複雑・ファジー小説
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- トモエ 【 完結 】
- 日時: 2022/11/17 12:54
- 名前: 暁烏 ◆w3Y5wPrVZY (ID: IkQo2inh)
【はじめに】
この度、時間はかかってしまいましたが無事に小説を書き終えることができました。
自分で言うのもなんですが、かなり人を選ぶ題材かな、とは思います。
また、自分がこうして小説を書いたのは今回が初めてかと思います。
拙い部分も見られますが、読んでいただければ幸いです。
改めて後書きは書く予定です。しばしお待ちを。
【暁烏】
初めまして。以後宜しくお願いします。
初めての投稿、初めての小説カキコで動悸が激しい。
ゆっくりと進めていきたいと思います(目標)。
挫折しないで完結したいです(切実)。
【留意事項】
・複数の『トモエ』さんが登場しますが作者は現実でトモエさんに対して恨みは一切御座いません。
・この作品はフィクションです。登場する人物や場面などは現実のものとは全く関係ありません。
・この作品では『自殺』を多少題材にしています。ですが自殺を推奨するつもりはありませんし、自殺を進める作品でもありません。自己責任。
・自殺、よくない。やめよう自殺。
2018/4/28 初記
2019/3/31 名前変更:暁烏→暁月烏
2020/11/14 名前:暁烏へ戻す
2020/12/18 トモエ、完結しました
>>1 第0話 トモエ、掲示板にて
>>2 第1話 トモエ、集合する
>>3 第2話 トモエ、移動する
>>4 第3話 トモエ、思い出を作る
>>5 第4話 トモエ、一泊する
>>6 第5話 トモエ、夜を明かす
>>7 第6話 トモエ、死地を探す
>>8 第7話 トモエ、デートする
>>11 第8話 トモエ、死ぬ直前
>>12 第9話 トモエ、葛藤する
>>13 第10話 トモエ、――――
>>16 後書き
- Re: トモエ ( No.7 )
- 日時: 2020/05/06 21:11
- 名前: 暁月烏 ◆w3Y5wPrVZY (ID: HrJoNZqu)
- 参照: 名前変えました
トモエ、死地を探す
「…………」
むくり、と竜谷兎萌が起きた。
「んー……と……」
一つのベッドで共に寝ていた八木原智絵と今川友衣に目をやる。二人ともまだ眠っていた。
「私が一番早起きだったのかしら」
ふと、部屋全体を見回して、そこで気付いた。
「あら……」
ソファで寝ると言い、そしてそこで寝ていたハズの双見巴が、いなかった。
「…………」
シャワーでも浴びているのかと思ったが音はしない。
何処かに隠れている様子でもなかった。
「八木原さん、起きて」
隣で寝ている八木原智絵の体を揺すり、無理やり起こす。
「……お早う。竜谷さん……早いのね」
最も、八木原智絵と今川友衣は夜遅くまでお話していたからというのもあったが。
「そんなことはどうでもいいわ……彼がいないの」
「え……!?」
事態を急速に理解したのか、八木原智絵はベッドから飛び上がった。
「なんで……」
「死ぬのが怖くなって逃げたか、生きたいと思ってこの場から離れたか……それ以外に理由は?」
「でも…………そんな」
「何れにしても……ここから逃げた、というのなら。貴女はどうする? 追いかける? 放っておく?」
八木原智絵は返事ができなかった。彼女の心の内には様々な感情が込み上げてきた。
何故、本当に逃げたのか。どうして。理由は。男女の違いか。個人の違いか。
そもそも、他人を誘う事から間違っていたのか。最初から全て事が予定通りに進むとは思わなかったが、いざ目の当たりにすると耐えられない感情が湧いてきていた。
自棄になり泣きそうな感じになりたくなる——そう思ったとき、ドアが開かれた。
「起きたのか」
ドアを開けて双見巴が室内へと入ってくる。
「え…………?」
「なんだ。どうかしたのか」
「怖気づいて逃げたのかと思った」
竜谷兎萌が揶揄いながら小さく笑う。
「今まで朝は早く起きて散歩かランニングが日課でな……浜辺の方まで」
「なんだ。つまんない」
「つまんないって言われてもな」
「男なのに逃げたとかの方が面白いじゃない?」
「……面白くなくて悪かったな」
「意地悪でごめんね」
「……一応——」
言い終える前に、双見巴の眼前、限りなく近い距離にまで八木原智絵は近づいてきていた。
怒っているようにも見える八木原智絵の表情を目の前に、双見巴は一息ついて、再度口を開く。
「……一応、メールで一方は入れたんだが……まずかったか」
「……本当に逃げたのかと思って」
「それは……悪かったな」
「でもよかったわ。戻ってきてくれて」
そう言って八木原智絵はソファへと深く座り込んだ。大きく深呼吸をする。
「もうしばらくしたら、移動しましょ。死ぬ場所を探しに」
+ + +
心中方法は飛び降り、という事は最初の時点で決めていたことだった。
そこで次に決めないといけないのが”舞台”である。
第三者に見つかりにくい事、侵入のし易さ、飛び降りる高さなど、さまざまな条件が求められる。
そして条件を満たす、最期に相応しい舞台を探すのは容易ではなかった。
こうして集まった以上、何処でもいいとは思えない——八木原智絵はそう思っていあた。
故にいまだに”舞台”は整っていなかった。
「で……この街で舞台を探すの?」
竜谷兎萌が訊ねた。
移動して昨日とは違った街に着いた一行は、辺りを見渡す。
「いきなりで知らない町で、そんな簡単に見つかるのかしら……」
自分で言うのも何だが、八木原智絵は不安だった。
「自分で言うのそれ?」と案の定竜谷兎萌に突っ込まれる。
「実際に内部まで見て、判断するのがいいと思ったんだけど」
「本来だったら事前に現地に行って、決めておくべきなんじゃないの? 態々来たことも無い所で、っていう方がどうかしてるわ」
「う……」
八木原智絵は何も言い返せないでいた。
「その辺にしておけ。確かに見つかるのもイヤだろうし。いつどんなタイミングで誰かに会うなんて分からんだろ」
「それは……そうね。とりあえず片っ端から入って探しましょう。まずは……あそこなんてどうかしら?」
双見巴に窘められた竜谷兎萌が先頭に立ち、観覧車が見える方へ進んでいく。
「……なんだか申し訳ないわ」
八木原智絵はため息交じりに呟いた。
「観覧車……?」
しかし一方で双見巴は違う事に疑問を抱いていた。
「アイツ、観覧車の方へ行ってるぞ。あっちに建物なんてあるのか?」
八木原智絵も、竜谷兎萌が向かう方向に何があるのかは分からず、「さ、さあ」と首を傾げるしかなかった。
「あっちにショッピングモ−ルがあって、その中に設置されているみたいですね……」
今川友衣がスマートフォンで辺り一帯を調べた。
「ただ遊びたいだけとかじゃないよな……?」
「ま、まあ、まずは近場から、だと思いますよ……?」
今川友衣は竜谷兎萌のフォローを入れながら、竜谷兎萌の後を着いていく。
「この辺でも幾つか、入れそうな建物もあるみたいですし……ゆっくりでいいから探しましょう」
「……ホント、無計画でごめんなさい」
「とりあえず、行くぞ。アイツに置いてかれる」
四人は舞台を探すために、歩き出す。
+ + +
「ええと……これから何をするのでしょう?」
今川友衣が問いかけた。
元より、まだ午後を過ぎたばかりで人が多い。そんな中自殺する度胸は八木原智絵を始め四人には無かった。
竜谷兎萌が渡りを見渡す。
「どっちにしろ人気がもう少し引いた時間帯に死ぬんでしょ? ここで死ぬかどうかも決めなきゃいけないし……どう時間を潰すの?」
「そうね……建物を散策して、人目につかない場所をさがしましょう」
「最期の舞台を探す、っていうと……ちょっと大げさかしら?」
竜谷兎萌がそう言って小さく笑った。
「折角だし二手に分かれましょう? 少なくとも個人だけの意見で決められることではないわ」
竜谷兎萌は今川友衣の袖を引っ張った。
「八木原さんは彼が逃げないように見張るのも兼ねて……私は今川さんと」
「俺を逃げる前提で話を進めるな」
「私はいいけど、あまり今川さんをからかわないのよ。それじゃあ行こう?」
そう言って八木原智絵は去って行った。
「見つかるといいわね。相応しい舞台」
「……もしここがダメで、次の建物に移るときは連絡するからな。お互いそれでいいか?」
「それでいいわ」
竜谷兎萌の返事に今川友衣も頷く。
「そうか」と、双見巴は八木原智絵の後を追いかけた。
「さて……なんだかんだ言っても時間は限られているし、どこかでお茶でもしましょ?」
「いいんですか?」
「今はね」
竜谷兎萌はまた今川友衣の袖を引っ張りながら、近くのレストランに入っていった。
そのまま店員に案内され、二人は席に着いた。
「とりあえずドリンクバー二人分で」
店員が去り、今川友衣は溜息を吐いた。
「……随分と、余裕そうですね」
「余裕って?」
「えと……死、までの残り時間に対する心の準備というか……未練ってありますか?」
「あるわよ」
答えながら竜谷兎萌は席を立った。
「飲み物持ってきてあげる。何が欲しい?」
「……オレンジジュースで」
「了解」
「…………」
今川友衣にも未練はあった。けれども、何度も見る悪夢から、逃げたいという気持ちの方が強かった。
それでも、本当はどうしたいのか、今川友衣自身分からなかった。
「他の皆さんは、未練とかあるのでしょうか……?」
「さあね」
戻ってきた竜谷兎萌が今川友衣の前にオレンジジュースを置いた。
「生への未練と死への思い。それらを天秤にかけて——死への思いの方に揺らいでいるのなら、それで決心するしかない。それだけだと思うわ」
竜谷兎萌はそう言って自身がいれたアイスミルクを一口飲んだ。
「……私たちさ、ちゃんと死ねると思う?」
「分かりません……初めて死のう思ってやっているので……ちゃんと死ねるって、どういうことかは」
「そうよねえ」
こういった事への竜谷兎萌の返事はどこか達観しているな、と今川友衣は思った。
「今日、何人の人が死んでいってると思う? その中で何人が自殺したのか。その中で何人が走馬燈を利用したのか。何人が、死ななかったのか」
「死ななかった、ですか……?」
「ええ。単純に飛び降りや首つりでも死ななかったとか、最期の最後で怖気づいて逃げたとか」
「…………」
「それに、こうして集まって談笑して、お互いの不満をぶつけていく内に解消されるっていうのも、あると思うわ。それを求めて自殺オフ会なんて開く人も中にはいるみたいだし」
「私は、そんなつもりはありません……!」
「私もそうよ。けど……結局のところ意味も何も無くとも生きていきたいと思うのが人間だと思うし、誰だって死ぬのが怖いと思う。死ぬ直前は尚更死の恐怖が出るから……もしかしたら最期の最後で生きることへの執着心が、勝っちゃうかもしれない。そこでまた生への未練の方に大きく揺らいだら——死ぬことはなくなるわ」
「生への執着心……」
「生きている以上必ずある根底的なもの……そう私は思っている。どれだけ意味を感じていなくても、どれだけ辛くても、苛められて、悪夢に苛まされていても……」
「…………」
だから当然、自身は当然、八木原智絵にも双見巴にも、竜谷兎萌にだって生への執着心はあるんだろう。
各々が、死への思いと天秤にかけて——今は死の方に揺らいでいる。
しかしそれは——最期の最後まで分からない。
「ま、最期まで気を抜かないようにしないといけないってことよ」
「……そうですね」
そこまできて、今川友衣はふと気が付いた。
「悪夢って……私の事ですか?」
「いきなりどうしたのよ。この中じゃ貴女しかいないじゃない」
「ど……どうして夢の事を!?」
確か竜谷兎萌にも苛めの事は話したが、悪夢を見ることは夜中に八木原智絵としか話していなかった。にもかかわらず、だ。
「八木原さんから聞いたわけじゃないわ。その時私も起きていただけのことよ」
「……!?」
「というより、あんな叫び声上げたら流石に起きると思うわ……吃驚したわ」
「あ……ああ……」
「まあ……時すでに遅しよ。私も、起きてるのがバレないようにしてたから体をちゃんとは見ていなかったし。話も詳しくは覚えていないから」
竜谷兎萌は下手なフォローを言うが、それ以上に今川友衣には問題があった。
「あ、あの……ということはですね」
「私に知られたのがそんなに恥ずかしかったのかしら」
「昨日の夜……彼にも、もしかしたら見ていたかもしれない、ということですよね……?」
「……それは、そうかもしれないね」
双見巴がどこを向いて、どんな体勢で寝ていたかまでは竜谷兎萌の知るところではないが、普通だったら起きていただろう。
「夜中に叫び声をあげていたら、ねえ」
「…………」
今川友衣は余計に恥ずかしさが込みあがってきた。
「……どんまい」
とりあえず、竜谷兎萌は慰めの言葉をかけてあげた。
<トモエ、死地を探す・終>
推敲だとか修正だとかしていたらこんなに間がいてしまいましたが存続しています。
心機一転させて頑張りたいと思います。
- Re: トモエ ( No.8 )
- 日時: 2019/08/13 16:45
- 名前: 暁月烏 ◆w3Y5wPrVZY (ID: enKf/rbe)
トモエ、デートする
「…………」
八木原智絵は早くもこの施設に見切りをつけ次の建物を探し出そうとしていた。
双見巴もそれに同意し、竜谷兎萌と今川友衣に違う建物に先に移動すると連絡して移動することにした。
「今日中に見つかるのか」
双見巴がそんなことを呟く。
「見つけなきゃいけないのよ。遠くっても、暗くなっても」
「暗いなら目立ちにくいか……」
「…………」
先ほどから双見巴はずっと、何度も観覧車の方を眺めていた。
「双見君」
八木原智絵は何となく聞いてみた。
「観覧車気になる?」
「ん?」
双見巴は返事をして立ち止まった。
「余所見だと確かに危ないな……悪かった」
「確かにそうだけど……そんな珍しいものでもないでしょ」
「…………」
双見巴は神妙な顔をして、
「観覧車に乗ったことがない」といった。
「……高所恐怖症っていう訳でなく?」
「高い所は別に平気だ。だが確かに観覧車は乗った記憶はない……というかそういったところに行った記憶がない」
「そうなんだ……じゃあ乗ろっか?」
そう言って、八木原智絵は観覧車の方へと歩き出した。
* * *
どうしてこうなったんだ、と双見巴は思考を巡らしていた。
現在、八木原智絵と双見巴の二人で観覧車に乗っている。
予想外の状態に双見巴はどうすればいいのか分からないでいた。
「昨日の夜とは打って変わった景色だね」
「…………」
「初めての観覧車はどう?」
「何か……童心ってこんな感じなんだろうなって。普通の家庭だったら、こういったことはごく普通の中の一部なんだろうなって」
「……家族でも、観覧車に乗った記憶がないの?」
「…………」
八木原智絵の質問には双見巴は何度かはぐらかしたり、適当に答えたりしていた。
しかし、双見巴は深呼吸をし、
「ない……というより家族で過ごした記憶自体、ない」
と、言い放った。
「そう、なの……?」
「……気を悪くするな。そっちの方が余計に気まずくなるだろう」
「じゃあ、もしかしてずっと……?」
「まあ……施設で育ってきた事になるな。俺は第一の記憶が施設での生活だ」
施設での生活。馴染めない部分もあったがそこが双見巴にとっての家だった。
「だから、親からもらった名前、だなんて思えなかった」
八木原智絵が親から名付けてもらったトモエ名を誇りに思っているのに対して、
親が名付けたなんて実感なんてなく、誇りにさえ思えなかった。
「『女みたいな名前』とからかわれたこともあった」
自虐気味に双見巴は語る。
「勿論『トモエ』と言う名前は悪くない。そんなことをいう奴が悪いだけだ」
「自分の名前、嫌い?」
「好きだとか、誇りに思えるという感覚がない、と言うのが一番近いのかもな。偶に……そんな考えも頭によぎるが」
「そう……」
八木原智絵は、どんな返しをすればいいのか、分からない。
双見巴の自分の名前を好きでいられないことに憤りを感じるし、
名前を馬鹿にされたことへの苛立ちも湧いてきたし、
双見巴の生い立ちへの同情、そして自身も親を失ったという喪失感。
「何か……悪いな。こんな話で」
「私も……親、亡くしてさ。今独りぼっちなんだ。それから嫌で自殺しようとしてるんだけど……」
施設にいて独りぼっちって感じてた?
なんとなく訊ねてみた。
「親がいないという事の孤独感は小さい頃からあった。それが嫌で仕方なかったし、そう言ったのから逃れるために、俺は早く寝ることを小さい時に覚えた」
「じゃあ、昨日も夜は?」
「お陰様で、ちゃんと眠ることができました」
「へえ…………」
八木原智絵は思い出す。今川友衣が叫んでそれから二人でいろいろと喋ったことを。
よく考えたら声のトーンなどお構いなしだったし、今川友衣に至っては衣服をさらけ出すという行為もしていた。異性である双見巴が見ていたりしたらたまったもんじゃないだろう。
「昨日なんかあったのか?」
「今川さんと二人で沢山お話していてね。男子には言えないようなことまで」
「そうか……寝ていたから知らなくて当然か」
「大声で叫んだりしたら起きると思うけど……本当みたいだね」
「自分で言うのも何だが寝つきはいい方だと思う」
八木原智絵は苦笑して返した。
「おかしいね」
「何がだ?」
「こうして同じ名前ってだけで、生い立ちも環境も、名前に対する認識も全く違うのに……だけど『死にたい』なんて二人とも思うなんて」
「全く違うというか、名前の認識に関しちゃ正反対だと思うがな」
それでも、自分で自分の人生を終わらせよう、という結論にお互い至ってしまった。
竜谷兎萌も、今川友衣もそうだ。
同じ名前なだけで、違う人生を歩んできたはずなのに。
八木原智絵は。
「……双見君」
八木原智絵は双見巴に訊ねてみた。
「…………今も、自分の名前、嫌い?」
「…………」
双見巴は少し考えて、
「これに参加していなかったら、俺はこの名前を、人生を恨みながら死んでいったと思う。いい体験もしたし、自分の名前に対する見方は変わったな」
「好きになれた?」
「……今までより何倍もマシだとは思うな」
ゴンドラのドアが開かれた。
「いろいろとありがとうな」
双見巴が先に降りて八木原智絵を出迎える。
八木原智絵も記憶にこそあったが観覧車になるのは久しぶりだったかもしれない。
ふと、待っている列はカップルが占めていることに気づいた。
「…………」
「……どうかしたか?」
今こうして双見巴といるのは、傍から見ればデートしているように見えるのか、ふとそんなことを考えてしまった。
「何でもないよ。次は何処行こっか?」
平静を保ちつつ、八木原智絵は双見巴に並んで歩き出した。
<トモエ、デートする・終>
久しぶりの投稿でした。
スパン短くしないとダメですね……。
因みに観覧車のあるショッピングモールというのもあるみたいですね。
遊園地以外にもあると。
自分は行ったことないですが。
- Re: トモエ ( No.9 )
- 日時: 2019/08/14 22:59
- 名前: ヨモツカミ (ID: w9Ti0hrm)
はじめまして。ヨモツカミです。
トモエ、読ませていただきました。タイトルから内容が想像できなかったので、興味本位で開いてみて、自殺に関するお話だと知って読み進めようと考えました。
けして、自殺を推奨するようなつもりはないですが、創作における自殺というものがなんか好きでして。なんでしょうね。死にたい、と生きたい、は日常生活でふとした瞬間に出る一般的な感情で、でもそれを実行に移すことは、小説の中でしかできないなあって思っているので、何故か好きなんですよ。
誤字、何箇所かあって気になったのですが、得に激しい誤字だけ。
>>3で、「竜谷兎萌が竜谷兎萌にちょっかいを出す」という文になってしまってるので、そこだけは直したほうがいいと思います。後の会話で今川ちゃんにちょっかい出したというのは理解できましたが、流石に混乱するので。
双見くん以外のトモエ達で死にたい理由を語り合うシーン、死にたい理由に劣等感を抱く竜谷さんに対して「自分が納得できるかどうかが重要」て言ったの、深いなって思いました。なんだか好きなシーンです。
八木原さんも思ったように、死にたい自分に賛同してくれるトモエがいたのは良かったけど、自分以外にこんなに死にたい人がいるというのは悲しいことですね。
みんなで星空を見るシーンもすごく好きです。夏には蛍が見れるって聞いて、明日死ぬはずなのに未来に期待をしてしまう。死ぬって決めたのに、生きたいと思ってしまう。切ないことですね。
今川ちゃんの過去が壮絶すぎて、でも自殺の理由としていじめは定番(?)ですよね。死にたい理由はそれぞれ違うけど、一番感情移入できたのは今川ちゃんです。
完結させることってすごく難しいと思いますが、どんな結末になるのか楽しみにしているので、更新頑張って下さい。応援しております。
余談ですが「十二人の死にたい子どもたち」という映画、ご存知でしょうか? あれも自殺オフをするという内容の話なんですけど、先日、それを見たあとだったのでなんだかよりこの小説にのめり込むことができた気がします。もし見たことなかったら暁月鳥さんも見てみては如何でしょうか。
- Re: トモエ ( No.10 )
- 日時: 2019/09/06 23:48
- 名前: 暁月烏 (ID: enKf/rbe)
ヨモツカミさん、はじめまして。
感想ありがとうございます! 返信遅くなってすいません。
如何にタイトルだけでどんな内容か?と思わせるか。とか考えていたららシンプルイズベストに納まりました!
自分の中で生と死は混沌としていて、混濁していて、表裏一体、切り離すことのできないモノだと思っています。
そうした自分の中のものをある一面から創作物としてどう表現・昇華していくかっていうのは……難しいですし、そして他の人のそういった表現・思考というのは確かに興味をそそられるものがあります。
果たして自分の生死観はどうなるのやら……?
自分がもともと勝手に劣等感とか抱く方なので「死にたい理由とか劣等感抱いたらどうなるかな?」とか考えていました。
だからそもそも自分の名前に劣等感を抱いていた双見巴を登場させたり。
それからどう展開させていくことができるか考えるのはやはり創作の楽しみですね。
実際にそういった負の感情に対しどんな形で折り合いをつけるか=自分が納得できるかってのは大事だと思っています。現実では中々に難しく、けれどそうしないと潰されちゃいそうになるので……。
構想はほとんど出来ているのに、完成までの道のりは長く険しいとひしひし感じています……!
ですがそういった難しさを楽しみながら頑張っていきたいと思います。
誤字報告ありがとうございます!
読み返したはずなのにヒドい誤字……(笑)
>「十二人の死にたい子どもたち」
タイトル聞いたことあるなーと思ったら冲方丁さんの作品でしたね。
今度探してみます……時間あるかな?
- Re: トモエ ( No.11 )
- 日時: 2020/11/14 18:26
- 名前: 暁烏 ◆w3Y5wPrVZY (ID: HrJoNZqu)
トモエ、死ぬ直前
観覧車を乗り終えた双見巴と八木原智絵は竜谷兎萌と今川友衣と合流した。
今川友衣は終始下を向いたままで目を――特に双見巴から逸らしていた。
事情を知らない双見巴は「大丈夫か?」と訊ねるが今川友衣は「いいえ……大丈夫です」と小さく返すだけだった。
八木原智絵も双見巴も首を傾げた。
「何かあったの?」
「昨日私は今川さんのあられもない姿を見たから、彼も見たんじゃないかなって。そんな話をしてたの」
「……あー」
「大声をあげていたんだし?」
それならば今川友衣の反応も何となく分かる。
ただ、夜の件は双見巴は熟睡していて知らない――なんて説明しても簡単に信じてもらえるか。
「まあ、彼が実際に見たかどうかは関係なく、見られたと思っているんだけど……説得するのは面倒よ。開き直ってもらった方が早いと思うわ」
「……難儀ね」
「どうせ最期なんだし異性に裸見られたくらいなんともないでしょ? 寧ろ自分から脱いだんだし」
「あう……」
「裸……?」
双見巴は意味が分からないといった風である。
「……何か昨日は変なことが起きていたみたいだな」
「ええ。でももうこの際どっちでもいいと思うの。見たとか見てないとか。それよりも早く、場所を決めないといけないんだから」
竜谷兎萌がそう話題を切り替えた。
「突然の切り替えね」
思わず八木原智絵も感心してしまった。
「個人の差だろう。今更治せそうにもない気がする」
「ふーん……」
「…………」
「今川さん、具合悪かったりするの?」
八木原智絵が頃合いを見て今川友衣に訊ねた。
「いいえ……大丈夫です。気づかい有難うございます」
今川友衣も竜谷兎萌のおかげで悟ったようで、顔を上げた。
「じゃあ、行きましょ」
八木原智絵が先導する。
死に向かう場所へと。
「ここが、最期の場所なんですね……」
「そうね」
四人が辿り着いたのは少し寂れたショッピングモールだった。
人混みが激しいわけでもなく、見上げた階上の方は暗い。
「まあいいんじゃないの? その気になればどこでだって出来るんだし」
「よく見つけられたな……」
双見巴は八木原智絵に感心していた。
「さっき上から探してたら、たまたま見つけたのよ。人気が多くなさそうな建物を」
「私たちの所為で、ここがホラースポットになってしまうんですね」
小さな声で今川友衣がささやいた。
「私たちをそうさせたのはこの社会よ」
「気持ちいいくらいの八つ当たりだな」
「そうね」
「じゃあ、行こっか? それとも最後にやり残したこと、まだある?」
八木原智絵が改めてそう訊ねる。
「八木原さんはどうなの?」
「私は……そうね、最後の晩餐くらいはしようかなって――」
八木原智絵の返答に竜谷兎萌は苦笑した。
「小洒落てるわね……私は遠慮しておくわ。個人的に一人でいたい」
「なるほど……二人はどう?」
「私は……八木原さんたちとゆっくり落ち着きたいです」
「俺もそっちに賛成する」
「一人くらい一緒に来てもよかったのに……」
「一人でいたいはどこに行った」
「冗談よ。じゃあ私は一旦ここで別れるわ。精精最期の時間を、お互い楽しみましょう?」
そう言って竜谷兎萌はその場を離れた。
「準備ができたら連絡するわ」
去り際に八木原智絵がそう言った。竜谷兎萌は笑って返した。
いよいよ迫ってきている、と竜谷兎萌は感じていた。
「…………」
無言で歩きながら竜谷兎萌は思い返す。
自殺オフで一泊するのは予想していなかったが、なんだかんだ言って楽しめた。
その所為か、内心落ち着かなかった。直前まで楽しめた、というのが心に引っかかっていた。
「躊躇っているのかしら……」
きっとここまで先延ばしにしていたからだ、と心の中で苦笑した。
竜谷兎萌は再度ショッピングモールを見上げた。
高い。
ここから落ちたら確かに死ぬだろう。
「悪いけど、ここを私たちの死に場所にするわね」
小さな声で呟く。
自然と、強くこぶしを握り締めていた。
+ + +
双見巴と今川友衣は二人で残っていた。
八木原智絵と三人で最後の晩餐と言ってしばらく話してたが暫くして八木原智絵が「先に場所探してるね」といって抜けてしまった。
それから静かに会話を続けたり、黙って食事をとったりとの繰り返しだった。
「以前、本当に、一人で自殺を考えたことがありました」
今川友衣は食事を完全にやめた状態で正面の双見巴の方を見ながら言う。
「ここから飛び降りれば死ねる……辛い苛めからも、寂しい思いからも逃れられるって思って。でも、結局怖くなって辞めちゃったんです……今になって思えば、きっと、誰かに見てほしかったんだなって思いますし……止めてほしかったんだと思うんです」
双見巴の手が止まった。「行き過ぎた行動ですよね」と今川友衣は小さく笑った。
「それほどの思いで、それだけの行動を起こしても、結局は自分で辞めちゃったんですよ……元の日常に戻しちゃったんですよ」
「…………」
ブラックコーヒーを啜りながら、双見巴は今川友衣の話と、過去の自分を照らし合わせていた。
日頃から心のどこかで寂しさを感じていてた双見巴は夜遅くまで施設に戻らない日もあった。
夜遅くまで遊びつくしたこともあったし、喧嘩したこともあった。
誰かに見てほしかったし止めてほしかった――という点では同じなんだろう。双見巴はそう思った。
「……最後に変な話してすいませんでした。迷惑でしたか?」
恐る恐る訊ねた今川友衣だったが双見巴は「いいや」と首を横に振った。
「そういった突飛な行動は誰にでもあるだろ。俺も、似たようなことあったし」
「……自殺ですか?」
「……どっちかっていうと喧嘩とか、だな」
「やっぱり双見さん……不良ですね」
「自分でも不良だと思うな」
「でも……ちょっと、不良とは違うかもしれません」
今川友衣の発言に双見巴は首を傾げた。
「私のいた学校にもそんな人たちはいましたが……それよりは、話しやすいですし、悪くない人だと思います」
「中途半端な不良、か……」
「あ、そういった意味ではないんですが」
「不良だけど不良じゃない、か……ははっ!」
奇しくも今川友衣が双見巴に抱いた第一印象であった。しかしそんなことは露知らず双見巴はどこかおかしく思い笑った。
その時、二人の携帯電話から着信が鳴った。
「……!」
「……!」
二とも各各の携帯を確認する。八木原智絵からのメールだった――当然、ここには今いない竜谷兎萌にも、同様のメールが届いていた。
『屋上で先に待っています。あと一時間くらいしたら来てください。場所は――』
+ + +
八木原智絵は一人、黄昏ていた。
外はもう暗くなりつつあり、少し肌寒くなってきた。屋内駐車場の一角だが、周囲には人どころか車一台さえなかった。
人目に付かない、絶好の場所であった。
「…………」
ふと、八木原智絵は上体を乗り出して真下を覗き込んだ。ここから落ちたら一溜りもないんだろう、と思った。
「……はあ」
ゆっくりと溜息を吐いた。
先程から一人で、この場所で時間を潰していた。空を眺めたり、下の景色を眺めたり――時間を無駄に費やしていた。
心ここにあらずといった感じで、ずっとそわそわしていた。
「来たわよ」
どれくらいの時間が経ったのだろうか、振り返ると――竜谷兎萌、双見巴、今川友衣が集まっていた。
「やっと、改めてみんな揃ったのね……」
心底疲れたかのように、八木原智絵はため息交じりにそう言った。
「ずっとここで時間を潰していたの? 暇だったのね……それとも、心の整理がつかなかったの?」
少し意地悪そうに、竜谷兎萌は笑いながら返した。
「――いろいろと、思い返してたの」
八木原智絵は語りだした。
「これまでの人生の事とか、こうして自殺しようとした経緯とか……走馬燈に書き込んでから、皆に会って、こうしてここにいることまでの二日間とか。自分が自殺しようだなんて考えてもいなかったし、自分と同じ名前の男子に会うだなんて思いもしなかった」
だろうな、と双見巴は返した。
「この二日間はさ……企画した自分が言うのも何だけど、かなり濃い二日だったと思うの。最初は勢いで、どうせだから最後に旅行でもって思ってたんだけどね。結果として、すごく楽しかった」
今川友衣はそれに答えるように頷く。
「……だから今こうして、死のうとする直前までいてさ――――、」
少し間を置いて、八木原智絵はまた口を開く。
「――――死にたくなくなっちゃった」
<トモエ、死ぬ直前・終>
お久しぶりです。長く空けすぎてしまいました。
そんな自分が情けない……
ですがこうして戻ってまいりました。
物語もいよいよ終わりそうです。がんばれ自分。
それにしても、生きたいと思ってるから「死にたい」って思っちゃいますし、
死にたいって思ってると「生きたい」って思っちゃいますよね。
生死とは表裏一体。それを私たちは抱えている。