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複雑・ファジー小説
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- 撲滅のアサシン
- 日時: 2018/09/30 15:31
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
運が良かった、と語る者もいれば運が悪かった、と語る者もいる。当事者である私自身はもちろん後者に該当する。といっても、自身で当時のことを語る機会なんてほとんどないのだが。
「アラ、いらっしゃい」
でも、この日は違った。
心を捨てたつもりだった。人として生きる道を捨て、残りの人生の全てを復讐にささげるつもりだった。いや、「つもりだった」なんて言い方は語弊を生むだろう。
今でもその目的に変わりはない。
「アナタ、悲しそうね」
でも、それまでの道のりに少しだけ、光が差し込んだ。
「いいのよ。ここでは」
彼、いや、彼女は続けた。
「全部さらけ出しなさい」
その日、私は初めて自分の口で、あの日の事を語りだした。
- Re: 撲滅のアサシン ( No.1 )
- 日時: 2018/09/30 23:00
- 名前: 最終定理 (ID: 4uYyw8Dk)
「お代、気が向いたらでいいわよ」
話し終え、憔悴し、泥酔しきった私に彼女はそう告げた。
「まさか、アナタが———だったなんて、ね」
「失望した?」
彼女は控えめに笑い、首を横に振った。
「もし、」
少しの間があって、ウィスキーの中の氷が溶けた。
カラン、という高い音の後に、彼女の低い声が続く。
「もし気が変わったら、いつでも雇ってあげる」
気が変わることなんて絶対にないと断言できる。
私の生きる道はもう一つしかない。
彼女も私も、それはわかっている。それでも、彼女の気持ちに答えない訳にはいかなかった。
「ありがとう」
私はそうやって、うそぶいてみせた。
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