? わぁお! 面白そうじゃねぇ? 俺、入学するわ!」

 といった、特に脈絡も無いものだった。
 そして彼の入学希望は受理され、彼は晴れて七虹異能学園の生徒となった。
 コードネームはジェルダ・ウォン。稲妻みたいな、鋭い響きを宿す音。
 コードネームに意味はないが、その音は自分自身を表しているようだと秋羅——ジェルダは思った。
 金髪金目、黒のシャツに黄色のジャケット、鎖ばっかりジャラジャラした灰色のズボン、胸元には金色の稲妻形のプレートの付いたネックレス、両の手の黒の指貫グローブ、漆黒のブーツ。
 彼が選んだコスチュームも彼らしく鋭い印象があって、彼は満足そうに笑ったのだった。
 そして彼は入学する。


  ◆


「ではでは。チームを組むのは自由です。今から一時間自由時間をあげますので、皆様は好きにチームを組んでくださっても構いません。別に組まなくったって構いません。自分でリスクとリターンを見極め、好きになさるといいでしょう」

 始まったデスゲーム。ジェルダ・ウォンは誰と組もうかときょろきょろする。
 教室にはたくさんの人がいた。騎士みたいな少年はセーラー服の少女に何か誓っている。阿呆らしい。
 誰と組んでも良かったが、彼はなんとなく近くにいた三人に声をかけた。

 一人は、複雑な編み込みの施された水色の長い髪と水色の瞳を持った少女。海の色をした豪華なドレスを身に纏い、いかにも海のお姫様と言った風体である。
 一人は、赤みの強い茶色の髪を後ろで一つのお下げにした少女。どこぞの村娘みたいな、やや民族的な雰囲気のするワンピースを着ている。しっかりした印象がある。
 一人は、長い銀髪と赤い瞳の少女。学園のブレザーとスカートを着用し、その上から理科室の白衣を羽織っている。白いメカっぽい髪留めを左右に付けた、タレ目でほんわかした印象がある。彼女は赤い縁のメガネをかけていた。

 そこにいたのは全員女の子だった。ジェルダは「ハーレム結成か?」などと他人事のように思いつつも、どうするかと目線で問うた。
 三人は偶然固まっていただけらしく、まるっきり会話が無かった。そこをジェルダの言葉が割ったのだった。

「ようよう、そこのお三人さん。正直組む相手は誰でも良かったが、折角だしさぁ、俺とチーム組んでみねぇ?」

 いきなり掛けられた言葉に、三人はそれぞれの表情を浮かべる。
 海の少女は軽く眉を上げ、民族的なワンピースの少女はその顔に困惑を浮かべ、白衣の少女はのんびりとした笑みを浮かべている。
 空気が、固まった。
 ジェルダは困ったように両手を顔の前で振った。

「いやいやいや、俺、変な奴じゃあないぜ? でもよぉ、折角だから誰かと組んでみたって面白そうだなぁオイと思ってだな?」

 彼は単独行動を愛する者だったが、相手が面白ければ集団行動だって嫌いではなかった。彼の興味は風のようにどんどんどんどん移っていくが、彼はまた、一度行動を共にした相手にはそれなりの友情を以て尽くす、といった一面もあった。拘束されるのは嫌っても、仲間による友情のために拘束されるのならばそれはそれで構わない。彼にはそんな一面があった。
 そして今回はデスゲーム、決して遊びではありえない。組む相手によって自身の命運が左右されると言ったって過言ではない。
 そんなゲームで彼は選択した。偶然近くにいた三人の少女を、自分と命運を共にする相手と。
 ジェルダは誓う。拒否されたら、もう誰とも組まないと。
 彼の鋭い勘が告げるのだ、彼女らと組むべしと。
 白衣の少女は、彼の申し出に破顔した。

「にゃー、にゃー。お申し出、嬉しいのです。シロはあなたと組みたいのですにゃー。シロはシロですにゃー。これからよろしくなのですっ!」

 猫みたいな口癖で、無邪気にそう答えた少女。
 その答えを聞いて、海の少女は苦笑いして彼の前でお辞儀した。

「いいですわ、わたくしも貴方の申し出に乗りましょう。わたくしの名はアキュアリア。長いのでアクアと呼んで下さっても構いませんわ」

 彼女は優雅に微笑んだ。
 それを見たら、残る一人もうなずかざるを得ない。
 民族的なワンピースの少女はまだその瞳に若干の警戒を浮かべながらも、名乗った。

「みんなが言うなら乗るしかないなぁ。私はテンプレイア。いいわ、四人でチームを作ろうか?」

 態度は人によって様々だったけれど。今ここに、新たなチームが誕生した。
 ジェルダは満面の笑みを浮かべ、大きく名乗った。彼の周囲でパチパチと紫電がはじけた。

「俺の名前はジェルダ・ウォン! よっしゃあ、チーム結成だぜぇ!」

 稲妻の申し子は、拳を突き上げ快哉を叫んだ。

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DG 運命遊戯 1-1-3 命を預けて ( No.5 )
日時: 2017/12/16 15:06
名前: 流沢藍蓮 ◆50xkBNHT6. (ID: Yv1mgiz3)


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 3 命を預けて


 このゲームはデスゲームだ。ならば知らない人に命を預けるよりは、知り合い同士で命を預け合った方が良いだろう。
 だから二人は文句なしに組んだ。だって幼馴染だから。
 「相手の能力を無効化する」少女、リィアナ・ファーンディスペリは、青眼と黒の腰までのロングヘアー、青薔薇のコサージュを頭につけて、漆黒のゴスロリ風ワンピースを着ていた。頭のコサージュの花言葉は「不可能」。その飾りを選んだわけは彼女の「無効化」能力に起因する。
 「相手が直前に放った能力を真似する」少年、アーリン・フィディオライトは金髪に明るい緑の瞳、黄色のシルクハットをかぶり、黄色の背広を着ている。リィアナとは違い、よく目立つ服装だ。
 親から強引に入学させられたリィアナは思う。このデスゲームを生き残るには、目立たぬことが大切だと。

「出る杭は打たれる、ですからね」

 そしてあえて目立ち、リィアナに向けられる目をそらす役割が彼女の幼馴染であるアーリン。彼は「道化」を自称していた。
 彼の本当の名前は山中 智也(やまなか ともや)。リィアナ——ある名家の令嬢である古門院 幽奈(こもんいん ゆうな)の幼馴染である。
 彼自身は実際、幽奈と違って大した身分でもない。ただ彼女の近所にいた、それだけだけれど。いつしか二人は、よく行動を共にするようになっていた。
 デスゲームが始まった時、彼は笑って幼馴染に言った。

「ねぇねぇ幽奈。さっそく僕と組まないかい?」

 明るく無邪気な幼馴染に、彼女は「いいわ」と穏やかに微笑んだ。
 彼女自身、自ら望んでこの学校に来たわけではない。そもそも普通に過ごしていれば、「異能を無効化する」能力なんて、誰が気付くというのだろう。
 ある日、幽奈と智也が連れ立って歩いているときに二人は異能者に襲われ、そこでそれぞれの才能を開花させた。
 そのままでも、良かったのに。異能に足を突っ込まなくても、生きていけたのに。見栄っ張りな幽奈の親は、彼女を強引に学校に入れた。
 だから智也はついていった。「幽奈一人じゃ心配だから」と。
 そうして二人は、今に至る。
 望まぬ入学、始まったデスゲーム。リィアナもアーリンも他の人みたいに強い願いを抱いて入学したわけではないけれど。
 思いが、あったから。
 リィアナは、誓う。

「父様、母様。私はこのゲームを絶対に生き残るわ。そして教えてあげるんだから。あなたたちが、愛しの娘をどんな地獄に放り込んだのか」
 知ってもらわなければ、ならないから。

「あなたたちが私の意思を無視しなければ、無駄な見栄を張らなければ私は平穏に生きていけた!」

 だからこそ、生き延びる。だからこそ、生き残る。
 大した理由にもなってはいないが、それがリィアナの「理由」だった。


  ◆


 「化け物」と呼ばれていた。触れたものを破壊する力を持っていたがために。
 少年は見た、自分の手のひらを。血に染まった真っ赤な手のひらを。
 彼の目の前には、破壊された真っ赤な何かがあった。それの元は人体であったが、今やもう、元の姿さえ定かではない。
 飛び散った臓物と肉の塊、所々に見える白い骨、こぼれ出た真紅の脳髄と飛び散った脳漿、広がるはどこもかしこも赤の光景。
 ムッとするような血の匂い。
 ああ、これは悪夢だろうか。悪夢ならば早く覚めろと少年は強く願ったが。
 少年はじっと手のひらを見ていた。あらゆるものを破壊する力を持つ、最凶の力の宿る手のひらを。
 彼は己の宿す力の強さを、知っていたから。
 この血の匂いと粘りつくような感触が、何よりも冷たい現実を突き付けていた。

 ——俺は、人を殺してしまったんだ!

 少年の瞳から涙がこぼれた。その色は血の色をしていた。
 彼は殺すつもりなんてなかった。ただその人たちに触れたかっただけだった。
 なのに。
 悪夢の力は勝手に暴走し、触れたその人たちを肉塊に変えた。
 どうして、どうして。彼はそんな力など、まったく望んではいなかったのに。
 狂ったように歪む視界。彼は思わず膝を付き、血濡れた床に手を付いた。
 そして、制御できずに暴れ出す破壊の異能。
 床が、崩れた。
 
「うわっ!」

 彼がいたのは、一軒家の二階。
 崩れた床に巻き込まれ、彼の身体は落ちていく。その上に落ちてきたのは、破壊された元人体。ついでに重い家具も落ちてくる。
 ドサドサドサッ。落ちてくる感触に、彼は己の命の終わりを感じた。
 彼は薄れゆく意識の中、そっとつぶやく。

「そうさ、終わっていい……。こんな化け物なんて、誰も生きてほしいって願ってはくれないだろうさ……」

 化け物は、消え去るべき。そもそも生まれるべきではなかった。
 彼が最後に思ったのは、自分が殺した両親のこと。
 愛していたのに、殺してしまった肉親のこと。

  ◆

「まさくーん」

 名を呼ぶ声がする。白鳥 正輝(しらとり まさき)は目を覚ました。
 彼の目の前には茶色っぽい髪の少女。のほほんとして穏やかな、可愛らしい顔をしている。彼女の名前は沢地 瑠奈(さわち るな)。彼の幼馴染であり——同時に、彼を救った恩人でもある。
 あの日。警察がやってきていろいろと事情聴取してきたあの日。自ら誤って両親を殺し身寄りをなくした彼を救ったのは、この幼馴染であった。
 彼女は彼の隣に住んでいたから。彼の家が壊れたのを聞き、慌てて駆けつけて来たのだという。
 そして危うく施設に入れられそうになっていた彼を一緒にやってきた自分の両親を説得し、何とか沢地家の養子として自分の家に引き取ってもらうことになった。こうして彼には新しい居場所ができた。
 あの事件のあと彼は長いこと心を閉ざしていたが、瑠奈の変わらぬ優しさによって、彼はようやく普通の生活ができるようになった。自分の恐るべき力も何とか制御できるようになった。
 そんな彼が願うのは、両親への贖罪。
 彼は己の力で両親を殺してしまったから。ならばせめてこの力で、誰かの役に立ちたいと願うようになった。
 
「まさくーん?」

 彼を呼ぶ声がする。正輝は微笑んでベッドから身を起こし、素早く着替えて瑠奈を見た。

「朝からどうした?」
「こんなお手紙が来てたんですよー」

 彼女が見せてきたのは、何の変哲もないチラシ。
 
『七虹異能学園 入学希望者大募集中!』

しかしそこに書かれていたのは、正輝の希望を叶える道標(みちしるべ)になりそうなことだった。

「『資格』……」

 彼は驚いたような顔で、その文字を見つめていた。
 よかったねぇと瑠奈が笑う。

「まさくん、これで希望を叶えられるですー。でも、私も一緒に行っていいですかー?」
「当然だろう。むしろ一緒に行ってくれとこっちが頼みたいくらいだ」
「やったぁです!」

 無邪気に笑う瑠奈。
 彼女もまた、能力者であった。
 彼女の異能は癒しの力。触れた相手を、相手が致命傷を負っていない限りはどんな傷でも治す力。その力は強力で、彼女ならば誰よりも人の役に立てるだろうと正輝は思う。
 チラシに書かれていた『七虹異能学園』は能力者のための学校だ。ならば彼女も共に入学できるかもしれない。
 正輝は己の先に、新しい道が拓かれていくのを感じた。
 彼は力強く笑って、瑠奈に言った。

「俺は、行く。この異能学園へ! そこでこそ自分は新しい毎日を始められると、そう信じる」
「ならばパパとママに言ってくるですよー。まさくんは」
「自分の口から言うさ。おじさんおばさんには世話になっているしな」
「おじさんおばさんじゃないです! まさくんはもうこの家の子なので、父さん母さんなのですー」

 その言葉を聞いて正輝は一瞬、自分の表情を暗くした。

「……俺にとってのパパとママは、俺の殺したあの二人しかいないんだ。たとえ戸籍上養子になっても、それだけは、変わらない」

 彼の脳裏に一瞬閃いたのは、あの悪夢の日の光景。
 自らの手で両親を殺した。ただ抱き締めたかっただけなのに。
 あれから何年過ぎた? 八年は過ぎた。もうこの家で過ごした時の方が長くなってしまった。
 それでも、それでも。あの二人は、彼の本当の両親だったから。
 瑠奈はしゅんとした顔をした。

「……ごめんなさい。考えてなかったですー」
「沈むな。こっちの問題だ」

 正輝は不器用に瑠奈を励まして、義理の両親のいる応接間に向かった。
 
  ◆

 二人はともに正輝と瑠奈が異能学園に入学することを許可してくれた。そして義母の優花は正輝を励ましてくれた。

「よかったじゃない、正輝。……ようやく、止まっていたあなたの時間が動き出すのねぇ」

 止まっていた正輝の時間。そう、それは彼が両親を殺したあの日から。
 それが、動き出す。その言葉は、本筋をついているように思えた。
 しかし、と彼は首をかしげる。

「瑠奈は関係ないだろう? 『化け物』の俺とは違って、彼女にはまだ普通の人として生きていく道が」
「だから私が行きたいのですー! まさくんもさっき許可してくれたじゃないですかー」

 義理の両親に申し訳ないと思ったのかそう言いだした正輝の身体を、瑠奈がぺしりと叩いた。
 彼女はその目に強い意志を浮かべて両親を見た。

「私、行くのです! まさくんと異能学園へ!」

 彼女は、気付かない。自分が正輝に抱いているこの感情が。彼と一緒ならばどこまでもいけると信じ、彼の隣にずっといたいと願うこの想いが。

 恋と、呼ばれることに。

 いつからだろう。幼い頃から正輝と瑠奈は一緒だった。正輝が「事件」を起こしてしばらく誰とも話せなくなった時も、瑠奈はずっと彼の傍にいて彼を支え続けた。
 最初はそれは単なる好意だったのに、好意はいつしか恋に変わった。
 だから彼女は、彼とともに異能学園に行く。
 両親もそれに特には反対しなかった。
 やがて入学希望書は受理され、二人は七虹異能学園に入学する。

  ◆

 コードネームはイグニス・シュヴァルツ。漆黒に一部白のメッシュが入った髪、漆黒のマントと漆黒のジャケット、漆黒のズボンに漆黒のブーツ。手には漆黒の指貫グローブ。
 正輝の選んだコスチュームは、全身で闇を表す服装。
 彼は自嘲的に思ったのだ、『化け物』に光なぞ似合わないと。
 闇に潜み住む破壊の災厄。それが彼、イグニス・シュヴァルツだった。

 コードネームはアルカナ・ファイオルー。淡いブロンドの髪に桃色の瞳、黄色と桃色を基調にした可愛らしいワンピース、明るく華やかな茶色のブーツ。頭には桃色の花飾り。
 瑠奈の選んだコスチュームは、全身で光を表す服装。
 彼女は無邪気に思ったのだ、こんな綺麗な服を着てみたいと。
 光に舞い踊る癒しの妖精。それが彼女、アルカナ・ファイオルーだった。

 破壊と治療、真逆の能力。破滅的と牧歌的、真逆の性格。
 そんな二人だけれど、二人は不思議と息が合った。
 デスゲームが始まった直後、二人は運命に導かれるようにしてチームを組んだ。
 それは、当然のことだったのかもしれない——。


  ◆


「……役者がそろってきたじゃない」

 次々とチームができていくのを、エーテナは冷めた目で見ていた。
 そうだ、チームを作らなければ。内気な子の方がエーテナにとっては御しやすい。
 彼女は周囲を見渡した。今現在、チームを組まずに残っているのはエーテナを抜いて八人。
 彼女はその中でも、一人の少女と一人の少年に目をつけた。
 一人は、神が左右で分かれ、目の色が特徴的な灰色の少年。髪は右側が白で左側が灰だ。前髪がやたら長い。目の色は灰色っぽい白目と黒目。身長155ほどで小柄である。部屋着のようなフードのついた、ゆったりとした灰色の服をフードを被らずに身に纏っている。
 彼は少し内気で自分から輪に入れなさそうな印象があったから、エーテナは自分から誘うことにした。
 このチームではエーテナがリーダーになる。我の強い人間はいらないから。

「さっきも名乗ったけれどあたしはエーテナ。誰かチームを組む相手を探しているんだけれど、みんな埋まってきちゃったのよね。だからあたしはあんたに訊くわ。ねぇ、良かったらあたしとチーム、組まないかしら。嫌なら別にいいわ、他を当たるから」

 彼女が笑顔で声をかけると、灰色の少年は驚いたような顔をした。

「エーテナ。自己紹介とかで目立ってたから知ってる。僕でも……いいの?」

 ええ、とエーテナは頷いた。

「消極的でもいいじゃない。助け合う心さえ持ち合わせていれば、誰だってオッケーよ。ただしチームはあたしがとりしきるし、二人だけだと心細いからあと一人誰かお誘いするわ。それでもいいのなら、乗ってくれるかしら」

 トーンは困ったような顔をして左右を見た。彼とエーテナは初対面だ、彼が警戒するのもうなずけるが。
 周囲に誰も知り合いがいない場合、目の前にいる人を信じるしかない。そうやって信じた人に、自分の命を預けるのだ。
 灰色の少年は、わかったよとつぶやいた。

「わかった。お誘い、受けるよ。足手まといになるかもしれないけれど、頑張るからよろしくね」

 エーテナは彼の手を握って、力強く微笑んだ。

「何かあったらあたしに頼りなさい。大丈夫よ、みんなで絶対に生き残るから」

 そして彼女はもう一人、目をつけていた少女に近づいた。
 彼女はウェインと名乗っていた。青みがかった銀髪に紫の瞳の少女。目立たぬ灰色のワンピースを身に纏い、黒の長靴下、銀の靴を履いている。内気で警戒心が強そうで、それでもどこか脆い印象があった。
 彼女はエーテナが近づいてくると、エーテナを不安げな瞳で見つめた。エーテナは彼女を安心させるように、穏やかに笑った。

「初めまして、あたしはエーテナ。あなたとチームを組みたいのだけれど、どうかしら」

 エーテナが少女に声をかけると、少女はますます不安げな顔をした。

「初めまして……。でもボク、あなたのことを信用できないよ? そもそも初対面の人をどうやって信用しろって? でもでも、チームを組まないとボクはきっと、生き残ることができないんだよね……。でも怖いんだ。どうすればいいだろう?」

 少女は迷っていた。本当は誘いを受けたいのに、裏切りへの恐怖がそれを受けることをためらわせる。
 彼女には、背中を押す言葉が必要だった。
 エーテナは優しく笑って、勇気づけるように少女に言った。

「信用すればいいじゃない」

 どこまでも勝ち気で、全身から自信をみなぎらせて。
 「信ずるに足る」と思わせればよい。頼りなさげにしてはならない。
 エーテナは言う。

「あたしを信用すればいいじゃない。あんたは気づいているの? その人間不信が自分の選択肢を狭めているって! 折角人が誘っているんだから受けるのが道理ってもんでしょ。あたしはそう簡単に死にはしないわ。いいからあたしを信じなさい!」

 叫び、堂々と立つエーテナは確かに、「信ずるに足る」と思わせるだけの強さがあった。
 そして何より。ウェインは彼女の傍にいることで、安心さえ覚えた自分を知った。
 強いエーテナの傍なら、強い彼女の傍なら! きっと死なずに済むと、なんとなくの勘でそう思った。
 ウェインはおずおずとささやくように言った。

「……信じて、いいの?」
「当然でしょ? ただし仲間は他にもいるからよろしくね」
「わかった……」

 エーテナはウェインに手を差し出した。無骨な紫の手甲の付いた手。しかし握ってみれば暖かくて、ウェインの緊張が一気にほぐれた。

「エーテナ、エーテナ」

 何度もその名前を呼んで、ウェインは満面の笑みを浮かべた。

「ボクはウェイン! これからよろしくね!」
「よろしく。さて、ウェイン、トーン。あんたたちも仲間なんだから、互いを認識して挨拶なさい」

 ウェインのチーム入りを確信したエーテナは、ウェインとトーンを引き合わせた。
 内気な二人はぎこちなくあいさつを交わしたが、その心からは疑念が消えているように見えた。
 エーテナはここに、新たなチーム誕生を宣言する。

「紫の雲、今ここにあり! さぁて、生き残るために戦いぬくわよ!」

 役者はそろった、チームはできた。
 残ったのはチームに入ろうとしても入れなかった者たちと、もともとチームを作ろうとはしなかった者たち。
 その数は、六人。

 一人は、ぼさぼさな黒髪に藍色の瞳の男。右目には大きな火傷の痕があり、手袋をしている。彼はあまり人と積極的に関わろうとはしなさそうに見える。彼はゼロと名乗っていた。
 一人は、砂色の髪に鳶色の瞳の少年。髪と同じ色のジャケットを羽織って背中に弓と矢筒をつけた少年。彼はアロウと名乗っていた。
 一人は、水色の髪と水色の瞳の少年。水色の魔導士めいたローブを着用していて、全体的に青い印象がある。彼はカーシスと名乗っていた。
 一人は、白い髪に白い瞳の少年。白のジャケットに白のズボン、白のマントを羽織っていて全体的に白い。彼はヴィシブルと名乗っていた。
 一人は、栗色の髪色にこげ茶色のような瞳の色で、ショートボブの髪型の少女。彼女はベージュのVネックの制服を着用し、赤と茶色の線のチェック柄のスカートと真っ黒な靴下、黒い皮のローファーを履いていた。彼女はハーフ・アンド・セカンドと名乗っていた。
 一人は、140㎝程の小柄な体躯に緑色の瞳と銀髪が特徴の少年。黒のタキシード姿である彼はバロンと名乗っていた。

 チームを組まずに一人なのは彼ら六人のみとなった。そのうち誰が自らの意思で一人なのかは、本人以外に知るすべはない。
 そして教室の扉ががらりと開いて、金髪の学園長が戻ってきた。一時間が過ぎたのだ。
 彼女はチームごとに固まっている皆を見て、言った。

「大方チームは組めたようですね? 大変結構なことです。では改めて」

 彼女は本格的に、告げる。





「さあ、ゲームを始めましょう」




【一章 了】


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Re: 【始動】Destiny Game 運命遊戯 ( No.6 )
日時: 2017/10/23 20:26
名前: アンクルデス ◆40kNVwyVY6 (ID: UIQja7kt)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=615.jpg

お疲れ様です〜( ´ ▽ ` )

シロはジェルダ君のチームに入ったんですね!
しかも女の子3人って、まさにハーレムですねw
今後彼がどのようにチームを動かして戦うのか注目してます(^。^)


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