複雑・ファジー小説
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- 【参加型】神世ノ描画≪参加神募集中≫
- 日時: 2017/12/15 14:23
- 名前: 名無し ◆r08xd6LXWg (ID: quLGBrBH)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=983
神というのは案外溢れるほどいるものだ
これを読んでいる君もまた、神たる資質を秘めている
それを私は、一つ見てみたいと思った
——己が色を物語れ、主も神ならば容易きことであろう?
そう言って一つ、世界を作り出して見せた。
*****
・本スレ説明
はじめましての方は初めまして、私は現在諸事情により名無しですが、普段は小説とか書いているものです。
このスレは「主催者である私を除く、参加者たちだけで各自物語を書く」そんなスレです。
それにどんな意味が? と思う人がいるかもしれませんが、簡単に言えばこの小説にはメインストーリーがないのです。
つまりいつだって参加できる。他にも、デスゲーム系統ならば結末が縛られない、そしてジャンルにも縛られません。
ラブコメ、成り上がり、経営、冒険、貴方が好きなものをかけるんです。
・参加方法
URLにあるリク板のスレにてキャラシートを作成して投稿してください。
特に問題がなければ参加可能です。
・世界観
魔法、異能、学園、ダンジョン、魔物なんでもありな世界です。
別に魔王が世界を征服しようとしているわけでもないですし、かといって全くの平和でもありません。
適度に脅威があって、適度に平穏がある。そんな世界で、貴方達が作ったキャラがそれぞれ違った物語を歩むのです。
・単語説明(作者さんに縛られない共通設定を纏めて投稿していきます。不足だと判断した場合、追加していきます)
vol.1++ >>1
・参加神達
-サニ。さん
>>4 【霧隠 ヤマの素晴らしき引きこもり生活】(12/01 19:51)
-壱之紡さん
>>6 【黄昏の足音】(12/02 16:17)
-雲梯さん
>>2 vol.1『猫獣人の町と魔法授業』-1
>>7 -2 (12/6 20:14)
-YCの人
>>3 #とある秘境の都市、でもそこはダンジョンでもある
>>8 #都市ダンジョンは売り子も魔物
>>9 #端末を使い始める前の襲撃(1) (12/15 13:11)
-浅葱さん
-流沢藍蓮さん
>>5 〈Story1 天才魔導士の初日〉(12/02 14:52)
・お知らせ
そしてサニ。さんのまさしく己が色全開の投稿ありがとうございます。
12/5 しばしパソコンから離れておりましたすみません。
流沢さんの学園描写、もしかしたら今後誰かにつながるかもしれないものを開拓できる力はとても素晴らしいものです。
壱之紡さんの物語の始まり、なんととも良きものでこれからが本当に楽しみです。
12/15 更新が遅れて申し訳ないです。
- Re: 【参加型】神世ノ描画≪参加神募集中≫ ( No.5 )
- 日時: 2017/12/02 14:52
- 名前: 流沢藍蓮 ◆50xkBNHT6. (ID: Yv1mgiz3)
〈Story1 天才魔導士の初日〉
凍てついた季節、凍りつく風。
彼は冬が大好きだ。
冬は終わりの季節、閉ざされた季節。
冬の中でならば、何があっても心が揺れ動く事は無いから。
しかし今、彼のいる場所は春。明るい光が当たりを照らし、雪を溶かして全てを温めていく。
その中を、彼は歩き出す。手には入学証明書。
——目指すは、ルティーノ学園。
認められたい、それだけの思いを抱いて、魔法の天才は前へ進む。
その名を、ウィオネン・アルクィーゼといった。
◆
「入学式を始めます」
校長の言葉にしっかりと耳を傾けながらも、彼はこれからの事を思案する。
首席で堂々入学してきた彼。世間からの注目は高いが彼はそんなのに頓着しない。
冷徹に新入生たちを見た。冷静に皆を観察した。
彼は学園生活なんて楽しむ気が無く、ただ勉強に邁進(まいしん)する気しかなかったから。
首席だからコメントを述べる場面何ていうものもあったが、彼は愛想笑いでそれを適当に済ませた。
そして流れるように入学式が終わり、クラス分けされて教室に向かう。
◆
「ウィオネンくん、首席なんだ、すごいね!」
教室に入って早々、そう声をかける人物がいた。
彼が振り向けば鮮やかなピンクが目に入る。そこには桃色の髪を短いツインテールにした、赤い瞳のキュートな印象を与える女の子がいた。彼女はその瞳を好奇心に輝かせて彼を見る。どこまでも無邪気で純粋な態度で、明るく笑いながらも彼に話しかける。
「はじめましてっ! あたしはルキャナ! 炎の魔法が使えるんだよ? よろしくねっ!」
彼女は彼と話したいと思っていた。しかし彼は彼女と話すつもりが無かった。
彼は渡された教科書を開いてパラパラめくりながらも、冷たい声で返答した。
「それで?」
「……え?」
ルキャナと名乗った女の子が、その冷たさに固まった。
「それで、どうしたというんだ。名前は覚えた。しかし僕はあなたに用が無い。予習をしたいんだ、放っておいてくれないか」
クラス中の空気が、その氷のような一言に固まった。皆、驚いたような顔で彼を見ていた。
その視線を受けて彼は、鋭く皆を睨みつけた。昔から、そうだ。こうやって空気を乱す者は成敗される。それがここでも通じるのかも見物だなと、他人事のように彼は思った。
ルキャナは思い切り頬を膨らませた。
「ウィオネンなんて、大っ嫌いっ!!」
「嫌いで結構。そもそも好かれようとなんて欠片も思っちゃいない」
それは、断絶の台詞。
「僕に構うな」
そして彼は独りになる。自らそう、望んで。
◆
「魔法の実技の授業をします」
一時間目のオリエンテーションを終え、二時間目はいきなりこれだ。教室から外に出て皆が集う。実技は特にウィオネンの得意とする分野なので、彼の心はひそかに高鳴っていた。
他のクラスメイト達とルキャナが笑う。
「あたしねー、炎が使えるんだよっ!」
簡単なことを馬鹿みたいに自慢してみんなに「すごーい」と言われている。ああ馬鹿なんだなとウィオネンは思う。
彼は自分の右手をそっと開け閉めした。途端に生まれる氷の結晶。
「ああ、大丈夫だ」
誰にともなく呟いて、彼はアイスブルーの瞳で前を見る。
先生が口を開いた。
「魔法と言ったらまず実技ありきです。そのため実技は重要な科目。しかしただ魔法を使うだけでは下手な暴走を招きます。ここでは魔法を暴走させないように、しっかりと制御する方法を学びます。
第一に、精神統一。自分の魔法がどのような影響をもたらすか常に考えてください。魔法は壊すためにあるのではありません。そのことを常に心得て」
女性の先生たる彼女は言って、静かに目を閉じた。
次に彼女が目を覚ました時、そこには何本もの岩の柱が立っていた。
彼女は大地使いであるらしい。
「大地だって制御を誤ればひどいことになります。炎使いは特に攻撃的な術が多いので注意してください。大きな標的を狙うのは簡単ですが、小さな標的を狙うのには集中力と精神統一が要ります。皆さん」
彼女は手を上げて前を指し示した。
そこにはいつの間にか、いかにも魔法で作ったような、岩でできた細い棒があった。
「これを離れた場所から狙います。正確に自分の魔法を当てられるようにしましょう。では、始め!」
生徒達が散開する。「離れた場所から」と言っても具体的な距離は言われていなかったので、棒に近い場所に皆群がって自分の技を当てようとした。それでも外す者がいる。ウィオネンはルキャナがその一人になっているのを確認すると、「その程度か」と内心で馬鹿にして、棒から大きく距離を取った。
生徒たちが群がっているもののほかに、まるで違った方向にもう一本の棒があるのを、彼は正確に見抜いていた。それを狙えばいいのである。
先生がそんな彼を見て、顔にパッと喜色を浮かべた。
「よくそれに気が付きましたね、流石主席です! ……そんなに離れたところから狙って、当たるのかしら」
「まあ見ていてください」
彼は離れていく。その岩の棒が、親指ほどの小ささに見える位置まで。
彼はスッと目を閉じた。目を閉じれば己の内に潜む闇が、常にうごめいているのが解る。
彼は目を開けて、前に右手を突き出した。
「放たれよ」
短く一言。彼の指先から冷気がほとばしり、それは氷の矢となって歪むことなく前へと突き進む。どこまでも——どこまでも、前へと。
先生の歓声が上がった。
「すごい、すごいわ、ウィオネンくん! あんなに離れているのに見事に命中!? とてもじゃないけれど私には無理よ!」
反応から、命中したのだとすぐに分かる。
彼は淡く微笑んだ。
「そんなの、ただの偶然ですよ」
謙虚にしていればよく思われると、知っているから。
だから彼は敢えて、「当然ですよ」とは言わなかった。
これが彼の処世術だった。
◆
二時間目は武術。ある程度の体力作りは魔導士にも必要らしい。
そしてそれは彼の苦手分野だった。彼は内心で溜め息をついた。
「避けては通れない壁だと、わかってはいるんだがな……」
この先を思って思わず悲観しながらも、皆の動きに従って運動場へ移る。
運動場にはいかにも武闘派と言えそうな、大柄な男が立っていた。
男はよく通る声で言う。
「二時間目は武道だ! 体をしっかりと動かすことも重要なのだ。俺はここの担当のラダム。まず早速だが、この運動場を一周してもらおう。全員、駆け足!」
有無を言わさずラダムは急かす。運動場はそこそこ広く、ざっと見200メートルはありそうだ。
急かされて皆、走り出す。ウィオネンだって例外ではない。
しかし走り始めてすぐに、ウィオネンが皆から大いに遅れた。ラダムの叱声が飛ぶ。
「こら、そこ! 首席だからと言って怠けてチンタラ走らない! さっさと追いつけ!」
怠けてなんかいないのに、その言葉に彼は一瞬、腹を立てた。だから風の魔法を併用して一気に走った。それでもかろうじて最後尾に追いつける程度だった。
「なんだ、やればできるじゃないか! 出来るのならば最初から手を抜くな! わかったか!」
その言葉に応えられるほどの余裕を彼は持たない。
200メートルを走りきった時、彼は息をするのもやっとだった。彼は地に手をついて座り込み、懸命に呼吸をしようと喘いだ。周囲を見ても、そんなにひどい状況の人は彼以外に居なかった。
「よし、走ったな? ならば次! あの木まで行って帰って来い!」
間髪を入れず、ラダムは一本の木を指し示した。その通りに生徒達は動く。
しかしもう、ウィオネンは動けなかった。立ちあがる気力すらなかった。
あまりにも圧倒的な魔力を生まれながらにして持つ彼は、その代わりのように体力を持たない。彼の体力は常人以下だ。
そんな事情を知らないラダムは、ウィオネンの胸ぐらをつかみあげて怒鳴った。
「怠けるなと言っているだろうが!」
その行為にウィオネンは切れた。激しく咳き込み咳き込み、途切れ途切れになる息の下で冷徹な声を放つ。
「怠けているのは……あなたの方だ」
「何だと?」
彼の周囲で冷気が渦巻く。
「生徒の事情を知ろうともしないで……あんたこそ……怠けているのと違うか!」
無理をした身体は軋みはじめる。ウィオネンは己の意識が遠のいていくのを感じた。
それでも、一言を放つのは忘れない。
「貴様など……教師とは認めない!」
この学園の生徒は多い。その一人一人の事情を知れとはさすがの彼も言わないが、それでも知らなくてはならない事がある。武道教師ならばうまく体を動かせない人のこと、実技教師ならば魔法の制御が生まれつき不完全な人のこと。それくらい、教える者の義務だと彼は考える。
それなのにラダムはそれを果たさず、彼を「怠け者」と罵った。
だから彼は、認めない。
徐々に薄れゆく意識の中で、彼は己の心に更なる霜が降りたのを感じた。
- Re: 【参加型】神世ノ描画≪参加神募集中≫ ( No.6 )
- 日時: 2017/12/02 16:17
- 名前: 壱之紡 (ID: vGUBlT6.)
【黄昏の足音】
「無理だよ……あんな借金到底返せねぇ……」
「しっかりして下さい、今我々のギルドの命運は、貴方の手に握られているんですよ……!」
「ンな事言われてもよぉ……!!」
太陽が傾き始め、橙に景色が染まっていく。声を張り上げる商店街の売り子。色々とりどりの野菜を1つ1つ物色する子連れの母親。虫人だろうか、薄く透き通る翅を持った人物が曲芸を披露していた。今から暮れようとする街は、これが最後とばかりに活気を増している。そんな街並みを、足取り重く進む男2人がいた。賑やかな店々には目もくれず、ひたすら進む姿は少し異様にも見える。片方の男は髭を伸ばした中年で、もう片方の男は黒い耳の生えた若い獣人だった。
「くそっ、あのギルドのせいだ、何もかもあそこのギルドマスターのせいだ……!!」
「ちょっ、大声出さないで下さいよマスター」
マスター、と呼ばれた男は舌打ちをし、足元のタイルに唾を吐きかけた。すれ違う女性が眉をひそめる。トマトをかじっていた子供が男を指さす。気に留めず大股で歩く男。女性に頭を下げてから、若い獣人が小走りで追いかけてくる。黙って歩き続ける男。歩くのが速い男に獣人は苦もなく付いていき、いかにも不安そうに口を開いた。
「マスターのお気持ちは分かります。『ミス・トワイライト』はまるで人間とは思えない。ウチの主な取り扱い商品を大量に世にバラまいた挙げ句、それを我々よりも格安で、とは……明らかに潰しに来てますよ……しかも我々に金を貸して……」
「黙ってろ、ジョン」
マスターがぶっきらぼうに声を投げると、ジョンと呼ばれた獣人は素直に口を閉じた。しかし、まだ何か言いたそうにしている。余程のお喋りなのだろう。それを眼で制し、マスターはまた黙り込んだ。
真っ直ぐ続く橙の通りをひたすら進んでいく。人の行き来が少なくなる事は無い。やがて、マスターがいきなり立ち止まった。そこそこ人が出入りする店の前。ここなんですかと、遠慮がちにジョンが問うと、マスターは答ずに顔を上に向けた。視線の先には、店の看板。『ギルドショップ・トワイライト』と大きく描いてある。思わず唾を飲むジョン。気付くと、マスターは既に店の中だった。木製の扉を開くと、カラフルで、実に様々な物が置いてある広い店内。客も実に老若男女多種多様だ。マスターを慌てて探し追いかけると、混雑した中に見慣れた背中を見つける。何やら会計係の店員に尋ねているようだ。赤いショートカットの快活な女性だ。話の途中に、やっとジョンも追い付いた。
「お話は伺っております。ギルド『カリスト』のマスター様ですね? 我々のギルドマスターも貴方様をお待ちです」
「もう準備は出来ているのか?」
「はい、係の者がご案内致します」
愛想の無いマスターの言葉に対しても、笑顔を崩さない店員。手にした呼び鈴を鳴らすと、同じ制服を着た男性が現れて、またもにこやかに声を掛けられた。同じような挨拶でも、マスターとジョンは不快感を全く感じなかった。これもプロの成せる応対術なのかもしれない。
「それでは、ご案内致します」
店員の一声と共に、一行は店の裏へと進んでいった。赤髪の女性が頭を下げている。礼儀正しいな、と思いながらジョンは店員とマスターに付いていった。喧騒が段々遠のく。しかしマスターは内心それどころでは無かった。
1段1段、赤いカーペットが引かれた階段を登る。マスターの体は冷や汗だらけだった。ドクドクと跳ねる鼓動。僅かに響く階段を登る足音が、やけに頭に反響して残る。半端ではない緊張感に反応したのか、ジョンの耳もピンと張り、顔も強ばっていた。少しずつ、地獄が近付く感覚。やがて階段を登りきると、広い廊下が続いた。右側には大きな窓、左側には幾つか扉が並ぶ。廊下へ踏み出す2人の足は、細かく震えていた。
「着きました、ここがお部屋になります」
店員がにこにこと告げる。その笑顔もただただ憎らしい。2つの心臓はもう張り裂けそうであった。店員が重厚な扉の取っ手に手を掛ける。しかし、何かが弾けたのか、マスターが不意に店員の手を払いのけた。ジョンが慌てて止めようとしたがもう遅い。扉を押し開き、勇敢にも足を踏み入れる。
「失礼する、ミス・トワイライト!」
扉の先は、落ち着いた空気の書斎だった。壁には本棚が立ち並び、無意識に圧倒される。部屋の中心には飴色のテーブルがあり、手前には椅子2つ、奥には椅子が1つあった。その椅子に、見た目麗しい男性が座っていた。隣には、縁無し眼鏡をかけた男性が大剣を背中に携えて立っている。細い脚を組んだ男性は、マスターを見ると琥珀色の目を細め、妖しげに微笑んだ。
「ようこそ、『カリスト』のマスター」
突如、マスターの顔に怒りが充満した。肩をいきらせ、大声で怒鳴る。
「話が違うぞ!! 俺達が会いたいのは『ミス・トワイライト』だ、手下の男なんかじゃねぇ!!」
男性に向かい走り出そうとするマスター。ジョンが急いでマスターを羽交い締めにし、すみませんすみませんと繰り返し謝る。その2人の姿を見て、椅子に座った男性は高らかな笑い声をあげた。マスターのこめかみに青筋が浮く。ジョンが腕に力を込め、マスターを更に封じた。興奮するマスターの腕に、ぽんぽんと、何者かの手が乗せられた。振り返ってその相手を睨むと、さっきの店員が相変わらずそこに立っていた。マスターが叫ぼうとする。するとそれを制すように、店員がゆっくりと微笑んだ。
「恐れながらお客様、仰られる『ミス・トワイライト』様とは、あの方で御座います」
「……はッ?」
目を剥くマスターとジョン。思わず2人とも動きを止め、男性の方を見やる。そう、どう見ても男性。しかし、次にその男性が口を開くと、2人の言葉は完全に失われた。
「如何にも、貴方が仰られるのは私の事ですわよ? 私はギルド『トワイライト』のマスター、『ミス・トワイライト』ことスレイヴ・E・ハイラント」
男性は、妖艶に首をかしげた。
「初めまして、お二方。どうぞおかけになって?」
- Re: 【参加型】神世ノ描画≪参加神募集中≫ ( No.7 )
- 日時: 2017/12/06 20:14
- 名前: 雲梯 ◆3M7/fLURow (ID: quLGBrBH)
vol.1『猫獣人の町』-2
次の日、僕は木々を切り開いた場所で教鞭をとっていた。その周りには目を輝かした幼い生徒たち、ちょっと離れた場所ではケシーさんが少し心配そうに見守っていた。記念すべき魔法の勉強第一回目である。
さてここで僕は告白させてもらうことがあるんだ。
実は僕、魔法を教わったのは数年だけでエルフとしてはすんごい短いんだ。しかもその後は独学でといっても旅する間の暇つぶしぐらいだったから魔法はそれほど得手ではない。
だから僕が今からここに書く魔法の訓練の仕方とかは学者さんが見たらお笑いかもしれない、そんな認識でお願いしたい。あとこのやり方をするときはくれぐれも室内とかではやらないほうがいい。
まず魔力を感じること、これが一番大事だと個人的に思っている。魔力は多かれ少なかれどんな人も持っていて、それが普段は体内をめぐっている。これを先天的に感じ取れる人もいるけれど、大体は言われてもわかんないんだ。
「それじゃまずは皆の体の中にある魔力を感じ取ることから始めよっか」
だから分かりやすい程の魔力の塊、これをぶつけることで無理やり感じさせるんだ。もしかしたらもっとわかりやすいやり方があるかもしれないけどとにかくこれが僕のやり方。
魔法にすらしない魔力の塊は無害だけれど、あまり当てすぎると何が起こるかからない。だから僕はとある属性の魔力ならばと考えていた。
簡単に言えば、大成功だった。僕の属性である「火」の魔力を体中から放出してみるとみんな、一度は慌ててしまったけれど多くの子が魔力の感覚をつかみ取ることができた。生物として恐怖の対象である火、危機察知能力が高い獣人ならばもしやと思っていたんだ。
「あの、一応注意を促してからお願いできませんか?」
とはいえまだ幼い子が多くて泣き出してしまった子もいて、ケシーさんに怒られたけど。
とりあえず感じ取れた子にはそれを体内で意図的に動かせるように、まだの子には今度は水の魔力を放出してみた。
けど水が怖いっていう猫獣人が多くてもっと泣かれてしまった。本当にごめんなさい。
本当はもっとゆっくりやりたかったんだけど、午後からは親の手伝いをする、っていう子が多かったからちょっと粗雑になってしまったかもしれない。
くれぐれもまだ魔力を体外に出そうとしないように、そう言い聞かせてその日の授業は終わった。
あとは自由時間であるため、一人森を歩きながら物思いにふけらせていただいた。
獣人が魔法をあまり得意としない、そんな世間一般の常識についてだ。だからこそ彼らは身体能力の高さや嗅覚などの能力にだけ目を向けられることが多いが、授業の成果を見るにもしやと。
ではなぜ、色々と勝手な憶測を建ててみても納得いくものはない。皮膚を覆う毛皮が魔力の放出を防いでいるのか、それとも魔力量が全体的に低いのか、旅なんてしていなければ研究してみたいことでもある。
そんなことばかりしていたからか、森の深い場所まで来てしまっていた。辺りは薄暗く、更に迷い込むのも待っているように見える。
「……あーいるねこりゃ」
魔物がいる、ようやく周りに気を配り始めた頃に一匹、近くにいることに感づけた。
生憎戦闘は得意ではない、だからすたこらさっさと帰らせていただこうとしたが……案の定魔物に襲われてしまった。
こちらの得物は弓矢と魔法、一人で戦うのは少々不利だった。しかし、幸運にもケシーさんが助けてくれ大事なくすむ。彼女はどうやらこっそりついてきてくれていたらしく、素晴らしい瞬発力と鋭い爪で魔物を翻弄していた。
援護する暇もなく魔物は地に堕ちた。とてもいい手際だった、そう言うと彼女は照れ臭そうに返り血を振り落とした。
仮に彼女が魔法を使えれば屈強な戦士になること間違いなしだった。
この後の数日間、森に猪を狩りに行ったり子供たちに初歩の魔法を教えたりした。最初はケシーさんが特別なのかと思ったが、この町の大人たちは比較的高い戦闘能力を有している。狩りの際もかなりの少人数で挑み、僕の弓なんていらない程に安定している。そもそも狩りの多くは日が沈み暗くなった後で行われたため夜目が利かない僕はお荷物だ。
魔法の授業の方は順調で、既に殆どの子供たちは火や水、そよ風に土玉を出せるようにまで成長していた。これは種族的に苦手とは言い難い成果だ。子供だから成長しやすいのか、それとも……。
本来ならばこれから攻撃系統だったりと色々教えていくのだろうが、元々初歩だけという話だ。僕自身も教えたい気持ちはやまやまだった、がケシーさんに早く町を出ることをお勧めされてしまい、おとなしく離れることにした。
聞いたところによると、そろそろ森の魔物が増えて活性化する時期らしい。そんな時、魔法が使えるエルフがいれば駆り出されるのは自然だそうだ。
先ほども書いたが、僕は魔法を使うエルフとしては未熟者。少々危険な目に合うのは必然だろう。
ケシーさんの気遣いに感謝しつつ、彼女らに怪我がないようにと祈り町を出た。
今は少し離れ開けた場所に座り込み、ペンを握っている。今回の旅も色んなことがありとてもいいものだった。最後は逃げるように旅立つことになってしまったが、出来ることならもう少し彼らの成長を見届けたかった。
もし今後獣人の町に行くことがあれば、暇を見つけて魔法を教えてみようと思う。魔法は素晴らしい力だ、簡単なものでもみんなが使えればきっと豊かになるに違いない。
そんな時が来るのに備え、次の収入は魔法の教本につぎ込んでみることとしようと決め、僕はこの原稿を相棒の梟に持たせ空に放つ。
最初ということで何を書いたらいいかわからなかったが、出来ればこれで打ち切りにならないことを祈っている。
- Re: 【参加型】神世ノ描画≪参加神募集中≫ ( No.8 )
- 日時: 2017/12/07 09:04
- 名前: YCの人 (ID: aAxL6dTk)
#都市ダンジョンは売り子も魔物
とある秘境の都市ダンジョンは商店街の売り子もまた魔物、その魔物にも知性や個性があったりする。「・・・あれっ、通知マークがついてる!どれどれ・・・。」
---
『魔王司書と破壊兵器の間の子の話、執筆中』*サウンドスターより
魔界生まれ人間界育ちかつ天才的頭脳で異能を持ってないと思い込んでる魔王司書のミルカと、研究所で異能研究の一環として生まれた人造少年で破壊兵器のラーフィ。
二人の間に最初に生まれた子『フィフト』の異能は全属性を扱える『無限魔力』だった。
---
「マーセルの趣味もここまで進んだんだね。えっと・・・『この異能は司書さんの時代の異能じゃないと思うけど、司書さんはそれに相当する異能を持っているんだったよね。』まあこれは同人誌や小説の中の世界だからありえる異能だけど、この異能はこの世界でも全く同じ性能で現れたりするのかな。」一応司書さんの時代の異能の中にはこの世界に存在する異能もあって、魔法は異能研究の一環として魔力で再現しようとした物設定は健在。「そういえばこの本の中のミルカは人間界で危険なハーブを使い続けていた人の力を吸収して今の魔王司書になったけど、ハーブにやられたりしていないよね・・・それとも、魔界のハーブ?」
---
『バーボンの帽子語り:うそだ草で手入れする理由』*インフルエンサーより
たまーにいるんだよね、僕の帽子を欲しがるへんなお客さん。
幸い僕はレモンティー飲んだら帽子がまた生えるから、特に問題はない。
ただ、うそだ草で手入れしないと被ったお客さんがキノコになってしまうんだ。
---
「うそだ草w逆から読んでも嘘で草wでも触れさせる事でキノコ化を嘘にしないといけないのはごもっともだよね。それにしても、100円が高かった時代と言い、帽子関係あるの?系帽子語りは読んでて飽きないよ。」
そうそう、プロフィールとして魔物図鑑を掲示しておきます。
***都市ダンジョンの魔物図鑑
*ペイントスライム
スライムの中にはゼリーやグミだけでなくペンキでできたスライムもいる、それが『ペイントスライム』だ。容器の外で倒すと身体を構成するペンキを取れなくなるためバケツの中で倒そう。ちなみに倒されるまでは近接攻撃をしても身体のペンキが付かない。
色のあるペイントスライムは水を当てるとダメージが無効になる代わりに色が抜ける性質を持ち、色抜けペイントスライムへと変化する。色抜けペイントスライムが色のあるペイントスライムと合体すると透き通った色のペイントスライムになり、色抜けしない代わりに水でダメージを受ける。また、合体する事で色が混ざり別の色のペイントスライムになる・・・色抜け同士や既に色抜けと合体していた場合は合体できないが。ちなみに色抜けはワックスの素である。
そういう理由で白と黒のペイントスライムは3色混ざらないとできないためレア。
*マーセル・マロン
『赤い色』を血の代わりに吸う吸血鬼で楽器屋『サウンドスター』の売り子。
吸血鬼の血は母の影響で生まれつき混ざっていたが人の血も混ざっていた為不完全だった。
楽器屋運営の傍ら小説を書いているが、これは母が小説家だったから。
念のため言っておくが現在は完全な吸血鬼になっている。
*バーボン・ハッツ
知性の高いキノコ系魔物で帽子屋『インフルエンサー』の売り子。
常に目を閉じているが、それはそもそも目を介さない視覚のため目が機能していないから。
念のために言うと筆談でも応対するのがその盲目でない証拠。
好きな飲み物は『角砂糖入り』レモンティー。
- Re: 【参加型】神世ノ描画≪参加神募集中≫ ( No.9 )
- 日時: 2017/12/15 13:11
- 名前: YCの人 (ID: iNxht3Nk)
#端末を使い始める前の襲撃(1)
それはあの都市ダンジョンに楽器屋が建った時のこと・・・そのときのバーボンは首を気にしてマフラーを付けていた。「ああっ忙しい!電子機器があったら楽できるのに!」情報屋の電気リス『アステリア』が、珍しく慌てていました。「・・・アステル、何があったんだい」「バーボンさん!楽器屋の店員として吸血鬼が入ったんですよ!でもまだ人の血が残っていて完全な吸血鬼じゃなくって・・・」「へー。で、そこは何曜日が休みなんだい?」「何曜日ねぇ・・・そもそも曜日の概念なんてあったかな・・・?」・・・ちなみに、今でも商店街の全てが平常時に営業しているのは土日祝日(相当の日)のみ。
「・・・はっ、侵入者!」「侵入者・・・えっ」アステリアが遠くの気配を察したのか、突然表情が変わってバーボン顔には出さなかったけど大慌て。「楽器屋の店員に知らせないと!」アステリアはすぐに楽器屋・・・帽子屋の隣・・・に駆けていった。「・・・隣・・・なんだ・・・」
侵入者は魔物目当て。トップルも狙われるのではと危惧していた。「ダンジョンのレベルが低いから宝玉はまだ狙わないんだね。」しかし、そんな事は全くなかったと言っておく。
***都市ダンジョンの魔物図鑑
*アステリア
電気リスになった『ラタトスク』で、表向きはまともな情報屋。
しかしロックを解いて『裏情報屋』に来れば表で隠されていた危険な情報を聞く事もできる。
端末を渡したのも実は彼女だったりする。
*マーセル・マロン(再掲)
『赤い色』を血の代わりに吸う吸血鬼で新たに建った楽器屋『サウンドスター』の売り子。
楽器屋運営の傍ら小説を書いているが、これは吸血鬼の母が小説家だったから。
端末使用前の襲撃で完全な吸血鬼の血に目覚めた。
*バーボン・ハッツ(再掲)
知性の高いキノコ系魔物で前からあった帽子屋『インフルエンサー』の売り子。
目を介さない視覚は生まれつきで、彼が目を開けるのは本当にまれである。
『角砂糖入り』レモンティーが好きで、それを飲む事で帽子が生える。
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